ロボット中毒者、神ゲーに挑む。   作:インビジブルです男

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ロボットっていいよね


制御

翌朝。

 

「おはよう!」

「まあ誰もいないんですけど...」

 

丈が登校の準備を終え、リビングに向かうがそこには誰もいない。

丈の家族構成は姉の博多 朝日、母の博多 千紘、父の博多 隆弘、そして丈本人の4人家族。

朝日は女優、母はパート、父はベンチャー企業の副社長と全員が多忙であり、家族全員が顔を合わせる事は滅多にない。

大きめのテーブルの上にはメモが置いてあり、そこには「お弁当は玄関に。頑張ってね!」と書いてある。

 

「ありがと、母ちゃん。」

 

丈はメモを一瞥すると、茶碗に白米を盛り、目玉焼きを焼く。

焼き終えると、物凄い速度でそれらを食べ終わり、鞄を肩にかけ玄関へ向かう。

 

「いってきます!」

 

彼は元気にそう告げると、学校へ向かった。

 


 

丈が学校に到着すると、多くの生徒が夏休みについての会話をしていた。

ある者は明後日からハワイ、ある者はゲームショーと、それぞれが充実した夏休みを送るようだ。

 

「よっ、楽郎!」

「またゲームで徹夜したのか?」

 

丈は友人である陽務 楽郎を見つけると、駆け寄って挨拶を交わす。

 

「それがさ、聞いてくれよ!」

「これがホンットに酷くてさ、マジクソ・オブ・クソなんだよ!」

 

「なんだっけ...『フェアクソ』だったっけか?」

 

「そうそう!」

 

フェアクソとは、《フェアリア・クロニクル・オンライン》の略称であり、伝説のクソゲーとして名を残した作品である。

味方AIがヤバい上、余程のプレイスキルがないと最初のボスが倒せないとか。

陽務 楽郎は、それをクリアする達成感を求めて楽しめる、筋金入りの『クソゲーハンター』だ。

 

「スゲェよなお前...俺だったら30分も経たずにVR投げつけてるわ。」

 

「丈、お前は耐性が無さすぎなんだよ。」

「理不尽さもスルメみたいに噛み締めてこそだろ?」

 

「いやー...それは理解できねぇかも。」

 

2人は笑いながら教室へ向かう。

丈にとって楽郎は本気でゲームを語れる数少ない友人であり、良い意味で気を抜ける存在だった。

 

それから数時間後。

丈にとって退屈な授業をやり過ごし、夕陽が校舎を茜に染める頃。

 

「ふー...やっと授業が終わったぜ。」

 

丈は大きく伸びをしながら机に突っ伏す。

 

「帰ったらまたシャンフロログインして、制御練習とレベル上げかなぁ!」

「んじゃ楽郎、先に帰ってるぜ!」

 

「おう!」

 

丈は笑いながら校舎を出る。

空は夕焼けに染まり、何処か現実が霞んで見える。

―早くあのアーマーを使いたい。

頭の中ではあのアーマー、《エイン》が起動する音、敵をぶった斬る音が何度も繰り返される。

 


 

「たっだいまー!」

 

いつもよりご機嫌...いや、興奮した様子で帰宅する。

玄関の鍵を閉め、靴を脱ぎ、自室に駆け込む。

 

VR機器を手に取ると、ベッド身を投げ出し、頭にVRを取り付ける。

 

「さあ...今日こそ手懐けてやるよ...じゃじゃ馬(エイン)!」

 

...ソルト()がログインすると、視界は昨日と同じ施設のまま。

 

「よし、先ずは速度に慣れなきゃな。」

「速度に慣れないと、まともに戦闘もできやしねえよ。」

 

《エイン》の背部ブースター、そして《イダテン》が赤い光を灯す。

 

「先ず最初に、出力の調整のやり方だな。」

「走りとブーストの組み合わせは難度が高いから後回しとして、飛行の訓練からかな。」

 

ソルトは出力を上げていき、地上から足が離れる。

 

「よし、離陸は成功か。」

「ゆっくりの飛行はできるかな?」

 

ソルトは姿勢を前方に寄せると、ゆっくりと前方に進んでいく。

その速度、カタツムリの如し。

 

「おっせぇ...」

「こんな速度じゃ笑われちまうぜ。」

 

彼が出力を更に上げていくと、段々と体が慣れてきたのか制御が出来てきている。

出力は既に55%程。

戦闘時であればもう十分な速度だ。

 

「いい感じに慣れてきたけど、少し操作をミスれば墜落しそうだな。」

「この状態でもう少し遊んでみるか。」

 

ソルトはもっと操作に慣れるために、アクロバティックな動きを行う。

宙返りにマニューバ機動など。

 

「出力56%以上は外かなぁ...」

「ここじゃ狭すぎるぜ。」

 

ソルトが一通りの練習を終えると出力の急低下を意図的に引き起こし、着地する。

 

「んじゃ、ダッシュとブーストの組み合わせの練習でもしようかね。」

 

ただ飛ぶだけなら、出力の制御と姿勢の変え方さえ覚えれば制御は簡単だ。

だが、ダッシュ+ブーストは足を出すタイミング、引くタイミング、姿勢、そして最も安定した出力を探し出す必要がある。

 

「安定した出力...先ずは30%から行くか。」

 

ソルトが姿勢を前傾に変化させ、加速に備える。

すると次の瞬間、キュイン!という甲高い音と主に、急加速がくる。

 

「うおっ!?」

 

踏み出すつもりでいた足は地面から離れ、身体は一回転する。

顔面から地面に叩き付けられ、HPが減る。

 

「いってぇ...」

「だけどな、諦めねぇぞ。」

 

ソルトはトライアンドエラーを続ける。

何度も顔面を地面に叩き付け、その急加速に慣れようとする。

 

「適性出力はもっと上な気がするな。」

「感覚が掴めてきたぜ...!」

 

ソルトは出力を50%に上げ、再び前傾姿勢に。

先程聞こえた甲高い音が聞こえたと同時に右足を踏み出すが、足を滑らせて顔面を地面に叩き付ける。

だが、感覚を掴めたと言うだけあってかあと少しで成功しそうだ。

 

「まだだ!」

「まだ終わっちゃいない!」

 

何度も何度も足を滑らせ、顔面を叩き付ける。

HPは段々と減っていき、遂には1しか残っていない。

 

「次が、最後の挑戦だな。」

「これでダメならリスポーンだ。」

 

シャンフロにはデスペナルティがあるため、ソルト的にはあまり死にたくない。

だが、目的の為であれば何デスしても問題はない。

デスペナルティなんて知ったこった無い。

 

ソルトは再度前傾姿勢になり、集中する。

そして、甲高い音と共に右足を踏み出すと、その右足は滑ることなく体を前に進める。

そして左足を前に出せばその身体はさらに進み、また右足を出す。

その繰り返し。

 

「うおお!!!すっげぇぇえええ!」

「地上の探索、そして戦闘には便利そうだ!」

 

身体はとてつもない速度で進み、カーブも問題なくできるようになった。

ソルトは《エイン》のブーストダッシュを完全に使いこなせるようになったのだ。

 

「あとは止まるだけっ!」

「よいしょっと!」

 

ソルトは出力を落とすと、少しだけ滑走して停止する。

 

「停止も完璧...!」

「あとは高出力の飛行のみだな!」

 

ソルトは《エイン》の頭部アーマーのバイザー部分を開け、顔を顕にする。

その表情は興奮に満ちており、満面の笑みを浮かべていた。




次回はレベル上げにしようかと思ってます。

今後、エインがぶっ壊れて完全に新しいアーマーを作る的な展開をするか

  • おけまる
  • ダメです
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