前提とか補足とかかな
「あとは高出力の飛行のみだな!」
ソルトは《エイン》のバイザーを持ち上げてそう言う。
彼の目線の先には出入り口のポータルが有り、そこに入ればこの施設から抜け出し、ファステイアに戻ることができる。
「名残惜しいが、今日でこことはさようならだな。」
「短い間だったけど、楽しかったぜ。」
そう言うとソルトは前傾姿勢になり、ブースターの出力を50%に上げると、高速でポータルに突っ込む。
赤い光にソルトの身体が包まれたかと思えば、彼の身体は再びファステイアの路地裏に現れ、速度を保ったままファステイアを駆け抜ける。
このゲームに完全なSF装備の存在はかなり珍しく、アーマーを着てブースターを吹かしながら走るソルトの姿はやはり人の目に留まる。
「なんだあの装備?」
「見たことねえな...」
「かっこいい...」
シャンフロはMMORPGで沢山の人がログインするために、ネットリテラシーが欠如した連中も必ず存在する。
彼らは走り去って行くソルトの写真を撮影すると、掲示板に写真を貼って『この装備の入手方法を教えてください!』と質問を飛ばせば、それは瞬く間に拡散し『ユニーク関連かな?』と勘のいい人物もいれば、『ネットリテラシーの欠如』『ああ、そういうノリw』と非難する人物もいる。
そんな事は露知らず、ソルトはジャンプし、空を飛ぶ。
出力を55%、60%、70%と上げていくと身体は其れに適応するべく身体の角度は180°になり、出力は遂に100%に。
「うぉぉぉぉおおおおお!はえええええええ!」
出力55%の時、地上でのブーストダッシュの時よりも圧倒的に速い。
戦闘機並の速度で飛行する。
空を切り裂く心地よい音が耳を抜け、先程まで走っていたファステイアが豆粒ほどの大きさに見えるほどの高度に到達する。
「よっしゃぁぁぁ!《エイン》最高ぉぉ!」
赤い閃光を描きながら空を横切り、ソルトが歓喜の声を上げながら画面右上に表示されたミニマップを見る。
《エイン》は本当に便利で、ミニマップが右上に表示されたりとUIが専用に簡略化されているものがあったり無かったりする。
更に、ソルトは知らないが《エイン》の機能は他にもいくつか存在する。
「次は...まあ順番的に『セカンディル』に行くか。」
「ただ空飛んで到着...って訳にも行かないから、レベル上げがてらに目に入った敵は全員倒していくか!」
ソルトがしばらく空を飛んでいると、吊り橋の前に1匹の大きな蛇型モンスターを発見する。
「おっ、早速敵をはっけーん♪」
彼は肩に浮いていたレーザーライフル《エウドロス》2艇を手に取り、急降下していく。
《エウドロス》の最大の特徴は火力ではなく、その速射性能と精度であり、高めの火力を高速で連射できるという恐ろしい武装だ。
「《エウドロス》の一撃を受けれること、ありがたく思えよ!」
ソルトはそういうと降下したまま《エウドロス》のトリガーを引き、銃口から赤い閃光が放たれる。
発射した20発のうち18発は大蛇の胴体に当たるが、仕留めるには至らず。
「おっと、結構固めだな。」
「あの四脚戦車が弱かっただけか?」
彼のレベルは現在12で、大蛇の推奨レベルは13。
それでも推奨人数は3人と、レベル12が一人で倒すには厳しい相手だ。
だがしかし、彼には《エイン》とその他武装が付いている。
勝てない相手ではない。
「武器を《ムラマサ》に切り替えて、クイックブーストを吹かす!!」
ソルトが強烈な加速と速度を使い、腰の鞘から取り出した《ムラマサ》を使用し大蛇の腹を切りつける。
其れでも致命には至らず、ソルトは大蛇の尻尾のなぎ払いにより吹き飛ばされてしまう。
「うおっ!?」
「結構強えな...いや、俺が弱いだけか?」
ソルトは興奮のあまり気付いていないが、《エイン》系の武装は特殊で、『使用者の成長と共に強化される』という性質を持っているために武器、防具としては“初心者の装備よりも強いが中級者の使う装備には若干劣る”という微妙な性能をしている。
「だけどな、こっちには手数があんだよ!」
「《ヘルメス》!!」
ソルトがそう言うと追従していたミサイルランチャー《ヘルメス》から6発のレーザーミサイルが飛び出し、大蛇の顔面にクリティカル判定を発生させる。
『ギャァァァァァァア!』
大蛇が悲鳴を上げ、悶える。
このゲームにおけるクリティカルは確率ではなく攻撃の当たり方とウィークポイントへのヒットであり、今回の大蛇でいうなら顔面が弱点。
「さあ、最後の一撃だ!」
「うおおおおおおおおおおおおお!」
ソルトがブースト出力を100%に上昇させ、大蛇の首目掛けて《ムラマサ》を振るう。
一閃。
その斬撃が当たると、大蛇はピクセル状になり霧散していく。
「よおおおし!」
ソルトがガッツポーズを取ると、視線の端に【LEVEL UP!】の文字がみえた。
レベルは12から15に上がり、ソルトは進化を遂げる。
そしてその報告のすぐ横には新スキル報告のUIが見えた。
「えーっと...何何?」
「《リミッター解除》と《
《リミッター解除》は自身のHPと引き換えに装備の性能、そしてステータスを一定時間上昇させるバフスキル、そして《
どちらもHPの低下、そして全弾射出によるリロードとデバフは存在するが、とても有用なスキルだ。
「...いいね、このスキル。」
「次モンスターを見かけたら使ってみるか。」
「取り敢えず獲得金を使って『セカンディル』の宿を借りてリス地の更新、そしてゆっくり装備の性能の確認とステータスポイント割り振りでもしますかね。」
ソルトはゆっくりと、尚且つ堂々と橋を渡り『セカンディル』へ向かった。
「へえ、やるじゃない。」
部屋に響く女の声。
スクリーンには《エイン》を装備したソルトの姿が掲示板スレッドとともに映し出されていた。
『これ、ユニーク関連じゃね?』
『いや、わんちゃんストリーマーとかで運営から実験機として提供されてる...とか』
『それはないだろ。』
『もしかしたら【
『目撃情報ではこのプレイヤー、ファステイアにいたらしいしそれは無いんじゃね?』
『そうかぁ。』
無数のコメントが流れる中、彼女――天音 永遠は指先で画面をなぞり、楽しげに笑う。
「あはっ...可愛い玩具、見つけちゃった♪」
その目は獲物を狙う狩人の眼光を宿していた。
「逃げないでね...《ソルト》くん?」
静かな部屋に、甘く冷たい声が響いた。
【悲報】
ソルトくん、狙われる。
今後、エインがぶっ壊れて完全に新しいアーマーを作る的な展開をするか
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おけまる
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ダメです