キミの普通はこんなにも輝いて   作:Blue Aome

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第1章 出会い編
Ep.1 出会い


 高校2年生の春。

 一人暮らしにようやく慣れてきたこの時期、僕は人生初めてのアルバイトを始めた。

 職種はファミレス。

 選んだ理由にこれといったものはない。

 ただ、普通よりも劣る自分でも、これなら出来るだろうと甘い幻想を抱いたからだ。

 この決断が、今後の自分にとって大きな分岐点になるなんて、この時は思ってもみなかった。

 

 

 

 「今日からよろしくね、神明(しんめい)君。」

 「はい!こちらこそよろしくお願いします!」

 

 記念すべきアルバイト初日。

 バイト先の事務室で、パイプ椅子に背筋をピンとさせ、ガチガチに緊張をしながら店長さんに挨拶をする。

 心の中は人生トップ10に入るほどのハイテンションだ。

 

 「おぉ元気だねぇ。まあ慣れない内は神明くんの教育係として1人サポートにつけるつもりだ。その子に色々と教わってほしい。しかも神明君と同い年だからな…。」

 「あ、ありがとうございます!」

 「で、大まかな業務内容なんだけど……」

 

 机を挟んで向かい側に座る店長さんの説明を聞きつつ、僕は少しだけ考えにふける。

 なんと、僕なんかのために教育係をつけてくれるらしい。いや僕だからかな…。

 バイトなんて初めてだから、教育係が普通なのかも分からない。普通であってほしい。頼む。

 にしても同い年の教育係かー。どんな人なんだろう?なんか教育係になるくらいだし、しっかりとした人なんだろうなぁ。ちょっと緊張しちゃう。いや元々してるんだけど。

 

 「……まぁ業務内容はこんな感じかな。で、肝心の教育係なんだけど…あ、広町君!ちょっと来てくれ!」

 

 店長さんが声を少し張り上げた後、遠くから「はーい」という返答が聞こえる。

 今の声が例の教育係さんなのだろう。遂にご対面だ。

 第一印象でその人の評価の8割は決まるって聞くし、しっかり挨拶しよう。

 

 「広町に何か御用ですか~?店長~?」

 「めちゃくちゃ御用だ広町君。ほら、今日は例の新人君が来るって話をしただろう?挨拶をしてくれ。」

 

 事務室に入ってきたのは、どこかふわふわとした雰囲気をまとった女の子。

 店長さんに「ここ座りますね〜」と一声かけた後、何故か僕の隣の椅子に座り、その赤色の瞳をこちらに向けてくる。

 まず教育係が女の子だっていうのもビックリだけど、何よりも予想とキャラが違いすぎる…いやまずは挨拶だ。第一印象第一印象…。

 

 「えっとぉ、私の名前は広町七深(ひろまちななみ)で〜す。月ノ森女子学園に通っている2年生〜!これからもよろしくね~。」

 「こ、こちらこそよろしくお願いします!同じく2年の神明克輝(しんめいかつき)です!ご、ごご指導ご鞭撻のほど、よ、よろしくお願いしましゅ!」

 

 はい嚙みました~。予想はできてたけど、できてたけどね!

 ま、第一印象なんて所詮第一印象だからな、うん。

 

 「そんなに緊張しなくて良いのに~。私たち、同い年でしょ~?」

 「そ、そうですけどぉ…」

 

 僕がゴリゴリに緊張している様子を見て、広町さんはニコニコしながら続ける。

 

 「あはは!かーくんは面白いね~」

 「か、かーくん…??」

 「そ。克輝くんだからかーくん~。嫌だった~?」

 「い、嫌ではないですけど…」

 「ならこれからキミはかーくんだ~!私のことも、七深って呼んで良いよ~?」

 「流石にそれは…」

 

 そう言って広町さんは更に話しかけてくる。

 これがJKか、強すぎる。圧倒的会話のワンサイドゲーム。野球なら初回でコールド負けだ。

 しかも距離感が近い。さっきから話す度にその可愛い顔が僕に近づいていて、恋愛経験0の僕には刺激が強すぎる。

 このままでは僕の初心なハートは撃沈だ。

 だ、誰かお助け…。

 

 「広町君ストップだストップ。神明君が困っているだろう。」

 「…はーい。」

 

 僕の想いが通じたのか、店長さんが広町さんに停止命令を下し、広町さんは「少し私だけぐいぐい話しすぎちゃったかな〜?ごめんね〜?」と僕に言いつつ、しぶしぶ少し距離をとる。

 

 これから店長さんをメシアと崇めよう。キモがられると嫌だからこれは心の中に留めるけど。なんか心の中に留めるって表現すると恋心みたいだね、キモいね。

 

 まぁ僕のメシア論は一旦置いておいて、広町さんをストップさせた後、店長さんは会話を切り替え話を続ける。

 

 「まあ広町君は基本こんな感じだが、仕事の出来に関しては私が保証しよう。正直言って完璧だ。それも広町君がバイトを始めてから1ヶ月も経たない内からな…。」

 「えっ、そうなんですか…?」

 「そうだ。普段はこんなにもふわふわしてるけどな」

 

 なんと、僕の真横にいる教育係さん(広町さん)は、こんな雰囲気でも()()()()らしい。なんか凄いニコニコしてる。

 

 「広町さん、凄いですね…!」

 「このくらい普通だよ~。先輩に教えて貰った通りにやっただけだし~。」

 「普通1ヶ月じゃあんな完璧には出来ないんだがな…。あっという間にその教えた先輩含めてアルバイト全員追い抜いて…。」

 「そうです!普通じゃ出来ないですよ…!」

 「…そっか、これは普通じゃないんだ…。うーん…普通にするって難しい…。」

 「…?広町さん、何か言いました?」

 「あぁ…ううん、気にしないで~こっちの話だから~。あ、それはそうと店長、凄いなら褒めてくれても良いのにな~。」

 「なんか雰囲気的に手放しで褒めづらいんだよ広町君は。」

 「え〜?ひどいな〜。かーくんもそう思わない〜?」

 「え、えっと…??」

 「ほらまた神明君困ってるからストップだストップ」

 「だってぇ〜………」

 

 その後も目の前で繰り広げられる店長さんと広町さんの賑やかな会話を聞きながら、僕は少しだけ、ほんの少しだけ不安にかられる。

 自分は本当に上手くやれるのかと。

 また、要らぬ気遣いをさせてしまうのではないかと。

 それがたとえ、所詮アルバイトだとしても。そう考えても、思わずにはいられない。この不安はそれ程までに根深いものだ。

 

 「…ーい!おーい神明君、大丈夫かい?」

 「は、はい!だ、大丈夫です!何でしょうか…?」

 「いや、ちょっとボーっとしてるようだったからね。」

 

 …周りが見えなくなるほど考え込んでいたようだ。

 隣に座る広町さんも心配そうにこちらを見ている。

 非常に申し訳ない。

 

 「す、すみません…!」

 「いや大丈夫なら良いんだ。まぁともかく、説明はこんなもんだろう。今日から頑張ってくれ。」

 「は、はい!頑張ります!」

 「ふふ、そんなに気負わなくて良いんだがな。」

 「かーくん、これからよろしくね~」

 「広町さんも、よ、よろしくお願いします!」

 

 そんなこんなで、バイト業務の説明&広町さんとの顔合わせは終わった。

 

 次はホールでの仕事だ。

 本格的に僕のアルバイトライフがはじまる。

 教育係さんはいるが、せめて初日だけでもそつなくこなしたいものだ。広町さん同い年だし。あの不安を抹消するためにも。

 が、頑張るぞー!




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頑張って続けるぞい。
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