とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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(変更点)

・グロ注意!!
・だから彼はかつての両親を望まない……


第三十五話 幸せは夢にはない

 

 

 

 雪が降りそうな夜空にて、三人の少年少女達と銀髪の女性が空中に浮いている。

 

 一人の少年と少女はボロボロでもう一人の少年は疲労で息を荒げている。女性はまだまだ余裕そうである。

 

 ピリピリとした空気がある。

 

 戦いの雰囲気。

 生死をかけた争いの雰囲気。

 

 闘争がそこにあった。もしかするとオレも覚悟しなければならないかもなと思った。

 

 そんな一触即発な状況の中に、足場をつくってオレ達はそこに割り込む形で女性の前に現れた。

 

「綺麗な夜空になにしているのかな? あいにく今日はクリスマスイブだから良い子は帰るのが一番だぜ?」

「我が友!?」

「神威!?」

 

 後ろの二人の驚愕の声を無視し、オレは『神器』をバトンのように回していると女性が聞いてきた。

 

「お前がソラか……。主がお前のことに驚かされていたみたいだが全くその通りだ。お前の魔法はこちらの技術ではあまり使えない」

「真似事ができる辺りで充分なんだけどな。それで圧倒してたし。……んで、大人しくしてくれないってお願いの返答は?」

「ノーだ。我が主の願いを叶えるため、お前も眠れ」

 

 そう言って女性はオレに向けて雷の魔法を放ってきた。

 

 オレの得意魔法を使えるのか……!?

 

 オレはその攻撃を避けず、そのままにしていた。

 なぜかって? 答えはすぐに起きた。

 

「君ごときの魔法じゃあ、ボクの盾は貫けないよー?」

 

 千香は障壁でオレに向けられた魔法を防いだ。信頼できる戦友は揃っている。だから負ける気なんて全くない。

 

 と、その前に……。

 

「衛ー、ちょっとこっちに」

「我が友! 前だ!」

 

 衛の声がした直後、そこで前を向くと、銀髪の女性がオレに本を向けて――――――――そしてオレは吸引された。

 

え、マジで? どうしよ。

 

 つーか、不意打ちとか卑怯すぎる! 人のこと言えないけど!

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 いつの間にか眠っていた。目を開けると。そこは風が吹く青空が広がる外だった。

 

 どうやら草原でオレは眠っていたようだ。なぜかは知らないが眠っていたようだ。

 

 小さな(・・・)身体を起こして、目を擦る。眠気が抜けないそんなオレに背後から人の気配がした。影からしてオレより大きな男だ。

 だが、オレには警戒心はなく、むしろ喜びを感じさせる。

 

「こんなところにいたのか」

「師匠!」

 

 オレはその男――師匠の腹部に突撃した。それをどこか照れ臭そうながらも受け止める師匠も、うれしそうだ。

 

 それからオレは手を繋ぎながら、オレ達が住む家に向かう。修業に使っていた家だ。

 

 オレは『救いのヒーロー』になるために、強くなろうとここにいるんだ。

 

「お、ソラじゃねぇか」

「あら、こんにちわ」

 

 声をかけてくれたのはアルス兄とリーナ姉だ。二人は幼馴染みで新婚さんだ。美男美女のカップルみたいでいつも仲むつまじく、周囲の人達が悔しそうにしている。

 なんでなのかと聞いてみたら師匠は、「いつかわかる」って答えた。

 

 わかるんだろうなぁ。いつかは……。

 

 オレが次に会ったのはシスターことルキヤ先生。幼稚園で働いてる幼稚園のときにお世話になった女性だ。

 

 よく叱られたこともあるけど、撫でられたことがあったなぁ。

 

「あのライトさん。今度お食事に……」

「悪いな。先客がいる」

「またあの変態に敗けた……」

 

 ルキヤ先生が失礼なことを言っているが事実なので師匠は否定しない。

 彼女が言う変態とは、師匠の幼馴染みのノエルさんのことだ。プロのイラストレーターでよくわからないものを描いている。

 

 それをオレに見せてくるときがあるが、なぜか師匠に目隠しされるといつの間にか消えている。どこに行ったのか捜しにいったときもあるが、屋根に突き刺さっていたことがある。

 面白い人なんだけど、なぜか師匠やルキヤ先生は近づくなって言うんだけど……なんでだろ?

 

 そうこうしているうちに、家に着いた。オレは扉を開ける。

 

 そこにはいつもの風景があった。木でできたテーブルやイス。壁や床は石を交えたログハウス的な家だ。

 この家は二階建てで四つの部屋があるのだけど、上は誰の部屋だったっけ?

 

 忘れちゃったなぁ。

 

「とにかく手を洗ってこい。飯にするぞ」

 

 そう言って頭を撫でられる。とても心地よい。オレが洗面台に立つ――――前に、踏み台を用意する。

 鏡を見ればまだ幼い顔をした六歳のオレがいた。そういえば、ここに来てまだ半年なんだ。

 

 オレが手を洗うと、そこにはテーブルに料理を置く女性と椅子に座って新聞を読む男性がいた。

 

「あら、おかえりソラ」

「修業、よくがんばったな」

「――――――――」

 

 絶句した。オレは目を開いてこの二人を見ていると師匠は、

 

「この子は才能がありますとお父上」

「そうかぁ。いやぁ、私も誇らしい。なんせ『閃光の神器使い』に認められているなんて、自慢の息子だ」

「そうねぇ。そう思うでしょ?」

「うん!」

 

 オレより幼い少女の声が背後からした。後ろにはニコニコしていたオレと同じ黒髪の少女だ。

 

「お、お前……は」

「おにいちゃん、ごはんたべよ!」

 

 どうやらオレの妹のようだ。そうだ。彼女の名前は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――名前? 何を言ってるんだ?

 

 オレはこの少女の名前なんて……知らない(・・・・)じゃないか。

 

 

「なんて悪趣味な世界だよ。ホント……」

 

 ホントに悪趣味だ。なんせ、この世界はオレにとってとても都合が良すぎる。

 

 死んだ師匠が目の前にいて、めったに見せない笑みを浮かべてオレを撫でてくれる。

 

 目の前にバラバラに別れる前の優しい両親がいる。

 

 その人達は優しい笑みを浮かべてオレを見てくれているし、妹もできている。

 

 確かにこれは幸せだ。ただな――――

 

「『普通』の幸せだな……。はぁ、改めて自覚するとオレって歪んでるなぁ」

「ソラ? 何を言って……」

 

 それ以上、オレの父は口を開かなかった。なぜかって?

 答えは簡単――――オレが『召喚』した剣で、顔面に突き刺したのだ。

 

 血が吹き出し、オレの顔を紅く染める。

 

「お前、何をやっ――ぎゃが!?」

 

 次に斬ったのは師匠だ。本物の師匠ならばオレが父親を殺す前に止めていたはずだ。

 だが、こいつはしなかった。できなかった。

 

 本物じゃなく、幻想の産物だから。

 

 オレの母親に目を向けると台所で、娘を抱いて震えていた。「なぜ、どうして!」と叫びたいかのようにオレを見つめていたが、気にせず徐々に近づいた。

 

「六歳の頃のオレの知ってるあんたは優しく母親らしかったよ。けど、再会したあんたがオレに言った言葉を覚えているか?」

「何を、言ったの……?」

 

 震えた声で聞いてきた。オレはニッコリと笑って言う。

 

「『消えなさい。消えなさいよ過去の幻想。この化け物が』」

 

 一閃。母親を、娘もろとも縦から斬り殺した。噴水のように血を浴びたオレは目につく血を、布巾で拭いた。

 それから外に出て、次なるターゲットに向かう。

 

 次に殺したのはシスター・ルキヤ。彼女は前世では確かに子ども達と過ごす生活を教会でしていた。

 けれど、敵国の三下によって人質にとられ、そして裏切った。オレは彼女を救うことはせず、ただ三下を殺すために子ども達を見捨てた。

 

 結果、彼女は死んでない。しかし心は死んだ。オレが殺したとだと批難してもいいが、裏切ってオレ達の国を窮地に追い込む輩だったから同情はしなかった。

 

 そんな彼女を後ろから串刺しにした。剣を抜いてぐったりした彼女に向けて言う。

 

「あんたは悪人じゃないよ。単なる裏切り者さ」

 

 オレは足を動かして、次に狙ったのはアルスとリーナだ。

 

 戦友だった。友達だった。そんな彼が生きていれば、オレは女神と契約することはなく、『無血の死神』や『鮮血の断罪者』と呼ばれることなんてなかったのかもしれない。

 

 アルスは幼馴染みリーナに裏切られ、そして裏切りを施した主の仲間によって彼は死んだ。

 

 英雄となるきっかけを与えてくれた彼をリーナごと斬り殺す。

 血を噴き出し、倒れる二人に言う言葉は、

 

「安らかにな、アルス。会えてうれしかった」

 

 それからオレは幻想に生きる住民達を殺した。

 殺して、殺して、血の海へと変えた。

 

 笑みが込み上げる。興奮する。そして笑った。

 

 あぁ、なんて楽しいんだ!

 人を殺すのが楽しい!

 

 楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しいタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイタノシイィィィィィ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って、キャラ違うだろ。楽しいどころか、疲れた……」

 

 これがランナーズハイってヤツかねぇ……。はぁ、『切り裂き魔』を演じてみたけど、彼女のように狂えない。むしろ、疲れる。

 人を殺す度に、こうなんかドッと疲れる。一人殺す度にたまるから、もう殺したくなくなる。

 

 『切り裂き魔』ならば楽しんでいるだろう。そして悲しんでいるのだろう。

 

 まあ、彼女がどうなったのかは知らないが、ここにいなかったのは事実だ。

 

 どうやらオレの夢だが、オレだけではない何者(・・)かの干渉があったのだろうな。

 

「オレには狂人としての因子がないのかも。別に狂人になりたいわけでもないが」

 

 すると、さっき斬り殺したはずの、死んだはずの師匠が目の前に立っていた。

 

「なんで、なんでこんなことをした!!」

 

 師匠らしくない口調だ。あの人はいつもクールだから、落ち着いた口調でオレを批難するはずだ。

 さらにヤツは師匠の姿と声をしている。殺した師匠を、再び復活させて、その姿となっている。

 

 よって、ヤツこそがオレの夢に干渉する何者かだろう。

 

 まあ批難する理由もわかる。確かにここには幸せという夢のような世界だった。

 

 亡くなった友達もいた。

 亡くなった戦友がいた。

 

 尊敬する師匠がいた。

 変態のノエルがいた。

 幸せなアルスがいた。

 

 嬉しかったよ。そして――――

 

「黙れ偽物。師匠の声でそれを語るな」

 

――――ムカついた。

 

 とても堪らなく。どうしようもなく。

 

 なぜ、とヤツは聞きたそうだったので答える。

 

「オレは、さ。さんざん嫌というほどオレは現実を見てきた。だからこそ、幸せなこの世界が憎い。嫉妬するほどムカつく」

 

 もし、幸せの夢のままで終わらせたかったのなら、幼い頃の両親を出すのではなかった。妹や母親を出すべきではなかった。

 

 母親に拒絶された思い出はトラウマだ。もう思い出したくないのに、たまに夢に出てくる。

 

 好きという気持ちは鬱陶しいに変わっていたよ、ホント。

 

 そうだ。オレは子どもの頃にあった理想と心は既に捨てた。殺された。

 

 『ヒーロー』にはもうならないし、なりたくもない。オレがなったのはそう、オレは英雄。

 

「『無血の死神』。『鮮血の断罪者』――――オレは英雄と呼ばれてる殺戮者……神威ソラだ」

 

 師匠の姿をしたヤツを『神器(全てを開く者)』で斬り殺した。

 

 オレは『ドコでもドア』を展開して夢の世界から出た。

 

 




ソラの師匠(ライト): クールでかっこいい師匠。幻想の世界では彼の剣術を鍛える先生。良き人格者で熱血だった

ルキヤ: 前世ではソラを裏切ったシスター。その結果、人質にされていた子どもを殺され、心が病んだ。幻想の世界では幼稚園の先生。ライトにベタぼれ

アルス&リーナ: 前世ではダークなことが起きていた戦友とその幼馴染み。幻想の世界では仲の良いカップル。

ノエル: 我らの変態お姉さま。幻想の世界では有名なイラストレーター

ソラの父: 前世のソラの父。彼がどうなったのかはわからないが、前世の母親と離婚しているようだ。幻想の世界では、彼が登場してもソラはやや揺れる程度だった

ソラの母: 前世のソラの母。ソラを化け物だと幻想扱いしてしまったのは、彼女がソラを亡くしたと思って病んだから。幻想の世界では、彼女が登場したことによりソラはここが夢だと気づく。それでも……と思っていたのか気づかないふりをしていたかもしれない

ソラの妹: 前世ではソラの種違いの妹。ソラの前世の母が再婚して産んだ子ども。幻想の世界では妹として登場したが、彼女の登場によりソラは自分がどういう思いだったのか自覚してしまった。その結果が、皆殺しへとなる

『切り裂き魔』: 謎のマッドサイエンティストな美少女。文字通り、切り裂き、解体が趣味。ソラも彼女のように真似るも、人を殺す度に疲れることを改めて自覚してやめる

夢に干渉している者: いったいどんなアインスなんだー?
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