逆行幽霊化ヴィラン連合と霊視少年のヒーローアカデミア   作:幽霊ヒーロー

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入学試験と幽霊ヴィランたち

 

 国立雄英高等学校試験日、敷地内にて。一人の少年が試験会場に向けて歩みを進めていた。

 

「いやー遂に試験かー」

「まあこんなもん前提条件に過ぎないしな。楽にいきゃいいだろ」

「そうだな!お前なら楽に受かる!いや最大限注意しろよ!」

「そうだね。あんまり気にするのも俺らしくないし」

 

 彼は耳に携帯を当てながら通話している風を装って彼のすぐそばに浮かぶ幽霊たちと会話をしながら歩いていた。

 

「私たちが指導しましたからね。実技はよゆーですよ」

「そうね。まあ筆記は自力で何とかしてもらわないといけないんだけど……」

「強司ならばそこは心配ないでしょう」

「筆記試験の方はたっぷり対策してきたしね。そんなことで落ちるのはやだし」

 

 彼が引き連れる死者は八人。皆いずれも本来悪名高いヴィランとして活動しているはずだった面々である。

 

「俺の個性はこういう時に役に立たないからな……」

「そもそもお前生前から個性で活躍したことないだろ」

「あんまり喧嘩はしないでよ」

「よくあるおしゃべりさ。君は気にしなくても大丈夫だよ」

 

 彼らの特徴は話した順に、白髪の男、全身をラバースーツで包んだ者、クリーム色の髪をお団子状にまとめた少女、ガタイのいいサングラスをかけた男、全身を黒いモヤが覆う人物、トカゲのような風貌の男、氷色の髪を持ち全身が火傷痕で覆われた男性、仮面にシルクハット、トレンチコートを身に着けた人物、である。

 

「カンニングはしなくてもいいんだな?」

「本当にヤバそうだったらサイン送るからその時はよろしく」

 

 違法行為の相談を堂々としている時点で正義の行いからは程遠い気がするが、彼はこれでもヒーロー科を受験する正義の味方を志している人物である。

 

「……」

「ん?どうしたの?」

「なに、知ってる顔がいただけだ」

 

 こうして彼らは、毎年多くの者が挑み敗れる激戦区に足を踏み入れる。

 そんな状況下にあっても彼らは、合格の未来しか見据えていなかった。

 

 

 

 

 

 

「あー終わった。わりとどうにかなったなぁ。やっぱ黒霧さんのおかげかな」

「いえ、強司の力だと思いますよ。私はあくまで力添えをしたに過ぎません」

「そうかなぁ。それにしてもみんな会場を飛び回ってたみたいだけど何してたの?」

「私はちょっとお友だちの顔を見てきました」

「俺は……まあ野暮用だ」

「こいつずっと誰か探してたぜ!何も見てなかったな!」

「おじさんたちは暇つぶししてたよ。見知った顔もいたけどね」

「そう。じゃあ次実技の説明会場に行くね」

 

 説明を受けた実技試験の内容は実にシンプルだった。敵想定の点数別ロボットをできるだけ多く撃破するだけ。対人戦も予想していた彼にとっては簡単な試験だった。

 

「崩壊メインの近接戦でいいかな」

「ロボ相手だと私のは使えませんね。血ィ出ないですし」

「まあ俺のとお前ので十分だろ」

「そうだね。プラスで圧縮とか蒼炎も使えば万全だろうしね」

「……炎使うなら注意はしとけよ」

「もちろん忘れてないよ」

 

 周りが緊張を隠せない中、少年は余裕な態度で実技会場に向かう。

 警戒は怠らず待機していると、アナウンスが流れた。

 

『はいスタート!』

 

「……っマジかよ!」

 

 一拍遅れて試験が開始したことに気づいた彼がスタートダッシュを始める。

 

「"飛べ"!」

 

 彼がそう叫ぶと身に着けた衣服が彼の体を持ち上げる。これこそが彼が持つ個性の力である。

 個性"命令"!物体・生物問わず命令すればその内容を強制的に実行させる事が出来るぞ!ただし意思のない物体と違って生物からは自意識による抵抗を受けて命令が受理されない場合があるぞ!要するに意志の力で跳ね除けられる洗脳みたいなもんだ!

 原作風に紹介するならこの様になるだろう。

 さっきの命令の内容は「飛べ」、対象は衣服だったので今現在彼は空を飛んでいるわけである。

 

「とりまナイフは効かんだろうし……"焼却命令・燃えろ"」

 

 空中から地上にいる敵ロボットに対して空爆モドキを仕掛ける。吹き出す青い炎がロボットを焼き焦がし点数を稼いでいる。

 

「あれ倒せてる?」

「問題ないな。多分思ったよりも脆いぞあれ」

「ならもうちょい弱めればよかったなっと」

 

 彼は地味に痛む火傷を気にしながら、他の受験者が誰も来ていない会場の奥の方までたどり着いた。

 

「よし、じゃあマグ姉とお兄さんよろしく」

「おう」

「私に任せなさい」

「"引寄命令・こっちに来い"からの"崩壊命令・塵となれ"」

 

 ロボットは金属製、つまり強大な磁力を発するものがあればそちらに引き寄せられる。そして引き寄せられた相手を五指で触れてかたっぱしから崩壊させていく。

 

「ははっ!人もいないし狩り放題だ!」

 

 そのまま鍛えられた脚力で会場内を走り回りながらポイントを稼いでいると、突然破砕音が響き渡った。

 

「……何?」

「あれだろドッスン」

「ああ、例のね」

 

 説明された内容を思い返す。倒しても点数の入らないオジャマ役がいると言われたのだが、いざ見てみると思いの外大きい。

 

「あれ放置でもいいんだろうけどさー」

「壊しに行くか?」

「なんか音うるさいしね。邪魔なもんは壊していいでしょ」

 

 実に刹那的な考えで暴れるそれを倒しに行くことを決める。今いる場所が外縁辺りなのでそれなりの距離はあるが、飛んでいけばすぐだろう、と衣服に命令をかけ宙へと駆け出そうとしたその時、轟音と共に0点ロボが()()()()

 

「おー、あれ真正面から倒せる人いるんだ」

「俺もいけるけどな」

「あれは即死技みたいなもんじゃん。高威力でっていうと荼毘さんぐらいしかいないんじゃない?」

 

 その異常な光景を見ながら呑気に会話を続ける二人。

 結局その後は残っていたロボ数体を倒して実技試験は終了した。

 

 

 

 

 

 

「というわけで試験おつかれさん!」

 

 トゥワイスさんが音頭を取って試験お疲れ様会が始まった。

 

「と言っても祝うにはまだ早くない?」

「なに言ってんだ?あれだけ倒しゃ絶対受かるだろ。いーや確実に落ちるね!」

「一応俺は他の受験者を見てたが、あれだけ倒してるやつは同じ会場にはいなかったぞ」

 

 トゥワイスさんが確信を持ってそう言い、スピナーさんが付け足す。みんなも受かること前提で話してるしもうそういうもんだと思っておこう。……これで落ちたら雄英が壊されるかもなぁ。

 

「それにしてもみんなよく食べるね」

「こういう機会でもないとそもそも食べないからじゃないかしら。まず幽霊は本来食事ができないわけだし」

 

 マグ姉が説明してくれた。いつもは食費の関係で俺しか食べないもんね。

 

「荼毘さんはいつも食べないよね」

「元から食事に興味がなかったからな。食べなくていいならそれでいい」

「荼毘くんは昔からこうでしたから気にしなくてもいいですよ。それよりこのシーフードピザ食べませんか?」

「あ、食べる」

 

 うん、ホワイトソースと乗ってるエビがうまい。やっぱこうやってたまに食べるピザはおいしいよね。

 

「さっきから飲み物配ったりしてくれてるけど黒霧さんも食べていいよ?」

「ええ、後でいただきます」

 

 お兄さんは器用に四本指で掴んで食べてるし、コンプレスさんは……うん、仮面取ってるとこ見るの久しぶりだね。

 合格発表はもうちょい先だし、俺も今日は楽しむとするかな。

 

「お兄さん、そのカルビのやつちょーだい」

「これは俺のだ」

「へーそういうこと言うんだ……”こっちに来い”」

「あ!お前それはズルだろ!」

「別にいいでしょ。そんなにあるんだし一切れぐらい」

「じゃあ私も一個もーらい!」

「おいトガまで取るんじゃねぇよ」

 

 やっぱり賑やかなのはいいなぁ。昔は一人だったから余計にそう感じるのかもしれない。気づいたら集まってたヴィランだった人たち。俺の大事な友だちであり仲間。この人たちと一緒なら、こんなヒーローに向いてないだろう俺にだってきっととびきりのヒーローになれる、そう思える。

 そんなことを考えながら、パーティーを目一杯楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 そしてやってきた合格発表の日。

 家に届いていた手紙をみんなの前で開封する。中に入っていた謎の物体を弄っていると、急に空中に映像が投影された。

 

『私が……投影された!』

 

 そこに映し出されたのは誰もが知るNo.1ヒーロー・オールマイト。なんかみんななんとなく嫌な感じの表情してるな。なんか思うところがあるのかな?

 

『霊命少年!君の試験の結果を発表するぞ!君の稼いだヴィランPは66点だ!』

 

 へぇ、途中から数えてなかったけどそのくらいなんだ。

 

『これだけでもすごい記録だ。だが我々教師が見ていたものはそれだけじゃあない!ヒーローの仕事、それはヴィランを退治するだけではない。巻き込まれてしまった市民の皆さんを救うこともまた立派な役割だ!君にどれだけその役割に見合った行動ができていたかを見極めるための数値、それがレスキューポイント!』

 

 なるほど。単純な戦闘力だけじゃなくてそういうとこも見てたんだ。まあ強いだけのやつなんてヴィランと変わらないだろうしね。

 

『君のレスキューPは19点。筆記試験の成績も含めて君は首席入学者だ!おめでとう!今日から雄英(ここ)が君のヒーローアカデミアだ!』

 

 首席……え、マジで?

 

「やったじゃねぇか」

「うん……あんまり実感は湧かないけど」

「まあ俺たちが指導してやったんだ。ヒーローですらない子どもに負けないのは当たり前だろ」

「荼毘、今は普通に祝おうぜ?合格おめでとさん、強司」

 

 コンプレスさんの言葉を皮切りに、みんながお祝いの言葉をくれた。

 

「ありがとみんな。でもここからが本番だよね」

「そうだな。全部救うなら入学はスタートラインだ」

「じゃあもっと頑張らないとね」

 

 まずは強くなることが大前提だ。弱いままじゃできないことはたくさんある。今まではこっそりやってたけど、これからは堂々と個性を使った特訓も出来るはずだ。

 

「早速お祝いですね。またピザでも頼みます?」

「……みんなそれにかこつけておいしいもの食べたいだけじゃない?」

 

 なんというか締まらないな。まあでもこのぐらい気楽にやっていこうか。どうせ物事に本気になんてなれないんだし。




霊命強司

個性は”命令”
幽霊に触れることでその人物の個性を使用できる
幼少期から連合メンバーに鍛えられたのでかなり強めかつ思考がヴィラン寄り
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