一般男性、TS令嬢転生(嫌々)からのしたくもない異世界統治   作:柴野沙希

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幹部会議

 

 私がシリッサに来て数ヶ月が経過した。いまやリードラル邸となったフェロアオイ別邸。今度は薄青を基調としたお家でございます。

 会議室、円卓と椅子に集まったのは私が信を置く皆様。人を信じるってのは素晴らしいですからね。

 

「じゃ、始めましょうか」

 

 上座に座る私が号令を掛けた。全員が私の方へと目を向けてくる。皆、いい顔してますわ。来た時よりも何か凛々しくなってる……?多分。

 

「皆様、お疲れ様です。これより幹部会議を始めさせて頂きます」

 

 ミモザが前口上を述べてくれる。助かるわぁ。てか私が言うのも何か変な話だしね。なんか皺増えた?って今日の朝言ったらシバかれたわ。

 幹部は私を除いて三人。少ないけど、信を置けるってなるとねぇ。意外といないんすよ、後管理レベルって前提もあるし。

 

「楽にしていいわよ。まず……ここに生きて、全員が集まれてる事を嬉しく思うわ」

 

 心からの安堵と、感謝が籠る。街には敵か潜在敵しかいない、いわば戦場。その中で信頼できる者がいる、してくれる者がいる。だからこそ、私は頑張る羽目になってるんですけどね。まぁいいや。

 

「ですね!私も嬉しいです!」

 

 にこやかにそう述べるのは先生。仕事はガッツリ増えてるのに、相変わらず笑顔を浮かべている。流石だ。私はもうフラフラです。

 晴れてリードラル直属になったが故に、対ギルドと私の教育担当を兼ねて貰っている。対ギルドっていっても、冒険者の情報収集とかですね。流石に酷っす、外交させるのは。

 最近のクソ質問シリーズは、なぜ四属性は色を持つのか、ですね。我ながら酷いと思う。でも気になるんすよ、前世で詳しく調べておけば……。

 

「間違いない。まぁ、本気で守ってますから」

 

 ロブが何でもない感じで言うが、襲撃率は上がりつつあるからなぁ。ぶっちゃけ居なかったら、私死んでただろうし。その分、改革が効いてると思えば少しは救われるか。

 直衛の皆はこっちに来てから何か、目つきが鋭くなった気がする。屋敷があるのは街の全然内側だしなぁ。負担を掛けて申し訳ない。ちな最近ロブに、私はか弱いからねぇ……って言ったら、んな訳ねぇだろって目で見られたのは根に持ってますからね。

 あ、ロブは軍事関係の全般を任せてます。元が本家で隊長やってたからね、やれるでしょ。お前しかいません、出来るのが。話を持って行った時、嫌そうな顔と誇らしさが半々っぽかったから満更でも無いんでしょ。

 

「……私も嬉しく思います」

「あら、よかった」

 

 小さな声でミモザがそう言ったのを見逃さず、ニヤァとしつつ彼女を見る。あ、ちゃんと嫌な顔された。はは、愉快よ。

 ミモザには事務全般を頼んじゃってます、優秀なのが悪い。使用人管理もセットです。忙しくさせてすみませんね。

 

 一通り、心温まる交流を済ませる。こういうちょっとした部分が大事なんすよ、本当に。上にいる時は下がやりやすい空気を出すのが大事、多分。

 一応私の担当はその他全部ですね。内務、外務、軍務は勿論、対ギルドや貴族、ギャングと教会もやってます。産業経済金融、一人がやっていい規模じゃないと思いました。まる。

 

「さて、誰から報告してくれる?」

「はい!」

 

 先生がいの一番に手を挙げてくれる。やりやすくて助かるわ。全員の雰囲気を見て、大丈夫そうだったので小さく先生に向かって頷く。

 

「聞いた話は、ざっくりと何個かあります!」

 

 ほう。こういう現場からの情報が一番助かるんです。ほんと見えないんで、足元。

 先生はメモを出し、読み上げてくれる。

 

「えっと……一つ目は、正規の依頼が増えた」

 

 ギャングをシバいて、悪徳商人を吐かせる黄金ルートが効いてるのかもなぁ。重畳重畳。いいね。

 

「二つ目は、ダンジョンの数が増えた」

 

 これは村々にダンジョン依頼の補助を出すようにしてるってのがデカいんだろうなぁ。攻略完了時のインセンティブを上げて、依頼料は多少こっちが持つ。偽ダンジョンとかも出てきそうだけど、一旦はこれでいいでしょ。まぁよし!

 

「三つ目は、簡単な依頼が減った」

 

 インフラ系の仕事はこっちが取っちゃったからなぁ。そこは許して頂きたい。最終、公共事業の労働者になれば三食と給料出すから勘弁。中抜き防止と、色々思惑はあるのよ。

 

「以上です!少なくてすいません……」

「十分。生きてる下の情報は、何よりも大事ですもの」

「……ありがとうございます!」

 

 そうやって頭を下げる先生。いやほんとに、私を教えながらクソ質問を調べ、そして情報収集。めちゃめちゃ凄いっすよ?私ならサボっちゃうよ。

 

「次は?」

「じゃ、いいですかね……?」

 

 ロブが恐る恐る手を挙げる、何でそんな毎回ビビってるのよ。報告ありません!でも別に怒らないわ。その場合は何やってたか聞くけど。

 

「軍務からも、幾つか報告が」

「聞かせなさい」

 

 私が急かすと、少しだけ慌ててメモを取り出した。ちゃんと纏めてあるのはありがたいっすね。私は苦手です。

 

「まず、襲撃率が上がってます」

 

 夜、結構な率でざわざわなってますからね。慣れちゃってもう寝てるけどさ、最初の頃は気になってました。はい。寝不足気味ではあるんですけど、昼寝で帳尻取ってるって感じかな。

 

「内訳は?」

「主にギャングですね。稀にギルドのごろつきが」

「処分は?」

「仰られた通り、吐かせて公開処刑を」

「ん、よろしい」

 

 ギャングがスラムの馬鹿や、ギルドの馬鹿に屋敷攻めさせる事例が増えてるんだよねぇ。あいつら何も知らないから、殺すだけ資源の無駄なんだよなぁ。偶にギャングや悪徳商人の情報持ってるから、馬鹿にならないんですけどね。士気も下がるし、いいこと無いのよねぇ。

 

「陸軍は再錬成中です」

「進捗は?」

「衛兵程度なら完遂出来るように」

「じゃあ、継続して警備運用ね」

 

 メーザリーの陸軍、腐敗はしてなかったけど弱兵もいいとこだったからね。精鋭魔法銃兵の皆様が地獄の再訓練をやってくれている。アルバーネの爺さんも、上手い事やってるわ。腐れば私の手が届くが、弱いだけなら処刑までは行けないからね。ま、能力不足の解任事由は得たからいいや。揺すらせとけば自壊するでしょ。自分の利だけで繋がってる連中は、疑心暗鬼に弱い。不安なんだろうね、多分。

 

「そういえば、兵長方の処分は?」

「歩兵長はこっち側。騎兵長は……どうしよ」

「まだ保留で?」

「どうせ行方不明扱いだし……。安易に戻すのも愚策なのよね」

「……保留ですね」

「あ、はい」

 

 失脚させたのはいいけど、殺すだけの理由もないのよねぇ。利で裏切る人間って、相当優秀じゃないと見誤って自滅するからなぁ。アルバーネの爺さんレベルならまだいいけど、そこまででも無いし。

 

「……以上ですかね」

「助かるわ」

 

 全体的に形になる前ってのが難しいのよねぇ。陸軍がしっかりすれば襲撃も減らせるし……。早く形にしたいけど、急いだところで弱兵の再生産だからね。は~あ。

 

「では、最後に私から」

「よろしく」

 

 いい感じに静まり返ったところで、ミモザが言った。はてさて、何が出てくるやら。浪費し過ぎです、なんて言われたら泣いちゃうよ。

 

「税制は健全化が進んでおり、監督官も一部問題は発生したものの、大枠として安定しております」

「徴税効率は問題だったものねぇ」

「はい。汚職率も下がりつつあります」

 

 よかった。ま、実際に統計出すには色々と足りてないから難しいんだけどさ。住民謄本作らないとなぁ。その為には……。

 

「しかし、問題が」

「人ね」

「仰る通りです。圧倒的に文官が足りません」

「募集の張り紙、フェロークや他の都市から引っ張ってこようとはしてるんだけどねぇ」

「足りません」

「はい」

 

 やっぱ官僚化するには知識層が足りないよなぁ。汚職を消し去ったら人は来るだろうが、消し去る体力が足りるかどうか……。まぁでも、フェロークでも人材は浮動気味だったし、何とかなるでしょ。

 フェロアオイは貴族官僚制って感じだし、他は封建をまだやってるって感じなのよねぇ。人口は魔法のお陰か増え気味だし、学校さえ制度化すればワンチャンあるか。

 

「何とかして下さい」

「何とかします」

 

 これ以上何も言えないっす。ロブと先生が何とも言えない目で見てくる。うるさいやい。無い袖は振れないんだ。

 

「後は、インフラ投資の件ですね」

「赤字でしょ、普通に」

「赤字です。本当に今、やる必要が?」

 

 説明を求めるミモザの視線。痛いわねぇ。後の二人は普通に気になってそうな感じ。私の報告というか通達の内容に掛かるけど、まぁいいか。

 

「しっかり話しましょうか」

「……納得させて頂きたく」

「まず、この街には金に困った労働者がいるのよ」

「冒険者、スラムの方とかですかね?」

「えぇ」

 

 失職者、冒険者、浮浪者。金なくてもエネルギーがある連中は、犯罪に走ったりとかごろつきになっちゃうのよ。冒険者は稼げず、ギルドのせいで手に職も付かない。軍隊は定数あるし。

 

「彼ら、何もないと敵になるの」

「敵?」

「ギャング、ごろつき。その辺ね」

「だから身銭を削ってでも働かせると?」

「幸い接収金と多少はマシになった税制で、即破綻は無い」

「軍としても、インフラ投資は助かります」

「結局、役には立つのよ」

「ですが……」

 

 まぁ受け入れがたいよね。数年後に破綻するけどインフラに投資して、無職を動員しますって。ミモザは赤字を減らすのが仕事だから、その辺はしっかりしてて助かる。聞かれるべきだからね、こういうのは。

 

「仕事の確保でギャングを弱め、徴兵の下地を作り、生活を良くする。だから、赤字でもやるしかないの」

「……分かりました」

 

 私の方も出来る限り、こんな危ない状態は脱しようとは思ってるんで。めちゃめちゃ渋い顔しないでよ、ミモザ。先生とロブは何となく分かってくれたような気がする。難しい話だろうし、しょうがないや。何となくでも分かってくれれば十分。

 

「一旦、大丈夫です」

 

 まだあるだろうけど、一旦私の話を先に聞くって感じか。まぁそうねぇ、私が基本的に一番やってる事も多いから長くなるし……。よし!

 

「……じゃあ、私から色々と報告しましょうか」

 

──────会議は続く。まだ序の口と言わんばかりに。

 

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