大切な居場所を奪われた。
彼は眠りにつかされたとき、来てくれたのは――――
(by天ヶ瀬千香)
(??side)
愕然とした。誰もが草太の凶行に驚愕し、愕然とした。まさか、味方であるキアラに手にかけるなんて思いもしなかったからだ。
「天宮! お前は何をしている!」
「うるさい! 悪いのは神威だ。何もかも神威が悪い!」
草太は自分の非を認めようとしない中で、千香がフラりフラりとソラに近づく。
「あ、あ……ぁ……」
彼女はやっと思い出した。彼が倒れ、目を瞑る光景を見てやっと彼女は神威ソラを思い出した。
「ボクは……ボクはぁ……ぁあぁぁぁぁぁ!!」
発狂するくらい彼女は泣き叫んだ。彼女はいつも手遅れだった。
彼が戦争で倒れたときも、彼がほむらによって死んだときも、いつも手遅れだ。
ソラの近くに彼女の膝は折れた。絶望した表情に染まり、全ての景色が灰色になっていく。
「なんで、なのでなのでなのでなのでなのでなのでなのでだよ……! なのでボクは、こんなにも! ――――こんなにも鈍感なんだよぉ……!!」
気づくべきだった。
早く気づいて、ソラを一人にするべきではなかった。
また彼を、愛しい人を、失ってしまった。
孤独にさせて死なせてしまった……。
「天ヶ瀬……そいつから離れろ。今度はその死体を、」
「黙れ!!」
千香の『神器』により、全員、半透明の壁によって弾き飛ばされる。唯一ソラとキアラだけ飛ばされなかったのは、計算してのことだ。
「ボクはホントに……許されないことをした。彼を一人にした挙げ句、ひどいことを言った……。ボクは、できるなら今すぐ死んで詫びたいよぉ…………」
しかし千香は死ぬわけにはいかない。ここで死ねば、キアラとソラを誰が守る。
今度は千香が二人を守るときだ。
「どうしたんだ千香! まさかまた神威に!」
「洗脳なんかされてない!」
いい加減にしてほしい。彼女は何度もそう思った。
「ボクはボクの意思で動いてる! 君みたいな自分勝手に動かされる駒じゃない!」
「……!?」
「ボクは、ボクだ。天ヶ瀬千香は神威ソラを愛してる。大好きだ! この気持ちも、想いも、誰にも渡さない!!」
かつて人形だった少女が、初めて誰かの前に宣言した。千香はもう迷わない。彼女はソラのために戦う覚悟があった。
「……千香が神威に洗脳されたみたいだ。もう助けられない。こうなってしまえば、神威もろとも」
「テメー、正気か!? さっきからめちゃくちゃなんだよ!」
「うるさいうるさいうるさい……うるさいウルサイ!!」
ブワッと草太の周りから突風が吹いた。そして彼の切断された腕から黒い腕が生えてきた。
「俺は正しい。正しいんだ! 周りがマチガッテイル!」
「そう、たくん?」
彼の豹変ぶりになのはとフェイトは困惑する。そんなとき、クスクスと周囲から笑い声が響いた。
『クスクス……自身の過ちを認めない――――そんな人間を見ていると滑稽だわ』
「お、お前は!」
全員が驚愕した。草太の背後に、アインスやリニスを死に追いやった根源がそこにいたのだ。
直に見た悪魔の顔はバイザーで覆われており、服装は黒いドレスだった。
その妖しい雰囲気に誰もが呑み込まれた。
『感謝するわ。彼のおかげで、ソラの魂を……ほら』
悪魔が見せたのは、青白く輝く球体。その中には一人の少年が眠りについていた。
「ソラ!」
『あなた達が彼を追い詰めてくれたおかげで、私はこの手に魂を得ることができたわ』
「キミが何もかもの元凶だったのか……!」
『然りと言っておくわ』
クスクスと笑う悪魔にキアラと千香はそれぞれ武器を構える。悪魔はそんな彼女達を嘲笑する。
『あら、あなた達に何ができるというのかしら? もはや、そこに眠っているのは脱け殻。切り離された魂は二度と戻らないわ』
「それでも……それでもボク達は!」
二人が悪魔に飛びかかる。千香とキアラのナイフは悪魔に――――届かず、草太によって身体を飛ばされる。
「彼女に危害を与えるな」
「っ、天宮草太。彼女はアインスの怨敵だぞ。なのに、なぜ味方にする!」
「正義のためだ。そう、俺は正しい……正しい……タダシイ」
狂気の目を宿しながら呟く草太が突如、背中から翼を吹き出す。黒い漆黒……闇の翼から何人かの人型に別れていった。
『あら、新しい力を使うのね』
「なんだ。それは!」
『知ってるはずよ天ヶ瀬千香。あなたと暁美ほむら……いえ、美樹さやかが手にいれた災厄の力』
「まさか……!」
かつて三人の少女がその力を得た。そして辛く悲しい想いをした。
災厄の力――――『魔女』。天宮草太は『魔女』となっていたのだ。
『さしずめ、「ヒーローの魔女」かしら。独善が性質なんて、たちの悪い話よねぇ』
悪魔はそう言ってパチンと指を鳴らす。その瞬間あと、まどか達に球体の結界が現れた。
『これで邪魔者はいなくなったわ。彼女達にはオーディエンスになってもらわないとね』
「くっ、援軍は……!」
「無理、みたい。見た感じボク達の結界も乗っ取られて牢獄状態だよ」
千香は歯を噛み締める。事態が自分達の不利を物語っていた。
おまけに草太はさらに地面からプレシア達が使っていた傀儡兵を喚び出した。
暗闇の穴から出てきた傀儡兵はプレシアのものより、固そうな盾や鋭い槍を武装しており、パワーアップしていた。
『さあさあ、たった二人でどうするのかしら……クスクス。負けたら、ソラの記憶は今度こそ抹消されて彼が主人公になるのよぉ?』
圧倒的戦力差。そして物量。傀儡兵をしのいでも幹部らしき未知の『使い魔』がいる。
もはや、勝負どころではない。
遂に彼女達の心はほぼ折れかけ、力無く武器を落とす。そして、無慈悲にも傀儡兵が飛びかかり――――
「だから、どうした」
その傀儡兵は何者かによって動けぬ藻屑にさせた。二人の前にいたのは黒髪で金色の瞳を持つ青年とエメラルドヘアーの女性だ。
青年の手には小太刀が握られており、それを使って傀儡兵をガラクタにしたのだろう。
「ヌフ☆ 死んじゃえ。きゃははははははは!」
一方、女性は両手からチャクラムを召喚し、狂気的な笑い声をあげながら、半径十メートルにいた傀儡兵をスクラップに変えた。
『あなた……確か、』
「はじめましてだなクソ悪魔。そこのクソヤローに試し斬りされて寝ていた――――
――――五木雷斗さんだよコノヤロー」
英雄が眠りについていた今、目の前にいる二人を見て彼女達は思う――――『最凶コンビの再来』、と。
悪魔: 彼女の狙いは未だにわからず……。
神威ソラ: 魂を切り離された――――わけではない。次回、判明
天宮草太: 『ヒーローの魔女』。その性質は『独善』。ありとあらゆる能力をもっており、まだまだ秘められた力があると思われる。……ぶっちゃけ、もう人じゃないから殺っちゃってもいいよね? 思う方は挙手!
天ヶ瀬千香: かつて彼女はソラを助けることができなかった。気づいた頃には既に手遅れ。そんな前世を経験してきた。今回もそうなったことで遂に彼女は、自身の我儘を貫くことを宣言した。人形であることとやっと決別したのです。
……ちなみにやはり彼女は狂気的で変態でなければ面白くないのは自分だけでしょうか?
五木雷斗: お気づきな方がいると思いましたが『彼』です。初代ノエルの苦労人です。口が悪いのはデフォルトなので気にしないでください。
ノエル: 我らの変態お姉さま。今の彼女は『最高にハイってヤツだァァァァァ!!』というノリです。彼女がもたらすものはやはりシリアスの台無しです……
コラボ:
コラボ「そろそろ本気でいかせてもらおうか」
本編「なぜにナルトの某先生のセリフを引用?」
――――次回予告――――
現れた最凶コンビ。
混ぜるな危険な二人が現れたとき、奇跡は必然となり、偶然は彼方へ消えていく……。
要するに最強の味方がやってくるのです(笑)
次回、『最高の味方』
「さあ、祭りの始まりだボンクラ共」
「ゲストの皆様も楽しんでってね!!」
――――災厄級の召喚が行われる……