ましろさん回です。
『神明くん。この前は私なんかのことを助けてくれて、ありがとうございました!』
少し緊張しながら、
この人となら、もしかしたら…って。運命なんてないって分かってるけど、運命だと思わずにはいられない。
だって、連絡先も交換してなかったあの男の子と1週間も経たずに再開できるって、そう起こることじゃないはずだ。しかもその男の子が、物腰柔らかで優しい雰囲気を纏っている男の子である確率なんて、それはもう奇跡に近いって思う。それに加えてななみちゃんの知り合いだったのもビックリだけど…。
でも…なんていうか、
だからこそ、仲良くなりたい…っていうのが正確なのかは分からないけど、もっと話をしてみたいって思ったんだと思う。
そのために今日、勇気を振り絞って連絡先を交換した。もうなるようになれって感じだったから、下手なこと口走ってないかな…。それに今思い返すと、バイト終わって店を出たら、1回しか会ったことがない人が待ってるって、普通に考えたら迷惑すぎるんじゃ…!?
さっき送ったメッセージもそうだけど…うぅぅ。…しつこいとか、ウザいとか、思われてないかな…。
今日、ほんの少し話しただけの彼だけど、それでもそんなヒドいことを考える子では無い、というのは十二分に理解している。しているけど…送信した後も、そんな不安が浮かぶのを止めることができない。送信ボタンを押してから時間が経てば経つほど、不安が無数に浮かび上がってしまう。
だからこそ、何度も送信取り消しというボタンが目に入り、その度に押そうとしてしまうのも、これはきっと不可抗力だ。そして、その度に直前で踏みとどまる…というのを繰り返してしまう。
でもそんな姿…傍から見たら、私すっごく惨めだ。
そんなことを頭の中で繰り返して数分後。
机の上に置いたスマホの画面に神明くんからのメッセージを伝える通知が来た。
それを私は、ちょっぴり緊張しながら恐る恐る確認する。
『全然気にしなくて大丈夫です!そんな、大したことをやった訳では無いので…。いや本当に…。』
『そんなことないです!私が同じ立場だったら、多分同じこと、出来てないと思うので…。だから、っていう訳でもないんですけど…1回だけ、1回だけで良いんです。お礼も改めて直接言いたいので、1回私とお会いしていただけませんか…?』
『そんなお礼されるようなことじゃないんですけどね…(_ _;)ただ、このまま断るのも…ですよね』
『このまま断られたら多分…私泣いちゃうと思います…。』
『…それを言われたら断れませんね(笑)そうしたら…そうですね、そしたら倉田さんさえ良ければ、お会いしましょう!』
『ありがとうございます!そしたらですね…』
その後、神明くんと日程調整をした後、やり取りを終えた。
勢いに任せて誘ってみたけど、神明くんに承諾してもらえて本当に良かった…!
緊張しすぎて、やり取りを交わしている間は何も考えることが出来なかった気がする。
ただ。
なんと、決まった日程は、明日。
なんでも、神明くんは基本平日はバイトのシフトが入っているらしく、間が空くと私の覚悟が砕けそうな予感がして、ダメもとで明日はどうですか…?って聞いたら「倉田さんさえ良ければ」と、それが通ってしまった。うぅ…私、何しちゃってるの…????勢いに任せすぎだよぉぉ…。
でも…これくらい、突拍子もない日程の方が、私には良いのかもしれない。
だって1週間後とかになったら…その日が迫る度に、胸がギュってする自信があるし。
まぁ明日だとしても緊張はめちゃくちゃしてるし、もう明日だからこそ逃げられないし、今から12時間後にはもう会っちゃってるし…直接話してみて、引かれたらどうしよう…!?なんて思うけど…。
でも一方で…人と会うだけ、それも男の子と会う約束だというのに、心なしかワクワクするのは何故だろう。
そんなことを考えながら、私は椅子から立ち上がり、突如として出来た予定の準備を始める。
これは、私自身の新たな一歩を踏み出すため。
神明くんに改めてお礼を伝えて、仲良くなるためにきっかけとなるためのもの。
だからこそ…この会う約束が、傍から見たらどう映るか考える余裕は、流石になかった。
_____
七深のバンド仲間がファミレスに襲来した翌日。
今日は曇1つない空…という訳でもなく。わりと曇も視界に入ってくるような天気の下。
僕は今、駅の前にあるベンチに1人座っています。
なんでも…僕は今日、倉田さんと2人っきりで会うみたいなんです。へー。
……………いやなんで!?
いやまぁ「なんで会うの?」って問いかけには倉田さんに「お礼も改めて言いたいので、お会いできませんか?」って言っていただいたからって理由を返すことが出来るけど…そうじゃなくて…んああ!脳内すら混乱してきたよ…。僕の脳、10世代くらい前のPCなんですよ?混乱するに決まってる!
てか昨日LIMEで連絡してるとき、なんで「明日大丈夫ですか?」って質問に「倉田さんさえ良ければ」って返しちゃったの?相手は月ノ森生だぞ。天下の月ノ森生と二人っきり…これ僕が良いわけないだろ。いや日程的には大丈夫なんだけど精神的にね。
しかもそんな経験、僕にn…あったわ。当たり前だけども
閑話休題。
取り敢えず…引かれることだけはないようにしよう。
そう心に誓って、ひとまず倉田さんを待つ。
約束の時間まであと少し。今日は10時に集合予定だ。あのやり取りから12時間も経過していない。ナイターゲームの後のデーゲームでももう少し間があるぞ。
なんて、どうでも良いことばかり考えていると、ふと前方に蒼を基調としたスカートワンピース姿の見覚えのある女の子が視界に入った。
その女の子は、駅の近くに来てから周りを恐る恐る見渡す…という表現が似合う様子で伺っていたが、僕の方を見た瞬間にパッとお目当てのモノが見つかった子供のような表情に変わったたのもつかの間、何故か申し訳なさそうな様子でこちらへと向かってくる。
言わずもがな、今日会う約束をしていた倉田さんである。遂に審判のときが来たのだ。
「あの…待たせちゃいました…よね?すみません…誘った側なのに…もっと早く来ようとしたんですけど…その…準備に時間がかかっちゃって…。」
「えっと…全然待ってないので大丈夫ですよ。僕もさっき来たばかりですから…。ちなみに…今日はこの後どこに行くとか決まってます?」
待ってないのはちょっぴり嘘だけど、待っている間も取るに足らないしょうもないことしか考えてなかったので、本当に倉田さんが気にする必要はないと思う。
てか僕が早く来すぎなんだよね。何やってるんです?反省してください!
「ええっと…神明くんさえ良ければなんですけど…その…行きたいお店があって…。そこならゆっくり話せるかなって思うんですけど…どうですか…?」
「僕は恥ずかしながら特になんも考えてこれてなかったので…むしろ倉田さんが言ってくれたお店がその…良いです!」
「そ、そうですか…?ならそこで…お願いします!」
そんな感じで、ひとまずは移動することになった。
ただその…僕がこの状況に緊張しすぎて、移動する道中、会話がめちゃくちゃぎこちなくなってしまった実感がある。
倉田さんに既に引かれたりしていないだろうか。
心配だ。
年末までにましろさん回続き(1回)と七深さんの回を1回は出したい所存…!頑張ります!
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