とある転生者の憂鬱な日々 リメイク版   作:ぼけなす

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第七十九話 わからない……けどやらなくちゃいけない気がしたんだよ

 

 

 

 一通りパルテノン(キアラ曰く)を破壊してから、オレは朱美姉妹、キリト達と合流しようと基地内を歩いていた。

 レジスタンスのベースはレプリロイドの部品と疑似血液と呼ばれるオイルくさい液体で散乱していた。

 

 ……機械でよかった。もし、実際に人間だったらと思うとどこぞの漫画のようなグロ劇場になっていた。この小説は健全な少年少女が読むものですから。

 

「既に朱美姉妹や千香のおかげで健全からかけ離れているのではないかい?」

「安心しろ。まだ性描写がない。まだ大人のスポーツが行われていない限り健全なんだよ」

「記憶を失う前のキミは何度もそのスポーツをさせられそうになったと言っていたが」

「なんてこったい」

 

 友江姉妹を含めて、次回から一緒に寝るのをやめよ。なんか黄色の長女さんの見る目が雌豹のものになってそうな気がするし。

 お姉ちゃんが最近怖い今日この頃だな、これは。

 

 なお、フェイトはさっきから落ち込んでいる高町を励ましている。……もうこれに懲りたら油断するなってことってことだ。

 

 雑談を歩きながらしていると、朱美妹が走りながらこちらに向かっていた。目から雫をこぼし、オレの胸に抱きついてきた。

 

「ソラくん、ほむらちゃんが……ほむらちゃんが!」

「落ち着けまどか。いったい何があったのか説明してくれ」

 

 泣き始める朱美妹をなだめると、ポツリポツリと最初から説明し始める。なんでもオレに似た男が朱美姉を誘拐したらしい。

 その男の狙いはオレなのか、誘いのエサに朱美姉を誘拐したようだ。

 

「ふーん。で、オレはどうしろと」

「リアクションが薄い! ちょっと、少しは心配とかしてよ!」

「だって、まだ死んでないだろ。なら、これから何をすればいいのか考えるのが先決だろ」

 

 ぶっちゃけ、朱美姉妹とオレとの関係は他人でしかない。家族でもなければ友達でもない人間でオロオロしろというのは少し無茶だろ。

 そんなオレの冷たい対応に朱美妹は不満に感じたのか拗ねてしまった。

 

 ……オイオイ。人の問題をオレを巻き込むなよ。

 

「ソラ、わたしからも頼む。彼女を助けてやってくれ」

「それに対する報酬は? メリットがなければオレは動かないぞ」

「……翠屋のシュークリームと埋め合わせのチャラ。これでいいだろ」

 

 ……なぜシュークリームなのかはさておいて、埋め合わせのチャラというのはありがたい。キアラの埋め合わせはとても厄介な案件が舞い込むからなぁ。

 

 そんなことを考えているとつゆ知らずキアラも朱美妹と同じように険しい顔をしていた。

 

「ソラ、シエルが浚われた! 助けてくれ」

「え、やだ」

「即答!?」

 

 当たり前だろ。つーか、シエルと共にいたレプリロイドの近衛兵もやられたのか?

 結局、物量差でやられちゃったってわけか。

 

「お前、なんで……」

「なんでってメリットないから。損得勘定で考えて、シエルを助けたところでオレは何を得る? 笑顔、お礼の言葉。どれも骨折り損な報酬ばかりじゃないか」

 

 オレの言葉にキリトは拳を握り、殴りかかろうとした。

 しかし、それが起きる前に、パチンッとオレの頬に鳴り響く。殴られる前に朱美妹によって平手打ちされた。

 彼女は涙目で叫ぶ。

 

「いつからあなたはそんな人でなしになったの……! ソラくんがそんなひどいことを口に出してほしくなかった!」

 

 朱美妹はキッと睨みながら、怒鳴ってきた。

 

 ……言ってほしくなかった、だと。オレの中の何かがこのとき弾けた。それを朱美妹にぶつける。

 

「……お前の人物像を押し付けてるじゃねぇよ」

「押し付けるわけじゃ……」

「押し付けてるじゃねぇか!!」

 

 肩を掴み逃がさないようにする。

 

「『以前のソラならこうする、ああする』。ああ。そうさ、以前のオレならそうするかもしれないな。けどな、今のオレはそんなことしたくない!!」

「どうして! どうして、そんな……!」

「人が信用できないからさ」

 

 オレの言葉に誰もが黙り込んだ。ああ、そうだ。オレはもう人を信用も信頼しない。いや、したくない。

 

 

 なぜなら人は裏切るからだ。

 

 

 人はいつか裏切る。オレは何度もそうあったことがある。

 幼い頃のオレ。朱美姉妹達と過ごした記憶はないが、その他は覚えている。

 多くの友達ができたように、敵もできた。そしてその友達が手のひら返して裏切られたこともある。

 

 それでも幼い頃のオレは人を信じようとしていた。まだ希望はある、いつかそれが正しい。

 

 救いのヒーローが人を信じないと、誰も救えないから。

 

 そうやって馬鹿正直に生きて、その果てに待っていたのは裏切りによって失う家族の死――――オレの師はそうやって死んだ。

 

 理想を信じ、人を信じた果てに待っていたのは裏切りだった。

 

 報われない。救われない。なんと愚かで哀れな結末だろう。

 以降のオレは敵だけでなく味方も信じたくなかった。

 

 信用も信頼も全て無意味だと感じるから。

 

「お前にわかるのか! 信じた理想が現実に裏切られ、信じていた人も裏切られ、師匠を殺されたオレの気持ちが!! お前なんかにわかるのかよ!」

 

 いつの間にか零れ落ちる涙。泣いていた。

 

 悲しかった。辛かった。苦しかった……。

 信じた人が敵だと認めたくなかった……。何度、そう考えたことか……。

 

「何が英雄だ。何が『無血の死神』だ。オレはそんなに強くはないのに、なのに……なんでオレは裏切るかもしれない『他人』を助けてなきゃならないんだ!!」

 

 助けた人に恐怖される。

 助けた人に罵倒される。

 助けた人に殺されそうになる。

 

 『英雄』だから強いんじゃない。『英雄』だって本質は心がある化け物なんだ……。

 それをわかってくれず、他人の理想を押し付けられ、オレはいつしか人に『絶望』したんだ……。

 

 だから、オレは…………。

 

「キミは合理的にならざる得なかった……か」

 

 キアラの言葉にオレの膝は地についた。高町とフェイトはなんとも言えない表情に、キリトは何も言わず黙り込んだ。

 

 顔は俯き、涙で顔はぐしゃぐしゃになった。朱美妹を掴んでいた手を力なく、垂らす。

 朱美妹はそんなオレの顔をガッチリ固定して、そして。

 

「フンッ!!」

「ぶっ!」

 

 鼻に向かって頭突きされた! 痛い!

 

「何しやがる!」

「ソラくん! 私達をあなたは見くびり過ぎるよ!」

 

 ビシィッと指をさされる。もう片方の手は自分の頭を撫でていたが。

 

「私達は裏切る? ふざけないで。私は、私達はそんな人達と一緒にしないで! 私達は絶対に裏切られないよ!」

「なんでそう言える! オレが知ってるヤツらは……!」

「そうだね。ソラくんを裏切った。けど、その人達には理由があって君を裏切ったよね。お金、人質、地位をエサにされて、君を裏切った」

 

 けど、と朱美妹は続けて言う。

 

「私達は裏切らない。あなたを手のひら返して、見捨てないよ!!」

「なんで、なんでお前は……」

 

 どうしてそこまで言える。

 どうしてそこまで自信がある。

 

 最後まで言えなかったのにも関わらず、朱美妹はまるで最初からわかってましたと言うかのように、答える。

 

 

 

「だって、私はソラくんのことを信じて(・・・)るから」

 

 その言葉に耳を疑った。オレの心情に気にせず彼女は続ける。

 

「私はあなたを知っている。あなたは私を知らないかもしれないけど、私が知ってる限りあなたのことを信用できる」

「…………」

「その証拠に、

 

 

 

 

 

――――ほら、こうしてあなたに『助けて』ってお願いしている。そうでしょ?」

 

 

 理解、できない……。彼女の言葉は本当にわけがわからない……。

 

 自分の知ってる人間だから信用できる。

 自分が理解している人間だから信頼できる。

 

 彼女はそう言ったのだ。一歩間違えれば、他人に押し付けられた理想像だ。

 とてもひどい女だ。ひどいよ、ホント。

 

 ひどいから、オレは泣きたくなった。安心してしまった。

 

 この女の子は、どうあってもオレを信じていてくれる。オレを信頼してしまっている……。

 

 ああ。オレは知ってしまった。いや、思い出してしまった……。

 心からこの人は大丈夫だって、信用できる人がいるんだって、安心できる穏やかな感情を……。

 

 冷たく尖っていた心に、暖かいものが流れてくるような気持ちになった。

 

 朱美妹はオレの顔に自分の胸を当てるようにして抱き締めた。頭を、子どもをあやすように撫でられる。

 彼女に甘えていると自覚して、恥ずかしいという気持ちとは裏腹に、オレは幼い頃に知る母親の暖かさを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……青春だねぇー」

「というかいいのかお前は。あそこに混ざらなくて」

「安心しろ。あと五秒でこのハートフルは終わる」

 

 

「はっ。これはソラくんを籠落させて、洗脳できるチャンス……!? ソラくん、さあ。もっと甘えていいよ! 犬のように盛って、野獣のごとく攻めてもいいから!!」

「台無しじゃねぇか!! てか、離せ! チュッチュッするなァァァァァ!!」

 

 

「ほらね」

「あー……うん。変態のシリアスが長く続かないのがわかった」

「ちなみにキミからソラと同じ感じがするよ」

「マジでか。ヤベー、変態いない――――あ、いたわ。幼馴染みで、性癖がヤバいヤツ」

 

 キリトにもいるんだそんな人が。

 

 

 

 

(??side)

 

 

 

 朱美ほむらは目を開けた。視界に映ったのは、白いレインコートの男だった。彼女は誘拐されてから連れて来られたのは薄暗い一室。どこなのかはわからない。

 ほむらは両手を鎖で縛られ、身動きがとれなかった。

 

「……悪趣味。この美少女である私を縛ってどうするつもり? まさか、イヤらしいことをするのかしら。エロ同人みたいに!」

「しねぇよ。つか、貧乳がいきがるな」

「……久しぶりにキレちまったよ」

 

 まだ成長の余地が!とほむらは内心言い訳していると、男はパチンッと指を鳴らす。

 すると照明で部屋は明るくなり、そこにいたのは虚ろな目で玉座に座るアオの姿だった。

 

「彼に何をしたの?」

『なに、少し洗脳してやっただけさ』

 

 虚ろな目をしながらアオは立ち上がり、神器を出して虚空に剣を振り回す。調子が良さそうに見えるが想いのない斬撃、とほむらは内心嘲笑した。

 

「……それでヴァイル。あなたは救世主の力を手に入れて何がしたいの?」

『次元世界に侵攻。わし達はそれが狙いだ』

 

 『全てを開く者』を使えば、次元艦という移動手段なくとも奇襲の形で渡れる。これは侵攻される国や世界にとって、なんの準備もなく攻められるに等しい。

 よってすぐにその国や世界がヴァイルの手に落ちるのは容易に想像できる。

 

 ほむらもそう考えたのだが、嗤笑する。

 

「あなた達、それが本当に成功すると思っているの?」

『……どういうことだ』

「彼がいる。この世界には救世主なんかより、ヒーローなんかよりも頼もしい英雄がいるのよ」

 

 ソラならなんとかしてくれる。それは思い込みに近いが、いつだって彼はなんとかしてくれる。

 そう信じているから、彼女は自信をもって言える。

 

「神威ソラがいる限り、あなた達に勝利を渡さないわ」

『……ふ、ふふふ。クヒャヒャヒャヒャ! そうだった。彼女が言っていた英雄がいたのだったな!』

 

 『彼女』。それが何者なのか、すぐに理解した。

 悪魔が背後にいる。そう考えたほむらだが、身体中に、電撃を受ける。

 軽い電撃だが激痛で意識をもっていかれそうになった。

 

「……か、ぅ」

「そこで大人しく見てろ。ちょうど対戦相手が来たところだ」

 

 男が映したのは、仲間を連れて前に立つソラの姿。彼を見たほむらは安心したのか意識を失った。

 

「さあ、見せてもらおうか……お前の絶望の物語を!」

 

 ソラとアオ。英雄と救世主。

 

 そして本物と偽物の戦いが始まろうとしていた。

 




神威ソラ: 帰る場所を無くし――――誰も信じられなくなったことで、他人を信頼も信用しなくなっている少年。『無血の死神』という異名は確かに英雄だが、『英雄』だからこうなるべきだと押し付けられた過去がある。その上、裏切り、謀略によって人間の醜さを誰よりも知ったことで、人間不信になった

押し付けられた人間像: プロ野球選手の息子はプロ野球選手になる。医者の息子は医者にならなければならない――――などと、『この人はこうだから、この人もこうなんだ』と決めつけられること。
 はっきり言ってそれは勝手な幻想であり、それをその人に押し付けることは愚の骨頂だと思います。
 今回のお話で、自分は有名人だからといって息子も有名人ということわけではないと言いたいです。
 なぜなら有名人であるその人が、努力し、そして手にいれた地位と名誉はその人自身の者であり、息子も同じというわけでないし、『人間像』を押し付けられると息子にプレッシャーがかかると思います。
 それに、もしかすると、有名人ではなく平凡に過ごすかもしれないし、別の才能を開花させるという可能性があると思いますしね。
 まぁ、蛙の子は蛙という言葉があるように、父親に憧れて目指す子が多いですが……

朱美まどか: アグレッシブなところは母親譲り。ソラに絶対的な信頼と信用を伝えた。……愚かなことかもしれないが、人間不信な彼にとってこれまでにない暖かな心だったので、彼の冷たい心を溶かしてくれた。

――――最終的には欲望をとったけどね!!(笑)

ソラのコピー: 語るまでもなく、まあ。アオとコンビを組んでソラに挑む模様。……黒幕はどうするか知らずに

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