ZZZ ―風雅探偵事務所―   作:舘向井雛壇

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糸巻少女は糸手繰りを学ぶ(1)

 私の名前は星那。

 苗字は無い。誕生日は7/7。年齢は……多分10歳前後。所属は今は無い。家族はお兄ちゃ、げふん。兄さんが一人。

 今は昔いた場所を離れて風雅探偵事務所というところにお世話になっている。ここの所長さんはいい人で、たまに眠れない日があるとココアを作って眠るまでお話に付き合ってくれたりする。ちょくちょくかっこつけてるのか自分の流派の技名を言いながら攻撃するのはどうかと思うけど。

 

『星那、ご飯だって』

「分かった」

 

 ベッドから身を起こすと、尻尾の汎用接続アームで器用に扉を開けた兄さんが入ってくる。いつものパーカーを羽織ってリビングに移動すると所長さんが朝食を用意して待っていた。

 

「さて、全員揃ったなら食べようか」

「いただきます」

 

 三人がそれぞれが食事の挨拶をして食べ始める。所長さんの食べるスピードは遅めだ、私みたいに全部の料理を一纏めにして一気に食べないのでそこそこ時間がかかる。ただ所長さん曰く私の食べ方が豪快過ぎるし急いで食べ過ぎだと怒られた。いつ何時何があるか分からないし、食事が横取りされるかもしれないのにそれは無いんじゃないかとも思ったが、そんなことここじゃ誰もしないと言われてからはとりあえずひとまとめにするのだけはやめた。早食いも体に悪いからやめろと口を酸っぱくして言われるけど。

 

「ごちそうさまでした」

「歯磨きもすぐにするんだよ」

「分かってるって」

 

 ここで過ごすなら守ること、と言われて渡された資料通りの身支度を整えて自室として与えられた部屋から荷物を取り上げるとリビングに戻る。

 

「じゃあ学校行ってきます」

「はい、行ってらっしゃい。今日はオムライス作っておくからなー」

「はーい」

 

 事務所から外に出ると、雲一つない青空が広がっている。かつて見た空よりも比較にならない狭くて綺麗な空。広くとも寂れたあの空よりもよほどいい。

 視線を前に戻して市街地に行くバスに飛び乗る。

 風雅探偵事務所に身を寄せてから一か月。星那は錬の助けを借りて普通の生活というものを始めていた。同い年ぐらいの子供たちの中に混ざり勉学を学び、他愛のない会話をこなし、時に共に遊ぶ友達も出来て。星那のこれまでの赤鈍色にまみれた世界とは隔絶した世界に足を踏み入れていた。

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんも楽しめたらよかったのに」

「え、星那ちゃんお兄さん居るの? どんな人?」

「え、うーん、硬い?」

「真面目ってこと? いい事じゃん」

 

 多分すれ違ってる(アンジャッシュしてる)

 クラスメイトのヒメナの問いかけに苦笑いしつつ、兄のことを思い返す。自分がブリーダー役に就任してから数年。他の兄弟たちが居た頃から比べると二人きりになって、研究所に回収されて、結局破棄されることになって逃げだして、所長に拾われて。

 

「まあ、お兄ちゃんのおかげで幸運には恵まれた、かな」

「うんうん。お兄ちゃんが持ってきてくれた幸運だよきっと!」

「そう考えたほうが気楽かもね。最近は気が緩んだみたいで事務所でゴロゴロしてるみたいだし」

「職場では働いたほうがいいんじゃないかな!?」

 

 いや働いてるからと笑いながら自らの手甲ボビンケースを撫でる。長年愛用してきた手甲も新品だったころに比べれば大分すり減ってきた。これと同じくらいの苦労を兄はしてきたはずなのだ。

 

「お礼のプレゼントの一つでも用意すべきかな」

「いいんじゃない。普段のお礼を言うのも大事ってお父さん睨みながらお母さん愚痴ってた」

「ヒメナのお父さん何やらかしたの」

「ごろごろしながら掃除してるお母さん居るの気が付かずにおならぶっかけた」

「そらキレますわ」

 

 所長さんがやらかしたら一発蹴ろう。

 そんな話は置いておいて、お礼をしようという話に戻して何がいいのかを聞いてみる。ヒメナは少し考えこんだ後、いくつか候補を挙げる。

 

「普段使いするけどそこそこの間使えるもの、かな。例えばボールペンとかの筆記用具とか」

「基本電子機器しか使わないね。筆記用具使ってるところ見たことない」

「うーん、ハンカチ!」

「仕事がきつい現場ですぐにボロボロにするから申し訳なさそうに謝ってきそうでちょっと無理かも」

「耐久性のある物の方がいいのね。私たちで買えるぐらいの腕時計とか。工事現場で使えるようなのも売ってたはず」

「うーん……使ってくれるかもだけど、必要性は薄いかも。体内時計が正確だから。秒単位で」

「と、とんでもないお兄さんなんだね……えーと、えーと……ゴメン思いつかない」

「ううん、むしろ選択肢は狭まったからありがたいよ」

「あ、そうだ。趣味とかあるならそれの助けになるものとか! 読書家なら栞をプレゼントするってよくある話だし」

 

 なるほど、趣味。

 それならよさそうかもと思って兄の趣味を考える。が、逃亡生活を続けてきた星那達が趣味に浸る時間など無かったわけで、それ以前も生活スペースは別だったから知る由もない。

 

「よし」

「決まった?」

「まずはお兄ちゃん観察からだ」

「分からなかったのね」

 

 お兄ちゃん観察頑張ってね、と応援してくれるヒメナと別れて事務所の扉をくぐる。

 ただいまー、と事務所の裏口の扉をくぐると来客スペースのほうで所長とお客さんが話をしていた。痩躯の男性がしたたる汗をハンカチで拭いながら何事かを相談していた。

 事務椅子に荷物をおいてそっと忍び足で近づくと会話が明瞭に聞こえてくる。

 

「それで、今回の依頼は縫製ショップに行われている嫌がらせへの対応ということでよろしいですか?」

「はい、治安局に届けれるほどの嫌がらせは受けていませんが、それでも最近客足が遠のき始めていますので……犯人の特定と再発防止のために当人に事情を聞きたいのです」

「分かりました。ではまずは犯人の特定から始めていきます」

「よろしくお願いします」

 

 そう言って依頼人は席を立つといそいそと事務所を出ていった。

 見送りを終えた所長は、さてと一息つくと星那の方を振り返る。

 

「お帰り。何か用事でもあったか?」

「んーん。お客さん来てたみたいだから静かにしてた」

「お、偉いじゃないか。そうやって人の事やその場の事情を察することが出来るのは素晴らしいことだ」

「困ってる人を助けるのが所長の仕事だから、その邪魔しちゃ悪いと思って」

「それでも立派だぞ、星那」

 

 ココアでも飲むか? と聞かれて頷く。所長の淹れてくれるココアは手がかかっているのでとても美味しい。飲めるチャンスは逃したくない。

 

「さっきの依頼人さん、どういう依頼だったの?」

「自営業の縫製店の店長さんなんだが、最近色々嫌がらせを受けているらしい。店の前にゴミを散らかされたり、SNSのレビューを荒らされたり……それが原因で周りからも距離を置かれて困ってるから犯人を特定して止めてほしいとのことだ」

「調べれるの?」

「時間はかかるけど、な。ゴミの日近辺で見張りして現場を押さえるところからかな。ソーマに協力してもらって店の周囲を監視するつもりだ」

「あ、そのお兄ちゃんのことなんだけど」

「うん?」

 

 ヒメナと話していたことを相談すると、所長は少し考えこむといくつかの案を教えてくれた。

 例えば全身清掃。ソーマのボディは柔軟性を持たせるために細かい隙間が多く、そこに柔軟なカバーを付けることでゴミが入り込むことを防いでいるがすべては防ぎきれないために時折カバーを取り外して清掃を行う。その時に普段以上の力を入れて念入りに掃除する・

 例えば暇つぶしの娯楽の提供。ソーマは仕事が無い日は基本的に寝て過ごすことでエネルギー消費を抑えているらしい。空気中のエーテルを取込むことで内部のエーテル機関を動かし自家発電している。しかしホロウの外だと極端に効率が悪くなるために外部から電力を供給する。しかしこれがそこそこ大きい消費量になるためにソーマは無駄遣いしないように機能のほとんどをオフラインにして隅で小さくなって消費電力を小さくしている。

 これが所長にとっては気遣ってくれるのはありがたいが、孤独に過ごさせてしまっているようで申し訳なく思えるので何か娯楽を提供するのはどうか、と思ったそうだ」

 

「娯楽……見たことないけど、映画とか? ビデオってのがあるんでしょ」

「ビデオか。確かにそれなら動かないでも見るだけだから今とさほど行動パターン変えずに済むかもな。ビデオデッキならうちにもあるし……映画とかならレンタルビデオショップに行けば借りられる」

「じゃあソレ! 借りに行きたい!」

「分かった。なら今度の休日にでも行くか……あ、そうだ」

 

 いいこと思いついた、と所長がぽんと手を打つ。

 首をかしげる星那に所長はもう一つ提案があるんだけど、と言って内容を語って見せる。その内容を聞いていくうちに星那は少しだけ考えてすぐに頷いた。その提案は、星那にとって非常にメリットのあるものだったから。

 

 

 

 

 

 

 

 かくして星那は、縫製店の針子としてお店の作業室で作業に取り組んでいた。

 周りには針子として雇われたそこそこに歳を召したおば様方がせかせかとミシンを使って切り出された布地を縫い合わせて服を作り上げていく。その中に混じって星那はミシンを使って小物グッズの縫いつけ作業を行っていた。

 

「星那ちゃんってホント糸の取り扱いが上手ね~。あっという間に二日三日分の製造ノルマこなしちゃうし」

「そうそう。ちょっと教えたらとっても飲み込みもよくっていろんな縫い方覚えちゃうし」

「ありがとうございます、おばさま方の教え方が良かったんですよ。色々難しいところも丁寧に教えてくれましたし」

「あらやだこの子ったら! 褒めてもべっこう飴ぐらいしか出ないわよ!」

「そうそう、このタフなグミぐらいしか……!」

 

 それ子供に食べさせるには固くない? とか言いあうおばさま方に苦笑しつつまた一つきんちゃく袋を作り上げると店先に出す籠に置く。数日分のノルマをこなしたことでそろそろ他の仕事の手伝いにも入ろうかと思う。

 

「今片付けれそうな仕事は片付け終えたんですけど、何か手伝う事ありますか?」

「いいの? じゃあそうね、布地の切れ端の回収をお願いしていいかしら。そろそろ搬出の頃合いだし」

「分かりました」

 

 各作業用机の横にはゴミ箱が置かれておりそこには切り出した布地の切れ端が捨てられている。星那は知らなかったがこういった布地の切れ端は工場で清掃用のウエスというものに使われたりするそうだ。

 星那は布地を回収しながら耳を澄ませる。作業中のおばさま方は手は動かせど口は空いているので噂話などに余念がない。どこそこの夫婦が喧嘩しているとか、どっかの家の息子さんがいい大学に進学したとか、それに比べてうちの子はとか、最近の食品の値上がりだとか、色々な話を絶えずしている。

 

(……うーん、どれか分からないけど、所長さんが()()()()()()()()判断は任せよう)

 

 星那が任されたのは縫製ショップのバイトとして潜入し、店内の噂話を拾い集めてくることだった。ただ情報の選別は難しいので録音してポケットの録音媒体に保存されている。

 長く戦場に居た星那の判断基準はあてにならないのでそういうことになった。ただ星那の感覚的に店内の人員で嫌がらせをしそうな人物はいないように思える。店長への愚痴はほぼなく、各店員にも個別に相談に乗ったりしてケアを怠っている様子もない。

 

(悪感情を覗かせる人も居ない。外部犯が濃厚のように思える)

 

 どれだけ隠しても悪感情があればわずかばかりの兆候のような反応を見せる。そう所長は言った。視線、声音、体の所作、呼吸間隔、何かしらに変化があるはずだからよく観察すれば分かると言われたけど、星那には正直分からなかったのでとりあえず露骨な反応を示す人は居なかった、程度の感覚だ。

 

「そう言えば、前に面接に来た時に店の前が荒らされてたんですけど、あの時って何かあったんですか?」

「ああ、アレね。どこの誰かは分からないんだけど、店の周りを荒らす人が居るのよ。ちょっと前なんてゴキブリを店の中に撒かれて駆除するのに手間取ったわ」

「そうそう。アルビナさんが見つけ次第潰して回ってくれたから割とすぐに片付いたけどその後に除虫薬を焚かないといけなくなったり大変だったわ」

「そんな騒ぎが結構な頻度で起こるもんだからお客さんも離れちゃってね……店長さんも悩んでたわ」

「へえ……」

(ここは依頼とは大きな齟齬は無し、と。嫌がらせ犯がやったと確定したのだけ所長さんに話したと見ればおかしくない話だし)

 

 頭の中のメモ帳に記録を残しつつ、件のアルビナという人を探してみるべきか。悪戯の対処にあたった人ならもしかしたら何か見ているかもしれない。

 

「うーん、しかし……悪戯なら何が目的で悪戯してるんだろ。地上げ?」

 

 何で悪戯をするのか、そう言えばそこが分かっていなかったなと思いつつ布の切れ端を回収し終えると指定された回収場所に持っていく。よいしょ、と裏口を開けて外に出るともわっとした熱さが肌を撫でた。何だろうと思いながら回収箱のほうを見ると煌々と燃え上がる火柱。

 一旦目をごしごしと擦ってからもう一度回収箱を見る。火の勢いが強くなってた。

 

「火事ーーーーーーっ!?」

『なんですってぇ!?』

 

 店の奥から聞こえてくるおばさま方の声。慌てて回収した布地は引火しないように店の中に戻して消火器を探す。

 幸い出入り口の傍に置いてあったのでそれを取り上げるとホースの先端を燃え上がる炎に向けて消化器のピンを思い切り引き抜く。堰を切ったように白い粉が噴出口から吐き出され火災の根元に吹き付けていく。

 その間にやってきたおばさま方は火柱を見るとあわてて「ホース、バケツ、水ー!」と叫んで店の中に取って返していく。そしてすぐに戻ってくると水を貯めこんだバケツやら水道口にホースを挿して持ってきたりびしょびしょに濡らした布を持ってきたりと援軍にやってきてくれた。

 十数分後、火の勢いも止まり大方沈黙したところで防災局の消火チームも到着して現場の完全鎮火までをしてくれた。

 

「すっごい焦った……」

「外に出ていきなり火柱だもんね……よく頑張ったね、星那ちゃん」

 

 大丈夫だからね~、と言ってくれるおばさんに頷きつつ、消火現場をじっくり観察してみる。煤けた地面に消火剤や水がぶちまけられており、その上から多くの人が行きかったために足跡が残されている。その中に人の靴とは違う小さい丸い形状の足跡が残されている。

 

「おばさん、消防隊の人たちにボンプ混じってたかな?」

「うん? いや、見てないね。ショウボウボンプは居なかったと思うけど」

 

 考え込むように唸るおばさんに、そっかと言って空を見上げた星那はワイヤーを操作してソーマにメッセージを送る。

 

「現場検証もあると思うし、邪魔になるだろうから店に戻ろ、リーおばさん」

「んむ、そうだね。戻ろうか。しっかし、星那ちゃんはしっかりしてるねぇ」

「いやいや、切り替えが早いだけだから」

 

 パタンと閉じた店の扉。

 その前に音もなく着地したソーマは、貰ったメッセージ通りの行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

「ああ、お帰り、星那。お疲れさんだったね」

 

 事務所に戻ると所長がフライパン片手に出迎えてくれる。匂いからしてパンケーキの類でも焼いているのだろうか。

 

「パンケーキ?」

「正解。星那も食べる?」

「食べる」

「じゃ、手を洗っておいで」

「はーい」

 

 洗面所で手を洗い、戻ってくると、玄関を開けてソーマも戻ってきて所の様だった。

 

「お帰り、お兄ちゃん」

『ただいま、星那。頼まれた件はこなしといたよ』

「ん、ありがと」

「ソーマに何か頼んだのか?」

「放火現場に変な足跡があったから追っかけてもらったの」

「放火?」

 

 パンケーキを皿に盛りつけて机に運んできた所長が首をかしげる。

 事の経緯を話すと、顎に手を当ててなるほど呟いてソーマの方を向くと報告を促す。ソーマもうなずいて壁に映像を投射する。そこに映っていたのは白い外装に赤い目をしたボロボロのボンプとウサギ形のぬいぐるみのような見た目をした小型ロボット。

 

「1ディニー型のボンプか」

『知ってるんですか?』

「ヤヌス区でたまに見る野良ボンプの同型だ。ちなみに1ディニーボンプ当人は自分を撫でさせて報酬として1ディニーを要求してくる」

「えっと、可愛さの押し売りボンプってこと?」

「まあそう。元はどこかの持ちボンプだったんだろうが、論理回路の故障か捨てられたかで野良化したか……まあそれは置いといて。1ディニー型ボンプがどうしたんだ」

 

 錬に話を戻され、ソーマは映像を再開する。

 ボンプはルミナスクエアの路地裏を進んでいくとどこかの路地裏で立ち止まるとしばらく待つ。やがて路地裏の奥から人がやってくる。何事かを話した後、ボンプに何かを渡して男は消えた。

 

「このボンプは?」

『確保して映像データを抜きました。後で記憶媒体に出力しますね』

「頼む。何を取引していたかはわかるか?」

『騒ぎの現場を見てきてくれ、とだけ頼まれたようで、その視野・聴覚データを渡したらしいです』

「野次馬だけをしろ、か」

 

 野良のボンプは劣化した状態になりがちで、スクラップからサルベージした機器を使いまわすなど悲惨な状況に追い込まれている。それゆえ新しいパーツを買って何とか延命を図っていることが多く、そのために小金で何かを頼まれると断らずに受け入れたりする事例が往々にしてある。今回のような違法でもないことは躊躇わずやるだろう。

 

「この男の顔写真をトリミングできるか?」

『画角的に厳しいですが、なんとか。ただ画質は荒くなりますよ?』

「問題ない。最低限特徴さえわかればそれでいい」

「あ、所長。これ私の分の記録。こっちも見といて」

「ああ、分かった。目を通しておくよ」

「それよりパンケーキ。パンケーキを要求する」

「分かった分かった、これ食べていいから」

 

 手つかずで置いてあった所長のパンケーキを貰い受けてもぐもぐと食べる。

 所長はタブレットで纏められているソーマの情報と生データをそのままぶち込んだ星那の情報を整理しながら難しい顔をしている。咀嚼しているパンケーキを飲み込んでふと疑問に思ったことを星那は聞いてみた。

 

「所長、この案件の犯人って何が目的なのかな」

「目的、か。そうだな……今までが嫌がらせで済んでいたのが今回いきなり放火という手荒な手段を選んだ。このことから店長が俺に依頼したことを把握出来る人間が犯人と推測出来る。自分のやったことがバレると焦ったんだろうな。そこから考えると、嫌がらせがバレるとマズイ奴が、店長の店を邪魔に思ってあの店を潰そうとしているんじゃないか、というのが今のところ数ある推測の中で高い可能性だ」

「……?」

「連想ゲームみたいなものだよ、星那。スタートラインは店長が嫌がらせを受けている。ならそこから考えられるのは誰が嫌がらせしたか(犯人)嫌がらせされた理由は何か(動機)嫌がらせしてどうしたいか(目的)どうやって嫌がらせしたか(手法)。ざっくりこの四つ。今回星那には内部に入り込んで動機を探ってもらった、ソーマには周囲を監視して手法を、俺は店長が調べて嫌がらせ()()()ような目的を調べていた」

 

 脇に置かれたファイルの表紙に手を置いて錬は語る。

 

「9割がたは無駄な情報になるだろうが、調べて損はない」

「別のパターンの想定が出来るから?」

「いや、パターンの枝葉を切り落とせるからだ。結局のところ真実は複数あれど、事実は一つ。ひたすら余分をそぎ落とせば事実だけが残るんだ」

「クロスチェックってやつだね」

「その通り」

 

 まあこれが腐ると前の奴が確認したからヨシ! とか発生し始めるんだがな、と錬は笑う。

 

「依頼人が抱える問題を解決するのが探偵の本懐だ。その為なら必要なことはきちんとやる。俺はそう言う探偵でありたいと思ってるよ」

「そっか」

「……せっかくかっこよく決めたんだからもうちょいあっても良くない?」

『所長も案外欲しがりさんですね』

 

 誰かのために、正しい自分でありたい。そう語るあなたの姿は、尊敬できるものです。

 そんな言葉は内心に納めて星那はクスリと笑う。

 星那の様子は露知らず、錬の手元のタブレットが通知音を鳴らしたことに気が付き、目を通し始める。

 

「さて、と。必要な情報(ピース)も届いたし……小生意気な後輩に手伝ってもらうとするか」




ソーマ
所属:風雅探偵事務所(仮)
性別:無(自認は男性)
誕生日:7月7日
体高:80㎝
使用武装:装甲破砕自動刃「ホルソー」
属性/タイプ:物理/撃破
備考
風雅探偵事務所の探偵犬ならぬ探偵狼。論理コアを保有し、あくまで実験中の仮テストではあるが禁断の果実テストもパスしている。
普段は事務所の隅で最低限の機能のみを維持してスリープモードで省エネ化を図っている。星那が外出する際はビルの屋上を飛び回りながら彼女の護衛も果たしている。
最近は映画趣味が出来たようだ。


ある狼のシリオン
「種も姿も違いますが、彼の忠を尽くす姿には敬意を払わざるを得ないかと。一念岩をも徹すとは言いますが、妹のためにと働く彼のための言葉でしょう」
特撮好きの知性機械人
「スターライトナイトほどじゃねーが好きな作品があってな、それに出てくるかっこいい主人公の相棒が居るんだがそいつにそっくりなんだ。案外、ボディを作った奴がそういうの好きな奴だったり?」
とある機関の研究員
「……ま、好きにするがいいさ。俺は好きにしたからな、人のことはあれこれ言えんよ」
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