「は? おいちょっと待て、それってどういう」
「<
オレの言葉を遮り、トレーダーが口を開く、手を差し出す先には、機械を歪に組み合わせた、人型というにはモザイクアートに近い形の、気味の悪いクリーチャーが存在していた。
「彼の効果です、簡単に説明しますと、彼が場に存在する限り、彼を対象に選ばなければいけないと言う効果ですね」
「対象強制……!」
めんどくせぇカードだなオイ、クソッ。オレの悪態を知ってか知らずか、トレーダーは軽々に声をかけてくる。
「ロールバックいたしましょうか?」
「あ゛?」
「クリーチャーの見落としというものは得てして起こり得る事象です。誰もが全てのカードを知っているわけではありません」
「かといって、だから全てのカードに目を通すというのもまた、難しい。人間は
「お前オレをナメてんのか?」
荒げた声とともに<血色の墓掘り>のスコップが振り下ろされる。
対する<
フィールドからクリーチャーが2体消える。
「おっと、差し出がましい真似だったようで、失礼」
「そのニヤケ面ふっとばしてやるよ……!」
オレのターンを終える、さて、次が問題だ。
「私のターンを開始、する前に」
「ドレッド様のターンエンドに合わせてセットした魔石<血の一滴>を発動します」
<血の一滴>……セットしているのは知っていた。1コストを支払い手札のライフカードをライフデッキのトップかボトムに戻す効果。
どの道オレの<血色の墓掘り>の打点じゃ意味のないカードだったから思考から外していたが……
「通りますか? あ、効果としては1コストを支払うことで起動せずとも各ターン中1度発動可能な」
「説明はいらねぇ、通すからさっさとしろや」
「では失礼して、1コストを支払い、手札のライフカードを1枚デッキトップに戻します」
何の意味があんだ? 結局ターン開始のドローでライフは4点のまま、引いたカードも今戻したライフカードじゃねぇか。
「おまたせしました、ターン開始のメイン、ライフドロー、ふむ、土地を1枚セットします」
これでコストは10枚……! 空気がピリつく、オレの精霊が、ヤツの切り札がくることを察し、構えているのを感じる。
ヤツは手札からゆっくりと辿々しい手つきでその1枚を取り出した。
「では失礼、5コスト消費し、
「ッ!!」
バトルフィールドの液晶が次々に赤色に染まり、画面に真っ赤な月が映るその下で、煌々とその舞台は誂えられる。
死者が讃える祭壇のようにも見えるその舞台はスポットライトで彩られる、まるでその主を待つように。
「効果を説明します、自身の場に
「
「<
煌めく舞台に、一人の少女が舞い降りる。背にコウモリの羽を携えて、一番星の輝きで、ぐるりと回った少女はマイクを片手にウインクを投げかけた。
赤月の舞台、照らされる液晶に、ポップワードが踊り出す。
"アイドルは、なんどだって立ち上がる!"
『みんなおまたせー! 一番星の登場だよ★』
「通りますか?」
手札を見る、緊急措置の対応札、<防災>がある、が。
セットされた土地を見る、3枚だ、コスト軽減して出すならこの3枚全てが吹っ飛ぶ、次は1コストからになる。
「……通す」
「では召喚時効果を発動します、各プレイヤーはライフデッキトップから3枚を墓地に送ります」
「は、はぁ!?」
落ちるカード、減るライフ。オレのライフが16から13へ、だがそんなものは些事だ。
トレーダーのライフが残り……1。
「<
「<
「よろしいのですか? 彼女は貫通を持っておりますので、ブロックしようと、タフネスを超えたアタックの値分ダメージが入りますが」
「はっ、何言ってやがる、お前のそのカードのパワータフネスは3/7だ、そもそも
トレーダーのフィールド、舞台に立つその女のステータスは……12/7? 12!? パワー12の速攻貫通!?
「
「じゃあお前ブロックしなきゃオレの方が死ぬじゃねぇかふざけんな!?」
ブロックした
嵐のような歌が過ぎ去った後、オレのライフは削り取られ5枚にまで数を減らしていた。
「冗談じゃねぇぞオイ、よくもやってくれたな」
「恐縮です、何分本業ではないもので、大雑把なプレイになってしまうのは申し訳ない」
「相手のライフを削ったんだ、覚悟はできてるよな」
ライフデッキから削り落ちたカードを手に、トレーダーを睨む。
「もちろんでございます」
「よく言った!
迂闊な攻撃に痛烈な返礼を、ライフカードから<赤雷>が放たれ、トレーダーに直撃する。
<石壁>を使おうが関係ない、複数回ダメージに1回限定の無効は意味をなさない。
対応もなく、貫通したその反撃は見事にライフを削り。
「お見事」
相手の残りライフ、
「<
いつの間にか置かれたカードを、ライフデッキの上から3枚、裏向きのままトレーダーは土地フィールドにセットした。
「ライフデッキに置かれた裏向きのメインデッキカードは、ダメージを受けセットされるとき、効果のない土地カードとして扱われます」
「ッ!
「通ります」
焼け石に水だがないよりマシだ、オレの残りライフは8……! トレーダーのライフは10……!? なんでライフ差がひっくり返ってんだ!?
「<血色の墓掘り>は攻撃せず、メインフェイズ2に移行します。手札から2コスト消費<
「更に魔石<輸血>を起動、ライフデッキから3枚までドローします」
せっかく差をつけたライフ差を縮める? なんでだ? そもそもライフカードは効果のない土地や、セットしなければ使えない魔石などが多く、手札に抱えてもそこまでの有用性はない。
どの道すでに相手のコストは13だ、それでなおライフデッキを引く意味は……ッ!
「瞬間魔法<反応解呪>を発動! <輸血>を相殺!」
アイツのライフデッキの10枚中トップ9枚メインカードじゃねぇか!? これじゃただのドローと変わらねぇ!?
『Booooooo!!』
「は?」
『対象を変更してください』
「再度、<
「いや、まてまてまて! <反応解呪>はクリーチャーを対象に選ぶ魔法じゃ無……」
「<反応解呪>は瞬間魔法で、魔石、呪言、魔法を対象に、その効果を打ち消します」
「
は? いや、え? まさか
「対象にとる効果そのものが?」
「この場合、<
「なので発動できません」
「……く」
「クソすぎる……!」
バトル開始僅か3ターン目の出来事である。
"アイドルは、なんどだって立ち上がる!"
『みんなおまたせー! 一番星の登場だよ★』