とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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大変お待たせしました。
……シリアスばかり。そろそろネタにはしりたい

コメディ「出番まだかなぁー」∥ω・`)チラッ

シリアス「だが断る」

コメディ「(´・ω・`)」

ではどうぞ。


第百八話 負けたくない少年

 

 

 

 古宮アオの要は『神器』である。彼が『救世主』と言われる由縁は、『無血の死神』と同じ『神器』の力があってこそだ。

 

 そんな要がないかれが仮に魔導師に挑むとする。

 

 惨敗である。理由はまず、彼は空へ飛べない。足場を作って跳躍はできるが長い間、空中にはいられない。

 

 また彼には遠距離の攻撃やそれに対する防御ができない。回避はできても数回だけで、後は集中砲火に合うだけだ。

 

 つまり、なのはのような遠距離専門の魔導師で、しかも空中戦を得意とする相手には勝てないのだ。

 

 空に飛ばれたら、そこから先はワンサイドゲームだ。一方的に砲撃を撃ち込まれる。

 

 高校二年のなのはと模擬戦をしているアオはまさにそんな状態だった。

 

 リハビリを兼ねた模擬戦で、アオは一方的にやられていた。

 

「ちょっ、それ反則!」

「勝てばよかろうなの!!」

 

 ジュドンッと砲撃をぶちこまれ、口から煙を出しながらアオは倒れた。これで十戦全敗である。

 

「『神器』のないアオくんってゴミだよね」

「ひどい! がんばってるのにひどいよなのはさん!」

「事実でしょ。この私に無傷で敗北してるし」

「……ぅ」

 

 痛い話である。もし、『神器』が使えなくなれば、彼は普通に成り下がる。

 

 審判をしていた雷斗は嘆息を吐きながら。

 

「古宮。テメェの課題は『神器』に頼りすぎるところだ。『神器使い』にとって『神器』はもっとも使う得物だが、それが使えなくなる状況はないことはないぞ」

「で、でも……」

「うちの馬鹿弟子でも『神器』無しで数百をぶちのめしたぞ。そこがテメェとヤツの違いだ」

 

 神威ソラと古宮アオの差はまさにそこだ。ソラは『神器』がなくても、変わらない実力を見せられる。それは幾度の国との戦いに勝利したゆえにである。

 

 対してアオが勝利してきたのは自国の内乱である。争いこそ小さく、長く戦ってきたわけでもない。

 

 それゆえ『神器』のみしか使ってこなかった。

 

「後々、そーゆヤツと出くわすことになるんだ。だから目標として高町を膝まつかせろ」

「ふっ、アオくんごときに負けないよ!」

「テメェはテメェで接近戦に慣れろ。目標は俺の攻撃全て防げ」

 

 なのは は にげだした!

 雷斗 は 十万ボルトをくりだした!

 

「あばばばばば!」

「こうかばつぐんだな。とりあえず、逃げたら今度はケツにカラシぶちこむから」

「変態! 鬼畜!」

「……あれ、ホントに痛かった」

「されたの!? ガッデム。アオくんの処女も手にいれるつもりだったのに」

 

 とそんな平常運転をぬかすなのはである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アオは駆ける。逃げ回る。

 

 正面からぶつかりたいところだが、過去にあったように彼は空中戦への土俵に踏み込めば確実に集中砲火を受ける。

 

 アオができることと言えば、なのはから離れ、機会があるまで隠れることだ。

 

「無駄無駄なの!!」

「うきゃぁっ!」

 

 しかし、やはりなのはの砲撃はビルごと貫く怪物だ。ビルに隠れようとしたら、そのビルごと破壊した。徐々にビルが破壊されていく中で、アオは思わずなのはにツッコむ。

 

「管理局がそんなことしていいのか!」

「勝てばよかろうなのアオくん! 勝てばジャスティスなの!」

「そんなの正義じゃないから! ジェノサイドだから!」

 

 勝てば官軍という言葉があるが、なのはを正義として捉えることしたくない。

 

 現にシュミレーションとは言え、ビルを破壊し、被害総額を増やしているわけなので。

 

 彼女を正義の味方にしたら管理局は確実に財政難に陥るだろう。

 

 「はっ、とっ」とアオはビルを駆け上がりながら、なのはからのスフィアを回避していた。

 

 追尾してくるスフィアに、アオは遂に空中戦へ挑むことを決意する。

 

 足場を作り、その場でスフィアを全て破壊した。

 

「へぇ。やるつもりなんだ」

「さすがに陸戦ばかりじゃ勝てないしね」

 

 「なら、覚悟するの」となのははレジングハートを構える。そこから集束されていく魔力にギョッとアオは冷や汗をかいた。

 

「い、いきなりそれ!?」

 

 アオの足元からベルカ式の魔法陣が浮かぶ。ベルカ式の『プロテクション』という魔法だ。確かに、これならば砲撃は防げないことはないが魔力にある質量で飛ばされる可能性がある。

 

 ……さらになのはが今から撃つ砲撃は、はっきり言って自身の最強の砲撃は魔法だ。

 その名は――――

 

 

「これが私の全力全壊!! 『スターライトブレイカー』!!」

 

 元気玉とかめはめ波を合わせたと言われる最強の砲撃がアオを呑み込んだ。まさに激流に呑み込まれたと言ってもいいくらいだ。質量関係なく、アオは確実に砲撃に流されているはずだとなのはは考える。

 

 魔法が収まると、そこにいたのはひび割れた『プロテクション』と服がボロボロになったアオが立っていた。

 

「……嘘。なのはの砲撃に耐えきったの!?」

 

 フェイトの驚愕する声に、なのはは同意していた。ありえない。あのダムから噴き出した激流のような威力を持つ砲撃に真っ正面から耐えきったのだ。

 

 困惑するなのはに、雷斗はニヤリと不敵に笑う。アオは動揺するなのはを好機とばかりに足場を蹴った。

 

「そ、そんな。どうしてアオさんは……」

「驚いたか小娘。あれがアイツの努力の証だ」

 

 雷斗は隊長陣のいるビルへ着地すると、周りが説明するようにせがまれた。なぜ『プロテクション』のような薄いシールド魔法だけであの大規模な砲撃を耐えきったのか。

 

 そんな全員に満足した雷斗は得意気に説明した。

 

 古宮アオが使ったのは特殊な『プロテクション』である。彼が構築した術式には、『プロテクション』にベクトルを加えることだ。

 

 魔法をそっくりそのまま跳ね返す『反射』などに使われることもあるが、威力が高い魔法ほどこのベクトルが逆効果になり、身体が吹き飛ばされることがある。

 

 なのでアオが構築したのは逆方向のベクトルではなく、受け流すような形のベクトルにしたというわけだ。

 

「せやけど、そんな簡単に全ての魔力を流せるはずがないやん。あんな大規模な魔力を真っ正面から受けたら、漏れた魔力が『プロテクション』を食い破るんじゃ……」

「そうだ。はっきり言って『受け流す』ことは高度な技術力と経験が必要だ。八神はやての言う通り、受け流しきれなかった魔力によって『プロテクション』が食い破るかもな」

 

 だけど、と続けて雷斗は言う。

 

「アイツの『魔眼』は『全ての流れ』がわかるもんだぞ」

「あっ!」

 

 ここにきて声をあげたフェイトだけでなく、全員も思い出した。彼の左目のレアスキル――――いや、体質とも言える『魔眼』は全ての流れを読み取ることができる。

 

 動作の流れ、血液の流れなどなどとあらゆる流れを読み取る。もちろん、魔力の流れも読み取ることができる。

 

 物質の一つ一つをピースとして捉えることができれば、パズルのように組み立てることができることと等しいのだ。

 

 アオの偉業は魔力干渉と魔力の動きが見えることだ。その凄さがわかるからこそ、雷斗は彼の実力を認めている。

 

(が、それでもデメリットがある)

 

 そのデメリットこそ、左目の魔眼にある。見えすぎるその眼を使用しすぎるとどうなるか……。

 

(気づいたようだな。コイツらはこの戦いの勝敗の分かれがなんなのかわかっているようだな)

 

 雷斗はアオに視線を向ける。先ほど飛びかかって放った斬撃は、辛うじてなのはに回避され、なのはに追撃を行っている。

 

 なのははまだまだ動揺しており、スフィアで動きを封じようとしたが次々と破壊される。

 

 今こそ、アオにとって好機で同時に最後の攻撃の機会だ。

 

 なのはがそれに気づいたとき、アオは確実に負ける可能性が高まる。

 

(短期決戦だ。時間は長くないと思え、古宮アオ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 アオの視界には次々と情報が流れていた。どのように魔力が動くのか、そしてなのはがどんな魔法を撃とうとしているのか、全て眼で理解する。

 

 しかし、同時に彼は頭痛と吐き気に襲われていた。

 

 人間の受け入れられる情報を脳で処理できることには限度がある。

 

 例えば、パソコンの入力された全ての情報を脳で処理しようとする。できないことはないかもしれないが、そんなことをすれば時間と労力がとてもかかる。

 

 さらにそれは休憩もない処理なので、脳が行える処理に限界を迎える。つまり、オーバーヒートで脳が壊れる可能性があるのだ。

 

 魔導師もまたこのようになる可能性があるのでないだろうかと思えるが、彼らはデバイスで演算処理を肩代わりしているし、『並行処理(マルチタスク)』という基本中の基本魔法で高度な演算処理を行っているため、オーバーヒートすることなどまずあり得ない。

 

 ……しかし、アオは魔導師のような複数の演算処理ができない。やろうとしても二つの演算処理だ。

 

 ここがなのはとアオとの差が出ている。なのはは『並行処理』を行うことで、魔法の構築、その実行と眼に映る相手はどのように動き、考えているのか二つの思考回路を持っている。

 

 彼女が行う『並行処理』は二つというより、かなりの数で行っているため、魔法の構築、実行の処理が早く終わることができる。

 

 アオはと言うと、できる『並行処理』は最大二つまでなので魔法の構築とその実行はできても、処理に時間がかかる。おまけに相手の動作を見極める眼による情報が膨大に脳に入っているため、彼の情報処理が間に合っていない。

 

 つまるところ、脳がオーバーヒートしそうかギリギリの状態なのだ。

 

「ぐっ、うっ……」

 

 呻き声をあげながら、なのはの魔法を魔力干渉を付与させた木刀で受け流す。

 

 そして遂に、彼の身体に異変が起きる。

 

「鼻血……?」

「ッ、はあァァァァァ!!」

 

 彼はもはやなりふり構わず、攻めに制した。防御など気にせず、とにかく攻める。

 

 なのはは『プロテクション』で彼の攻撃を防ぐ。

 

「エロいこと考えてるのかなー? ねぇ、アオくん」

「く、あァァァァァ!」

「……そんなにエロいこと私にしたいんだ」

「んな、わけ、あるかァァァァァ!」

 

 ツッコミながら彼は木刀を振るい続ける。相手が離れようとしても、食らいつく。

 

 そんな気迫が彼から感じられた。

 

(……まあエロいことはバッチコイだけど、どうもアオくんから余裕がなくなったね)

 

 アオに焦燥感で頭がいっぱいいっぱいになったことで、なのはは冷静になっていた。

 

 先ほど優勢だったのに、今の彼が劣勢になっていた。それはなぜか考える。

 

 そして思い至ったのは、

 

「演算処理の限界だね」

「ッ……」

「うんうん、図星だね。アオくんの眼は魔導師からしたら天敵と言ってもいいくらいの脅威だよね。でも、同時に自身の脅威だったりする。違う?」

 

 正解だ。気づかれてしまった。

 

 アオの勝利はもはや皆無だ。なぜなら、今までのことを踏まえて導き出されるもの、それはアオは――――

 

「短期決戦しか戦いきれない。それも神威くんよりも」

 

 性能からすればアオの方がソラより上なのだが、『神器』の燃費の悪さと脳への負担がある。

 

 そのため、アオはソラよりも長く戦えない。

 

 なのはに気づかれてしまえば、後はあえて持久戦に持ち込む。

 

 そうすれば、アオは力尽きてじっくり料理ができるというわけだ。

 

「というわけで」

 

 なのはは砲撃をバンバン撃ち放つ。

 

 これには、アオも『ベクトルプロテクション』で受け流すしかない。強力な砲撃で、彼のシールドはひび割れ始める。

 

 『ベクトルプロテクション』はシールドが厚くない。ベクトル操作でシールドの層が薄くなっているのだ。

 

 バンバン撃たれてしまえばいくら受け流すと言っても、シールドの耐久力に限度があるのだ。

 

 その限界を迎えたのは、十七回目の砲撃だった。シールドは砕け、アオは吹き飛ばされる。

 

 血が噴き出し、次に視界に写ったのは獰猛な笑みを浮かべて砲撃を放とうとするなのはの姿。

 

「ぐ、がァァァァァ!」

 

 真っ正面から。それも防御もとれないまま桜色の光線がアオを呑み込んだ。

 

 タッと降り立ったなのはは地へ叩きつけられたアオを見る。彼はボロボロになりながらも、立とうとしていた。

 

 木刀を杖にし、立ち上がることはできたがもはや戦える状態ではない。

 

「ここまでだよアオくん。あなたは私に勝てない」

 

 神器を使わず、『エース・オブ・エース』に挑むことはそもそも無謀なのだ。チビソラであっても、なのはの本気には勝てない。

 

 雷斗であっても神器を使わずして勝利はありえない。

 

 『神器使い』達は『神器』があってこそ、化け物になれるのだ。

 

「なんで立とうとするの? これ以上は苦しいことだらけだよ?」

 

 なんとなく彼女は聞いた。この戦いは既に決した。これ以上は無意味だと。

 

 しかし、彼は立ち上がる。それはなぜか聞きたい。

 

 アオは「なんだ。そんなことか」と言って。

 

「負けたくないから……。何がなんでも、なのはに認められたいから。僕は何度でも立ち上がるよ……」

 

 アオの言葉にフォワード勢は耳を傾ける。

 

「僕ははっきり言って『神器』がないとただの無力な人間だよ。いくら『魔眼』があっても、これは魔法があればこそ発揮できるものだよ。……でも僕は魔法が苦手だ」

「できても身体強化と軽いプロテクションくらいだしね」

「恥ずかしい話……勉強は得意じゃない」

 

 孤児の彼が学んだのは最低限の礼儀と計算である。

 

 文字そこそこで、覚えることと言っても生きるための最低限のことしか彼は知らない。

 

「ホントなんの取り柄なんてないんだよ僕には。ソラさんのような、才能の塊じゃないし、ティアナのような努力の天才にもなりきれない」

 

 だから、と続ける。

 

「悔しいから、僕は彼らに蒔けないために努力してきた。雷斗さんの教えに従ってこれたんだ!」

「……!」

「理想のために戦ってきた僕は、非常な現実の中で生きてきたソラさんと比べたらまだまださ。けど、いつかあの人に追い付きたい。そして越えたい!」

 

 それが古宮アオの目標。彼が目指すべき到達点。

 極めて遠く、果てしなく長い道のり。実現は不可能に近い。

 

「でも、君はもう戦えないよ。そんな身体で何ができるの……?」

 

 なのはは気を緩めていた今だからこそ、彼は人指し指と中指を立てる。ニコッと笑って彼は、消える。

 

「えっ……」

 

 そんな馬鹿な。消えることなんてあり得ない!となのはは困惑し、冷静でいられなくなった。

 

 そして全員が「あっ」と気づいたときには、背後。宙で回りながら木刀を振りかぶるアオの姿だった。

 

「ッ、レイジング――」

「遅い!」

 

 ズバァンッと脳天から決められた斬撃がなのはの意識を飛ばす。手加減したつもりだが、脳を揺さぶられ、それなりに応えたはずだ。

 

「ホント……ソラさんみたいな天才が羨ましいよ」

 

 できないことをあっけなくしちゃうもの。とアオは呟いて仰向けに寝転がった。

 




決戦の結末: そもそも空戦の魔導師に地上戦しか戦ってきていない神器使い達が勝つことはほぼ難しい話です。おまけに神器無しで挑むなど、一般人が無手で象に挑むようなものです。なので、アオはこのような不意打ちの形で終わらせました。……卑怯? 勝てばよかろうなのだ!!

勝てばよかろうなの: ジョジョネタ。カースという究極生物で検索

流水の魔眼: オリジナル創作のレアスキル。あらゆる流れ――『動き』がわかる能力。空気中の魔力も見えちゃう優れもの。ただし、流れを読むということにより、脳へかなりの情報を視界から送られているため、使えば使うほど、負担が大きい

古宮アオ; 丁寧なのだが、頭が悪いことが判明。勉強してもそこそこ。スラム育ちだからと言って、頭が良い悪いはその人個人よって決まる
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