「…では、今週はそんな感じでお願いします。ご迷惑おかけして申し訳無いです…。」
「全然気にしないでくれ。明日に関してはシフトにもかなり余裕があるし、大丈夫そうだ。それに、先週も先々週も週5でシフト入ってくれているからな、安心して勉学に励み給え。それよりも…
「普段は他の教科も含めて追試に引っ掛かることは無いんですけど…元々数学が苦手っていうのに加えて、テストの時期に人生初バイトが重なったので…。」
数学の先生から非常な通告があったその日のバイト。
僕はお店の事務室で、机を挟んで向かい側に座る店長さんに、明日のシフトについて欠席することが出来ないか、相談をしていた。
理由はやはり、例のテスト。
このまま挑めばほぼ確定で不合格。放課後にバイトをしている場合では無くなってしまったのだ。
それに、不合格になってしまえば、繁忙期の土曜日にシフトへ入れなくなってしまう。
そのためこのことを店長さんに伝えた結果、直前であるのにも関わらず、ありがたいことに休むことが出来た、というのが今の状況だ。
「…そうか。まぁアレだ、兎にも角にもバイトのことは全く気にする必要はないから、どうにか乗り切ってほしい。…勉強はなぁ…俺に教えれることがあれば教えるんだが、生憎俺は田舎の馬鹿高校出身なもんでな、すまん。」
「い、いえそんな…それにもし、店長さんにそこまでしてもらったら、申し訳なさで僕はもう腹を切るしかなくなってしまいます…。」
「いやなんでそこで腹を切る選択肢が出てくるんだ神明君。それに、状況としては折角助かりそうな場面だろ。何故命を投げ出すんだ。」
「で、でも僕にはこれくらいしか出来ることが…。」
「君は戦国時代の武士か何かか。」
そんな感じで店長さんとゆるーくノリで会話をしていると、見覚えがありすぎる女の子が事務室へと入ってきた。冒険仲間の広町さんだ。ま、1日だけだったしお目当てはお菓子だったけど。
「店長〜。かーくんがシフトの15分前なのに珍しくまだ姿が見えな……アレ、かーくんだ。店長!かーくん居ました〜!」
「報告する前に解決するな広町君。」
そう言いながら、さも当然かのように僕の隣へ座る広町さん。
これってアレなのかな、他の子にもこんな感じの距離感なのだろうか。
もしそうなら、やっぱり僕の対人関係経験値の低さが露呈するだけか。そろそろ慣れた方が良いよなあ。
「まさかここに居るとは思わなくて〜。…にしてもかーくん、どうしたの?何かやらかしたとか…?」
「何もやらかしてないので安心して下さい。実はですね…」
隣にいる広町さんに僕の数学の再テストがヤバいこと、再テストの結果次第でテストまで土曜日バイトが出来ないかもしれないこと、その勉強のために明日バイトを休むことを話す。
話が終わり、ふとどんな広町さんのお顔を見てみると、何か閃いたような表情になった。
一体どうしたんだろう。
「…そっか〜。なるほどなるほど…数Ⅱの再テストが…。…店長。」
「どうしたんだ広町君。」
「明日のシフトって、私も居なくてもどうにかなりますよね?」
「…まぁ、人数的にも足りているし、バイト歴も長いメンバーが多いから全然大丈夫だが…どうしてだ?」
「いや、その…かーくんさえ良ければって話にはなるんですけど…私が、テスト対策として勉強教えても良いかな?…なんて…行ってみたり…。」
広町さんがこちらを伺うような形で言う。
なんでそんな不安気な表情をするの。
あとめちゃくちゃありがたい。
めちゃくちゃありがたいんだけど、そんなことをしてもらったら大変申し訳無さすぎる。
それに、同じ時間帯に広町さんがいるかどうかでお店的にも結構変わるから、お店にも迷惑がかかるし…。
勉強の目処は、まぁ全く立っていないんだけど。
とにかく、今回は断ろう…。
「…え。いや正直滅茶苦茶ありがたいですけど、わざわざそんな…それにお店にも迷惑が…。」
「…良いだろう。明日は広町君もバイトに入らなくて良い。その代わり、神明君の勉強をしっかり見てあげてほしい。」
「え。」
「かしこまりです~!…いや〜店長!話が分かりますね~。」
店長さんが何故か先にオッケーしてしまった。いや僕の意志 is 何処?
あとなんか広町さんも嬉しそう。なんで?
「え、僕の意志は…?」
「なんだ神明君。広町君とも長い付き合いになるのに、彼女の学力を疑っているのか。」
「…そうなの?かーくん…。」
そういって広町さんがわざとらしく僕の方を向きながらうつむく。
ちょっとガチっぽい雰囲気出すやめてください。
あと、広町さんとはまだ半月くらいの付き合いだ。
教育係をやってもらっているので必然的に会う機会も多く、ちょっと感覚バグるけど。
「いやんな訳ないじゃないですか。広町さんの学力に一片の疑いも持ってないです。それよりも、僕なんかのことで広町さんとお店にご迷惑をおかけしてしまうのが…。」
「…まーだそんなことを気にしているのか神明君。よく考えてみるんだ、キミはこれから週5でシフトに入ろうとしてくれてる将来有望な金の卵。確かにまだまだバイトとして一人前とは言えないが、慢性的な人員不足に悩む飲食業界でこれほどありがたいことはない。そんなキミを、お店の繫忙期でもないたった1日を優先して、今後の土曜のシフトやそれ以外にも影響を与えてしまったら、お店としても大きな損失なんだ。」
「な、なるほど…?なんか分かるような分からないような…。」
めちゃくちゃ語るな
「それに、僕が広町君に頼んだのならともかく、まぁなぜかは知らないが広町君が自発的に手伝いたいと言ってくれてるんだ。人の好意は受け取っておくのが吉だぞ。」
「そうだよ~かーくん。好意は大人しく受け取っておきなって!それにぃ…何か勉強の目処は立ってるの~?。」
店長さんの言葉に続いて、広町さんが「目処なんて立ってないでしょ?」とでも言いたげな表情でこちらに問いかける。
痛いところを突かれる。うん、まあ…
「…無いですけど。」
「でしょ~?なら、遠慮せずに受け取っちゃってよ~。それに…週末は広町の個人的な用事に付き合ってくれたよね?こんな些細なことだけど、少しでもかーくんに恩返しできたらなって。」
「なんだ神明君、いつの間に広町君に恩なんて売ったんだ。」
「別にそんな恩っていうほどのことじゃないですよ。ただ、バイトの後に広町さんの食玩のおまけ集めに付き合っただけで、しかも僕が言い出したことですし……」
アレは僕が勝手に言い出したことで、広町さんに恩を売るつもりなんて毛頭考えてなかった。
ただ、ここまで言ってくれてるのに、その好意を無下にしてしまうのも、失礼か。
「…ただ、ここまで言って貰って断るのもアレですね。広町さん、頼んでも良いですか?」
「まっかせてよかーくん!広町に万事お任せあれ!」
そう言って、広町さんはわざとらしく胸を張る。
なんかめちゃくちゃ楽しそう。理由は良く分からないけど、広町さんが笑顔だとうれしい。
「よろしくお願いします、広町さん…!」
「…おっと。神明君、広町君、そろそろ時間じゃないか?」
「あっ、もうこんな時間ですね。店長さんもご配慮くださりありがとうございました!」
「全然気にしなくていいからな」という店長さんの声を背に受けながら、僕と広町さんは席を立ちバイトへと向かう。
テストは不安だが、頼もしい
とりあえず今日はバイトを頑張ろう。
そんなことを考えながら、今日のバイトをこなした。
ただ、やっぱりミスは2.3個あった。こちらも要改善である。注文ミスは、良くない!いやマジで良くない。頑張ろう。
次回はまたモニカのメンバーを出したいですね。
※誤字報告・感想・評価お待ちしてます!(定型文)