「ということでやってまいりました、ホロウです」
「所長、あの人テンションくっそ高いんだけど」
「推しに会えるかもとテンションぶち上げてんだろう多分」
えいえいおー! と意気を上げるヴェルナーの法則あらためメビナという名の少女は防護服に身を包んで拳を突き上げている。その後ろで事務所の面々は体をほぐしながら見守っていた。
「それでは皆さん、出発しましょう!」
「では先導につきます。あまり先走って離れないようにお願いしますね」
錬が先陣を切ってホロウの中に入っていく。
いつものぐにゃりと空間が捻じ曲げられる感覚を味わった後にホロウの中に放り出される。どこにでもある人類の生存圏を奪い去って誕生した異空間。そこに立った錬の後ろから続々と一行が入ってくる。
「さて、じゃあ流した情報の座標に向かいますか」
「よろしくお願いします!」
「いやほんっとテンション高いなあの人」
「星那さん、お客様相手ですから」
『お口チャック』
進み始めた一行。
緊急時でもない限りデュカリオンの行動は夜に行われるという分析とこのホロウにとあるギャングの違法な拠点があるという情報を流した、これでデュカリオンを
「座標はこの先の廃工場。元々は業者の倉庫だったらしいが、例にもれずホロウに呑まれて以降は放棄されてそのまま。放逐されている」
「確かにこういったところはよくねぐらに使わせてもらってたなぁ。ロケットランチャーとかにはさすがに弱いけど、アサルトライフルとかの弾幕なら倒壊までは行かないし、一回耐えれればこっちに流れをひっぱりこめるし」
「……娘さん、お詳しいんですね」
「終末世界の手習いみたいなものですから」
『聞いたことない手習いだぁ』
「手習いというには少しばかり荒事すぎますね」
さすがに手習いと言うには無理があったか。
そんなことを思っていると、くいっ、と腰のあたりを引っ張られる感覚。目をそちらにやってみると目を丸くした星那が自分の服の裾を掴んでいた。何か驚いた様子で、振り向いた自分と目が合うと慌てて手を離す。
「どうかしたか、星那?」
「いや、えっと、何でもない」
「……」
後ろでエリーがにこっ!と笑っているのが気にかかるが何でもないなら追及するほどでもないかと思い、そうかと言って頭を撫でておく。文句も言わずされるがままの星那にいつもの元気さが無いなと思いつつも歩みを進めていく。
「話を戻しますが星那の言う通り、ホロウ内である程度の活動拠点として建築物、とりわけ物資を集積しておく場所などはギャングに再利用されやすい。エーテル侵食以外の風雨にさらされて摩耗する心配が無いわけですから。それに電源の復旧さえしてしまえばそこそこの生活環境を整えることも出来る訳ですし」
「ああ、言われてみれば確かに。私も情報を貰う時がありますけど、大抵建物の跡とかの近くに拠点が置かれてますね」
「あとは外に出る裂け目の近くとかね。いざって時の逃げ道は用意しておくもんだし」
「まあ全部が揃った立地なんてそうそう無いわけで、いずれかを満たす拠点か、あるいはそうじゃない場所に目立たない小規模な拠点を複数作っておくとか、パターンは多岐に渡るからこれと断言できるものは無いけどな」
『それこそそのグループごとの色が出てきますもんね』
「そうだな。プランを立てる人物の思考の傾向、ソーマの言う色は割と出るもんだ」
その点、と区切りながら到着した倉庫の外壁を見上げて呟く。
「今回名前を使うギャング、
「その、なんだかんだで流しちゃってましたけど……ギャングの名前を勝手に使うのは
「問題ない。ホールベア自体はすでに解散しているからな」
「所長、だとしたらデュカリオンを釣りだす餌としてはマズイのではないでしょうか。存在しない組であるなら疑って来ない可能性も……」
「だから流した情報は、一度解散した組が再結成をしようと各所から物資を奪ってここに集めている、ということにしている。他所に被害が出ているのならデュカリオンのターゲットになりうるだろ?」
ギャングの残党が再興を目指して狼藉を働き、その収穫をここに集めている、という筋書きだ。
当時の構成員もすでに全員投獄されており、実際にはそんなことが起きていないということ。つまりは噂だけが出回る架空の状況ゆえ誰にも迷惑はかけないだろうと判断した。この状況で懸念することがあるとしたら。
「所長、誰かいる」
「そりゃまあ、再出発を目指して物資を集めてますとなったら……ぶんどってやろうって来るよなぁ」
他のギャングが横取りを狙う、というぐらいだ。扉の向こう、荒っぽい声が聞こえてくる。物資はどこだの、穴熊の奴らはどこだの、そんな声がしている。
どうする、と振り返った星那。そうだなぁ、と口元に手を当てて少し考えてから決断を下す。
「都合のいい餌が増えたと考えよう。しばらく監視して、帰るようなら奇襲して拘束、治安官に引き渡す。デュカリオンが来たならそれでよし、それでいこう」
『了解。しばらくは奴らの監視ですね』
【■■■■】
「ん?」
何か変な声が混じった気がする。
視線をそちらに向けると白くて丸い鉱石から四本の脚が出ているエーテリアスがそこに居た。自分の知識が間違っていなければこのエーテリアスの名称は、ブラストスパイダー。その能力は、
「やべ」
慌てて目の前の扉を開いて、全員が飛び込んだのを確認してブラストスパイダーとこちら側を扉を閉めて遮断する。扉の向こうでボン! と音を立ててブラストスパイダーが爆発四散し、その衝撃が扉を抑えていた腕を伝ってくる。
どうにかなった、と一安心したところでふと我に返る。
自分たちはギャングたちの様子を隠れて伺っていた。その後ろからブラストスパイダーに襲われて咄嗟に目の前の扉に踏み込んだ。という事は、だ。自分たちが飛び込んだのは。
「あんだぁ、てめぇら?」
「うわちゃー……」
必然的に、ギャングの目の前である。
試しに爆発の衝撃を直に食らった扉が開かないか取っ手を捻ってみるものの軋んだ音を立てるだけ。ブラストスパイダーの自爆の衝撃で歪んで開かなくなってしまったようだ。
「何だと聞かれたら、ここの調査を依頼されたホロウレイダーだけど」
「ほーぅ、ここの調査ね。この建屋のオーナーは自己破産して、建屋を売りに出し、しかし買い手がつかなかったはずだが?」
知ってる。
内心呟きながら表面上にはおくびにも出さず、一歩前に出る。
「ここってのはこのホロウの事だよ。まだ権利を手放していないオーナーが自分の物件があるホロウ内にギャングがたむろするようになったって話を小耳に挟んでな。念のために俺らに調査の依頼が来たって訳さ」
「なるほど。で、成果はあったのかい?」
「ここまでは無かったよ」
言外に、お前らが居た、とにおわせながら返すとそれを読み取ったのかフン、と鼻を鳴らす。
「で、いくら出す?」
「いくら出すとは?」
「とぼけんなよ、今の状況が分かってねえって訳でもないだろ?」
彼の傍に控えていたギャングたちがへらへらと武器を片手に前に出てくる。どうみても友好的ではないその立ち振る舞いに、典型的なギャングだなと逆に感心しつつも彼らに向ける視線はすっと冷え込んでいく。
「ここで会ったのは不幸な事故、それで済ませる気は?」
「おいおい、自分の命をタダで渡す気か?」
「ここに来ている時点で分かってたが……悪ガキだったな、やっぱり」
「あァ?」
腰から「業迅・風雷」を引き抜いて構える。
「聞こえなかったか? いい歳こいて人にたからにゃやっていけんようなろくでもない悪ガキだって言ったんだが」
「――――――。ハッツ、どうやら痛めつけられることがお好みのド変態らしいな。おい」
「へいっ!!」
頭に命じられた手下たちがこん棒片手にじりじりと距離を詰めてくる。
数は12。仮に穴熊を潰して吸収しようとここに来たのなら、そこそこ腕に自信のある者たちなのかもしれない。だとしてもやることは変わらない。
「今すぐ降参すりゃあ」
二刀のうち一方を天井に向けて投げる。
突然の奇妙な動きに、ギャングたちの視線はつられて上に向く。ほんのわずかばかりの空白の瞬間、そこに錬は土足で踏み込んでいく。狙うのは先頭に出ていた若い男。深く沈むこむように体を倒し、地面を這うように迫っていく。
「一式」
踏み込む、ただただ最速最短で。セヴァランス流の一の刃が男へと襲い掛かる。迫る銀閃、その刃が斬り捨てる寸前に柄を向け、鳩尾を強かに叩く。
腕を振り切って吹き飛んでいく手下を見送る。言葉の途中で行われた暴力にリーダー格の男は反応出来ない。だがそれなら次の獲物を刈り取るだけとばかりに錬の攻勢は止まらない。
「四式」
振り切った拳は乱撃の型に動きが繋がる。対多数相手を前提とした乱切りが無数の斬撃としてギャングの子分たちを叩きのめしていく。次々と壁に叩きつけられて潰されたカエルのような悲鳴を上げて気絶していく。
それらを呆然と見て、はっと我に返ったボスがこの野郎、と違法改造を施された右腕を振りかぶる。
迫りくる巨腕に、しかし焦ることなく一刀で流しもう一刀を喉元に突きつけた。鋭い刃の先端が薄皮一枚を切り裂き血の玉がぷくりと膨らむ。ほのかに走る痛みと熱い血潮が冷え込んでいく感覚を感じ取ったのか、ごくりと生唾を飲み込みこんだ。
「これ以上踏み込むなら、斬る」
「わ、分かった……抵抗はしねぇからコレを引いてくれ」
「なら相応の態度ってもんがあるよな?」
ぐりっと刀身を捩じってみればひっと声を上げて痛みを訴える。
「分かった分かった! 抵抗も不意打ちもしねぇ! 投降する! これでいいか!?」
「ああ。もっとももう出来なくなってるだろうがな」
「へ?」
直後、ギャングたちの体が引っ張られて一か所に集められる。そのついでに全員腕が後ろ手に拘束されて動けないようにされるという細かい部分も取りこぼさない。
ちらりと背後をみやると星那があくびをしながらエーテルワイヤーを切断。こちらの視線に気が付いたのかぐっとサムズアップを向けてくる。ぐっとサムズアップを返しながらさて、と呟いて頭に向けて声をかける。
「アンタらがギャングならちょうどいい。俺らの質問に大人しく答えるならホロウの外まで連れ出してやるし、そうでないなら……分かるな?」
「ちっ、わーったよ。それで何を答えりゃいい?」
「デュカリオン。そっちの界隈なら最近話題になってんじゃないか?」
「あのヤローか。確かに話題になってるし、なんなら直接やりあったこともあるぜ」
「へえ、意外だな。どんな奴だった?」
「青くせぇ野郎だったな。俺らがホロウに落っこちた耐侵食剤やら医療物資やらを回収して売りさばいてたのをどっかから嗅ぎつけてきてな、持ち主に返せって乗り込んできたわけよ」
「さっすがデュカリオンさもがががが」
「尋問中ですのでお静かに、です」
騒ぎかけたメビナをエリーが口を塞いで下がらせる。なんだありゃと胡乱気な視線を向ける頭に手を叩いて気を取り直す。
「そのデュカリオンとどうなった?」
「どうもこうもねえな。戦い方は粗かったが、持ってる武器がクソ強くてな……ゴリ押しされてその拠点は潰されちまった」
「物資はどうなった?」
「パレットに纏めてたのを担いで持って行っちまったよ」
そこに転がってるぐらいのサイズだ、と示されたのはこの倉庫で使われていたであろう工場用の荷積みパレット。おおよそ1800mm四方のサイズだ。これに満載となるとかなりの重量になっていたはずだがデュカリオンはそれを苦にもせず運んだらしい。
「ここに来たのはその損害の補填をしたいがためか」
「ああ、だがとんだ無駄足。いや大損だな」
「ただのデマ情報だしな。元々ここにはそんな再興を狙うギャングなんて居ないし」
「チッ、デュカリオンを釣るための餌だったって事かよ」
「その通り。釣れたのは外道だったけどな」
この場合の外道は釣り用語の方な、と口添えしつつ口元に手を当てて考える。
デュカリオンはこの場に来なかったのは情報がデマだと分かっていたか、それともただの偶然か。判断するには要素が足りないと結論付けて一旦脇に置く。この際、デュカリオンと接触した経験のある相手と接触できたのはよかったと考えるべきだろう。
「デュカリオンの中の人は戦闘は出来るけど練度が高いわけじゃない、装備が高品質、怪力ってのが得られた情報か」
「TOPSの支援を受けてる誰かが新装備のテストをしつつギャング狩りしてる?」
「それなら物資はがめて懐にしまい込みそうだが……そっちの路線もあるか」
『デュカリオンがTOPSの手の者ってことですか?』
「いやそっちじゃない。物資関係でホロウに事故で飲み込まれるという事例もあるなって。大概事故の露見を恐れてインターノットで依頼を出しているがそういうのは新人プロキシぐらいしか受注しない」
「だとするなら、その情報を見てデュカリオンが来る可能性もある、と?」
「依頼発行後時間の経った依頼ならなおさら回収に来る可能性も高くなってくる」
困った相手を助けて回っているように見える相手だ。乗ってくるかどうかは分からないが、デュカリオンの行動指針が現状の情報から推察できる通りであれば考えられる可能性もある。
「デマ情報流して釣るよりはよっぽど目があるか」
「確かにデュカリオン様なら可能性はあります。人助けを良しとされてる方ですから」
「まあ人助けして見つかるほうが健全か」
肩をすくめて立ち上がる。
多少なりとも情報は手に入ったが、空振りに終わったのは残念と言わざるをえない。後ろ手に引き上げを命じると、ギャングたちに視線を向ける。
「さて、じゃあアンタたちは……」
「ま、まさか置き去りになんてこたぁ、ねえよな……?」
「するかよ。安心しろ、飯も寝床もあるところに連れてくだけだ」
「絶対治安局の留置所じゃないですかやだー!?」
いやいや期の子供張りに嫌がるギャングを連れて一行は今夜は引き上げとその場を去っていった。
「目ぼしい依頼は、無いか」
インターノットの掲示板を斜め読みしつつ呟く。授業と授業の合間の休憩時間に何か異常が起きてないかを調べていた。デュカリオンとして活動し始めて少し経ったが人命救助を優先にあちこち動き回ったせいかインターノット上でいろいろ噂になってしまっていることに気が付いた。
『デュカリオンが助けてくれた。変な防護服? 鎧? を着てたけどいい奴だったよ』
『アイツ、助けてくれたけど手数料だっつって俺の荷物奪っていきやがった! そりゃピンチになったのは事実だけどさすがにひどいぜ!』
『嘘乙。デュカリオン様は人助けに全力だからそんなチンピラみたいな真似しないし』
『信者乙。つーかこんな短期間で信者化するとかミーハーすぎんだろ』
『はー??? 一向に一介のファンですが?????? それに信者だとしてもデマ撒き野郎よりはるかに上等ですし???」
「なんか……濃い人居るな……」
応援してくれるのは嬉しいのだが、デマとはいえレスバを仕掛けるその熱量を向けられていることにちょっと引いたフレディであった。
「ん?」
携帯の画面を覗いていると、机の前に誰かが来たことに気が付いて顔を上げるとそこには飴を舐めながら真紅の目でこちらを見下ろす顔。見知った顔の同級生であり先日デュカリオンとして激情をぶつけられた相手でもある。咄嗟にぎゅっと言葉に詰まりながらも声を絞り出して、見下ろしてくる彼女に声をかける。
「な、にかな?
「……はいコレ」
机の上に置かれたのは棒付きキャンデー。彼女がよくエネルギー補給の時に口にしているメーカーのものらしい、と聞いたのはどこだったか。
机の上に置かれたそれと、彼女の顔を数回行き来してから首をひねる。
「うーん……ありがとう?」
「なんで疑問形なのさ」
「いや貰う心当たりが全くなかったからさ」
「……あー、とりあえずバイトのこと黙ってくれてるお礼ってことで」
「何か腑に落ちない言い方だな」
「でもホントだし」
前の席の椅子を引いて座ったエレン。他にも用事があるのだろうか、と手に持ったキャンディをくるくると回しながら待っていると沈黙に耐えかねたのかエレンが口を開く。
「アンタってさ、理不尽に相手に怒られたことってある?」
「え、まあ……買って一口食べた商品を、思ってた味と違うってキレて返品しようと持ち込んで来たお客さんに。一回開封した用品は返品出来ないって説明したらなおヒートアップしてさ」
「何それ、キッツ。まあ確かに思ってたサービスと違うっていう客も居るか」
「エレンもバイトしててそういうお客さんに出くわしたことあるの?」
「そっちよりは頻度は少ないだろうけどね。富裕層の人が多いからそういうみっともないことする人は少ないし」
「そっか。それでそれがどうかした?」
聞き返すと、エレンは少し体を強張らせると視線を彷徨わせてからもう一度口を開く。
「この前、仕事でヘマやらかしてさ。それでお客さんを……ええと、客に損害を出しちゃったんだ。それがその人だけじゃなく、その人と関わっていた別の人が居たんだけど、その人にも迷惑をかけたんだ」
「――――。そうか、それで?」
「最初、私はその人が客に絡んでると思って割って入ったんだけど実際は違った。むしろお客さんの方の損害に巻き込まれた人でさ、色々あってその場は解散したんだけど謝れずじまいだった」
言い回しで誤魔化しているが、何となく自分も関わっているあの日の事だと直感的に分かった。
エレンも仕事でジェディスさんの護衛をしていてそれでジェディスさんがさらわれたとなれば焦っていても仕方ないと思う。その結果、怪しかった自分に敵意を向けたことも事情を把握している今なら仕方ない事態だったろうとも思える。
「理不尽に怒られる側がどんな気持ちなのかなと、どうやって謝ればいいんだろうと思ってさ」
「そりゃまあ、いい気持ちはしないだろうな。理不尽に怒られた訳だし……どうやって謝るかは、素直に謝るしかないんじゃない?」
それに、死なせてしまったのは自分の責任でもあるから。
リンゴ味の真紅のキャンデーを手も無沙汰の手の上でコロコロと転がす。時折反射でエレンの顔を映し出すソレには自分の顔も映り込む。唇をまっすぐ引き結び、うつむきがちなその表情はわずかばかりに曇りを見せている。あの日のあの出来事は、自分の中でも――――。
「だよね。うん、それはそうだ」
「その分だと、最初っから自分の中では答えが出てたんじゃないの?」
「かもね。けど……それでも背中を押してくれてあんがと。追加でもう一つ飴あげる」
カバンに手を突っ込みもう一本飴を取り出すと手の上にぽんと置くとエレンは席を立って去っていく。恐らくまたヴィクトリア家政のバイトに行くのだろう。見送った彼女は、すこし嬉しそうに鮫の尾を揺らしていた。
「悩みの種に相談事、かぁ。かくも奇妙なお話ですねっと」
机の上に置いてある携帯のバイブに気付いて手に取ると通知に目を通す。
ふんふん、と頷きながらそして。
「よし、じゃあオレも仕事に取り掛かりますか」