ソーマは斥候として進行ルートの確認を行っている。
ホロウ内部はエーテルによって常に侵食されている状態にある。以前は使えたルートも侵食で朽ちたことで崩落して使えないこともしばしばだ。よって身軽なソーマが先んじて状況を確認することで時間のロスを最小限にとどめようという話になった。
(気を使わせたかな)
理由に嘘は無いだろう。しかし同時にあのミザリーという研究員に抱く確執の想いも見抜かれている。だから極力接触を避けられるこの役割を任せられたのだろう。
『ああ、崩れてるな』
下水道のルートを使っているが、地図に示されたルート上に人が通れない崩落が起きていた。ソーマだけなら越えられるかもしれないが依頼人のミザリーなどは乗り越えるのは難しいだろう。
踵をかえして後ろをついてきていた所長たちの隊列に戻る。進行ルートの崩落を告げられた
『何か?』
「何でもないわ。……ううん、そうね、聞きたいことがあるの」
聞きたいこと、一体なんだろうか。彼女のことはあまり知らない。ただ、星那にひどいことをした研究員とかつては同じ立場に会ったことだけは知っている。だから自分は今も彼女を警戒しているし、星那も普段の人懐っこさを隠してしまっている。ソーマにとってそれはとても嫌な事だった。
「あなた達は、自分たちを生み出した人の事をどう思っているの?」
『おぞましい。人のことを好き勝手に生み出しておいて要らなくなったらあっさり捨てる、賢しいフリをして好き勝手にレッテルを貼るクズ』
「1を聞いて100を知るってこういう事かしら……」
飛んできた言葉のエッジの効き方にミザリーが冷や汗を流す。あまりにも憎悪がこもった言葉に当事者ならずとも背筋が冷えた。ソーマは意識して言葉の圧を低くしながら冷静に話そうと努める。
『
「そうね。旧都陥落はきっかけで、それで理性の箍が外れた人、食うに困って違法研究に手を出した人、元からそうだった人……結局は選んだのは私たち自身だものね」
落石に腰かけて語るミザリーに、ソーマは頭に血が上りそうになる。その結果生まれたのが、選ぶ選択肢すらなかった捨てられた自分たち。死んでいくしかなかった自分の兄弟たち。
「それが嫌になって逃げだした。辛い現実に立ち向かう図太さが無いのに生き残ってしまった。けどそうなれたらどれだけいいか。そう思ってそういう人たちが居る郊外へ行こうと思ったのよ」
『あなたは何を研究していたんですか?』
「ホロウに適応する生物についての生物工学とホロウでも使える設備を研究する機械工学よ。旧都の頃は実験用のマウス相手にやってたんだけどね……日銭のために身を差し出す母体なんていくらでも居たのよ」
実験で辛い目に遭って、それでも生まれてきた子を幸せそうにあやすお母さんが居た。
『よし、ルートの再検証が終わったよ!』
「休憩は終わりみたいね。また先導をお願いするわ、ソーマくん」
『……はい』
彼女の元を離れてパエトーンから受け取ったルートを辿り始める。
外道しかいないと思っていた中にまだ人間らしい感性を持つ人が居た。それについてどう思えばいいかは分からない。間違いなく違法な研究をしていてろくでもない人なのは違えようがない、だがそれを捨てて別の道を歩もうとしているなら許すべきなのか。
(分からない。分からないならどうする)
ホロウを進む行程はトラブルに見舞われながらも進行していく。
その中でソーマは何度か彼女と言葉を交わして、彼女の人となりを知っていく。犯した罪を抜きにすれば、なんてことはない普通の女性なのだろう。ラーメンが好きで、休日は食べ歩きをしていたらしい。友人とバンドのライブに行ったり、映画を見に行ったり、スーパーの特売に買い込みに行ったり。ただただ平凡な人生を歩む女性だ。
そんな普通の女性だから目の前の現実に押しつぶされて、外道へ落ちてしまったのだろうか。苛烈な運命に吹き飛ばされるぐらいの、ささいな人。
『所長が助けたいって人は、ああいう人なんだろうか』
地下から上がり、地上のルートを調べ始める。
下水道のルートは郊外へは繋がっていない。ここから先は地上を進んでいくしかない。パエトーンは最短ルートをはじき出してデータを送ってくれたが今のところ支障なく進むことが出来ている。エーテリアスを排除しながら中継地点までルートが繋がっていることを確認したところで足を止める。
『ここまでは問題無いな』
システムにアクセスして稼働状態に問題が無いことを確認したところで一旦戻ろうと踵をかえす。
その時、視界上にポン、といきなりシステムの通知ポップアップウィンドウが表示される。『Connect Request』――――――自身の管理システムへのアクセス申請。
『――――――!?』
咄嗟に申請を弾いてその場から全力で離脱を図る。
地面を蹴り、急加速。嫌な感覚が全身を這いまわり嫌な予感を植え付けてくる。一刻も早くこの場を離れなければならないという確信だけがソーマを突き動かし、結果的に彼を救った。直前まで自分が居たところをビルから飛び降りてきた"何か"の刃がソーマの体があったところを通り過ぎる。
「おおっと、避けたか」
「ごめんごめん、ちょっとタイミング早かったかも」
「頼むぜ、
『
斬りかかってきた男ともう一人、
「
『モデル・ブリーダー……星那が最後の製造だったはずなのに』
「あなた達が変に実績作っちゃったからね」
くすくすと笑いながら、少女はそっと手を上げる。直後、周囲から数多の駆動音が響きながらいくつもの無人機が姿を現す。ソーマは今まさにかつての自分が居た風景を、反対側から見せつけられている。
だが感慨にふけっている暇はない。ここから離脱して、情報を奪われるのを阻止しなければならない。各所のアクチュエータと武装を励起し戦闘に備えて構える。
『ミザリーさんを狙うのは分かるが、他はどうするつもりだ……!』
「お姉ちゃんのこと? 連れ戻すか、そうじゃなければ処分だね。分かり切ってるでしょ、あなたなら?」
「プロキシも居るだろうからそっちはその場で処分だな。こっちの顔を見られるだろうし、口封じは必須だな」
30代前半と思しき男はそうこぼした。
爪牙を赤熱させ、尾のチェンソーをぶん回す。銃器の
「やるつもりみたいだな」
「お姉ちゃんのワンちゃんだけど、身内ならちゃんと躾てあげないとだね」
『言ってろ。こちらはとうに一介の野良犬だッ!!』
地を蹴り、手近な無人機の間合いに踏み込む。牽制の弾丸を回避しつつ赤熱した爪が関節のシャフトを溶断、膝がくずおれたところをコアから伸びる信号線目掛けてチェンソーを振り抜く。無人機は甲高い電子音を奏でながら、しかしすぐに沈黙する。
だがその間に他のユニットが援護に入ってきている。こちらをロックオンして電磁砲を放とうとするユニット、しかし最初のユニットを隠れ蓑にして同士討ちを防ぐセーフティを誤認させて止まったところを素早く切り返して襲い掛かる。
「経験値が段違いだな。自分の長所と知識を使って効率的に狩ってやがる」
「専属ユニットがお高い理由が分かるよ」
連れてきたユニットの不甲斐なさを見かねた陽那がボビンケースを一振りすると倒れ込んでいる一機目が再起動を果たす。陽那たちブリーダーモデルは"犬"たちの司令塔であり、同時に応急的処置を施せる
「けどアレだって安くないんだから働いてよ、飛」
「おっと藪蛇だったか。まあ御賃金分ぐらいは働くか」
「最初から働いてよね」
「だから不意打ちは俺がやったろーが」
剣を鞘から引き抜きながら面倒くさそうに、しかし楽しそうに男は笑う。無人機相手に移動しながら戦うソーマは剣を片手に近づいてくる男にすぐに気づいた。気だるげな様子だが剣を片手に戦意を見せている以上敵だ。銃身をそちらに向けて発砲する。
「おおっと、視野が広いねぇ」
『邪魔だ……!』
「君をとっ捕まえるのがおじさんの仕事な訳よ」
男が剣を構える。途端、不可視の圧のような物がソーマにかかる。物理的な力ではない、ただただ男の存在感、あるいは気迫のような物がソーマに向けられてそれが圧力として感覚に出力されているのだ。多少なりとも目を離せば途端に切り捨ててくる。ソーマはそれが妄想などではなく実際に起きうる未来として確信した、
復活してくる無人機はワイヤーをチェンソーで斬り捨てて即座に行動不能に戻しながらセンサーのキャパの一部を常に男に向けている。そのセンサーの先にいる男はゆったりと剣を構えると言葉を紡ぐ。
「一刀抜剣、初撃シーケンス・セヴァランス一式」
『――――なんだって?』
咄嗟にチェンソーが来るであろう剣の軌道に割り込ませて、
「うん? セヴァランス剣術を知ってんのかお前」
すぐに二発目の攻撃を振りかぶる男。
チェンソーが付いている尾がしなりながら剣戟を弾いていく。それで何かを確信したのか、飛と呼ばれた男はにやにやと笑いだす。
「ガキが一人で生きていける訳無いと思ったが、そうか! お前、
『うる、さいっ!!』
穏やかなあの探偵の振るう剣と、目の前の気だるげな剣がダブる。一刀と二刀の違いはあれど、まさしく同じ系統の動きだと自分のセンサーはたやすく理解してしまう。男が気安く呼ぶ恩人の呼び名も癇に障る。苛立たし気に放った銃弾は男を遠ざける。
距離を置いた男は面白がるような笑みを浮かべながら、顎を撫でる。
「そうか、錬坊がなぁ。出来の悪い弟分だが、そうか、この件に首を突っ込んでいたか」
『人斬り風情が、あの人の事を知った風に口を利くな!』
「知ってるから利いてんだよ。甘い奴だとは思ったが地雷と一目でわかる迷子と野良犬を抱え込むほどとは、馬鹿な奴だ」
『黙れっ!!』
「はい、隙が出来ましたと」
『っ!!』
ワイヤーが飛んできて、全身に絡みつく。チェンソーで何十本かは弾けたものの、しかし全方位から襲ってくるワイヤーをチェンソー一本では捌ききれない。
全身を縛り上げられて地面に体を縫い付けられる。モーターを最大負荷で動かして拘束を外そうとするが、二脚の無人機が傍に現れ、ソーマの体に蹴りを入れて離脱を阻害する。
『がっ……』
「挑発に乗るような人格があるのはいただけないなー。回収したら人格消して人形にしたほうが良さそう。けどまずは情報を抜かないとね」
牙も爪もチェンソーも、刃を避けるようにまとわりついているためにワイヤーを切り裂くことは出来ない。近づいてくる少女に毅然とした視線を向けるしか出来ることはない。通信は星那達の居場所を知らせることになってしまうので端から切っている。
陽那のワイヤーが自身の接続口に迫ってくる。遠隔接続は弾けたが、直挿しの場合は無理矢理セキュリティを破られるかもしれない。だがそれでも最後まで時間を稼ごうと心に決める。そしてワイヤーが差込口に――――――。
「陽那!」
「――――――!」
陽那に、飛に、二つの影が襲い掛かる。
陽那のワイヤーが別のワイヤーに縛り上げられる。直後、そのワイヤーが火花を上げると陽那は痛みに悲鳴を上げる。
飛の背後に現れた影は、低い位置からの切り上げを放つ。剣を咄嗟に挟み込み防御するが、防いだ斬撃に隠れたもう一つの斬撃が飛の太ももに浅からぬ傷を与える。しかし飛はそれに構わず悲鳴を上げた陽那の身柄を確保すると無人機の傍まで下がる。
『星那、所長』
「お待たせ、お兄ちゃん。ろくでもなさそうな状況だね」
「すまんな、こっちの襲撃に気付くのに遅れてしまった」
びっと剣を振るって付いた血を払いながらもその視線は飛に向けられたままだ。険しいその顔は今までよりよほど強張っている。
「懐かしい顔だな、兄弟子」
「まったくだ。で、何しやがった?」
「DDOSみたいなもんだよ、くだらないインターノットの書込み数億レスを纏めて脳にぶち込んだ。脳が処理しきれなくなって気絶しただけだから放っておけば目を覚ますよ」
「なるほどねぇ」
星那の回答に、陽那を抱え上げる飛は納得したように剣を納める。
「ま、裏切り者一人消すのに陽那を失うのは手痛いし、こっちはこれで引くさ。郊外に引っ込んで何もしないならこっちも手を引くとミザリーに伝えろ」
「いいのか、雇われが勝手に判断して」
「別に確実に仕留めろと言われた訳でも無し、お前とやるにも分が悪い。日を改めることにするさ」
「一生面を見せるな」
「兄弟子に対して酷いいいようだな、まあ仕方のないことではあるが」
くつくつと笑いをかみ殺す飛に向ける錬の視線は冷たいを通り越して視線だけで殺せそうなレベルだ。そんな視線を向けられても飛は微動だにすることもなく手元の装置を弄ると無人機を帰投させ始める。自分も立ち去ろうと踵をかえした所で、ああ、そうだ、と口を開く。
「そういえばお前、まだ二刀なのか。いい加減へそを曲げるのはやめたらどうだ」
回答は無言の斬撃だった。
一足飛びの踏み込みの斬撃は、しかしそれを予測していた飛が容易く回避して逃げおおせる。ずり落ちそうになる陽那の体を抱えなおした上で錬に笑いかける。
「いーい剣気だ。次に会うのが楽しみなってきたな」
「……失せろ」
「へいへい、じゃあな。ソッチの凶星たちもまたな。この分ならまた面を合わせる機会もあるだろ」
「二度と来んな加齢臭おじさんー!」
ちょっと傷ついたような表情を見せつつ、飛は去っていった。
その場に残った三人は、しばらく警戒していたがやがて最低限の警戒までレベルをおとしてため込んでいた息を吐き出した。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
『手傷は負ってないから大丈夫。かすり傷はワイヤー貰ったから装甲はあとで要チェックかも』
「分かった……で、なんでこっちに居る訳?」
『うっ』
一安心、といったところでジト目になった星那からの追及が始まる。錬に助けを求めて視線を向けるが、ため息を吐いてそっぽを向く。
「言っとくけど所長も私も怒ってるんだからね? 通信も切って一人で囮になりに行って……心配、したんだからね?」
ぎゅう、と抱き着いてくる星那にソーマは何か言葉をかけようとうんと考えるが、結局何も思い浮かばないまま大人しく抱きしめられることを受け入れた。
これもまたあのころとは違う部分だと思う。補充が効く道具で、居なくなることが当たり前で、何故か生き残り続けただけ自分。単なる群体の内の一だった自分が、個としての自分になって人に思われる。そして新しい居場所を手に入れて穏やかな日常を過ごすことが出来て。
(機械知能人でもほんとに成長できるものなんだね、
そうしてしばらくの後、星那が落ち着いたところで三人はその場を離れて元のルートへと戻ってきた。
無人機たちに見つからないように隠れていたパエトーンとミザリーと合流して、再び郊外への道を進み始めた。今度は全員同時に移動することで襲撃に備えながら。その道中でソーマはミザリーと再び会話を交わしていた。
『ミザリーさん、ごめんなさい』
「ええと、何がかしら。謝ってもらうようなことはされてないと思うのだけど」
『初対面の相手に嫌悪感を露わにするのは失礼だと思って。貴女を見ずに、貴女のかつての立ち位置で貴女を見ていたから』
「それは……仕方のないことだわ。立場や役職はその人に与えられるラベルだけど、そのラベルを受け入れて自分に貼りつけたのは自分自身だもの。そういった物の見方は、正しくはないのかもしれないけど間違いでもないと思うの」
『立場で人を見ること、がですか?』
「ええ。立場が人を作るという言葉があるくらいには環境が人に与える影響は大きいもの。でもソーマくん、君はそれを正しいと思わず改めると言った。きっとそれは、貴方の中によりよい価値観を育て上げるための苗となると思うの。"真実"を見極める、優秀な探偵さんの、ね?」
『それは……嬉しいかもしれません。まだまだ新しい環境に馴染もうとしていますが、所長は尊敬出来ますから』
そう言うとミザリーは驚いたように目を丸くした後、くすくすと笑いだした。
『何かおかしいことを言いましたか?』
「いいえ、ただ……優秀な探偵って言ってすぐに風雅さんの名前が出てくるなんて、本当にいい関係が築けてるのねって」
『……あー……、本人には内緒でお願いします』
「ええ、約束するわ」
会話はそこで終わって、一行はホロウの出口に到着した。ホロウの外に通じる裂け目の前で、ミザリーとはここで分かれることになる。この後は錬がホロウの外に彼女を連れ出して外で待っている予定の羊飼いと合流して彼に引き渡す予定になっている。
「ここまで連れてきていただきありがとうございました、皆さん。この御恩は忘れません」
『ボクたちは依頼された相応の働きをしたまでさ。恩に感じず、これからは自由に生きるといいと思うよ』
『むしろ、今回引き当てた因縁は偶然とはいえ主要因は僕たちですから。もう狙わないという言質もありますし、ゆっくり過ごしてください』
「この度は私の妹がとんだご迷惑を……」
「それを言うならあの愚兄弟子が一番迷惑だったろうよ。あの人斬りクソ野郎が……」
ずもも、と錬から溢れてくる不穏な気配に隣のミザリーはたじろぎつつもこほんと一つ咳払いするとソーマの前に来てそっと視線を合わせるためにしゃがみ込む。
「ソーマくん、もし体に異常があったら私を訪ねてきて。今後は郊外で生身の人、機械人問わず医者をやろうと思っているから、何かあった時、君たちのかかりつけ医になるから」
『えっ、あー……助かります』
「あ、これは罪滅ぼしではなく、君への恩返しだからね」
「え、所長、これお兄ちゃんモテてる? もしかしなくてもモテてる?」
「はーい星那は静かにしてようねー」
口をふさがれて下がらされる星那に苦笑いしてミザリーは荷物を抱えて立ち上がった。
「これからは私は私として自分の道を選ぶわ、これまでの流される私じゃなくて、納得できる選択をする私として。……風雅所長、行きましょうか」
「承知しました。じゃ、行ってくるよ」
そうして二人は空間の裂け目の向こう側に消えていった。それを見送った一行は、すこしだけ寂しい空気になりつつも気を取り直す。
『パエトーンさんたちはこの後どうするんですか?』
『君たちの帰り道に同行させてもらって、外へ出たら家に戻るよ』
「そっか。じゃあもう少しだけ旅の仲間だ」
嬉しそうに笑う星那。その顔を見て少し前に見た星那の妹にあたる陽那の姿を思い出す。自分たちがいた研究所はとうに壊してる。けれどその遺産は他の研究に引き継がれた。そしてそれは亡霊のように自分たちへと牙を剥く。ありえる可能性として考えていた、だが現実となって襲ってきた以上、対抗する必要がある。
(まあでも、今は頼れる仲間が居る。だからきっと、どうにかなるか)
「……? お兄ちゃん、今笑った?」
『いいや? 全然?』
「いーや、笑ったね! 私が二重飛びしようとして失敗したの見て絶対笑った!」
『うーん、本当に仲のいい兄妹だ』
苦笑するパエトーンと、ミザリーを送り届けて戻ってきた錬。怒る星那に揺さぶられるソーマ。
先行きは不透明だけど、それでもソーマはそれが不安にならないぐらい今を楽しんでいた。