またゲーム本編のテキストを全て押さえられていないのでどこか矛盾する部分が出てくるかもしれません。
もし本編と解離する重大な矛盾が出て来た場合は、
「まず初めに、変異体とは何かという点について纏める。
――
スピーカーから
《かしこまりました。
変異体とは
具体的には錬丹炉にて突然変異させた黄龍の抗体をベースに、細部を調整した血清を生成。
ただしこの数字はあくまで初期の物であり、後期においては死亡率を40%程まで大幅に引き下げる事に成功しているようです。
変異体となると体組織が特殊な細胞に置き換わり、知能が著しく低下します。
性質として他の生物を積極的に襲うようになるようですが、これの原因は解っておりません。
ただ
まるで外敵を
変異体同士で攻撃し合わないのもこれで理由が付くとのことです。
能力ですが、変異体となると古木樹と共鳴し、事実上の不老不死になります。
細胞はいわゆる万能細胞の体をなし、それ故に様々な奇形への変異が見られております。
またこの細胞には感染性があり、水などを介して他の生物に潜り込むことも出来るようです。
他のウイルスや細菌、毒性による影響もみられる、当然ながら
総評して生命力、万能性と言う点では非常に優れていると言えますが、代償とする知能の著しい低下と言う痛烈なデメリットは未だ解決策が用意されていません》
「被検体の総数は?」《460名です》「時期あたりで致死率をグラフに出せるか? それと血清の変更点も」《こちらになります》「細胞の万能性に関する概要を資料で出せ。テロメアもじゃ」《かしこまりました》
早速システムを使いこなしているようで大変頼もしい。
「意識についてはオカルトが入るが、本人の意思や有りよう如何でその行動に影響が出ると見れる実例が、今俺たちの前に存在している。
見ての通り、
今では手を握っていないと不安定になるものの、共生の一例として見る事が出来る状態と言えるだろう。
「
「いや、行っていない。しかしカプセルから出された後に俺に襲い掛かってきた様相を考えると、視覚は治っている可能性がある。顔が俺の方を向いていたからな」
「ええい、中途半端な。まあ、とりあえず治る方向で考えてやるが。理屈通りなら治る目は普通にあるハズだしの……」
一連の流れを聞いていた山海9000が、ふと不思議に思って
ひらひらする手に反応したようにも見えるし、山海9000の動きを感じ取ったようにも見える。微妙なラインである。
「
「……先に言っておく。変異体の特殊例についてだが、2人ではなく3人だ。
この私も、今現在体が変異している最中なのだよ」
その様相に思わず参加者全員の呼吸が止まった。
「……
意識はしっかりしているし、頭痛も消えた。体の変調をごまかすために飲んでいた丹薬も最早必要が無くなっている。
知性は精神力次第で保持出来るのだ」
どこか熱に浮かされたような目で、
「具体的に何をやろうとしたか、だったか。この身を以て古木樹に変異体を感染させる。
古木樹から
そこから太陽人に感染は広がり、最終的に新
「待って欲しい
そのやり方だと致死率が90%に戻ってしまわぬか?」
「可能性は高いだろうな。しかし種を残す事を優先した。どのみち何もせずとも終わりだし、何よりカプセルの数を揃えるのは非現実的だからな。
計算上、千は生き残る事が出来る筈だ」
「さすがに異議ありじゃ! やるとしてもカプセルを使って致死率を下げて行うべきじゃ!
幸い、永生炉プロジェクトのおかげである程度時間は稼げるのだから!」
「おい
「反射的に口答えするでないぞ
そもそもが「どうせ合意が得られないから」と色々見限って急ぎ過ぎておるのだこの計画は!!」
そんな喧騒を見ながら、
「……わたくしは、構わないわ」
その発言に、
「お兄様と一緒になれるなら、わたくしはそれでも構わない。
元々終わりが見えていたのよ。体の中からじわじわと
でも……それから逃げられるならと、考える人だって結構いるんじゃないかしら」
何より、
そう言って、
「
「あの、ひとつ質問良いかな?」
「不思議に思ってたんだけど、この変異体になった人達って何食べてるのかな。ケガして死んじゃうことが無いのは解ったけど、おなかすいて死んじゃうのも無いの?」
「……お兄様は、『こう』なってからは何も口にしては無いわ。不老不死と言うのはつまり、何も食べずとも生きていられるのよ」
「いや、実は俺もこの点が気になっていてな」
「動くにはエネルギーが必要だ。テロメアは何とかなったとしても、さすがにエネルギーを細胞でどうにかしてるのは少し考えにくい。古木樹だって光励起が必要だし、
―― 俺が駆除した変異体の中には元能エネルギーと思わしき物を溜め込んでいる種も見られた。
変異体は古木樹と共鳴しているのだろう? その過程で元能エネルギーも取り込んでるんじゃないか?」
《データを見る限り、それの反証となり得るものは見受けられません。
……
「……十分、あり得る話だろう。襲った生物を貪るような様相も無かった。古木樹と同じく光励起している可能性も無くはないが、体表の状況からその可能性は低い」
「となるとだ。古木樹は変異体にとっても生命線となり得る事になる。
その古木樹を変異感染させたとして、エネルギーの励起を保てるだろうか?」
「……どういうこと?」
《古木樹の細胞に変異体細胞を感染させた例は実験データに存在します。先の
映像記録を見ると、細胞が肉腫に変異し変異体に変わるまでほぼ時間を要しませんでした》
「……ん? 肉腫に変異して『黒』じゃなくなるのか?
となると……光励起機能、消えちまってるかもしれないな」
「……!!!」
解っていなさそうに首をかしげる
それはそのまま、
「古木樹は太陽の光を受けて元能エネルギーを作っておる。この過程で古木樹の色が『黒』と言うのはかなり重要でな……
解らぬかもしれぬが、色と言うのは光の反射を指す。
光を吸収してエネルギーを造り出すという事はつまり、光から力にする分を
例えば同じく光励起している一般的な樹木の葉は緑色をしているが、アレは光から力を吸収した
同じく光から根こそぎ力を吸収すると、光はもはや何の色も出せずに黒色になるんじゃ。古木樹がこれじゃな。
……故にこそ、肉腫になった『ピンク色』の変異体古木樹細胞は、光励起を失っていると解釈できる。
もしこの考えが当たっていたとしたら、古木樹を変異体感染させるプランを実行させていたら滅亡一直線じゃな。
古木樹がエネルギーを作れなくなるのだから、古木樹からエネルギーを得ていた変異体もそのうち飢えて果てるじゃろう。
……そのストレスの中で、何かを捕食する方向に進化する可能性も否めなくはないが……元能エネルギーが無くなった新
「『進化』だったら僕にもわかるよ。突然変異して環境に適応するってやつでしょ?
――『黒い』変異体に進化する可能性は?」
「あるかもしれんが、母数が少なすぎる。変異体数が千程度ではあまり期待は出来んじゃろう。
錬丹炉を使って方向性を操作してやった方がまだ可能性はあるが……わらわの知る限り、古木樹と同様の性質を持つ方向に進化できた例を知らぬ。そうじゃな?
「ああ、そうだな。古木樹も伊達に神様扱いされていないって事だ。
……生み出せたなら、真っ先に俺が自分に組み込んでるさ。イヒヒヒ」
「……確かに、これは認めざるを得ないな。私のプランには穴があり過ぎたようだ」
一歩間違えれば変異体の絶滅まで考えられたシナリオを聞いて、
何だかんだで、彼女自身にも思考の固着があった事は自覚していたのだ。
「思考能力についても、意思だけで抑え込むと言うのはやはり母数が足りなくなるな。見た目は妥協するとしても、この部分はいうなれば人格の死だ。何か解法は出しておきたいところだが」
「……人格の死、か」
「わしのように……ただ死の恐怖から『生きたい』と考えている者は、容易く蒙昧に転びそうじゃな。
わしは……それを持てと言われても、難しいな」
「……」
あるいは蒙昧となっても、
「……太陽人が変異体となった後、外敵が排除されれば、自然と種の目的は全体の維持に偏るはずだ。その過程で思考能力が芽生える事を期待していた面は確かにあった。
我々太陽人が、長い時を経て思考能力を獲得したように」
「逆に言えばほぼ無策か……
《ず、随分とエキセントリックな解法を思いつくわね……今のデータだけでは未知数としか言えないわ。
ただ、個人的にはかなり怪しいと見てる》
「理由は?」
《
データを見ると、変異体はそれが強烈に機能してるように見える。
だから損傷があっても瞬時に再生を行っている。
……仮にニューロンの状態を焼き付ける事が出来たとして、
いえ、もしかして細胞レベルでそれを制御するのは可能なのかしら? ……
「細胞への増殖コントロール法に光明を見ているのなら、期待するなとしか言えんの。わらわも
いっそ脳みそ取り出した上で変異させ、しかる後に脳を戻した方がまだ可能性が……いや無いな。馬鹿を言った、忘れてくれ。
せめて
「……そちらの話になるのであれば、俺は『オカルトで押し通せ』に一票だな」
「万人に救いの手をと考えるお前たちの姿は素晴らしいが、彼らはそれを受けるに足るのか?
お前たちは今、自分を定義する事も出来ないような奴らの話をしているのだぞ?
蒙昧に堕ちるとなれば、それこそ自然淘汰と言う奴ではないのか」
「でもそれってさ。少し前の
それはきっと、とても凄くて尊敬するぐらい英雄的だけど……僕は、
そして、この変異体はもしかして、笑えるようになった傍から意思が消えてってしまうように思える。それはなんだか……種としてとても寂しい話だよ」
「苦痛は、英雄を鍛えるものだ」
「うん。でもそうやってガンバった英雄には、苦痛の先で笑ってて欲しいよ。じゃなきゃそれじゃあ、ただのバットエンドだ」
報われる事が種として許されなくなる……確かにそれは、最終的に破綻しか見えないように思えた。
「ねえこれ、つまり変異すると自分を忘れてしまうって事だよね?
……強い思い出とか、自分を形作るオリジンに関連する物品を用意するとかで、変異しても思い出せるようにするって方向は無理かな?
姉ちゃんの書いた『七想記』にそんな設定があったんだ」
その手があったかと
《―― 符号化特定性原理!! 確かにそれなら可能性があるわ!!
だって実際、
そしてミもフタも無いけど、そう言う強いエピソード記憶を作らせるのも薬で行けるわ!!》
「……え、薬で行けるの? なんかすごいコワい技術だねそれ……」
何人かが
そのうち
「記憶の固着……確か、そんな心理学の論文が無かったか?
香りや音楽で記憶と感情を想起させるとかいう……
もしそうなら、ある意味
「……わたくし?」
「雅楽は
「あるわ。お兄様の七弦琴は、それはそれは繊細で見事な物だったのよ。
今ではとても不器用になってしまったけれど……それでもわたくしが笛を吹くと、拙い音でもお兄様が合わせてくれるの」
《普通に想起できてるじゃない。使えるわよ、これ》
「つまり何らかの『知性』と結びつくレクリエーションをやりつつ、特徴的な香りでその場を満たしつつ、音楽流しつつ、皆で薬をキメれば、変異後もラインぎりぎりで知性を保つ事は出来そうだと」
「字面。並べるとちょっとヒド過ぎないか友よ。
何回かわたくしを中心にしたそう言うシーンに放り込まれたことがあるよ。
みんなわたくしを置いてけぼりにしてヤバい目をしながら踊ってるんだ」
「俺はたぶん、すごく直近でその光景を見た事がある。10年に1度パーティーやってる貴人殿の中がちょうどそんな感じだった。
特に中央あたりで腰振ってたヤツ」
「ほっといて頂戴!!」
キメる薬の性格は正反対の筈なので、たぶん絵面的にはそんなに酷くならないのではないかと思う……いや、記憶や感覚の定着を促す薬になる訳だから、やっぱり見た目はひどいのか??
「―― ひとまず、変異体を最終セーフティとして考えた場合の方針は大体固められたのではないだろうか。どうしても実験は必要になるが……
「……いいや、何もない。あるとしても実際に稼働した後の話になるだろう。
資源の使い方や被検体の問題のような。
……正直、否定されるだけで終わると思っていた。何かと理由を付けて破却されるだけだと」
今まで、何回も十王会議を開いてきた。
しかし、ここまで纏まりがあり、かつ建設的な話が出来た例はあっただろうか。
確かに難易度は高かった。不明な事だらけの
だからこそ、自分が何とか引っ張ってきたのだ。
―― しかし、
やっと、天道議会にあるべき姿が展開されたような、そんな気さえする。
「『敬意を払え』―― 合言葉だ。みんな気にしてくれている。
時間こそ掛かるが、とりあえず否定から入らずに深掘りをしていこう。それが出来る下地を整えてこの場に臨んだつもりだ」
「……これが、『和』か」
「そうだ。我々天道議会に足りていなかったモノだ。ずっと俺が、俺たちが軽視していたモノだ。
……俺は今、今までになかった手ごたえを感じている。
これなら……きっと、『納得』できる道を探す事が出来る」
『分かり合えるまで話し合う』なんてキレイごとにしかならないかもしれないが。
「……さて、変異体については良いな。ではそれを最終手段とした上で、別の方策を模索したい」
「そうだな。……しかし掘り進める草案くらいは出来ているのか?
例えば、肉体を捨てて電子の世界に引っ込むと言うのもこの期に及べばひとつの選択肢のように思えてきたが」
《私も倫理観排して一度考えてはみたけれど、その方向も結構課題が多そうよ。どうしても肉体は必要になる》
「……お主がその体で言うと説得力があるの。やはり、そこまで
《ええ、脳みそは肉体に乗ってるのが一番安定するって事らしいわね。少なくとも今の技術では
「つまり、
彼は口を結び、まっすぐに顔を上げた。
「いや、その……『和』で頼む。ほんとに。
お願いします。怒らないでください。
……いや言わせてもらうが、俺は絶対悪くない。ぜったい。絶対」
「……は?」
猿人の処遇を絡めた
思っていたのだが。
「
「――
―― 一行は後述する。
その時の