キミの普通はこんなにも輝いて   作:Blue Aome

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 今回からはほのぼの日常回になります。
 近いうちにモニカの他の4人も登場させたいですね。


Ep.3 新しい日常

 僕の16年にも及ぶ短い人生史上最も濃い一日であった、ドキドキバイト初出勤日からもうかれこれ半月ほど経ったある日の朝。

 今日の僕のシフトは朝からお昼までなので、今はアルバイト用の休憩スペース(物置)でシフトまで待機中といったところ。

 そんな僕は今、2つの悩みを抱えていた。

 

 1つはまあ、初日の様子からも分かるように、僕の仕事覚えが絶望的に悪いことだ。

 決して毎日シフトを入れている訳ではないが、それでも週5日のハイペースでシフトに入っているため、なんやかんや「仕事はもう覚えたんだろ?」って思われているかもしれない。

 だが悲しいかな、真実は決して成長していない訳ではないけどちょっと…物覚え悪くない…?といった感じだ。

 実際、先輩アルバイトの皆様方にはもう僕があんまり仕事出来ないことを察せられている節がある。

 この前なんか、レジでお客さんの会計を担当しようとしたら「あ、神明くん変わるよ^^」って先輩に言われてレジの前に立つ権利を剝奪された。僕のお客さん取らないでよ!

 まあ兎にも角にも、アルバイトとしてスタートラインに立つこと、これが僕の目下の目標だ。早く試用期間を抜けよう。このままじゃ永世試用期間アルバイトになりかねない。試用期間界の藤〇聡太にはなりたくないところ。

 

 そしてもう1つは…。

 

 「かーくん、今日も頑張ろうね~」

 

 今日もニコニコ元気そうな広町さんが僕の背中に軽く手で触れながらそう言ってくる。

 

 これだ。

 これが僕の抱える悩み2つ目。広町さんの距離感やっぱり近くなーい?ということだ。

 ことあるごとにボディタッチしてくるし、話すときは物理的に距離感が近くてなんか色々ドキドキする。

 

 いやこれアレか?僕の対女の子経験値が少なすぎるだけ?まあもしそうなら僕の経験の無さが露呈するだけだから何の問題もないですね。犠牲になるのは僕の心だけ。平和(Peace)

 でも一般的には親しい子とかにやるものじゃないの?教えて誰か。

 

 まあそんな感じで。僕の悩み2つ目は広町さんとの距離感である。共犯者さんとの距離感を掴みきれていないのが現状だ。まぁこの半月で広町さんとの距離が少なからず縮まったのは事実だが。

 

 「ん~?かーくん~?あれ、もしかして聞こえてない…?」

 

 あ、考えこみすぎて広町さんを放置する形になってしまっていた。非常に申し訳ない…。

 

 「あ、いやごめんなさい広町さん…。ちょっと考え事をしていて…。」

 「え~何考えてたの~?」

 「えーっと…ちょっとまあ、やっぱり僕って仕事覚えるのが()()より遅いなあーって…」

 

 嘘は言っていない。そう思っていたのも事実だし。決して本人に言える訳ねえだろってごまかした訳ではないぞ。これマジ。

 

 「うーん…広町的には他の子とそんなに変わらないとは思うけどな~。」

 「そりゃ広町さんから見るとそうかもしれませんけども…。だって広町さん、ホールとキッチンの仕事を1か月で完璧にしたって店長さんから聞きましたよ?。僕ももう半月経ちますけど、まだホールの基本的な仕事も危ういですからね。」

 

 地味にもう半月経ったのにも関わらず、未だホールの仕事も危ういという事実に僕は泣きそうになる。

 自分の発言で自分を傷つけるのは、よくない!

 

 「え、やっぱり1ヶ月って()()じゃないの…?」

 「僕を基準にしちゃうとちょっとアレですけど、店長さんによれば、一般的にホールかキッチンの仕事を1ヶ月で覚えてくれれば良いって感じらしいです。」

 「うぅ…やっぱり普通じゃないんだ…。道理でみんな驚いた顔してたんだね…。」

 「むしろ自覚が無かったことに僕が今驚いてますよ。」

 「かーくんひどい~。」

 

 そう言って広町さんは僕のことをポカポカと軽く小突いてくる。

 まあこんな感じで、『普通を目指す共犯者』であることを誓い合ったその日に連絡先を交換してから今に至るまで。

 広町さんが僕の教育係ということもあり、お店の内外で関わることは非常に多かったからか、僕の広町さんの関係は少なからず深まった実感はある。

 事実として、僕も簡単な冗談等々を広町さん相手なら言えるようになったし。

 別に今まで友達が皆無だった訳じゃないけど、なんか「気を使われているんじゃないか」って一歩引いてしまっていたのだ。

 

 「ま、僕も確実に普通よりも遅いペースで仕事を覚えているのでお互い様ですよ。」

 「それって誇りながら言うことかな~…。」

 「事実ですから。でも、こんな僕を普通にしてくれるんですよね、広町さん。」

 「…ふふ、そうだったねかーくん。万事広町にお任せあれ~!」

 「よろしくです、共犯者さん(広町さん)。」

 「こちらこそだよ、共犯者くん(かーくん)。」

 

 そう言って僕と広町さんは笑い合う。

 なんて頼もしい共犯者であろうか。僕も自分の出来る限り、広町さんの役に立ちたいものだ。

 

 「おーい2人とも、そろそろ時間だぞー。」

 

 そんなことを言っていたら、店長さんが僕たちを呼びに来た。

 

 そうか、もうそんな時間か。

 

 僕と広町さんは急いでホールへと向かう。

 心なしか、隣を歩む広町さんは、いつもよりちょっとだけテンションが高いような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「今日もおつかれ~かーくん~。」

 「こちらこそお疲れ様です、広町さん。」

 

 お昼を少し過ぎた13時過ぎ、僕と広町さんは今日のシフトを終え、アルバイト用の休憩スペースに戻ってきた。

 そこにある椅子に並んで座っているのが現状。

 

 今日の出来はそこそこ。何故かいつもより少しだけやる気に満ち溢れていた広町さんの補助もあり、なんとか片手で数えられる程度のミス数に収まった。本当に申し訳ない。

 普通の子でもミスをする方が珍しいというのに。

 何故僕は皿を割ってしまうのか。

 何故皿を割ってしまった後は別のミスが続くのか。

 

 自分の不器用さというか、不甲斐なさには本当に腹が立つ。このままではバイトを辞めさせられてもおかしくない。もっと頑張らなければ。

 

 まぁ何はともあれ今日のバイトは終わった。

 午後は今のところ予定は無いし、何をしようかな。見て見ぬふりをしてきた定期テストの勉強をするべきか…?

 なんてことを頭の中で考えていると、

 

 「え、このお菓子…今日までなの…??」

 

 隣に座る広町さんがスマホを眺めながら悲しそうな声でそう呟く。

 …?お菓子?

 広町さん、お菓子好きなのかな。

 

 「広町さん、どうかしたんですか?」

 「ねぇ聞いてよかーくん〜…私ね、今とあるお菓子を探してるんだけど…それの販売期間が今日までだったの…。」

 「それは大変ですね…ちなみになんて名前のお菓子ですか?」

 「えっとね、結構人気だしかーくんも知ってると思うんだけど…『悠久の美(ゆうきゅうのび)日本城大戦(にっぽんしろたいせん)〜』ってお菓子だよ〜。」

 

 広町さんは「ポテトチップスって勿論知ってるよね?」みたい感じで僕にそう言ってきた。

 いやなんだそれは。

 え、これ本当にお菓子の名前?お菓子の名前に悠久の美とか城とか大戦とか入るものなの?マジで?僕そんなの知らない。

 

 「えっと…知らないですねぇ僕は…それって何と言うか、本当にお菓子ですか…?フィギュアとかではなくて…?」

 「失礼な、ちゃんとしたお菓子だよ〜。…ほらこれ、1回は見たことあるんじゃない?」

 

 そう言って広町さんは、隣にいる僕に近付きスマホの画面を見せてくる。

 僕は相も変わらず近い距離感に一瞬戸惑いつつ、画面の中を見てみるが…うん、これやっぱり知らない。僕の記憶フォルダには保存されていないし、見たこともないと今回だけは断言できるね。

 え、これ本当に人気…?僕が知らないだけ?

 

 「その…見たことないですね…記憶に無いと言うか…。」

 「あれ、見たことない…?このお菓子って、あまり一般的じゃないのかな…?」

 「い、いやまぁ僕も言うてお菓子に詳しい訳じゃないので、偶々僕が知らなかっただけだと思います…よ?」

 「語尾が疑問形じゃん!」

 

 ちなみに1人暮らしということもあって、結構な頻度で僕はスーパーに足を運んでいる。それで見覚えが無いってことは…まぁ…うん…。

 

 「と、とにかく!一旦知名度云々は置いておいてですね、何で広町さんはそのお菓子を探しているんですか?」

 「話を逸らされたような…えっとね、このお菓子にはおまけが付いてるんだけど、おまけ全100種類の中でもズバ抜けたレア度を誇る、激レア城の信貴山城(しぎさんじょう)がまだ手に入って無くて…これさえ揃えばコンプリートだし、絶対に手に入れたいんだ〜。」

 

 しぎ…なんだって?有名な城なのそれは?

 あと城って100種類もあるんだね。僕、大阪城とか名古屋城とか姫路城しか知らないや。

 

 「そのしぎ…ん城を手に入れたいんですね…。ちなみにおまけってどんな感じなんですか?」

 「信貴山城(しぎさんじょう)だよ〜。…えっと、ちょっと待ってね…確かここに…あった!これだよ〜。」

 

 そう言って彼女は1つ、お城のキーホルダー?のようなものを僕に渡してきた。

 うわめっちゃ精巧だぁ。最近の食玩って凄え。

 

 「これはねぇ~信貴山城と同等のレア度を誇る月山富田城(がっさんとだじょう)~!どう?なかなかな完成度だと思わない~?」

 

 がっさ…なんだって?

 

 「めちゃくちゃ完成度は高いなって思いますけど…すみません、もう一回この城の名前言って貰っても良いですか?」

 「月山富田城(がっさんとだじょう)だよ~…あれ、知らない…?」

 「…誠に残念ながら知りませぬ…。」

 「あ、あれ?おかしいなあ…。」

 

 これは、俺の知識不足なのか…?

 最近のJKは「信貴山城の天守閣マジカッコ良い~」とか「月山富田城のフォルム綺麗~」とかで実は盛り上がっているとか…?

 いやない。あってほしくない。盆栽で盛り上がるJKくらいあり得てほしくない。

 

 「ま、まあ兎にも角にも、広町さんはこのお菓子を今日中になるべく沢山購入して、この信貴山城っておまけを手に入れたいって話ですよね。」

 「そうだね~そんな感じかな~。」

 「そしたら僕、今日この後予定も無くて暇なので、手伝いましょうか?」

 

 気づけば僕はそんなことを口にしていた。

 自分でも、なんでこんなにスラスラと言葉がでてきたのかは分からない。

 でも、こんな些細なことでも、広町さんの力になるならって。そう思ったのかもしれない。

 

 「え、良いの?かーくん?こんな、個人的な事情なのに…。」

 「いつも広町さんにはお世話になっているので全然大丈夫です!早速、そうとなったら早く行きましょう!」

 「わわ、謎に行動が早いよかーくん~。…それに私たち、まだ制服のままだよ?」

 「あ…。……忘れてました。」

 「…かーくんらしいねえ~。」

 

 かくして、僕と広町さんは『悠久の美〜日本城大戦〜』を探す旅に出ることになった。

 …ちなみにこのお菓子、マジで一回も見たことがない。

 そもそも見つかるのか。

 非常に不安だ。

 

 

 




 信貴山城と月山富田城って実際どれくらいの知名度なんですかね。
 良かったら教えてください。
 
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