(??side)
ノーヴェが治療所に送られ、レリックも無事確保した六課。しかし、彼ら彼女らはそれぞれが鬼気迫る顔をしていた。
目の前にある紙々。
大量の文字が書かれたワードテキスト。
印鑑を押しての承認する。
隊員達はまさに戦場にいた。その戦場の名を人は『デスクワーク』と言う……。
「っておわんねェェェェェ!! なんで終わらんねんこれェェェェェ!」
「うるさいよはやてちゃん! 今、肝心なところを書いてるのだから邪魔しないで!」
「そうだよ! みんな大変なんだからいきなり叫ばないで。びっくりしたよ!」
ピシャリと叱るなのはとフェイト。その一方で、頭から煙を出している千香は折り紙をしていた。
「見て見てー、鶴が折れたよぉー。アハハハハハ!」
「ちょっ、千香ちゃんが壊れたよ!? あ、でも元からか」
なんてな感じにひどいまどかである。対して衛は謎の信仰心を高めていた。
「筋肉よ……我にこの書類を処理する力をォォォォォ!!」
壊れた千香を介抱し出すまどか。
筋肉信仰し出す衛。
カオスである。真剣にやっていても、どこかで壊れ始めるメンツである。
「そもそもなんで隊長さん達は書類を処理しているの? あん姉ちゃん」
「あー……そりゃ、管理局の化け物メンツの高町達が使い魔を処理していたら周りの線路や山々が削れてな。その反省文やら経費の請求をしているってわけよ」
「うにゃ……よくわからない」
「オメーはまだ知らなくていいんだよ。もっと大きくなってから学んでいけばいいんだよ」
「ッ! わかった。ありがとうヴィー姉ちゃん!」
にぱー☆と笑顔で応えた少年に姉御肌な二人に何かがキュンときた。
「……ヤベェ。これがあの『神威』だとわかっていたとしても結構萌えるな」
「だろ? 姉ちゃん姉ちゃんってちっこいガキに慕われるのも悪かねーだろ?」
「うー、ガキじゃないもん!」
「「これ以上萌えさせるのかテメーはよぉ!!」」
「うにゃ!? いきなり抱き締めないでよ!」
チビソラを含めたまだまだ少年少女なエリオとキャロは、難しいことなので参加はできないのでお茶を用意したり、お菓子を用意したりなど自分達のできることをお手伝いしていた。
隊長陣はチビソラの微笑ましいやり取りに和む――わけもなく、仕事しなくていいなぁと羨ましそうにしていた。なお、千香とまどかが手伝わされているのは人手を借りたいからだ。
そんなとき、ほむらがリッカを連れてやって来た。
「ソラ~、病院にいく時間よ~」
「えぇー……」
「嫌そうな顔をしないの。まだまだ病気があるから、ね?」
「わ、わかったよぉ……」
トボトボとリッカへ付いていくチビソラをまどかは少し暗くなる。チビソラは健康体そのものだが、彼の身体から『弱体化』する細胞がなくなったわけではない。
この状態異常はガンと同じで細胞から来ているものだ。時間が経つにつれて、また『神威ソラ』が苦しんだと同じように彼の身体を蝕む。
若返りはあくまで『弱体化』の延命処置なのだ。
ちなみにチビソラは別に病院に行くことに不満はない。むしろ、リッカとほむらで行くことが嫌なのだ。
「さあ、今日も脱ぎ脱ぎしてかわいいお洋服着ましょうねー?」
「オレ、男なのに。なんで女の子の服をー?」
「全ては萌えのためよ」
「わけがわからないよほむら姉ちゃん」
トボトボ歩くチビソラの後ろ姿を見ていると、ふとまどかはほむらと目があった。お互いにサムアップし、「任せた!」「任された!」とアイコンタクトを交わす。
こうして現在進行形で黒歴史が刻まれていくのだった。
一方、雷斗は『翠屋』二号店にいた。妻のすずかのお腹が膨れているのは、そこに新たな命があるからだ。
そんな彼女の負担を減らすために、急いで帰ってきた雷斗は『神器』を使って超高速的な動きでオーダー、料理、運びを行っていた。
どこぞの死神代行のバンカイのごとく、分裂したかのような残像ができていた。それが見たいがために顧客は一杯一杯来ていた。
「あ、相変わらずスゲーなマスター」
「人外だ。人外がいるぜ」
「俺、この前。マスターのかみさんを口説こうとした男がどうなったか見たぜ。分裂したマスターが一斉に囲んでその男を見ていたぜ」
「んなもん、まだマシだ。一月前なんか強盗がきて、マスターにデバイスが向けられたけどフライパン一つで全員を血祭りにあげたんだぜ」
「床も壁も汚さず、処理するマスターにちょっとチビったわ俺」
常連客はそんなマスターこと雷斗の理不尽な強さに、戦慄する。まあ、彼が本気だしたら、社会的にも抹殺するようなことも辞さない。
そんなマスターに注文する一人の常連客がいた。
彼の名前はヴァイス。六課のパイロットだ。
「マスターのコーヒー上手いなぁ。これで美人のボインだったらプロポーズしたのに」
「二次元にしてこい。画面がテメェの恋人だろ」
「何をぅ。俺が恋人はマイシスターオンリーなんだぜっ?」
「この間、テメェの妹にあったけど、『お兄ちゃん鬱陶しいなぁ』って呟いてたぞ」
「妹はまだ思春期なんだよ……」
視線を逸らすシスコンに、雷斗は呆れたと言わんばかりに嘆息を吐く。
「仕事はどうした」と聞くと、「同僚に押し付けてきた!」とサムアップで返された。
コイツ、早くリストラするなと雷斗は思った。
(そもそも、コイツは胡散臭いしな……)
ここで最初に会ったとき、ヴァイスはチラリチラリとこちらに視線を向けて、しばらくしてから視線を向けることはなくなった。口調も飄々しているようで、何やら含みがありそうな目をしている。
この男はどこかで会っていると雷斗は考えていた。
前世かはたまた今の人生のどこかで。
(まあ、敵意がねーし。しばらくは静観、だな。害があれば始末すりゃ、良い話だし)
そう思いながら雷斗は注文されたケーキをヴァイスの前に置く。イチゴのショートケーキである。
彼はそれを一口含むと「うーん♪」とまったり顔をするのだった。
「んじゃ、次は激辛ケーキいっとく? 当店自慢の」
「ケーキなのに激辛!?」
そのケーキを食べたら病み付きになります。そんなキャッチフレーズがあるケーキを注文した客は、今日も火を吹く。
病院に連れて来られたチビソラはシャマルによる診察を終えた。服を着出す彼に、シャマルは苦笑する。
さきほど着ていた服ではなく、フリフリがついた黒のゴシックロリータという服である。
「うぅ……。スースーする」
「きゃっわっいィィィィィ☆」
「富竹フラッシュ! 富竹フラッシュぅぅぅぅぅ!!」
(ほむらちゃんのキャラが崩壊した……)
悶える萌えの探求者達に、シャマルは額に手を当てる。なんで彼に女装させるのだこの二人は。
後々、『神威ソラ』に戻ったときに悶えているチビソラの姿のビジョンが浮かぶ。
「それで、異常はあったかしら」
「特にはないですよ。だけど定期的に見ていかないといざって時に大変な目に合いますから」
「既に大変よ。チビソラマジかわいいという事件」
「かわいいのは認めますが、あまりいじらないでくださいね。ソラくん、本気で引きこもりそうな気がしてならないから」
「安心してシャマルちゃん~。わたし達は萌えのためにこうしているのだから~。うふふふふふ……」
リッカはチビソラがいてから、この調子である。「昔はこうして女の子の格好させていたわぁ~♪」と言っていたので、前世でも女装させていたのだろうか。
着せ替え人形にされるチビソラを尻目に、未だに眠るノーヴェに視線を向ける。
ベットで横になっている彼女は穏やか……ではなく、呻き声を上げながら寝苦しそうにしていた。
「く、くるなぁ……くるなぁ……筋肉ぅ……!」
「これが『マッスルホールド』を受けた人の末路ね……」
衛の超否殺傷奥義を受けた者は大半が、悪夢にうなされる。
残りはあの温もりをもう一度と思ってか衛に再びされ、何かに目覚めて同じ筋肉信者へシフトするのだ。
後者であるキャロはこの奥義の温もりを『父なる暖かさ』と絶賛していた。
ちなみにキャロがマッスルモード(どっかの世紀末の覇王モード)になれるらしい。
「……事件が起きたのに、今日も平和ね」
普通のコスプレイヤーなシャマルは窓に視線を少し黄昏るのだった。
機動六課の訓練所。一見、海上の母艦のようなところだが実物化に近い立体映像により、一つのステージとなる。
フォワード勢はそれぞれのポジションごとに訓練をしていた。
ヴィータの相手をするスバル。先陣を切り、時に防衛戦で前にいくというフロントアタッカー。
フェイトの相手をするエリオとキャロ。素早く遊撃するサポート係りというガードウイング。
そしてなのはの相手をするティアナは全ての司令塔であり、動かない砲台というセンターガード。
チームにはそれぞれの役割があり、それを鍛えるのが隊長達の役割だ。一方、チビソラはポジションとしてはフロントアタッカーだ。
しかし、彼は『神威ソラ』としての経験が身体の中に残っているため、本能的に役割を理解し、行動を素早く移れていた。しかも、ガードウイングのような敵を翻弄する役割もでき、サポート係りとしても充分発揮できる。
なので、センターガード以外ならば、どこにいてもポジションとして発揮できる予備軍。いわゆる最高の補欠だった。
しかし、そんな彼なのだが、身体は小さくなっているため、以前のような動きができないでいる。おまけに砲撃などの遠距離攻撃はできない。
よって彼はシグナムと模擬戦をすることなっていた。
「うにゃ!? またヘビになった!」
「はは、これも避けるか。神威!」
ヘビのように伸びたシグナムの剣『レヴァンティン』。それを回避し、じっと彼女の動きを観察していた。地面から生えてくる剣撃には驚いていたが、しっかりガードし、後退する形で避けていた。
(五木――いや今は月村か。奴の言う通り、この少年のポテンシャルはずば抜けている)
曰く『短時間で理解し、それを身体に覚え、実行する。質の悪い話、しばらくすると応用してくる』。
ありえないバトルセンスだ。短時間でシグナムの剣撃を理解し、それを実践しようとする。今、使われているヘビのように動く剣はコピーできないが、それ以外の斬撃を合わせてくる。
ゆえにシグナムはこの剣撃のみで戦うことなったのだ。
しかしチビソラはそれがコピーできなければ、その動きを予測を立てて回避し、反撃に移ろうとする。
まさに天才の成せるセンスなのかもしれない。
(当然と言えば当然か……。以前は少し疑っていたが、この少年は英雄と呼ばれる資質がありすぎる……!!)
英雄と呼ばれるには何が必要か。
力、知識、技術はもちろんのこと相手を引き込む魅力が重要である。
もちろん、相手を引き込むだけの魅力だけが英雄となる資質とは限らないし、それが力と知識、技術で補える。
また英雄には様々なあり方がある。例えば、軍神『関羽雲長』。中国では知らないものはいない大英雄であり、三国時代で輝いた武将。その男の武力は戦いにおいて、味方を盛り上げ、敵に畏怖を与えた。
また三国と言えば諸葛孔明。軍略において最高クラスである軍師で知らないものはいない。
劉備玄徳も英雄だ。下から成り上がり、その魅力で関羽や孔明を引き込んだ蜀の王はまさに英雄だ。
英雄とは力と知識をもって示す者。また王の器を示し、戦力を引き込む者達。
彼らは全ての争いばかりの世界で生き残り、名を示した人の形をした怪物達。
長い説明になったが、シグナムがチビソラを英雄と呼べるくらいの資質を見た理由は、軍神『関羽』と同じ武力。
彼のバトルセンスは戦場においどこまでも成長する戦力だ。
(いくら相手が強かろうが、数が多かろうがこの少年は逃げない……! 今の私が自分より格上であっても食らいつくか!)
チビソラとシグナムの戦力はシグナムに軍配があがる。チビソラの身体に覚えた経験はどうもじゃじゃ馬のようで、動けるときは動くがそれ以外は発揮されないピーキーな性格なのだ。
シグナムの剣が元に戻ると、今度は炎を纏って斬り込む。チビソラの『神器』とぶつかるとシグナムの脚技が、チビソラの身体をとらえようとした。チビソラは負けじと両足でそれを受け止め、足場にして飛び上がって距離をとった。
「対人戦を理解しているようだな!」
「師匠に教えられているもん!」
今度はチビソラの番だ。そう言わんばかりに彼は斬り込む。シグナムはその袈裟斬りを受け流し、拳を入れ込むがチビソラは『神器』を手放し、その拳を柔術で彼女を投げ飛ばした。
(チャンス!)
チビソラは手に『神器』を召喚して、突貫。宙にシグナムへ逆袈裟で斬り上げる。
当たると思い気や、シグナムはニヤリと笑っていたことに気づいた。『レヴァンティン』が再びヘビのような剣状になり、チビソラを拘束する。
「水浴びして冷やしてこい!」
「うにゃァァァァァ!?」
チビソラはそのまま訓練所の外――――海水へ入水する。プカプカと浮かんで目をグルグルしているので、もはや彼は戦闘不能と物語っていた。
「甘いな。ポジションの動きはできても経験がまだまだ甘いな」
「うひゃー。姐さんホント容赦ねーな」
シグナムとの模擬戦を見ていたヴァイスは目をグルグルしているチビソラを見て、そう呟いた。
「当たり前だ。この男は以前のような強さを持たなければならない。古宮も動いているが、それでもまだ足りない。スカリエッティのナンバーズなど魔法少女化した少女達を元に戻すためには最強になってもらわないとな」
「以前のソラ少年はどのような感じですか」
「甘さのない強さだったな。私でも勝てるか怪しい」
「それくらいですかい……」
だとしたらまだまだだ。シグナムに勝てるくらいでないと話にならない。
ヴァイスはこれからもシグナムと模擬戦するチビソラに合掌するのだった。
なお、シグナムはどういう意味でチビソラに合掌したのか気づかれ、ヴァイス共々模擬戦することになったのは言うまでもない……。
ヴァイス: 原作通りの容姿なのだが……?
一ノ瀬リッカ: 最近の趣味がチビソラにきゃわいいお洋服を着せること(笑) 萌えの探求者で、チビソラ愛でる隊の総督
月村雷斗: 婿養子で結婚した我らが常識人。妻が妊娠中のため、分身を駆使して店を盛り上げる
ノーヴェ: 筋肉にトラウマを残しちゃった少女。合掌