一般男性、TS令嬢転生(嫌々)からのしたくもない異世界統治   作:柴野沙希

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心温まる交流

 

 ちょっとした荷物を直衛に持たせ、私と二人は部屋の外へ出る。視察もあるからって案内を任せましたけど、実際どこ見回るかについては結構ノープランではあるんですよね。さて。

 二人は失礼を気にし過ぎて、案内とかいう状態じゃないしな……。私が蒔いた種と言われればそうなんですけど、とりあえず兄妹の緊張をほぐす必要がありますね。

 

「……中庭はどちらに?」

「ご、ご案内します!」

「……ま、ます」

 

 一旦中庭まで行くか。ちょっとやりたいことも出来たし。なんて考えながら二人に案内を投げる。流石お兄ちゃんですね、ガチガチになりながらでも私に応対してくる。ティナちゃんの方は、まぁ無理しないでね……。

 とはいえ、バート君。緊張し過ぎて手と足が同時に出てるよ。王国の礼法にそんなのはないです。私が知る限り。なんかごめんね。

 二人の先導で、私たちは中庭へと歩いていく。廊下にはボチボチ使用人の皆さんが働いております。私たちが近づくと、手を止めて礼をキチンとやってくる。うん、ちゃんとしてるね。私に礼をした後、兄妹にも礼をやってるところはポイント高め。逆なら非礼になるんですよね。

 でも、礼の角度は結構バラバラで、服の状態も生活感がちょっと出てるかな。地方の伯爵家レベルだから仕方ないけど、視点として目に入るのが悲しいね。普段は緩くやってるところに、出来る限り仕込んだんだろう感。まぁよし!

 

「今日はいい天気ね」

「そう、ですね」

「絶好の狩猟日和ではないかしら?」

「……確かに、そうですね」

「でしょう?バート、君は狩猟を?」

「は、はい」

「カーセラ伯……君の父上と一緒にやるのかしら」

「そ、そうです!」

 

 よしよし……バートの興味は引けたか。大抵、貴族は狩猟やってるからねぇ。男は狩猟、女はお茶会的な雰囲気にどうしてもなりがちではある。私?別に両方やってはいるんですけど、狩猟の方は体格が雑魚過ぎて……。ハーブティーしばきながら、庭園眺めてる方が向いてるのよね。因みに、兄上と父上はバリバリ狩猟マンです。剝製の防腐処理の話で盛り上がるって、あんまないよね現代だと。

 

「鹿、猪、それとも魔獣?」

「えっと……最近は、ダンジョンが森で見つかったので」

「あら、そうなの」

 

 流行ってるよね、魔獣の狩猟。見つかったダンジョンの核を回収せず、狩猟地として残す奴。もしくはそのまま放置して、溢れた奴を狩るとかもあるっすね。これ統治的には面倒なんですけど、文化としてあるから口出しにくいのよね……。貴族が非公開ダンジョンを持ちたがる理由の一つでもあるんですわよ。ダンジョンはその土地の記憶を読むからさ、バリエーション出したいなら数持つのが正義というか、ね。困るわよ。

 

「マールディア、ポロゴスがよく獲れます。あ、あと、最近だと、ゴブリンも狩りました!」

「そうなの……。その歳でそれだけ狩れるのは、いい事ね」

「ありがとうございます!……あ、お父上のお陰です!」

「ふふ。謙虚ね」

 

 結構狩ってんな。マールディアはマーブル模様のデカい鹿、ポロゴスは気性の荒い色黒イノシシですね。この辺でダンジョンが発生すると、割と良く出る感じの二種。

 で、ゴブリンか。人型カテゴリになってくると、ぼちぼち知恵も回り出すからなぁ。王国には人型を上回って力を示す的な風土があるんでね。とはいえ、あまり嬉しい話ではない。叩くような話でもないけど。とりあえず、バート君を褒めておこう。実際、よく狩ってるなって思うし。

 そんなことを話していると、あっさり中庭へ出た。花も草木も青々としてて大変よろしい。あ、日差しがちょっと肌を焼いてきますね……。と、思ったタイミングでシーラが日傘を差してくれた。助かる。

 

「……この庭園に、テーマはあるのかしら?」

「えっと、そうですね……。ティナ、どうだったっけ?」

 

 貴族の庭園である以上、何らかのコンセプトがあるはず。なんて考えながら、質問を二人に飛ばす。反応的に、バートの方は詳しくなさそうっすね。急に話題を振られたせいで、ティナがめちゃくちゃアワついてる……。いや、そんなビビんないでよ。逆ならやっぱり私もそうなるけどさ。

 

「え……と。生命、です」

「なるほど?」

「カーセラの土地で見られる、命にいいっていわれる草と、花を集めてます」

「ふむ……。そうなのね」

 

 結構ベーシックなテーマっすね。確かに、命に繋がる薬草系が集まってるわ。実利に寄ってるのは個人的に好きではあるっすね。中位貴族までは、やっぱ野生に強く紐づいてるなぁ。我が家だと、母上がこの辺強いっすね。

 ティナもしっかりコンセプトを私に話せててよろしい。おずおずと言ってきた割には、ちゃんと言えておりますわよ。ちょっと掘り下げるか。

 

「この花は、何というの?」

「ラカルといいます。赤色が……えっと、花のみつが傷に効きます」

「そうなのね。……赤は陽の色、教会における生命を表している。だったかしら」

「おっしゃる通りです。すみません」

「責めている訳ではないの。ラカルの効能、よく答えられたわね」

 

 いや本当に責めてる訳じゃないんすよ。もし忘れてたら思い出してくれると嬉しいわ、って感じなだけなんです。庭園の花の効能なんて全部覚えてたらすげぇよその歳で。フェロアオイでも母上ぐらいっすよ、庭園の全植物を語れるの。私には絶対無理っすね。シリッサ邸宅の中庭、私6割ぐらいしか語れんすよ。後は庭師に託してるから……。

 

「私が好きな、花なので」

「あら、そうだったの。……どういう所が、好きなのかしら?」

「私が風邪を引いた時に母上がいつも、みつを飲ませてくれて、花をかざってくれるからです」

「ふふ。いい母を持っているのね」

「……はい!」

 

 ほっこりするなぁ。ティナの緊張もそれなりにほぐれてきたか。私も本家に居た頃、体調崩す度に母上と医師の皆が色々してくれたなぁ。昔は転生直後ってのもあって、メンタル的にも微妙だったんでね……。今は身体的に大変ですけどね!

 

「ねぇ、バート。この中に狩猟で使う薬草もあるのかしら?」

「あ、はい!この辺りは、森でもよく見ます」

「なるほどねぇ」

 

 庭を歩きながら、二人と色々話す。共通の話題が見つかって良かったぁ。いや知らん……ってなったら割と終わりでしたね。庭まで出て来て気まずいだけとか、ほんと勘弁っす。子どもと気まずい空気になるって、リアルに嫌ではあるよ。

 先生も今頃、この辺の植生とかダンジョン調査してるとこだろうし。なんか、似たような事してるわ結果的に。絶対同席して貰った方が盛り上がったんだろうけど、身分的にややこいんですよね……。内々なら出せるんですけど、こういうタイミングだと同席させられないのが悲しいですね。

 

「二人とも、よく学んでいるわね」

「ありがとうございます!」

「……そう、でしょうか」

「素直でよろしい。先生はどんな方なの?」

「子爵家の出で、真面目な方です!」

「魔法に詳しい人です」

「あら、そうなの」

 

 魔法に詳しくて子爵家ねぇ。まぁ普通はそうなるよね。ミモザがアイヴィー先生を引っ張ってきたの、今考えると意味わからんな……。生きた知識に触れて欲しいってのはまぁそうなんでしょうけど、それにしても攻め過ぎじゃない?いや、結果的に良縁だったんだけどさ。ちょっと、魔法の話を拡げるか。

 

「魔法に強いの?」

「そうです!学院を出られてます!」

「ほう。教室の話はされてた?」

「……いえ、特にされてませんでした」

 

 学院は卒業してるけど、教室の名前を貰えるほどではない。ふ~む。まぁ持ってる方が例外に近いのかもなぁ。こっちの先生は、風の教室名貰ってますからね。あの人、考えれば考えるほど面白いのズルいよね。

 というか、いい加減二人の性格も見えて来ましたね。バートの方が元気で勢いあり、ティナの方が落ち着いてるわ。ティナの方が意外と大人っぽい。

 

「二人はどんな魔法を使えるの?」

「色々使えます!」

「……簡単な魔法なら使えます」

「是非、見てみたいわねぇ」

 

 カーセラの使用人に目配せを飛ばす。あ、大慌てで屋敷の中へ戻っていった。杖を取りに行ってるんだろう。実は私も、一応短杖を持ってきてるんですよね。全然使ってないから腕は錆びついてるけど!

 しばらくすると、二人の使用人が長杖を一本ずつ持ってきた。木製、先に魔石が付いてる感じ。まぁ普通の奴っすね。彫刻も少ないし、実戦よりかは修練用感があります。そっちの先生も実直なタイプか。

 長杖を持った二人と、庭が燃えないように少し開けた場所へ移動する。さて、君らの修練の成果を見せてくれよな。別に私、魔法の専門家じゃないけど!

 

「急に試すような形になって、悪いわね」

「いえ、大丈夫です!」

「……大丈夫、です」

 

 まぁ、そういうしかないよね……。難しい魔法使ってとかじゃなくて、あくまで何が使えるのかな~ぐらいの興味だから。いや、意外と一般貴族の子どもがどのくらいの魔法使えるのかって、気になるじゃない?無茶振り?はい、反省してます。

 とりあえずバートの方から見せて貰うか。彼を開けた場所の中心に置いて、私は離れる。万が一、私に傷が付いたら冗談じゃ済まなくなりますからね。私の無茶振りなのに、私にダメージが入ったら問題になる。これが貴族社会、理不尽である。申し訳ない。

 

「では、バート。得意な魔法を一つ、見せてくれるかしら?」

「はい!『火よ、爆ぜよ』!」

 

 バートの持つ杖から火の塊が飛び、少し飛んで爆発した。爆発と言うか、火の塊が弾けたって感じ。得意魔法なだけあって、魔力やイメージにブレは無いっすね。粗さはあるけど、サボってないのは伝わる。いいね。

 

「いいわね。イメージ、魔力にブレがないのが伝わるわ。実直な修練をしているのね」

「光栄です!ありがとうございます!」

「さぁ、ティナも見せてくれるかしら?」

「は、はい!」

 

 バートがこっちにやって来て、ティナが中心へ歩いていく。さて、何を使ってくれるんだろうな。

 ティナは位置について、深呼吸してますね。精神統一は大事っすから。難しいとこなんですけど、適当なイメージで魔法使うと予想外の出力が発生する事が……。考えすぎる癖があると、魔法が大暴れしがち。実戦に向いてないってのは、先生のお墨付きですからね、考え過ぎの癖がある、って延々と言われてるんですよ。治りません、悪癖です。

 適当な事を考えながら、ティナの精神統一を待つ。終わったかな、私の方に顔を向けてきた。

 

「ティナ。得意な魔法をお願い」

「はい。『土よ、回り、放たれよ』!」

「あら、凄い」

 

 サッカーボール大ぐらいの石塊が、緩やかに回転しながら飛んでいった。あ、地面に落ちて砕けた。ほうほう、三節は偉いですわよ。その歳で使えるのは、頑張りとぼちぼち才能がいる。はず。私?同じくらいの歳で、四節使ってましたね……。自慢じゃないですけど、四節から一気に難しくなるんですわよ。いやでも、ティナは普通に凄い。

 戻ってくるティナ。やり切った感が顔に出ている。かわいいっすね。撫でたくなるわ。

 

「三節、使えるのね」

「この魔法だけです……」

「十分よ。いや」

「……?」

「才能と修練を確かに感じたわ、素晴らしい」

「……ありがとうございます!!」

「その才、しっかり伸ばしなさい」

「はい!」

 

 めっちゃ嬉しそうにしてくれてるわ。私も嬉しい。あ、バートがちょっと悲しそうにしてる……。ごめんて。でも、嘘ついて褒めるのはティナにもバートにも失礼だから……。魔法の才能以外に、きっと君が勝ってるところはあるから。間違いなく。

 

「二人とも、突然の試練によい答えを返してくれたわね」

 

 二人がこっちを見る。最初に比べると表情が全然明るくなりましたね。緊張感もしっかりほぐれてる。よし、色々やらせちゃったからね。私の方もちょっとぐらい魔法やりますか。時間的にも丁度良くなるでしょう、多分。

 

「では……その返礼として私からも、少し魔法を見せましょうか」

 

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