猫のあしあと   作:のーばでぃ

12 / 20
 軒軒(けんけん)羿(げい)の呼び名が、原作原文では『哥哥』ではなく『大哥』であることが発覚したのでそのようにしました。
他の章も直していく予定です。


COGITO ERGO SUM

 既に中々騒がしかった四季閣(しきかく)だったが、この度さらに二人の客を迎える事になった。

ちなみに羿(げい)としてはもう、どうにでもなーれという精神である。

なんなら神農(しんのう)と酒盛りする際に「村の奴ら連れてきても良いぞ」くらいの事は言ってしまうくらいどうにでもなれ感が溢れている。*1

 

 もはや『太陽にバレたら終わり』どころの話では無いのである。

 

 客人一人目は、太陽・蚨蝶(ふちょう)

ホログラム体による参加であった。

 

「お姉さんも、算盤みたいに機械の人なの?」

 

 軒軒(けんけん)の問いに笑って答える。

 

《あなたが軒軒(けんけん)ね、猫弈(みょうえき)から聞いてるわ……そうね、機械みたいなものと言って良いと思う。私の体は、もう無くなってしまったから……》

 

「体が、無くなった……?」

 

 蚨蝶(ふちょう)は曖昧に笑って、みなまで語る事は無かった。

軒軒(けんけん)のような子に残酷な事を突き付けるような趣味など彼女には無いのだ。

 

 そして、やって来たもう一人の客人については。

 

「いやはや羿(げい)殿も人が悪い。未知なる書の山を小生に黙ったままでいようだなんて」

 

「こうなるのが嫌だったから連れて来たくなかったんだ。また一人、あの肥溜めに汚染されてしまうのか……」

 

 古代兵器の文人にして四季閣(しきかく)の探し人、蚩尤(しゆう)であった。

 

 演算室で蚨蝶(ふちょう)魂境(こんきょう)に迷い込んでしまった羿(げい)が、目が覚めたら目の前に心配そうにのぞき込む蚩尤(しゆう)の顔がドアップであったと言う経緯だ。

反射的に毛を逆立てて絶叫しながらブン殴ってしまったりした。

 

 まあ蚩尤(しゆう)としては笑って許してくれたのだが。

しかしてそのおかげで()()は彼の有利に進んでしまったわけだ。

 

『石板! 猫弈(みょうえき)の石板 は!?』

 

 珍しく太陽達の輪に飛び込みながら、山海9000が叫ぶ。

 

「ああ、羿(げい)殿に聞いている。今出そう、少々お待ちを……

しかし、小生にはこれが本当に鍵なのかは良くわからなかったがね」

 

 特に勿体ぶったりもせずに、蚩尤(しゆう)は背嚢から一枚の石板を取り出した。

それはいびつで、平面とは微妙に言い難い、手作業で精いっぱいに整えました感が香る代物だった。

しかし定規できちんとアタリを付けて掘ったのだろう、文字の並びは比較的整然としていた。

 

 そして、その内容は。

 

 


 

 

書 戈 故 居 特 思

 

  架 乃 板 己 吾 書 思 在 下 特 居 戈 之 故 我 義

架 架 乃 板 己 吾 書 思 在 下 特 居 戈 之 故 我 義

乃 義 架 乃 板 己 吾 書 思 在 下 特 居 戈 之 故 我

板 我 義 架 乃 板 己 吾 書 思 在 下 特 居 戈 之 故

己 故 我 義 架 乃 板 己 吾 書 思 在 下 特 居 戈 之

吾 之 故 我 義 架 乃 板 己 吾 書 思 在 下 特 居 戈

書 戈 之 故 我 義 架 乃 板 己 吾 書 思 在 下 特 居

思 居 戈 之 故 我 義 架 乃 板 己 吾 書 思 在 下 特

在 特 居 戈 之 故 我 義 架 乃 板 己 吾 書 思 在 下

下 下 特 居 戈 之 故 我 義 架 乃 板 己 吾 書 思 在

特 在 下 特 居 戈 之 故 我 義 架 乃 板 己 吾 書 思

居 思 在 下 特 居 戈 之 故 我 義 架 乃 板 己 吾 書

戈 書 思 在 下 特 居 戈 之 故 我 義 架 乃 板 己 吾

之 吾 書 思 在 下 特 居 戈 之 故 我 義 架 乃 板 己

故 己 吾 書 思 在 下 特 居 戈 之 故 我 義 架 乃 板

我 板 己 吾 書 思 在 下 特 居 戈 之 故 我 義 架 乃

義 乃 板 己 吾 書 思 在 下 特 居 戈 之 故 我 義 架

 

COGITO ERGO SUM

 

 


 

 

 

う わ あ。

 

 普段の書から見て取れる猫弈(みょうえき)らしからぬそのあまりのガチっぷりに、一同思わずドン引きを隠せない。

真っ先に反応したのは夸伏(こほ)である。

 

「おいこれ……軍用暗号じゃねえのか。なんでこんなけったいなモンを猫弈(みょうえき)が抑えてるんだ」

 

「今更だ」

 

 軒軒(けんけん)はと言えば、見た瞬間に解読を放棄していた。

石板に刻まれた文字の羅列を見て、「姉ちゃんこれ彫るの大変だったろーなー」とどうでも良い事を考えていたりする。

 

 ()が、閉じてるのか良くわからないような細目で覗き込む。

 

「これはつまり……石板に書いていたのは鍵じゃなく、暗号そのものだったって事かな?」

 

「ヒントはあると思うが……もしかしたら鍵はもっと別のところから得る物なのかもな。

いや、複合表ではなさそうな文字列が二つあるから、それが鍵なのかもしれないが。

ひとつは猫弈(みょうえき)文字だな」

 

 石板下部、『COGITO ERGO SUM』を掘られた文字列の事である。

 

「算盤、この猫弈(みょうえき)文字は解読できるかい? 何か意味がある単語かな?」

 

《申し訳ありませんが解読不能です。情報が足りません》

 

「軍用暗号は鍵を使って暗号文を復号化するが……どちらかが暗号文だったとして、これじゃあ復号は出来ないな」

 

 太陽達は、さすが太陽と言うべきか。

頭が痛くなりつつも、とりあえず解読を試み始めていた。

 

 山海9000が手を上げる。

 

『呪いの書 あった場所から 鍵を推理!』

 

 夸伏(こほ)が引き攣った。

要は、どうせ復号化した文は『呪いの書』があった場所を示す文字になる筈だから、そこからアタリを付けて鍵を逆算してしまえと言うのである。

 

「お前……お前、一番やっちゃいけない事を……

いや、やろうと思えば出来るのかもしれないけどよ。

ただこの手の暗号は復号文の文字数違うだけで結構違うぞ? なんて文字列から合わせるんだ?」

 

『それは お前達 考える』

 

なめてるか???

 

 うっかり分解しても許されそうな言い草である。

 

 いや、例えば予想されうる復号化文字列を如羿(じょげい)に算出させて全パターンを強引に突合させ、鍵を手に入れる事はおそらく可能だろう。

算盤にはそれだけの能力がある。

 

 だが、これは元々『如羿(じょげい)が開示するのを躊躇ったから、せめて鍵を手に入れてから呪いの書を閲覧しよう』という所から始まった話だ。

こんな強引な取得方法で納得しろと言うのは流石に違うと思う。

 

「……蚨蝶(ふちょう)、何か聞いてないか?」

 

 2年間猫弈(みょうえき)と一緒に居た人間に話を振ってみるが。

 

《ごめんなさい。私はノーコメントを貫かせてもらうわ。

……私ね、もしかしたらその『呪いの書』の中身を知ってるかもしれない。

だからこそ猫弈(みょうえき)の想いも分かるのよ。

……きっとこの件に関して私が『答え』を言うのを、彼女は望んでいないと思うから》

 

『偉大なる太陽 我らが女神 感謝永遠に お慈悲をありがとう』

 

《そんな事言ってもノーコメント!》

 

 山海9000のあからさまなおべっかも、彼女には通じないのである。

がっくりと肩を落とすその姿からはしかし、普通に解読してやろうと言う気概が皆無であった。

まあ無理もない。この文字の羅列は見ただけでやる気を萎えさせるに足るものである。

 

 羿(げい)は、沈黙したまま石板を見つめていた。

より具体的には、『COGITO ERGO SUM』と刻まれた部分をじっと見つめて思考を回していた。

 

 書いてある文字は解らない。しかし、この部分は意味のある文字列の筈だと思っている。

一部の文字間に空白が開いていて、3つの単語を作っていると取れるからだ。

 

 そして脳裏に浮かぶのは蚨蝶(ふちょう)魂境(こんきょう)に迷い込んだ時のあの光景。

中央演算室にて易公(えきこう)と対峙したあの光景だ。

 

「……」

 

 視線を軒軒(けんけん)に移す。

見られた当人はその意図が分からず、軽く首を傾げたりしている。

 

「……算盤、この猫弈(みょうえき)文字の部分を読めるか?」

 

羿(げい)様? いえ、繰り返しになりますが情報が足りないため翻訳できず……》

 

「いや、意味を知りたいんじゃなくて本当に『読む』だけだ。発音は解るんじゃないか?」

 

 あの時のロゴが思考をよぎる。

 

 EIGONG。易公(えきこう)のフリガナのように、そう書いてあった。

ならばEIGONGには『エイゴン』と言う読みが当てはまる事になるのだろう。*2

 

 故に、ある筈だ。

自分たちの名前を猫弈(みょうえき)文字で表現している(ページ)が。

 

《……なぜ、そんな事を?》

 

 如羿(じょげい)は可否ではなく問いを返した。

その理由をなんとなく察しながら羿(げい)は続ける。

 

「現時点でその猫弈(みょうえき)文字の意味が解らないのであれば、解読のピースが足りていないか、そもそもピースが存在しないかのどちらかだ。

前者だったら思考停止してピースを探すしかないが、後者だった場合なんらかの形でヒントが用意されている筈だ。そうじゃないと鍵が成り立たないからな。

……桃花村(とうかむら)で関わりの深かった軒軒(けんけん)神農(しんのう)が、この文字を見ても心当たりが無いという。

……ならば、例えば音だったらどうかと思った」

 

《……》

 

「お前が言い淀んでいる理由もなんとなくわかる、気がする。

おそらくその『読み方』を推理できる要素が、『呪いの書』の中に含まれているのではないか?

 

―― 夸伏(クアフ)勾芒(ゴーマン)奄老(ヤンラオ)截全(ジエチュアン)蚨蝶(フーディエ)女媧(ニュイワー)伏羲(フーシー)()易公(エイゴン)……そして羿(イー)

猫弈(みょうえき)文字でこれらが表現されているんじゃないか?

 

質問の可否は答えなくていい。ルールに抵触するからな。

だが、最終的にそこから導かれた、まったく違う文字列の読み方についてぐらいは範囲外と捕らえても良いんじゃないか?」

 

 如羿(じょげい)は少し沈黙した後、まるで降参とでも言いたげにホログラムに両手を上げさせた。

 

羿(げい)様は……想像がついておられるのですか? 『呪いの書』の内容について》

 

「そうかもしれないな……しかし、そうでないかもしれない。なにせ、想像がついていたとしたらあまりに内容が荒唐無稽すぎる。

そしてその想像が当たっていたとして……どうだろうな。現実感が全くないから、しばらくは受け止めずに終わりそうだ。

ちなみに答え合わせをする気はないぞ?」

 

 蚨蝶(ふちょう)が声を上げる。

 

《そういう話なら……さっきの、えっと『猫弈(みょうえき)文字』の読み方?

その部分についてなんだけど、私に限っては『フーディエ』と言う音ではなく別の表記になっている可能性があるわ。

なんでも、『レディ・エセリアル』と読むらしいわね。だからそう言う文字列になっているかも》

 

「……なんだそれは。何か意味があるのか?」

 

《『幻想的な貴女』の意らしいわよ、うふふ。……なんでも『フーディエ』って音をそのままアルファベット……つまり猫弈(みょうえき)文字にすると良くない単語になってしまうから、そんな表記になったんですって》

 

 『呪いの書』の内容に想像がついている二人で、周りを置いてけぼりにしながら話している。

聞いている方としては混乱しきりだ。

 

 如羿(じょげい)が観念したように言った。

 

《……猫弈(みょうえき)文字は。いえ、その中でもさらに体系があるので蚨蝶(ふちょう)様の言に倣って『アルファベット』と呼びますが。

おそらく母音と子音に分けて扱う構造をしておりますゆえ、読み方は正確でない可能性がある事をご承知おきください。

 

蚨蝶(ふちょう)様の読み方が『レディー・エセリアル』なのであれば……

おそらく件の文字列は『チョギスォ エルゴ シュム』になると思われます》

 

っ、ああああああああっ!?!?!?

 

 軒軒(けんけん)が反応した。

まるで脳の奥にあった()()()が取れたように手を叩きながら叫ぶ。

 

「それだよ大哥(にいさん)! それだ!! 思い出した!!」

 

「……心当たりがあったのか」

 

「うん! それ多分読みは『コギト エルゴ スム』だよ。

意味は前に大哥(にいさん)に話した奴!

 

―― 我思故我在(我思う、故に我あり) だ!!

 

 

 視線が一斉に如羿(じょげい)に集まる。

少し視線を落とした如羿(じょげい)は数舜後、顔を上げて宣言した。

 

 

 

《照合します。

……この文字列を鍵に、軍用暗号のルールを以て、暗号文『書戈故居特思』を復号化しました。

導き出された復号化文字列は『在書架之板下』(書棚の下)。

―― 確かにこの言葉が鍵であると判定できます》

 

 

 

 四季閣(しきかく)に思わず「おおおおおおおお!」と言う歓声と拍手が響き渡った。

スタンディングオベーションと言うやつは、いつの時代、どこの国でも共通なのかもしれない。

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 暗号解読おめでとう。

この書はおそらく、あなたが求めたひとつの解答であり、ある意味でひとつの冒涜でもある。

 

 桃花村(とうかむら)の人たちが幸福であるように、無知である事が幸福につながる事象も確かに存在する。

ある視点において、知は確かに力ではあるが、同時に凶悪な呪いともなり得るのだ。

 

 例えばその事実が貴方に襲い掛かる事を少しも想像出来ないのであれば、私はこの書を破棄する事を強く強くお勧めする。

貴方のその感性は絶対に尊重されうる物だからである。

故にこそ、私は暗号解読の鍵にかくある言葉を使ったのだ。

 

 書を読む前に、必ず日を置くほどに熟慮されたし。

そして鍵の言葉を今一度、強く強く胸に刻んで頂きたい。

 

 願わくば、呪いの先に光あれ

猫弈(みょうえき)

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 どう言った思惑であれ、『読む』ことを選択したあなたの意思に敬意を表する。

そしてこの内容を見た時、全てが遅きに失していたのならば、あなたは私を恨むべきだ。

 

 私は何も行動に起こさなかった。抱えたまま腐らせた。

それは間違いなく私の『何もしない』と言う行動の結果であるのだから。

そして私は、それを謝るつもりも、償うつもりも、まったく無い。

 

 だからあなたは私を恨むべきだ。

そしていつの日かこの書を鼻で笑い飛ばし、適当な鍋敷きにでも使って、拉麺(ラーメン)の汁でも零して捨ててしまえば良い。

 

 あなたの命と人生は、例えこの書で何が書かれていようとも、間違いなくあなたの物であるのだから。

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 その書を題して『九日百科』。

 

 それはとある星のとある時代。とある国のホラーゲームメーカーが生み出した2Dアクションゲーム。

そこに登場するストーリーや設定を、猫弈(みょうえき)が記憶のままに書き綴った代物だった。

 

 

 ―― そのゲームのタイトルは、九日 NineSolsと言った。

 

 

「ゲームって……大哥(にいさん)が持ってきてくれた物の中にあった、あの?」

 

「そうだろうな。VR式のアレよりは多少は劣るのだろうが、さして本質は変わらないだろう」

 

「……僕の(ページ)がある。司祭様のも。でも、哪旺(なわん)とか吒明(たみん)とかは無いや」

 

「登場しなかったのだろうな、たぶん」

 

 皆が『九日百科』の内容に衝撃を受けながらその項目を読んでいる中で、羿(げい)軒軒(けんけん)がどこかふわふわとした声色で淡々と内容について口にしていた。

 

「おい……おい、相棒。お前、信じるのか? これを?」

 

 自身の項目に当たる部分を見ながら、茫然と夸伏(こほ)が問う。

羿(げい)の反応は平坦だった。

 

「それこそ、今更だろう。

思考の片隅に入れながら現実を確認する……今までそういうスタンスだった筈だ。

とは言ったものの、こんな話を確認する手段など無いわけだが」

 

「いや……明らかにこれはそう言うレベルの話じゃないだろ!?」

 

「―― だが」

 

 羿(げい)の言葉は夸伏(こほ)ではなく、軒軒(けんけん)に向けられていた。

それに気づき顔を上げた軒軒(けんけん)の目を見て、彼は言った。

 

「だが……俺について書かれている内容は概ね事実だ。

俺が、お前たち桃花村(とうかむら)をはじめとした人達に行った所業についてもだ。

……お前たちは俺を恨んで良い。それを知ってどうするかは、お前に任せる」

 

「相棒……」

 

 覚悟があった。

永生炉(えいせいろ)プロジェクト主任としての責任があった。

 

 結果を見れば無意味だったのかもしれない。非人道的で、残酷で、利己的だった事も認めよう。

しかし過去をやり直したとして、同じ材料で同じ状況になったなら、きっと自分は提案し、決断するのだろう……そういう確信があった。

 

 それは皆の前に立って歩む科学者であるが故に。

 

 だから、謝れない。謝る訳には行かないのだ。

 

 その部分が、『九日百科』の序文で同様に謝らないと宣言した猫弈(みょうえき)と腑に落ちるほどダブっているように思えて、羿(げい)は内心悪態をついていた。

 

「お前は ―― 俺を、恨むべきだ」

 

 大嫌いだが。

果たして似ているのだろうか。

自分(イー)と ―― 猫弈(マオイー)は。

 

 羿(げい)の内心をよそに、軒軒(けんけん)はべ、と舌を出しながら言った。

 

「じゃあ大哥(にいさん)の項目は読まない」

 

「……なに?」

 

「恨む『べき』って事は、恨まなくちゃいけないんでしょ? 知らないものそんなの。

僕の心は僕が決めるよ。この書に何が書いてあったって、大哥(にいさん)がどう思ってたって、そこは絶対僕の物なんだから」

 

 いつも見る、天下無敵の軒軒(けんけん)の姿があった。

 

「……だからさ。大哥(にいさん)が整理ついた時に、大哥(にいさん)の口から教えてよ。それまでは我慢して、大哥(にいさん)の項目は読まないようにするからさ」

 

 皆の視線が軒軒(けんけん)に集まっていた。

 

 自分の人生が被創作物だと言われても、それを状況が裏付ける状態であってもなお、しっかり徹った芯を以て二本の足で立つ軒軒(けんけん)がそこにいた。

自暴になる事も浮足立つ事もなく、いつも通りの軒軒(けんけん)が。

 

「……お前は、すごい奴だな。

……俺が見てきた猿人は皆、すごい奴ばかりだ」

 

猫弈(みょうえき)姉ちゃんもね!」

 

「……そうだな」

 

 真の意味で太陽を語るのであれば、それはきっと軒軒(けんけん)なのだろう。

かつて太陽を名乗っていた自らを鑑みながら、羿(げい)は心のどこかでそう思った。

 

 

 


 

 

 

※『九日百科』より

猫弈(みょうえき) / MAOYI

 

 九日の登場人物ではない。

 

 蒼藍星(そうらんせい)と呼ばれている星『地球』において、西暦2025年に生きていたインドア文系同人作家。

気付けば桃花村(とうかむら)に生まれて第二の人生を送っていた系転生者。

 

 名前は前世と変わっているが、前世にも(マオ)の音はあったので、どうやら私は猫ちゃんから離れられない運命らしい。にゃ~んにゃん。

飼ってはいなかったが犬より猫派。

 

 投稿サイトの〇ixivでは絵とか書いてたし、同じく投稿サイトの〇ーメルンでもガリガリ小説を書いていた。

 

 アクションゲームは可もなく不可もなくな腕だったが、ある日とある実況動画で存在を知り、九日の絶妙な難易度とストーリーにドハマリして二次もいっぱい書いた。

AIに聞きながら古代中国とか道教とか医学とか生物学とか色々調べつつ考察しつつ書いたり描いたりしてたら、いつの間にか学校で学ぶよりも各分野に通じてたのホント草。

されどいくら書いても九日二次の波が全く来なくてホントぴえん。

 

 羿(げい)くんが好き。基本的には総受け派だけど、その中でも軒軒(けんけん)と絡むのがいっぱいちゅき。(こう)も好き。妹なのにそのバブみで羿(げい)君を包み込むのホント貴い。

 

 残念ながら本物の羿(げい)と会うことは叶わなかったけれど、軒軒(けんけん)のまぶしさによって無事浄化された。

軒軒(けんけん)はわしが育てたが、わしが育てる前から軒軒(けんけん)軒軒(けんけん)であった。

知識は色々仕込んだけどね。彼の書く『射猪英雄伝』はマジで読んでみたかった。

 

 何も起こらないのであれば多分享年17歳。花の乙女。

子供ポコポコ生むの推奨な世界に置いて未通で終わった。おわる。たぶん。

まあ前世では経験あったしそこはあまり未練無いんだけど自分的には結構びっくり。みんな私より私の書の方に食いついてたしな。

顔とかペエとかケツとか、そんな悪くない仕上がりになってると思うんじゃが。

 

 ってか、何なら軒軒(けんけん)に恋慕してたとかされてたとか思われてるフシがある気がする。

勿論軒軒(けんけん)は大好きだし性的にも大好物ではあるが。

どうすっかな、冥土の土産にマジで喰っちまおうか。でも大天使軒軒(けんけん)に手を出すのは流石に超えちゃいけないラインを越えてしまう気がする。しかしその誘惑はまことに耐えがたい……

 

 よし、迫られたりえちちな話を振られたら喰おう。

魅せて貰おうか、性少年時期に差し掛かった性欲とやらをうふふじゅるり。

とりあえず猫弈(みょうえき)さんの今夜のおかずは決まった!

 

 ……これ資料用の書なのに何を書いてるんだ私は。

 

 

 


 

 

 

羿(げい)「浄化されていない……軒軒(けんけん)のまぶしさでも浄化されていないぞ。

いつも通りの肥溜めにドブ水を混ぜてタンを吐き捨てたが如き下劣さだ」

 

軒軒(けんけん)「……(真っ赤)」

※しかし『享年』の文字を見て不穏な空気が漂っている事には気付いている。

 羿(げい)の項目は見なくとも、他のページを見る事でいずれは真実に辿り着くだろう。

 

 

*1
原作でも言ってる

*2
小説内では『えきこう』と和名表記ですが、実際は中国読みをしている筈です。

つまり、本当は『エイゴン』と発しています




 十王と四季閣(しきかく)面子を合わせると、「COGITO ERGO SUM」を構成するのに十分なアルファベットと読み方を得る事が出来ます。
それでも「C」は蚩尤(チーヨウ)しかなかったり、「T」は蚨蝶(レディ・エセリアル)しかなかったりするので読み方に癖は発生しますが。

 また、猫弈(みょうえき)の暗号は有名な『ヴィジュネル暗号』で成り立っています。
解き方を記載すると長くなるので、知りたい方は適当にググってください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。