とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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――――裏切り、再会、そして…………絶望





第十六話 『魔女』と神器使い

 崩壊していく庭園。もうじきここが崩れることもあり得る話だが、オレは目の前の敵に目が離せなかった。

 

「リニス、なんでお前がそこに立つ? お前はフェイトの隣が席だろ」

「……申し訳ありません。私はそこにはもう立てません」

 

 どういうことだ? フェイトの隣に立てないってどういうことだ。

 オレの疑問にリニスは衣服をはだけて胸を見せた。そこにあるのはたわわに実った果実だけではなかった。

 

 ドクンッ、ドクンッ。

 

 黒いひし形の宝石が鼓動をしていた。あれはまさか……。

 

「ジュエルシード!?」

「そんな……だって母さんが半分だけ奪って残りはアースラに……」

 

 十三個目のジュエルシード? いや違う。あれは似て非なるモノ。しかもオレはこの感覚を知っている。

 寒気と妖気を感じさせる嫌な感覚。

 

「『叛逆の力』……?」

「ありえないわ。だってそれはまどかによって私から切り離されたものよ! もう消滅したはず……!」

 

 まどかとほむらは驚愕していた。

 オレの死後、まどかがほむらを救ってくれた話のようだが、彼女達の話からすればもうないはずだ。切り離され、どこかへ消え去ったはずなのだ。

 

 なのに、存在していた。消滅しなかった。

 ほむらにとって黒いジュエルシードは見過ごすことのできないモノに違いなかった。

 

「私はある人により、生かされました……。ソラ。あなたと会うために」

「オレと?」

「はい、私は監視。あなたがどう動くのかあの人に教えなければならない生きた傀儡なのです……」

 

 リニスの話によれば彼女は既に死んでいたところをそのジュエルシードにより蘇させられたようだ。

 つまりリニスは死んだ身体でありながら生かされていたのだ。

 

(リニスが死んだ四年前……誰かに運悪く生かされたってことか)

 

 そんなことを考えていると、ほむらは剣呑な視線を生田ミカに向けていた。

 

「どこでその力を手にいれたの生田ミカ。答えようによっては殺すことも躊躇わないわよ」

「クヒヒヒヒヒヒ……話? 誰がするかバーカ!」

 

 生田ミカは黒い穴を出した。そこから出てきたのは人だった。中年の男性だ。

 しかしその人は目が死んでいた。いや精神が壊されていた。おそらく、生田ミカが壊したのだろう。

 

 生田ミカは向けてその人に手を向けた。

 すると地面から召喚陣が浮かび上がる。見たこともない召喚陣だ。日本の陰陽道をベースにしているような初めての陣に見とれていると男性が苦しみだした。

 

「ぐぎゃあァァァァァ! 嫌だ! 死にたくないィィィィィ!」

 

 彼の言葉にオレはやっと二人の立場を理解した。すぐに結界を『解錠』しようとしたが、何重の結界が張られているため、解除できたのは一層だけだった。

 

「ほむら!」

「わかってるわよ!」

 

 ほむらが『時間操作』で加速しようとしたとき、彼女達。いやみんなの前にプレシアさんが作った傀儡が現れた。

 しかも鎧がそのまま動き出したかのようなゴーレムではなく、マリオネットみたいな木でできた傀儡だ。そいつらの手首には刃が生えていた。

 

「邪魔をさせません」

「リニス、お前ぇ……!」

 

 リニスのせいでみんな対応せざる得なかった。傀儡が現れたせいで全員、生田ミカを止めることができなくなっていた。

 

 クソッ、時間稼ぎされた。このままでは不味い……!

 

 そう思い、何度も『解錠』した――だが、時既に遅かった。

 男性は塵に包まれ始め、人型を作り出した。

 その人型は徐々に顔を形成していき、髪もカラフルだったものから金髪へと変わり出した。

 

 金髪の金色の瞳。さらに異国人漂うイケメンで黒い動きやすい衣装を着た男だ。その人はハッとオレを見て哀しみを浮かべた顔になった。

 ……オレはその人のことを知っていたが、今は生田ミカの所業を許さずにはいられなかった。

 

「やりあがったな……!」

「何をしたんだ彼女は?」

「わからねぇ。でもオレの知る知識の中に似たようなものがあった」

 

 召喚術に種類がある。

 まずオレが神器を出すような『通常召喚』。これは単に魔力を消費するだけだ。

 その次に『特殊召喚』。条件さえクリアすれば魔力やデメリット無しで召喚できる。とは言ってもその条件が召喚するものによって超ハードである。

 

 そして最後に『儀式召喚』。これは魔力も条件も必要もない。

 必要なもの、それは……。

 

「生きた人間を代償に発動する召喚術。生け贄して召喚しやがったんだよこいつは!」

 

 オレの言葉にクロノ少年は足を一歩引き、驚愕していた。ショックだろう。なんせ、さっきの召喚で人が死んだ(・・・・)

 信じたくない話だ。

 

「そぉぉだよぉ! あの女から与えられた術、『穢土転生』だよぉぉ!」

「ミカ、なんてことを! なんで君が、君がそんなことを……!」

 

 オリ主くんは生田ミカに対して理由を聞いた。すると彼女は妖艶な笑みを浮かべた。

 

「だって、こいつがいるからぁ、草太が主人公になれないでしょぉ? だから殺してあげるのよぉ」

「僕は、そんな……。人を犠牲にしてまでなんて……!」

「草太が悲しむことないよぉ! 悪いのはこの男なんだからァァァァァ!」

 

 生田ミカが腕を広げた。直後、ガラスが割れる音と共に空間が変わった。

 子どものラクガキによって汚された世界。その空間にはオレは見覚えがあった。

 

「まさか……これって」

「『魔女結界』!」

 

 さやかの言葉でオレは辺りを見回す。そこで気づいた。オレとさやか、千香にオリ主くんしかこの空間しかいない。

 

「みんなはどこだ?」

「外にいるよぉ? 今ごろ、私の傀儡によって苦しんでるはずだよぉ」

 

 生田ミカ、いやこいつはもう……。

 

「生田ミカ、お前は何者だ?」

 

 オレは彼女に向けて言った。すると彼女はケタケタと笑い始めた。

 

「私は人間だよぉ? にんげんだよぉ? ニンゲンだ、よぉ、ニンゲン……にんげん……ニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲンニンゲン、クケケケケケケケケケケケケケケ!!」

 

 壊れた人形のように口をパクパク動かし、目がギョロリと白眼を向いていた。しかも涎を垂らす。とても女の子がしていい顔ではない。

 

 すると生田ミカの背中がメリメリ裂け、そこから大きなマリオネットが出てきた。

 洋人形で顔は三つあり、しかも腕は三対の六本。ギシリギシリと間接は唸り、顔は合計六つの目をギョロリギョロリと動かしていた。

 

「き、キモッ!」

「う、うわぁ……。さやかの魔女化よりもキモくね?」

「それってあたしの魔女化もキモいってこと? そうよね千香?」

 

 胸ぐら掴んでキレるさやかだが、こんなときは状況を見てほしい。なんせ、目の前にいるのは明らかに『魔女』なのだから。

 

『アヒャヒャヒャヒャ! コロス! コロシテやるゥuuuu!』

 

 腕を一本下ろし、オレとさやか達から分断した。しかもご丁寧に、金髪のイケメンによって結界まで張られた。

 クソッ……二人だけであの大型魔女はキツすぎる!

 

「自分の心配とかしたらどうだ?」

 

 金髪イケメン、いやこの人にはちゃんと名前で言うべきか……。

 

「お久しぶりです……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――師匠……!」

「ああ。ホントに変わったなお前……。目が戦士そのものだ」

 

 師匠――――『ライト=トランシルバニア』。『閃光』と呼ばれ、オレが英雄となる前に活躍していたお人。

 雷のような光の早さで移動し、暗殺執行する最凶の断罪者。敵国において知らない者はいない。

 

(あのクソヤロー……情とか云々以前な厄介な人を喚びやがって……!)

 

 情けとか、かけてしまえばあっという間に死ぬのはこちらだ。どこでこの人のことを知ったのかは知らないが、とにかくさっさと倒せない怪物なのは変わりない。

 

「さっさと倒せないから怪物だろ」

「なぜに地の文がわかった……。まあいいや。ぶっちゃけ、あんたを殺すのに気が引けないし」

「……オイオイ、一応師匠だぞ? 情くらいないのか?」

「ない。師匠はオレのせいで死んだ。情を与えたオレの甘さであんたは死んだんだ」

 

 もしあのときオレが覚悟しておけば。

 もしあのときオレが不殺を捨てていれば。

 

 何度思ったことか。何度後悔したことか。

 

 オレは師匠に向けて神器を向ける。死人はもう死人だ。割りきらなければまた失う……。

 

「復活したことに申し訳ありませんが……死んでくれ」

「できるかな? クソガキめ」

 

 最低最悪の再会をしたオレはわだかまりを残したまま、師匠に挑むのだった。

 

 

 

(ほむらside)

 

 

 

 ソラ達が生田ミカの力によって呑み込まれた後、傀儡達が一斉に襲いかかる。リンディ提督は援軍に傷口が浅い局員を送ってきたため、少し楽に傀儡達を倒すことができた。

 

「どうして……どうしてこんなことするの!? リニス!」

「フェイト……」

 

 リニスとフェイト&アルフの戦い。言葉からすれば二人のフェイト達が有利に思われるが、経験値からすればリニスが上だ。

 まずいわね。おそらくだが、心理的に二人が動揺してるため戦いに集中できてない。

 

「ほむらちゃん……これって」

「傀儡かと思ったけど……どうも違うわね」

 

 先ほどの傀儡はリニスが操作していたように見えた。だが、実際は違った。

 リニスは指示を出していたのだ。そしてこれはリンディ提督が言う傀儡ではない。

 

 まさかこんなところでお目にかかるなんて……。

 

「『使い魔』……。そしてソラ達を呑み込んだ結界は『魔女結界』ね」

「さやかちゃんと千香ちゃんと…………名前忘れたけど誰かが呑み込まれたね。マミさんと杏子ちゃんが向かおうとしてるけど、あの結界から出てくる『使い魔』達のせいで近づけてないよ……」

 

 外に出る使い魔なんて聞いたことがない。おそらく新種の『魔女』ね。

 しかし生田ミカが『魔女』になるなんて……。

 

「あの女……いつから『魔法少女』に」

「ほむらちゃん、今は考えない方がいいみたいだよ」

 

 まだまだ『使い魔』は出てくるけど局員も辛うじて戦えているが持久戦ではこちらが不利だ。

 

「……仕方ないわ。まどか、手を」

 

 私はまどかの手を握り、『時間停止』を発動した。まどかは停止した世界で天へ向けて魔力矢を放った。

 『時間停止』は解除されると天からピンクの雨が降り注ぐ。それにより多くの使い魔達は駆逐された。

 するとリニスの身体はこちらに向ける。フェイト達は地に倒れている辺り、敗北したようだ。

 

「すみません……ほむらさん。あなたを始末しろとこのジュエルシードから命令されて……」

「安心しなさい。私は引導を渡してあげるわ」

 

 グロック17を右手に、左手をバックラーに変えていつでも戦える状態にした。

 

 リニスが杖先が尖った錫杖を取りだし、突いてくる。右へ回避して右手の魔力の弾が装填された拳銃を発砲するも、魔力障壁により防がれる。

 

(ホントは世界に『時間停止』をかけたい。けれど、これは大幅に魔力が消費するわね……。それにそれで彼女が停まってくれるとは限らない)

 

 彼女はまどかの魔力矢を回避していた。つまりソラのように『時間停止』が効かない体質になっている。

 なので『時間停止』を使わず、倒すしかないようだ。

 

 リニスは光の鎖のような魔法で私を拘束しようとしてきたが、近くにいた傀儡を囮にして躱した。

 

 おそらく今ので捕まればフェイトの必殺技で殺られてていたわね。

 

「さすがですね」

「こちらだって長く戦ってるのよ。負けてたまるものか」

 

 リニスは私を捉えようと鎖の魔法をガンガン使ってくる。どういうつもりかは知らないが、私は囚われるわけにはいかない。

 早くまどかのサポートにまわらないと。

 

 そう思っていた刹那、リニスは鎖を引いてきた。そして繋がっていたのは局員達だった。

 局員達によってぶつけられて止まってしまった。

 

「ッ、まさか!」

「すみません!」

 

 局員達諸とも滅びの光線を放つ。ソラなら盾にしてもなんともなさそうなところだが、どうも私にはできそうにもない。

 私はやむ得ず『時間停止』を使い、世界を止めた。光線も止まり、その場から彼らごと飛んだ。触れてる局員達は謝ってすぐに私から離れると、また停止した。

 

「避けて!」

 

 リニスの錫杖が私の脇腹を貫く。咄嗟に避けたお陰で、急所は避けられた。

 『時間停止』を解除すると光線は誰もいない場所を破壊していたが私は右膝に着き、痛みを堪えるていた。

 

「ほむらさん……すみません。身体が勝手に……」

「ホント、嫌らしい黒幕ね……!」

 

 苛立たしい。まさか援軍によって自分がピンチになるとは、最悪だ。

 と、私はふと思い出した。巴マミと戦ったときのことだ。

 

(できるのかしら……)

 

 あれは計算というより、運良くという感じだ。それに私が使う魔力弾は薬莢が飛び出るため、普通の銃弾と変わらない。要するに弾数に制限がある。

 全ての弾と魔力を使う。たぶんこの後は辛い戦いになる。だけど……!

 

(やるしかない……!)

 

 私は覚悟を決め、『時間停止』を発動した。モノクロの世界により、色がある私とリニスは動き回る。

 

 私はまず魔力を纏ったゴルフクラブをブーメランのように投げて、それから一発目をリニスに放つ。当然、回避された。

 撃たれた魔力弾はその場で停止され、次に撃った弾丸も回避される。

 それから動きながら、バンバン撃っていく。

 

「闇雲に撃たないでください! そうしてしまうと弾が!」

「安心しなさい……! これも使ってあげるわ!」

 

 合計十発を放った後に手榴弾の安全ピンを抜いて、リニスへ投げた。それも私から五メートル離れた地点で停止した。リニスは爆発すると判断したため、その場から離れた。

 

「万策は尽きたのですか……?」

 

 残念そうに言うリニスは錫杖を構える。そして突貫してきた。私はそんな彼女に対して一言言った――――してやったりという顔で。

 

「いいえ、チェックメイトよ」

 

 『時間停止』が解除された刹那、銃弾が動きだし、手榴弾も軽い爆発を起こした。爆発したのはリニスの天上だ。上は視界でわからなくなった。

 

 錫杖が迫る中でリニスは能面のような顔だったが、次の瞬間驚愕に包まれた。

 

 それもそのはずだ。魔力弾が天から一直線に降り立ち、リニスの両手足を貫いたのだ。

 

「ッ、なん、で……」

「簡単な話よ。停止した銃弾が弾きに弾いて、ここに降り注いだのよ」

 

 まず一発目はリニスではなくゴルフクラブに向けて撃った。そしてゴルフクラブによって弾かれた魔弾の先に新たな魔弾に撃ち込み、そして弾かれた両方にも魔弾を撃ち込む。

 最後に上空の様子を見えなくさせるために手榴弾を投げ

、リニスをこちらに来るように仕向けた。

 

 全ては彼女の動きを封じるための無謀な所業だ。

 

「……最近、算数ばかりで演算能力が衰えていると思ってたから不安だったけど、案外上手くいくものね」

「全て、計算で……!?」

「あら、知らなかったの? 私って統計とかして怪物を爆死させてたりもしてたのよ?」

 

 トラップ式で『使い魔』や『魔女』を追い込んでよく倒したものだ。まあ、でも今回のような銃弾をビリヤードのような芸当は無謀な賭けだったけど。

 

「……さすがです。あなたが最後の相手でよかったです」

 

 リニスの身体はもう動けない。ジュエルシードが命令しても彼女の神経は先ほどの魔弾でやられた。リニスに最後の一発を向けようとしたとき、彼女の前に金色の髪が立ちはだかった。

 

「どきなさいフェイト。彼女は殺さなければならない」

「いや、です……」

「彼女はもう死んでるのよ? しかも生きた傀儡扱いされている。……もう彼女は黒のジュエルシード無しでは生きられないし、それを破壊しない限り私達は危機に落ちる」

「それでも……!」

 

 フェイトは声を上げて言った。

 

「それでもリニスは私の家族です! 大切な師匠です! 見捨てることなんか……できない!」

「………………」

 

 彼女の言いたいことはわかる。しかしこのままリニスを放っておけば危険なのはこちらだ。

 その甘さが私達を苦しめるなら、と思いフェイトを撃とうとしたとき、私はハッと目の前に気づいた。

 

「フェイト! 後ろ!」

 

 アルフの声で彼女はやっと気づいた。振り向くとそこには刃物を生やした傀儡が迫っていた。

 フェイトは戦斧を構えようとしていたが間に合わない。

 

 私は魔弾を撃とうしたが、魔弾は出なかった。

 

(詰まった(ジャム)!)

 

 グロック17を捨て、魔力矢にシフトしようとしたが刃物はフェイトに近づき、そして――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――貫かれた……。

 

「え……?」

「……そんな」

 

 フェイトは無傷だった。傷は一切ない。しかし血で濡れていた。

 

 では誰の血だ? そんなの決まっている――――彼女のモノだ。

 

「リニスーーーーーーーーーーーー!!」

 

 凶刃がリニスの胸を貫いていた。黒のジュエルシードも刃によって貫かれていた。

 ピシ、ピシピシ……とひび割れ、砕けそうだった。

 

 傀儡は刃物を抜き取り、フェイトを今度こそ刺そうとしたとき、まどかの矢により串刺しになった。

 

「リニス!」

「しっかりして!」

 

 フェイトとアルフは倒れたリニスを介抱する。彼女はフェイトを庇い、盾となったのだ。

 息絶え絶えなリニスは愛しいそうな視線を彼女達二人に向けていた。

 

「フェイト……アルフ……。ごめんなさい……私は、あなた達二人に……」

「ううん! 気にしないよ。リニスのせいじゃないよ!」

「そうさ! アタシ達はまた会えてうれしいよ!」

 

 彼女達の言葉にリニスは微笑む。しかし私でもわかる。

 ……もう彼女は長くないと。生かされるのに使われた核を破壊されたため、もう彼女はどうなるなんて容易に予想できた。

 

「フェイト……どうか。どうかプレシアを怨まないでください。彼女は確かにあなたのことを人形としか見ていなかったかもしれません……。けれど、ほんの僅かかもしれませんがあなたのことを大切に思っていたかもしれません……」

「リニス……」

「私には、彼女の心の穴を埋めることができませんでした。もしかすると、誰にも埋められなかったと思います…………ガハッ」

 

 吐血し、元気な肌色が青白くなっていく。しかも彼女の足が光の粒子となっていた。

 使い魔の死は消え去ることだろう。

 

「フェイト……アルフ。これからも二人で生きて、ください……。何者にも負けず、強く生きて……ゴホゴホッ」

「リニス、しっかりして! 死なないで! 私を、私を一人にしないでよぉ……!」

 

 フェイトは迷子になった子どものような泣き顔になっていた。するとリニスが最後の最後で、力を振り絞り、彼女の頭を抱き締めた。

 

 

 

 

「私は、あなた達に会えて……――――しあわせ、でし……た………………――――」

 

 

 

 笑顔。とても綺麗で満面な笑顔を彼女は最期に浮かべた。

 そして、その一言を最後にリニスは消え去った。光の粒子となり、フェイト達の前から消え去った。

 フェイトは呆然とショックを受けていた。彼女の死により、人形のように項垂れる。

 

「フェイトちゃん……!」

 

 高町なのはが傀儡をなぎ払い、彼女を抱き締める。それがトリガーに彼女の涙腺が決壊した。

 

「ひぐッ、ぅぅあァァァァァ……!」

 

 年相応に泣くフェイトに私とまどかは静かに傀儡達に視線を向ける。拳銃はもうない。マシンガンなどの重火器は家だ。

 ならば、と思い、私はバックラーをあの武器へと変化させた。

 

 

 親友(まどか)が愛用していた武器。

 彼女が消えた後、これで戦い続けてきた最高の武器。

 

 

 そう……私が使うのはまどかと同じ弓。魔力矢を使って滅ぼす最高の武器だ。

 

「……よくもやってくれたわね」

 

 かつて親友は言った――――私の名前の由来を。

 

「……よくもまどかの友達を殺したわね」

 

 かつて親友は言った――――私の名前の良さを。

 

「……よくも、よくも…………!」

 

 

 燃え上がる心。

 燃え上がる魂。

 燃え上がる怒り。

 

 かつて親友は私の名前をこう言った。

 

「よくも、私達の家族に手を出したな……!」

 

 『(ほむら)』と。

 燃え上がる情熱。永遠に消えない炎。

 

 それが私だ……!

 

 背中から黒の絵具で汚された翼を生やし、飛び上がる。その翼から突起のある羽を浮かび上がらせ、弓矢を構える。

 

 そして矢と羽を飛ばして傀儡達を串刺しにしていく。

 

「後悔しろ、懺悔しろ、反省しろ……! 私を怒らせたからにはただで済むとは思わないことね、木偶の坊達!」

 

 止まらぬ怒りと消えない闘志を燃やし、私は傀儡達を殲滅し始めるのだった。

 

 

 

 




『通常召喚』: 魔力を使った召喚術

『特殊召喚』: 条件を果たすことで魔力無しで発動する召喚術

『儀式召喚』: 生け贄を使うことで発動する召喚術。魔力無しで条件はないが、代償にしたモノに呪われる

リニス: 黒幕に操られた哀れな使い魔。本来、死を迎えるはずだったが黒幕により運命が悲劇的に……。

黒いジュエルシード: 『叛逆の力』で生み出された魔力の塊

『叛逆の力』: 悪魔の力。ほむらの力だった『愛』

『侵食する黒い翼』: 『まどか☆マギカ』最終話で見せたほむらの魔法。……彼女はこの翼と共に、孤高と共に戦い続けた

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