猫のあしあと   作:のーばでぃ

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猛毒と言う名の薬

 

 「……易公(せんせい)が、汚染の黒幕じゃと? バカも休み休み言うが良い。なんだって民を守る為に立った者が、自ら民を貶める真似をしようと言うのだ」

 

 弘農堂(こうのうどう)に冷ややかな声が響く。

洗いざらい話せと言ったは良いが、初めに出てきた情報がアホらし過ぎて、勾芒(こうぼう)は反射的に侮蔑を返した。

 

「……信じなくていい。俺も半ば似たようなものだ。だからそれを確認する為にも動いている」

 

「ふん、どうだか。自らを追い落とした天道議会を見下ろしたくてうずうずしているのであろう?」

 

「見下ろしたくて……? そう見えるのか、俺は。

どうだろうな。考えた事は無かったが……俺を認めてくれた易公(せんせい)が、俺の仇と分かったから。もしかしたらそう言うのは反転してしまったのかもしれない」

 

 まただ。

 

 勾芒(こうぼう)は、自分の知る羿(げい)と今喋っている羿(げい)がどうもズレてきているように感じて、なんとも言えない気持ち悪さを感じていた。

 

 コイツはもう少し、唯我独尊な奴だった筈だ。

人の意見は切って捨てて、正論で殴り続けるタイプの人間。

間違いも過ちもそれなりに認めはするが、その頻度が少ないために結局鼻に付く奴になる、そんな印象だった。

 

 少なくとも、自分の意見とは違う事柄に介して肯定しつつ考える、そんな殊勝な奴では無かった筈である。

 

 ……と言うか。

 

「仇だと? 易公(せんせい)に仕掛けておいて返り討ちにされたら仇呼ばわりか。自分で筋違いだと思わんか」

 

「……」

 

 勾芒(こうぼう)の指摘に即答せず、羿(げい)は沈黙したままじっと勾芒(こうぼう)を見つめている。

まるで、何かを見定めるように。

 

「な……なんじゃ、一体。さっきからお主妙に気持ち悪いぞ」

 

夸伏(こほ)は、普通に知らないようだった」

 

 ぽつりと呟く様に口を開く。

 

()は、知った上で無視をしていた。どのような終わりでも見届けようとしたのかもしれない。

俺は、知ったからこそ反発した。

あの時、あそこにいたのは俺一人だけだったから、俺はみんな知っていたのだと思っていた。

だから易公(せんせい)だけではなく、天道議会その物に反発したが……お前は、勾芒(こうぼう)は、心当たりすら持って無かったんだな」

 

「待て、一体何の話じゃ」

 

「俺の仇の話だ。易公(せんせい)がみんな殺した。

父さんも、母さんも……天禍と言う災いを生み出して

 

 まさしくそれは核心だった。

羿(げい)が天道議会を離反した理由であり、すべてが破綻していた根源的原因。

ポカンとしながら勾芒(こうぼう)が言う。

 

「……節穴か貴様? 易公(せんせい)が、どれだけ心血注いで天禍に対抗しようと動いていたのか全く見ていなかったのか?

なのに易公(せんせい)が天禍を生み出してばらまいたと?」

 

「故意ではなく、事故だったのだろうなと考えている。だからこそその責任を負うために、必死になって天禍の治療法を探している……そう考えると辻褄が合うが、裏取りがまだ途中だ。

 

だが、そこにさらなる無視できない情報が追加された。

……易公(せんせい)はどうやら天禍治療の研究中に、さらに別の何かを発見した。

天人エリアに蔓延っている化け物だ。不老不死にして、理性を持たずに彷徨う太陽人の成れの果て。斬っても呪符で破壊してもやがて再生し、再び襲い掛かってくる。

 

そんな化け物の不死性を指して、これこそが太陽人の進化の形だと……易公(せんせい)はそう()()()しまったと」

 

 勾芒(こうぼう)は一瞬、自分の知る易公(えきこう)を脳裏に浮かべた。

……ありうるかもしれない、と心のどこかで微かに思ってしまった部分がある。

 

 500余年前。羿(げい)が離反し、粛清された後。

易公(えきこう)羿(げい)の反乱を理由に彼が手掛けたAI群を危険視し、オートメーション化の脱却を進めた。

だからこそ新崑崙(こんろん)をメンテナンスする暮守(くれもり)が拡充された訳だが、さすがにあの決定には勾芒(こうぼう)としても異論を挟んだのだ。

 

 繊細な農業には、繊細な判断が必要である。それはあらゆる状況に対応できるエキスパートだ。

それをAIが担う前提でシステムを構築していたのに、今更そこらの非技術者に管理を任せるなどと。

だからこそ起き抜けに起こっていたあれやこれやについては、きっと蒙昧な暮守(くれもり)のせいに違いないと疑いもしなかったのだ。

 

 例えば。高度なAIを乗せる事で、ログの中に不審な点を残す事を恐れたとしたら。

 

 例えば。高度なAIを乗せる事で、対応しきれない事柄に対応されることを嫌ったとしたら。

 

 ……小さく首を振る。

 

「……それも、未確定情報か。情報源は?」

 

「悪いが話せない」

 

「……ふざけておるのか貴様」

 

「ふざけていない。話した場合、お前がどういう行動に出るかある程度の予想がつくからだ。

そして俺としては、出来るならそれは可能な限り引き伸ばしたい」

 

「なんじゃと……?」

 

 やはり、羿(げい)の中に変節を見た。

以前の羿(げい)であれば、弱みとなり得るそのセリフを口にはしなかっただろう。

 

「―― 何より、結局不確定情報だ。確認した情報であれば極力提供しよう。

俺としてはそれで納得してくれとしか言えないし、それで通るとも思っている」

 

「なぜ?」

 

「お前は()()()()()()()()()()()()。水の問題は最優先で何とかなったが、それ以外にも保守作業が山ほどあるのだろう? そして俺も、少なくとも天人エリアをあのままにするのは望まない。再び状況の確認に戻るつもりだ」

 

「チッ……的を射ておるのが忌々しい。手伝わせるつもりであったが、体よく逃げおるか。

……いや待て、おぬし暮守(くれもり)についても何か言っておったな?」

 

「任期を終えた暮守(くれもり)が何らかの形で『処分』されて行ってるようだ。こちらは確定情報と取っても構わない。暮守(くれもり)たちの手記や死体から情報を抜けた。

―― 太陽は、嘘をついていたのだと」

 

易公(せんせい)云々はともかくとして、少なくともこの事態を招いてるのは天道議会の誰かというのは確定という事か!」

 

 勾芒(こうぼう)は羽の形をした手で目頭を覆った。

拡充のために暮守(くれもり)を無理に起用したために、彼らは太陽直轄となっている。

ゆえに、彼らを権力の方面からどうこうできるとしたら、それは太陽以外にあり得ないのだ。

 

「では、確定情報としてシロと解っているのは?」

 

夸伏(こほ)()だ。仮にあいつらがクロだった場合、すでに俺の首は落ちている。

そして今、そのシロにお前も入れた。そう判断して良いと思ってる」

 

「……フン。本当に、忌々しい……!」

 

 思考を回した。とりあえず今の発言は信用してやるとしてだ。

残る太陽は奄老(えんろう)截全(せつぜん)蚨蝶(ふちょう)伏羲(ふくぎ)女媧(じょか)易公(えきこう)の6名。

 

 蚨蝶(ふちょう)は無いな、と一瞬で却下した。

伏羲(ふくぎ)女媧(じょか)は蒙昧のまま手伝わされているケースはありそうだが、天人エリアの状況を見るに省いて良いだろう。

奄老(えんろう)は、あるとしたらせいぜい協力者(グル)まで。截全(せつぜん)がやるとしたら状況が回りくど過ぎる。

 

 となれば、残ったのは結局 ――

 

 ……舌打ちをしながら顔を上げる。

 

「―― クソッ。羿(げい)、やはり貴様は手伝え。その代わり他の太陽には黙って置いてやる」

 

「いや、俺は……」

 

「いいや逃がさん。無効化されているオートメーション機能を復活させる。

整備ロボットの用意とまでは言わん。しかし、無効化した設定を復活させるぐらいは手伝って貰うぞ。このままではライフラインが緩やかに止まってしまう。

―― その後は、どこへなりとも好きにするが良い」

 

 決まりだ、とばかりに勾芒(こうぼう)は踵を返した。

羿(げい)は思わず「おい……!?」と声を掛けたが、やがて観念したようにとぼとぼ後に続いて行く。

羿(げい)としても、このままライフラインがパンクするのは看破できなかったが故に。

 

 

暮守(くれもり)が、全滅じゃと……!?)

 

 

 勾芒(こうぼう)はやはり、朝の不機嫌をずるずると引きずったままだった。

なんだったら、たった今それが倍したとすら言っても良い。

 

 食糧庫や水・酸素生成施設。浄化槽に大農場。

どれもこれも、メンテナンスには高度な技術が必要な物ばかりだ。

だからこそ、休眠前には勾芒(こうぼう)自ら手を掛けた暮守(くれもり)達だっていたと言うのに……

 

 勾芒(こうぼう)は、起き抜けにアラートを見た時、その手掛けた暮守(くれもり)達に真っ先に連絡を入れたのだ。

 

 ―― そして、結局連絡は付かなかったのである。ただの一人も。

 

 

(そんな筈、あろうものか……!)

 

 

 勾芒(こうぼう)の焦りにも似た苛立ちは、当面収まりそうに無い。

なぜなら彼らは、覚えは悪く、才能は無く、理解するまでに時を要したが。

 

 ―― 素直で、勾芒(こうぼう)を純粋に仰ぐ、年若き者達だったのだ。

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 特異体質の極みを語るなら、疑心暗鬼の神農(しんのう)を置いて他は居ないだろう。

 

 あらゆる毒を取り込んで、その臓腑を以て薬酒に醸し、そして吐き出せる特殊体質。

こんな突然変異が生まれてたまるか。少なくとも、神農の体質と生物学を僅かにでも知っている人間から見れば、そんな感想しか出てこない。

そもそも、定期的に毒物を摂取しないといけない病ってどういう事だ。

 

 少なくともコイツが今飲んでる黄水(こうすい)は、普通なら皮膚についただけですぐに洗い流す……どころか切除しないと一大事と言う劇物であった筈なのだが。*1

 

 満足そうにゲップしながら言ってのける。

 

「中々刺激的な味だ。ピリピリとした後味が心地よい……

しかしなんだ、あそこにはこんな便利な水が大量に流れていたのか。

これならあいつに助けて貰う必要なんか無かったな……不覚を取った」

 

「控えめに言ってドン引きだよ君」

 

「ちょっと近くでゲップしないで貰えるか。息吸っただけで死ぬ気がするんだ。

いや差別だの隔意だの別にしてガチな意味で」

 

 ()夸伏(こほ)は真面目にそう言う反応しかできない。

そんな二人を見て、いつもの事だと言わんばかりに神農(しんのう)は鼻で跳ね飛ばした。

 

「フン。化け物が化け物呼ばわりしやがるか」

 

 彼我の認識の差は激しかった。

 

「……わたくしも数世紀どころでは無い年月を生きてきた中で、結構そう言われた事はあったけれど。流石に君以上は見た事がないよ。

君は四季閣(しきかく)に来て本当に正解だったね。易公(えきこう)截全(せつぜん)辺りに存在がバレたら随分ひどい目に遭っていただろう。占わなくても解る」

 

勾芒(こうぼう)相手も随分危なかったんじゃないか? 運の良い奴だ」

 

「好き勝手言いやがる。俺だってな、お前らみたいに顔まで毛むくじゃらの人間なんて初めて見たんだ。つまり、お前たちが物を知らないだけだ」

 

「いやそれ単純に種族が違うだけ……」

 

 彼に理解と自覚を促すには、もうしばし時間が掛かるようである。

 

 

 

 神農(しんのう)羿(げい)と取引した。

ほぼ神農(しんのう)が一方的に要求したような物だったが、羿(げい)としても異論はなかった。

 

 神農(しんのう)四季閣(しきかく)に身を置く。そして毒物二つにつき、神農(しんのう)の作った薬酒を羿(げい)に提供する。

そういう取引だ。

 

 羿(げい)としても神農(しんのう)の酒は気に入ったようで、ちょくちょく毒になりそうなものを持ってきては神農(しんのう)に渡し、共に酒を飲んでいた。

 

 

 ―― 彼は、四季閣(しきかく)の外に出る事が多い故に、その酒がどうやって作り出されるかを知らない。

 

 

「……お前たちは飲まないのか?」

 

「「いや、遠慮しておく」」

 

 

 即答されるその言葉に少し違和感を覚えたものの、酒の回った脳みそでは「まあいいか」と言う答えしか出せず、羿(げい)はその事を秒で忘れて美味しそうに盃を啜った。

 

 労働の後の酒は、いつの時代も格別であると相場が決まっているのである。

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 太陽・勾芒(こうぼう)

農業工学、生物学、遺伝子工学と言う分野では太陽随一と言って良いだろう。

さらに機械工学の分野においても一定の知見を見せる。

 

 彼女は羽民と言う王国の出身だ。

この国は土地が貧相で険しく、気温も比較的低い。そしてそれ故に遺伝子工学が突出しているという特異な国であった。

 

 勾芒(こうぼう)の両手は鳥の羽の様相であり、その足には義足が嵌められているが、当然最初からそうだった訳ではない。これは自ら改造を行った結果である。

 

 険しい土地の行き来を楽にするために鳥の遺伝子を植え付け、痩せた土地で食べていくために遺伝子組み換え農品で生産性を上げる。そんな事が常態化している国である。

ちょっとした整形感覚で遺伝子改造を行ったりする……は、さすがに言い過ぎかもしれないが。そこまで珍しい事でもないらしかった。

 

 そこから勾芒(こうぼう)はさらに突出する。

学んだ知識をフルに使って、安全で効率的な農産物の飛躍的な増産と質の向上、さらに目玉蓮根をはじめとする新種の創生に成功したのだ。

 

 ……この事から、易公(えきこう)から見て勾芒(こうぼう)は、そのスキルゆえ真っ先に()()()()()()()()()()()()人物だったと言える。

しかしそうなっていない。

 

 考えられる理由は二つ。

易公(えきこう)の目的がズレていて、実は勾芒(こうぼう)が不要だったか。

あるいは()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ―― 彼女は既に、羿(げい)と言う離反者を出している。当然警戒はしていただろう。

となれば……

 

(……状況を集めて行くと、だんだん猫弈(みょうえき)が示唆した方向に傾いていく。

……気に入らないな)

 

 内心舌打ちをしながらも、羿(げい)は農業施設を進む。

勾芒(こうぼう)が認めたことにより、もはやここの衛兵が羿(げい)を襲う事はない。

(と言っても元より危ない生物や設備はあるが)

 

 目的は、農業施設より隣接する天道研究センターだった。

 

 

 

@ @ @

 

 

 

「人の体は細胞で出来ておる。細胞の中にはDNAと呼ばれる細胞の設計図が入っており、細胞は分裂するときにその設計図を分裂先にもコピーする。

このDNAはいうなれば、人体の全ての設計が記された分厚い本じゃ。

細胞はその中の1ページの役割を与えられ、そのページにある設計図の通りに自ら分裂を行う。基本的に分裂先……もう子でよいな。基本的に子も親と全く同じ役割を担いながらその一生を終える。

ならば受け渡す設計図は分厚い本ではなく、一生を担うページの分だけで良さそうに思えるであろうが ――」

 

「―― 状況によって、他のページを代行する事がある」

 

「その通りじゃ。もっとも、皮膚に使われる細胞が内臓の役割を与えられてもうまく行かぬように、細胞によって代行できる得手不得手はあるがな。

理屈的には細胞ひとつのDNAさえあれば、細胞に分裂を促して全身を再生する事は可能なのじゃ。

その得手不得手と細胞に出す指令の部分を技術的にどうするか、と言う課題はあるがな」

 

「……なにが言いたい? 太陽人の健康体クローンを作り、脳を移植する事で天禍を克服すると言う話か? 確かお前はその課題をクリアしていた筈だ……実用はされていないが。

確か論文では、蒼砂*2と組み合わせ発展させた技術だった筈……」

 

「なんじゃ知っておったのか。……まあ、そのプランも考えてはおった。脳移植の段階で天禍も運ばれる可能性が高く、徒労に終わる可能性が強かった故ボツになったがの。

あるいは電気的なアプローチで脳のコピーを取り()()()()()退()()()()()()、スワンプマンじみたプランもな……蚨蝶(ふちょう)の協力が前提であるが、技術的に不可能では無かったじゃろう。認めるかどうかはともかくとして。

 

―― 話がそれた。

 

天禍変異体じゃが、大規模な破壊を受けてなおあの速度で再生するところを見るに、全身が万能細胞で作られている可能性がある。

皮膚にいた細胞が内臓の役割を兼任できる、先の課題を独自に超越した細胞という事じゃな。世が世なら夢の細胞と騒がれておったろう。

……それでも説明がつかぬ部分はあるが、今更じゃな」

 

「全身が万能細胞だと、どうなる?」

 

「わからんか? ()()()()()()()()()()()()()()()んじゃ。

体からいきなり骨や手が生えるかもしれぬ。背中に目が出来るかもしれぬ。皮膚から消化液を出すかもしれぬ。逆に、ただの太陽人にしか見えぬ様相でいるかもしれぬ。

どういう性質を持っているか、まったくもって未知数になるんじゃ」

 

「……あの化け物が、あり得ない事をして来る事がありうる、という訳だな」

 

「そして、それゆえに。あくまで細胞のみに視点を向けるのであれば……太陽人の進化の形と言えるほどのポテンシャルは確かにあると言うのがわらわの見解じゃ」

 

「……理性を保ったまま変異体の細胞に挿げ替える事が出来れば、天禍も死も克服できる……?」

 

易公(せんせい)がそう考えているとするなら、わらわの中でも納得が行くと言う話じゃ。

解釈は好きにするが良い。だが……最終的にどうしたいかだけは決めておけ。

言っておくが、わらわはもう、今のこのシステム以外に動く気はないぞ。相当な理由が無ければな」

 

「……感謝する」

 

「貴様……やはり貴様、気持ち悪いぞ。実はもう天禍が脳に回っておらんか?」

 

お前、人が一生懸命努力しようとしてるって言うのに、お前……!?

 

 

 

@ @ @

 

 

 

 ―― 猫弈(みょうえき)の考察が全てではない。当然の事だ。

そもそも羿(げい)はその前提で方々駆け回っているのだ。

 

 果たして易公(えきこう)は責任と義務感で押しつぶれ、その先に変異体に縋ったのか。

それとも起死回生の一手として、変異体にわずかな光明を見たのか。

それはこれからわかる。

 

 しかし不安もあった。

「どうしたいのかは決めておけ」―― 羿(げい)はまだ、その着地点を見出せていないままでいた。

 

 

*1
神農がいた養殖園の用水路を流れる、勾芒が発明した黄色の液体。

非常に高性能な化学肥料だが触れたらヤバいと言及されており、ステージギミックにも使われている。

流石に濃度そのままでは使わないだろうが、水鉄砲に入れて撃つだけで人を殺せる灌漑用水である。

*2
ある種のナノマシンマテリアル。ちなみにこれを使った技術が易公の専門

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