一般男性、TS令嬢転生(嫌々)からのしたくもない異世界統治   作:柴野沙希

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全体会議

「皆様、ご足労頂きまして感謝致します」

 

 ミモザのいつもの口上に、頭を下げる皆々さん。屋敷の会議室、数年前の会議に比べれば随分と増えた人。上座に座って若干眠い私。真面目な表情で座る皆。

 カミラと話して二ヶ月が経ちました。少しずつ暑くなってきた空気、中庭のバラがいい感じに咲いております。さて、とうとう全体会議の日がやって参りました。幹部会議じゃないすよ、全体会議っす。人多いよ~。ぶっちゃけ組織再編の話がメインだしさぁ。

 

「ではお嬢様、ご挨拶をお願い致します」

「……?」

「お願い致します」

 

 えっ聞いてないんですけど。内示から私が話すって話じゃなかったっけ?どうぞ、って感じでこっちを向かれても困るんですけど。皆の視線が私に向く。一度私はミモザを見るも、いつもの真顔で私を見遣ってくる。容赦ねぇ~。まぁ何か話そう。もう慣れたし。

 

「皆、よく集まってくれた」

 

パン!と手を叩きながら挨拶を発する私。皆はしっかり一礼してきますね。うんうん、統制はしっかり届いてるようでよろしい。

「私は先月、齢が20となり成人となった」

「心の底より、お慶び申し上げます」

「おめでとうございます~!」

 カミラと先生が褒めてくれました。とりあえず誉めそやして貰えるのは嬉しいわね。とうとう20歳になっちゃったよ。前世と合わせたら四十超えてますね、やば。よくある転生なら学生編が終わって、宮廷や大冒険の頃なんでしょうが……。政務、謀略、内政しかやってないんですけど。酷過ぎない?私もキラキラ貴族学校通いたかった……いや、そうでもないわ。このルートだと結婚不可避になってしまう。全然処女で死ぬ気の私としては、こっちの方がマシか……。

「この歳まで生き残れたのは、諸君らの信頼と専従あってのものだ。平に、感謝を伝える」

「「「ありがとうございます!」」」

「……随分と顔も増え、我々を取り巻く世界は広がり続けている。軍、学、民と為すべき事は多く在り、貴君らはそれを成し遂げられる者だろう。私はそう信じている」

 仕事増えまくりなんすよね。他所の文官や学ある民をシリッサに吸い取って、教育ぶちかました層が形になりつつはあるんですけど。決裁権限の話になると、最終私がやるしかないんすよね。臣下は信じているが、重要事項の決裁権投げちゃうのは怖いからね。選択された過労って奴だぁ。よし、もうちょい挨拶続けるか。

「今回の会議は、誰が何をするかを正式に示すものだ。無論、異論があれば是非いい給え。時間は多く取ってある」

 そうして私はニッコリと笑う。言いたいことがあるなら言ってね~。全部聞いて、どうするか裁決してあげるからね。とは言え何も無いでしょ、言っとくだけタダってやつですね。

「長々と話したな。さぁ、全体会議を始めよう。ミモザ、内示書を」

「承知いたしました」

 結構しっかりピリついた空気感の中で、ミモザが内示書を私に渡してくれる。マジで頭抱えたからなぁこれ。人事って怨恨と腐敗に直結するからキツいわよ。影響力とか能力とか考える事多過ぎ。はぁ。

 うん、皆の表情も一際、神妙なものになってますわね。そらそうか、進退結構決まるもんね。何も事前に漏らしてないし。

「じゃ、読み上げていくわ」

 私は紙を開き、静かに内示書を読み上げ始めます。あ~緊張する。

「内示。以下の者をシリッサ統治の為、指定の職責へと任ずる」

 空気がおっもい。今日はきっと長くなるだろうなぁ。しょうがないんですけどね。部下のドロドロなんて見たくないよ~。私の立ち回りも大変だしさぁ。部下の対立とか無いに越したことは無いが、絶対あるんだよねぇ。ネトネトしてくるんだよなぁ絶対。

 

「カミラ・セシリー・メーザリー候爵夫人」

「はい」

「正式に、シリッサ領主代行へと任じる」

「謹んで拝命いたします」

 

 座ったまま礼をしてくるカミラ。私から見て左側にいらっしゃいます。うんまぁ、正当性と実務能力、旧シリッサ勢力を全潰しはしませんよって意思とか含めるとね。彼女しかいないというか。はい、頑張ってください。

 

「次、ローナ」

「はい!」

「汝はシリッサ領主代行補佐とする」

「承知いたしました!」

 

 私の左後ろから聞こえてくる元気な声。カミラと二人で頑張って下さいな。年単位で内務補佐やってるし、行政にしっかり触れてるからやれると信じます。駄目なら相談してくださいな。お願いします。

 

「次、ミモザ」

「……」

「貴女は内務長とするわ」

「……謹んで、拝命致します」

 

 右後ろに立つミモザ、貴女は内務総括やって下さい。お願いします。というか今回の人事についてもミモザに相談してるし……。お仕事の内容は、屋敷関連と金融っすね。都市公庫の監督もやって貰ってるからなぁ。老骨働かせてごめんなさいね。

 

「次、ダフネ」

「はい」

「汝は内務長補佐とする」

「感謝いたします」

 

 同じく右後ろから聞こえる低めの声。感謝いたしますって凄いっすね。任じといてなんなんですけど、忙しいよ?私なら嫌ですね。義務でやってるんで仕事を……。圧倒的やらなきゃ精神。

 補佐に付けた理由は簡単です、そも屋敷側の内務補佐だったから。ローナとダフネが二人で内務補佐だったのが、正式に分けられたって感じ。姉妹で会える時間を減らしてるのは申し訳ない本当に。

 

「次、アイヴィー・アトモス」

「……はいっ!」

「貴女を教育長へ任命します」

「ありがとうございます!勿論、拝命いたします!」

 

 私から見て右側に座ってらっしゃるのは、我らが先生ですね。ニコニコと受け入れてくれるのが非常にありがたい。冒険者ギルド含めてギルド関連をやって貰ってましたけど、今回から明確に教育側へシフトしていただきます。理由?抗争が激化するんで、先生にヘイトが集まらないようにする措置でございます。流石に先生が襲撃され出すのは不味いっすから。

 しっかりフィグラス司教と組んで頑張ってくださいな。彼らも教育会議やった後、何か従順になったんだよね。悪い事かと言われれば別に違うんでいいんですけど。反感よりも恐怖の方がマシですわよ。

 

「さて……次、ロブ」

「……はい」

 

 先生の右奥に座るロブ、手が震えてますわぁ。まぁそうか、教会の件で色々あったし。向こう視点だと解任の可能性もある訳か。これは私の明確なミスなんですけど……、どうせその話も今回出てくるでしょ、どうせ。

 

「貴方を近衛長へ任命する」

「……僭越ながら、直衛と何が変わるのでしょうか?」

「そうね。これまでは屋敷の警備を軍に任せ、私の周囲は直衛で固めていたわね?」

「仰る通りです」

「屋敷警備や直衛を一元化する措置と考えなさい。貴方には警備と直衛の統括をやって貰う」

「……謹んで、拝命いたします!」

 

 溜めて勢いよく礼をしてくるロブ。頭ぶつけるよそれ。他の直衛皆も胸をなで下ろしてるでしょうね。チラッとモーリスを見る、う~ん真顔。イリルは?真顔。他二人もうん、真顔ですね。分かんね。

 流石に解任は無いですわよ。警備も軍に一元化しちゃったら、軍の権限が強くなりすぎるからね。最悪の場合に備えて、少しは動かせる兵も欲しいし。

 

「では次、アーヴィン」

「はい」

「ここに居ない三人も含め、四人を工房会議議員とする」

「……失礼ながら、工房会議とはどのような?」

「単純に技術交流、工場街の調整辺りを目的としているわ」

「なるほど」

「詳細はまた四人の時に話すわ。アーヴィンには初代議長を務めて貰う」

「……承知いたしました」

 

 左奥のアーヴィン、ちょっとめんどくさそうな雰囲気が出てますね……。まぁアーヴィンはガチの職人だし。言いたいことは分かるんですけど、他に任せられないんだ。木工長ジェフリーは性格的に向いてない、石工長ハドリーはそもシリッサギルド側、炉長ザラは……うん、ね。消去法って奴だ。最終的に議長は持ち回り制にする予定だから許して。

 

「次、クラリス」

「はっ!」

「貴女は軍政長として、常備軍を率いなさい」

「謹んで拝命いたします。……しかし、アルバーネ伯を差し置いてよろしいのでしょうか?」

「心を込めて説得したら、軍権を正式に手放してくれたわ」

「左様ですか。承知いたしました」

 

 右側奥のクラリスが、勢いよく立ち上がって敬礼してきた。軍人特有の元気の良さ、よろしいわね。懸念も真っ当。ちなアルバーネの爺さんは正式に失脚しました。爺さんの孫を王都の貴族学校に入れてあげたんですよ。そしたら喜んで従ってくれましたね。断る理由なんてないよね、地方の下級貴族が王都の貴族学校に入れるなんて凄い事なんですよ。しかも公爵家の紹介だから安心!人質?いやぁ気のせいっすよ。

 

「あぁ、後。銃兵、歩兵、騎兵の長についてはまた伝えるわ」

「はっ」

 

 軍権は繊細ですわよ。別邸の頃から部下やってくれてる面子以外だと危ないからね。しかし、アルバーネを正式に外せたのはよかった。これが駄目なら殲滅ルートだったから私も嬉しい。

 さて、一旦これで全員かな。まぁ新顔もボチボチ増えて、組織も大きくなりつつある。ギルド解体、港湾の制圧が出来れば一気に化ける想定です。化けないと色々大変になるからやり通すしか無いんですわよ。

 

「……以上。各自、職責に励み給え」

「あの、一つお伺いしてもよろしいですか?」

「えぇ、構わないわ」

 

 先生がふよふよと手を挙げる。はいどうぞ、何ですか。大体のことなら答えますよ。

 

「ソフィア様の職は何になるのでしょうか?」

「役割のお話?」

「はい!」

 

 私の肩書き……?何があったかな。まぁ、役割だったら思いつく限り挙げればいいか。

 

「そうね……私が正式に封じられてるのは、リードラル辺境侯爵。役割としては、フェロアオイ公爵領西北部の統括になるわ」

「おぉ……凄いですね!」

「ね」

 

 別にやりたくなかったけど。西方の鎮圧で頑張らなければ……いや頑張るしか無かったんだけどさ。

 

「他にはありますか?」

「他?役割としてだと、私は……」

「私も気になります!」

 

 ローナまで言い始めましたね。いや、正式に作ってないからやってることの列挙に……。ぶっちゃけ私も全部覚えてる訳ではないんですって。神様じゃないんですよ?私は。

 

「正式に定めてはないけど、私は外務、産業、農業、開発、軍務、都市計画、行政の最終決裁だから……これらの長ね」

「えぇ……と?」

「最終決裁的に考えれば、役職全部私が長になるわね」

「確かに、そうですね……」

 

 先生が困惑している!気持ちは分からんでもないっすけど。皆気まずそうにしてるわ。過労の正体が明らかにされてますね。いや、皆を信じてるから最終決裁以外は任せてるんですよ?ほんとほんと。

 先生が悲しそうで、ローナが引いてて、カミラが厳しい顔をしている!ミモザはこいつホンマ……って顔、ロブはこいつバケモンやんけ!みたいな顔してますね。こやつらめ。

 

「少しずつ移管していく予定だから、大丈夫よ」

「本当ですね?」

「えぇ」

 

 カミラが静かに、でも重い声で質してくる。うんうん、ほんとほんと。色々終わった後は簡単な省庁制っぽく変えていきたいとこですわね。省庁や行政府は教育基盤ありきです。今は呼び出した各専門家と、私でどうにか調整してます。私は学者じゃないので辛いわよ……。現代知識チートあっても、ぶっちゃけ形にするのは難しい。生産基盤がねぇんだわ。

 

「よし、他に質問は?」

「では、よろしいですか?」

「構わないわ。クラリス、何が気になるの?」

「僭越ながら……」

 

 珍しく、少し言い澱む軍政長クラリスさん。ほんと珍しいね、いつもはバッサリ言ってくるのに。で、どうしたんです?何となく嫌な予感がするんですけど。

 

「近衛は、本当に必要でしょうか?」

 

───あ~、やっちゃう?その話。

 

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