状況は悪い、ここで引くべきカード、それは一つ。それを引くのが大前提、その上で五分。
精霊がデッキの上で輝くのを感じる。オレにしかない、オレだけの感覚。
「オレのターン! ドレッドロー!」
引くべきカードを引いた時、オレのドレッドは唸り出す。
「ドレッドロー……?」
「オレはまだ負けるつもりはない……!」
土地をセットし、流動的に、手札からカードを発動する。
「1コストを支払い、<濁る儀式>を発動! 3コストを生み出す! このコストはクリーチャーの召喚にしか使えない!」
「どうぞ、通りますよ」
カードから溢れる赤色が、煌々とした朱色を塗り替え、満たしていく。
それは正しくビビットに、生き生きとしたスプレーアートに似ている。
大海原に漕ぎ出した直後のように、その戦艦はその巨体を現した。
「8コスト消費、手札から、<
「おお、派手ですね」
8コスト7/6、そのクリーチャーは召喚とともに唸りを上げる。その特徴的な衝角から三叉に伸びた砲塔を向け、光をチャージする。
「
「どうぞ」
それは大きなドラムのように、衝撃音を響かせながら巨大な光弾が発射される。
ちっぽけなクリーチャー全てを押し潰さんと迫るその光弾は、トレーダーのフィールドに存在する異様な機械生命体の力場にその進行を歪められる。
「ラプラスの効果をお忘れなく」
「そのクリーチャーに3発全てを受け止められるかァ!?」
「ええ、できますよ?」
「ッ!?」
光弾は3発全てが<
無論、耐えられはしない、が、その全てを誘導せしめたのには代わりがない。
「ラプラスの効果は対象が選べる限り、複数選択だろうが関係はありません。対象を選び破壊する、これを3回行う、などの処理ならばまた別ですが」
「厄介極まりねぇな……!」
切り札を耐えられた、がしかし、まだだ、オレはセットされた魔石を発動させる。
「魔石、<決闘>を起動! 自身のフィールドのクリーチャーを相手のクリーチャーにアタックさせる!」
「通ります、対象をどうぞ」
「<
戦艦が轟音を鳴らし、その衝角を前に吸血姫に迫る。少女は相対するように歌声を響かせ、その音撃と衝撃が、赤月の元に衝突する。
「12/7と7/6のバトルで相打ちですね」
「それは……どうかなァ!!」
歌声の波がその圧を強め、戦艦をひしゃげ潰さんと殺到する。今に壊れんとしたその船は、次の瞬間、その音の嵐を乗り越える。
音の海域、突破完了。
「怒弩頭衝角《ドドドラム》のもう一つの能力! こいつは各ターン1度! 自身のクリーチャーに対する破壊効果を無効にするか、ダメージを0にできる!」
「お見事」
轟音轟く
手札を見る。誘発妨害はかなりある、墓地からの隠し玉も少し、あとは相手のターンを耐えて、デッキから<
「ターンエンド!」
次のターンで終いだ!
「さて」
総括をしよう、手札を見て一息を入れる。
「メインデッキとライフデッキからドロー、手札にライフカードが無いためセットはスキップします」
今回は全体的に回りが悪かった、デッドオアライブでコスト加速を急ぐなどプレイングミスも少々、やはり俺にカードゲームはあまり向いてないな。
だがまぁ安全マージンはほどほどに、ライフ的に厳しくも見えるだろうが、ライフデッキが0枚になったとて、保険がないわけでもなし、極めて安全と言っていい。
手札からカードを1枚取り出す。
「では手札から4軽減、2コスト<
"アイドルはなんどだって立ち上がる!"
まぁ、このターンで終わりかな。
『みんなおまたせ! 一番星の登場だよ★』
「召喚時効果を発動します」
「召喚時効果に連動し、<速度違反>を発動! 元コスト分支払われずに召喚されたクリーチャーをメインデッキボトムに送る!」
「通ります、スターフューチャー★マリリンをデッキボトムへ」
これが怖かった、多重ドローによって切り札を再度引く可能性、だが、これでその可能性はもうない、手札からはもう出ない!
「手札から4コスト、魔法<ラストアンコール>を発動、墓地の
"アイドルはなんどだって立ち上がる!"
『みんなおまたせ! 一番星の登場だよ★』
「召喚時効果を発動します」
く、まだ出るか!? だが問題ない! 手札から誘発させるまでもなく、対処札は墓地に埋めてある!
「召喚時効果に連動し、墓地から魔法! <
「通ります、<ラストアンコール>の効果で墓地から召喚したクリーチャーはフィールドから離れるとき、代わりに除外されます」
よし! これで墓地の切り札もなくなった! もう召喚はほぼほぼない! 相手の残りコストはまだあるが、着実に削っている、耐えられる!
「手札から2コスト、魔法<異次元からの声>を発動、除外されたカードの中から一枚を手札に加えたあと、墓地のカードを一枚選び除外します。手札に加えたカードのコストはこのターン中2コスト軽減されます」
「ッ! 瞬間魔法! <反応解呪>を発動! その魔法を無効にする!」
コイツッ! まだ切り札を手にしようとしやがる! い、いい加減に
「対応します、セットされた起動済みの土地カード3枚を墓地に送り、手札から<防災>を発動、<反応解呪>を無効にします」
「<防災>に
いい加減にしろ!! てめぇの負けだ!!
「手札から8コスト、ですがこのカードの効果により、このゲーム中フィールドに出た
も、もう、手札が……! 何度召喚されるんだこれは……!?
「効果により、メインデッキから
「うおおおッ! 手札からッ! 瞬間魔法<献身の証明>を発動!
よし、これで流石に───────
「では重ねて、<NEXT IDOLS YOU>2枚目を発動、メインデッキから
「ッ!? な、何度召喚されるんだソイツは……!?」
"アイドルは"
「なんどだって」
"立ち上がる!"
「らしいですよ」
『みんなおまたせ! 一番星の登場だよ★』
メインデッキがトップからボトムまで一直線、めくられた最後の札に、<速度違反>で送られた彼女が舞い戻る。
「ラスト1枚はライフデッキに行ってたか、危ないな、やはり私には向いていない、カードゲームは」
召喚時効果で両者のライフデッキが削られる、
「では、バトル、対応はございますか?」
「ッ!
音の暴圧が、あまりにも大きい圧力をもって、ちっぽけな戦艦に迫る。
それらは先に突破したソレとはモノが違う、
なにか、なにかないのか!? なにか!? 手札……ない、土地……起動しきった、コスト……使いきった。
「う、うおおおおおおおお!!!!」
あまりにも大きい歌が、
「や、<焼畑>……」
「余剰打点に足りますか?」
それは、あまりにどうしようもなく、どこまでも明確に。
「オレの……負けだ……」
総経過ターン数4。5ターンには届かない決着だった。
衝角を前へ、砲弾を用意しろ、帆を張れ、錨を上げろ。進め、進め、進め。
船体、怒りの赤を見せつけて、衝撃、打音を響かせて。
海賊船も、軍艦も、帆船も構わず仲間に入れて。
今こそオマエの海を踏み荒らす、オレの嵐の歌を聞け。