「…え?これで終わり…?え…?」
2話見た感想
「…え?これで終わり…?え…?」
どうしてこんなことに...。
朝日六花は自分が置かれている状況にただ震えることしか出来なかった。
「いやぁ、ついに由美ちゃんのバンドにメンバーが増えるのかぁ~!」
「嬢ちゃん!由美ちゃんと麗美ちゃんとボスのこと、よろしく頼みますぜ!」
「は、はひぃ…。」
「由美、彼女はまだ仮でしょ?こんな所に連れて来たら怖がっちゃうだろ?」
「友梨の言う通りたい!ほら!なんかあのお姉ちゃん震えとるもん!」
「でも、私達いつもここで演奏の練習してんじゃん。」
自分は強面の不良達に囲まれて色々話し掛けられている。恐怖で内容は上手く聞き取れないが、歓迎されているのだろう。おそらく、多分。
眼前には自分よりも年下の少女二人がもう一人の更に年下の少女に注意し、注意された少女は不満そうに反論している。
どうして、このような状況になったのか。六花は震えながらこうなった経緯を思い返した。
ある日、ライブで目の当たりにしたPoppin'Partyの演奏に心を奪われた朝日六花は上京を決意した。
岐阜の田舎から一人身でやって来た田舎少女の東京の街並みは全てが新鮮だった。
そして、ガールズバンドが盛り上がっている世の中に自分も足を踏み入れて行くんだと思った矢先だった。
「へーい、彼女。私とセッションしてかなーい。」
子供用ギターを背負った、不自然に長い前髪にヘアピンを付けて片目だけ覗かせている少女が決めポーズをしながら話し掛けてきた。六花は自分に指をさして確認する。
「え、わ…、私、ですか?」
「他に誰がいるの?それ、ギターケースでしょ?」
少女は六花の背中に背負っているものを指さす。もしかして流行りになっているガールズバンドに憧れている子なのだろうか。六花は屈んで少女と話してみることにした。
「うん、そうだよ。」
「じゃあ、セッションしてかなーい?それとも、バンドメンバーになる?今なら両方選ぶとお得だよ。」
そう言いながら少女は背負っていた子供用ギターを持ってジャーン♪と鳴らした。少女の表情は乏しいが、ドヤ顔をしているのだろう。
六花はこの大ガールズバンド時代と言われている世論の熱に小さな子が当てられているのを目の当たりにし、微笑ましくなった。
「ふふ、バンドメンバーは、考えてほしいけど、セッションはしたいかな?」
「決まり。じゃあ早速行こ。あ、名乗らなきゃ。私、美竹由美。お姉さんは?」
「私は、朝日六花だよ。よろしくね、由美ちゃん。」
「ごめーん、由美ちゃん。今日はもう空いてるスタジオはないの。」
「なぬ。」
ライブハウスCiRCLEに来た由美は、受付をしていたスタッフ、月島まりなにスタジオを貸してほしいと頼んだが、既に予約がいっぱいだったようで断られてしまった。
それでも納得できないのか、由美は背負っていた子供用ギターを持ち直すと、悲しげな音色を響かせた。無口な由美なりの抗議なのだろう。
まりなは目の前で演奏し始めた少女に対し、困ったように話し掛ける。
「そんな悲しそうに演奏しても無理なものは無理なんだよ?」
「…ダメ?」
「ごめんねー?」
「ぐぬぬ。」
交渉の結果、スタジオは借りられなかったようで、CiRCLEを出て、肩を落としながらトボトボと歩く由美。
そんな由美の姿に、六花はバンドをやりたくても中々出来ない田舎の自分を重ね、励まそうと話し掛けた。
「だ、大丈夫だよ!私、他のライブハウスでバイトしてるから...」
「決めた!」
すると、由美は何かを決意したように叫んだ。
「な、何を…?」
「六花ねえ!私たちの溜まり場に来て!」
「…え?」
そして、今現在。
何やら不穏な空気を感じる雑居ビルに連れて行かれた六花は由美の勢いに呑み込まれた事を後悔していた。
「由美!とにかく今日は帰ってもらって、後日CiRCLEに頼みに行けばいいだろう!」
「でも、言うじゃん。善は急げって。」
「急ぎすぎやけん、言っとるとよ友梨は!」
「その間に六花ねえ他のやつに取られたらどうすんの?」
三人の少女はまだ口論している。顔の半分ほどアザがある少女と、方言で喋っている少女が由美を説得しているが、終わりの見えない平行線のままで、自分は不良に囲まれ、労われており、解放してもらえそうにない事に途方にくれる。
「よう、ちょっと様子を見に…おい、何だ何だ?今度は何で喧嘩してんだお前ら。」
すると、自分の背後にあったドアが開く音と同時に、新しい声が聞こえた。自分と同年代ほどの少年の声だ。
すると、口論していた三人は一旦黙り、自分の周りにいた不良たちも一気に静かになった。
何があったんだろう?
そう思った六花が振り向くと、そこには見惚れるほどすらりとした体躯、濡れ烏のような黒髪で多少癖がある短い髪型、そして、女性と間違えてしまいそうなほど美しい顔の少年がドアを開けて立っていた。
「きれい…。」
不良まみれの空間に明らかに浮いている少年の登場に六花は思わずそう呟いてしまう。
「ボス!今日はどうしたんですか!」
少年の近くにいた不良が挨拶すると、少年はうんざりしたような顔になり、挨拶をした不良の脳天にげんこつを叩き込んだ。
「あのな、何度も言わせるな。俺はもうボスじゃねぇって。」
「す、すいやせん。つい…。」
「お前ら、ちょっと捌けててくれ。」
少年がそう言うと、不良たちはそそくさと部屋を出ていった。
強面の不良たちを拳一つで制する美少年。六花が物珍しい目で見ていると、それに気付いたのか、ボスと呼ばれた美少年と目が合う。
六花は思わず視線をそらすように俯いた。
「見ない顔だな…?由美、説明しろ。」
「玲、六花ねえだよ。」
少年が説明を求めると、由美が即答、一言で返した。
すると、玲と呼ばれた少年はため息を吐きながら六花の横を通り過ぎ、由美の額にデコピンを一発、叩き込んだ。
由美は痛そうに額を抑えながら抗議する。
「なんで?答えたじゃん。」
「名前を聞いてるんじゃねぇ。何者で、どういう経緯で、どこから連れてきたんだって聞いてんだ。怖がってるぞ。」
「それはボクから説明するよ、玲。」
友梨と言われたアザがある少女が、由美の代わりに六花が何故ここにいるのか説明をしてくれた。
「…つまり、由美の独断か。」
「そういうこと。」
「だって、セッションしたかったんだもん。」
「あのな、何事にも順序ってもんが必要だろ。お互いの事よく知らないのに、ここに連れてきたら怖がられて当然だろうが。」
「…むぅ。」
玲の言うことは聞くのか、由美は不服ながら受け入れた。
「と、言うわけだ。すまなかったな。怖い思いをさせちまって。」
「ボクからも謝らせてくれ。すぐに部下を追い出さずに、囲まれて怖がっているキミを放置して由美の説得しかしていなかったから…。」
「い、いえいえ!ただちょっとビックリしちゃっただけですので!お構いなく!」
低姿勢で謝ってくるボスと思われる二人に六花は、ここの不良たちは意外と悪い人たちではないのだろうかと思った。
「そう言ってくれると助かるぜ…。」
「…六花ねえ。ゴメン…。」
「ううん。さっきは驚いちゃっただけだから。由美ちゃんが悪い子じゃないって分かったから大丈夫だよ。」
しょんぼりと謝る由美を慰めるように六花は由美と視線を合わせて話し掛ける。許してもらえた由美は控えめにこう言った。
「…じゃあ、メンバーになってくれる?」
「うぅーん…ちょっと、考える時間が欲しいかな?」
「分かった。六花ねえ、いつでもウェルカムだから。」
由美はそう言って親指を立てる。すっかり緊張が解けた六花はそんな由美の姿を見て微笑む。
「いやー、良かったねー友梨。由美とあのお姉ちゃんが仲良くなれて。ウチは嬉しいばい。」
「ふふ、そうだね。でも何でだろうな…。近い内にまた騒動が起こりそうな気がするなぁ…。」
そうぼやく友梨の予想はすぐ当たることになるのだった。