A.T使ってガチバトル   作:ken4005

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とりあえず前編を投稿します。

ぜひ評価、感想をお願いします。

誤字の訂正は随時していきます。


第10話 USJ襲撃 ヒーローVSヴィラン実践(前編)

 

怪人脳無の一撃に相澤は反応できなかった。そして、目の前の怪人の振り下ろしよりも速い速度で自分の元に突っ込んでくる生徒にも当然反応することは出来なかった。

 

「さ、せ、る、かーーー!」

 

両腕からクラスターを発動し、超爆速で接近した勝己が、相澤抱えて脳無の攻撃範囲から退避していく。遅れて、緑谷が、

 

「ウイング・スマッシュ、エアフォース!」

 

牽制のために熱風を叩き込む。先ほど黒霧を吹き飛ばした技であるが、脳無は微動だにしなかった。脳無を通り過ぎ、勝己、相澤に合流する出久。

 

「カッちゃん、こいつだ。ヤバい気配の出どころは。」

 

「ああ、それと。」

 

脳無を警戒しつつ、視線を死柄木に向ける勝己と出久。

 

「テメェか?さっきから気持ちの悪りぃ風吹かしてんのはよぉ。」

 

「ああ。俺の風はお気に召さなかったようで残念だよ、爆豪勝己、そして緑谷出久。君らにはぜひ会いたかったんだ。俺の名前は死柄木弔、よろしく同類。」

 

身につけていた手のアクセサリーを外し、彼は目的であった挨拶をすませた。

 

ーーーーー

 

出久と勝己がメインゲート前から相澤の援護に向かった直後、お茶子と黒霧の戦闘も始まった。

 

霧を使って囲ってくる黒霧に対し、お茶子は出久が放った炎による気流や自身が発生させた風を使った空中走行で対応していた。

 

「なかなか素早い、ですが逃げてばかりでは。」

 

メインゲートに向かった4人に視線を向けた黒霧に対して、お茶子は技を繰り出す。

 

「エリアエアフォース!」

 

お茶子が放った攻撃に黒霧はワープゲートを展開、ほぼ同時にメインゲート手前にもワープゲートが開き、突風が4人向かって吹いた。しかし、

「あれ?麗日の風にしては、そんな強くねぇ。」

 

「皆んな足を止めるな!いくぞ。」

 

「「「おう!」」」

 

前進を止めない生徒たち見て、

 

「私に飛ばされることを読んで、威力の調節を!(やはりあの二人組と同様に厄介。ワープゲートで飛ばそうにも、あの空中走行の速さと機動で避けられてしまう。)ならば放置。あのガキども直接!」

 

自身をメインゲート前に転移させ、直接他のエリアに飛ばしてやろうした瞬間。

 

「そんなことさせへん。それに、ええん?隙だらけやけど。」

 

「な!?」

 

ゼログラビティを発動し、A.Tの本来の用途とスペックを解放し、スピードと機動力を上げたお茶子が天地逆さの状態で黒霧の目の前に現れる。

 

「スマッシュ!!!」

 

「グァ!?」

 

お茶子の蹴りを実体である首の部分にもらい地面に勢いよく叩きつけられた黒霧。さらに、

 

「いけ、飯田!」

 

「頼んだぞ。」

 

切島がメインゲートに群がり、脱出を阻止しようとするヴィランたちを押し止める中、砂糖と障子がこじ開けたメインゲートから飯田が脱出に成功した。

 

「くっ、ゲームオーバーですか。仕方ありません。」

 

そう言って、更に大量のワープゲートを開いたかと思えば、ヴィランの増援を展開した。

 

流石のお茶子も黒霧の拘束を諦め、距離を取る。

 

「(生徒を逃がしてしまってはヒーロー側の増援が来るのは時間の問題。いつでも退避できるように死柄木弔の近くにいなければ。あちらはどうなって、っは?)」

 

階段下の広場に視線を向けた黒霧は、自分がお茶子を相手にかなり集中していたことに気づく。なぜなら眼下に広がる、炎と爆破、そして圧倒的暴力のぶつかり合いに気付いていなかったのだから。

 

ーーーーー

 

「同類っていうのは、A.Tを使ってるってだけじゃない、ですよね?」

 

出久は警戒しながらも、同類扱いしてきた相手、死柄木弔と会話を行う。死柄木から感じる風を、自身の脳をかつて駆け巡った記憶が覚えていた。

 

「(この感じ、キーを使用した直後のカッちゃんやお茶子さんを見た時と同じ感覚だ。)あなたもキーを?」

 

出久の言葉を聞き、ニィっと表情を変える。

 

「ああ、君らと同時期にね。あの組織が別のキーやオリジナルのA.Tを探していたのは知ってたかい?」

 

「・・・それとなくは。ただ見つかったのは発目博士が持っていたものだけだったって。」

 

「正確には奴らが見つけられたものは、だ。俺らのテリトリーで怪しい行動している集団を見つけ、情報を聞き出してな。A.Tはそこそこ前からやってたから興味を持って、探してみたら偶然キーを保有する元A.T開発の科学者とその家族に会えたわけだ。快く譲ってもらい自分で使用させてもらったよ。」

 

「っその元科学者と家族はどうした!」

 

明の時の最悪な状況を想像し、激昂しかける出久だが、

 

「いや、マジで快くっつうか、かなり無理やり押し付けられたというか。向こうは処分したいが、簡単に捨てられるもんでもないってことで困ってたらしい。あぁ、殺してないから安心しろ。」

 

「ほっ。」

 

死柄木の発言に安心し息を吐いた直後。

 

「俺らは。」

 

「は?」

 

今度は息を吸うことを忘れる。

 

「俺らが情報を奪った奴らに、まだ仲間がいたみたいでなぁ。襲撃されておっ死んだぜ。ああ、お前らが出会った博士たちみたいに、人畜無害な奴らじゃねーぞ。裏社会にA.Tの技術で作ったアイテム流してるような奴とその家族だったからな。」

 

出久の中に、どこに向ければ良いか分からない怒りが渦巻く。

 

「世の中の隅っこではこんな悲劇が起きてんのに、あの男、オールマイトは平和の象徴なんて呼ばれてる。俺は、俺らはそれが気に食わない。だから一度ぶっ壊す。その宣言のために今日はここに来たんだ。」

 

渦巻く怒りをぶつけても良い相手が目の前にいる。ならアイツに、

 

「落ち着け。」

 

バシ!「あいた!」

 

ここまで脳無の警戒を優先していた勝己は、暴走一歩手前の出久の頭を叩いた。死柄木は、惜しい、と言いたげな顔をするも、追加で発言することはなかった。

 

「過去の、手も届きようがない場所で起きたことに惑わされんな。理不尽なんてのは日常のすぐ隣にあるもんだ。それはお前もよく分かってんだろうが。今は、この状況を、全員が生きること考えてろ。」

 

「うん。ありがとうカッちゃん、切り替えた。」

 

「残念、ここで怒りに我を忘れるタイプならぜひ仲間に、と思ったんだがな。まあ、おしゃべりはこの辺にしとくか。さっき、そこのイレイザーヘッドにも伝えたが、今回の目的は挨拶とテストだ。挨拶は今すませた。それじゃあ、テストといこう。可能であれば生き残ってくれよ。それじぁあ脳無、殺せ。」

 

相澤への振り下ろしに以降、一切動いていなかった脳無に死柄木が指示を出し、無慈悲な暴力が動き出した。

 

「緑谷!爆豪!さっき救けられた手前、戦うなとは言わん。ただ絶対に死ぬな、生き残れ!」

 

「はい!」

 

「オウ!」

 

二人の気合いの籠った返事を聞いた瞬間、相澤の目の前に再度、黒い怪人が現れ、

 

ゴウッ!!ボッン!!

 

その側頭部に、出久が強力な炎を纏った蹴りを叩き込み、爆豪が土手っ腹に渾身の爆破を叩き込んだ。

 

「(さっきからコイツら、なんつー速度で戦闘してんだ!)」

 

そんなことを考えている相澤に出久から要望が入る。

 

「先生!個性をこいつに!打撃無効か何かの個性を持ってます。」

 

「っ分かった!」

 

「ああ、それは困る。せっかく用意した改造怪人でね。オールマイトと殴り合える作りらしいが、君ら相手に個性なしはキツイ。」

 

脳無だけでなく、死柄木も動き出す。先ほどと同様、手を空間に翳し、その空間を蹴り出す。技だけなら出久もお茶子も使用するエアフォースと同系統、しかしそこに込められた殺気が尋常ではない。そして、今回は相澤が個性を使う暇もなかった。

 

「躱せ!」

 

指示に従い迎撃ではなく回避を選択した二人に続いて、相澤も転がりながら風を回避する。死の風が通り過ぎた後には、まるで空間ごと削り取られたような破壊痕が残されていた。

 

「さて、3対2だ。こちらが不利だが、我慢するよ。」

 

「爆豪、緑谷、なんか良い作戦ないか?」

 

相澤が状況に冷や汗を流しながら、起死回生の策がないか教え子たちに尋ねる。

 

「さっきここに降りてくる前っ、飯田が外にっ、救援を呼びに行けるよう指示をしてきた。あぶねっ!っ順当に進んでいれば、今ごろメインゲートから外に出てるはずだ。」

 

「つまっ、り?」

 

「さっき先生が、くらえ!っ仰った指示通りにいきます。死なない、生き残るっです!」

 

「全く、お前らは。すまっ、んが頼りにさせてもらう。時間稼ぎ優先なら俺の個性はっ!今のはヤバかった。っあの死柄木って奴に優先して使う、っぞ!」

 

作戦会議をしている最中も脳無の攻撃を回避していた3人、

 

「・・・お前ら、意外と余裕あるな。」

 

そんな3人に呆れた様子を見せる死柄木。

 

「一回落ち着かせろや!A.Pショット、ブラスター!」

 

勝己が脳無に貫通特化の砲撃を叩むことに成功するが、あっさり立ち上がってくる相手に盛大な舌打ちをする。怪人の腹部は火傷を負っていたが、ものの数秒で完治してしまった。

 

「チッ!薄々気付いちゃいたが、回復の個性持ちか。」

 

「何度か蹴った感じ、衝撃が内側に沈んでいってる感じもあった。相澤先生が見てくれている間はダメージ入ってたし、回復もしてなかった。もし死柄木の言ってた改造に個性も含まれているなら、個性の複数持ち。」

 

「クソが、都市伝説なんざ出久だけで十分なんだがな。」

 

「カッちゃん、この状況で時間稼ぐ一番の方法は、」

 

「わぁってる!」

 

「「攻めて、攻めて、攻めまくる!!」」

 

戦いが加速する。

 

ーーーーー

 

「まだオールマイトは到着していない。だが、なんだこの戦いは?」

 

黒霧の視界には5人の内、2人が学生だとは思えない、なんならその学生2人の攻撃がヤバいのだが、戦いが繰り広げられていた。

 

「オ!ラァ!」

 

勝己が接近してきた脳無の足を爆破する。

 

「ウイング・スマッシュ、フレイムソール!」

 

出久はフレイムソールをフェザーではなくウイング・スマッシュで発動。より強力な火力を右の回し蹴りで顎、右を振り抜いた勢いをそのまま乗せた左の後ろ蹴りを顔面に、連続で脳無に叩き込む。

 

しかし、連撃の衝撃に怯むことなどなく、脳無の猛進は続く。

 

一番近くにいた着地直後の出久に対して脳無は右のストレートを放つ、出久はその右をギリギリで回転しながら避ける。回避した勢いで飛び上がり後ろ回し蹴りを脳無の首に打ち、そのままの後ろに回り込む。続いて勝己が脳無に飛びかかり、連続で爆破を放つ。大したダメージにはならない上、本来なら構わず脳無は殴りかかってきていただろう。それをさせないため、出久が背面から膝裏を攻撃する。膝カックンを受けた状態になった脳無は派手にバランスを崩す。その瞬間に出久と勝己が同時に距離を取り、

 

パッン!

 

と勝己が手を叩いた瞬間、大爆発が起こる。勝己が連続攻撃を放ちながら脳無の足元に大量の爆汗を設置して発動した、クラスター・エクスプロージョンである。

 

上から見ていた黒霧が流石にこの爆発では脳無もっ、と思ったが爆煙の中、立ち上がる大きな影が見えた。そのままその影、脳無が今度は勝己に突っ込んでいくが、勝己、そして出久は次の大技の準備をすでに終えていた。

 

先に空中に飛んだ勝己が後から飛んできた出久の手を掴み、爆速で回転を始める。凄まじい勢いをつけてから、出久を砲弾さながらの勢いで撃ち出す。

 

「エクス・デク・カタパルト!!」

 

さらに、

 

「フェニクス・スマッシュ、パイルトルネード!!!」

 

砲弾となった出久が空中で自ら回転し、炎の渦を生み出し、突っ込んできた脳無を、こちらが先だ!というように飛び蹴りで迎え撃つ。流石にあの威力は不味い、と判断した死柄木は出久に向けて攻撃しようとするものの、それが隙になったのか、

 

「アイツらの邪魔はさせん!」

 

と個性と捕縛布のコンボを喰らいかける。なんとか避けるも、出久の飛び蹴りは脳無に炸裂した。

 

「く!ら!えーーー!」

 

パイルトルネードの二段階目、炎の竜巻が脳無を巻き込みながら進んでいき、階段に激突した。

 

ーーーーー

 

絶え間なく技を放ち続け、流石に疲労が見え始めた二人であった。そんな二人に死柄木が問いかける。

 

「素晴らしい攻撃だったぜ二人とも。それで、さっきの攻撃でオールマイトは倒せると思うかい?」

 

疲労から生まれてしまった一瞬の隙、砂煙から再度、脳無の突進が行われる。狙いは、オールマイトと組まれた場合、一番厄介な存在、相澤だった。先ほどから相澤は脳無の速度に付いていけていない。まだ一度もクリーンヒットは無いが、もらえば確実に終わる一撃が放たれるその瞬間、出久と勝己は諦めた。

 

ーーーーー

 

キラッ、ボッッッン!!!

 

何か光った、っと死柄木が感じた瞬間、勝己は瞬間移動でもしたかの如く脳無の前に移動した。そして、

 

「フルクラスター・ターボ、からの、フルクラスター・インパクト。」

 

ボッッッッン!!!!

 

っとこれまでの比ではない威力の爆撃が脳無に叩き込まれた。

 

「なに?」

 

死柄木も勝己の予想外の攻撃力、なによりスピードに驚愕しているが、爆撃を喰らって吹き飛んでいく脳無に追撃する出久を見て、その驚愕はさらに大きくなる。

 

「なんだ、あの炎は?」

 

出久の両足が燃えていた。これまで以上の火力を風の力で押さえつけ、燃えていた。

 

「フェニクス・スマッシュ、イフリートソール。」

 

これまでA.Tのみが炎を纏っていたフレイムソールだか、イフリートソールでは足全体に炎が行き渡っている。そしてこれまで以上の熱を持った足は、更なるスピード、そして、

 

「スマッーーーーーシュ!」

 

破壊力を生んだ。

 

ゴッッッッウ!!!!!

 

本能なのか、これまで防御などしていなかった脳無が腕を上げ、出久の蹴りに備えた。その腕は、出久の蹴りによって抉り折られた。

 

「は?」

 

もはや驚き疲れてきた死柄木だが、オールマイトの攻撃に耐えられるはずの脳無が防御を取った上で、その防御ごと粉砕されたのだ。驚く以外できることがない。

 

さらに、ゴッッッッウ!!!!

 

出久の二撃目が脳無の鳩尾をぶち抜いた。

 

「ッッッ!?」

 

思考も、痛みもない脳無の動きが止まる。動かない、ではない、動けないのだ。たった三発、勝己と出久の全力を三発受け、脳無は行動停止一歩手前にまで追い込まれた。

 

「出久が二発で俺が一発じゃ不公平だろ。もう一発いっとけ。」

 

出久が脳無から距離を取った瞬間、脳無の真上に勝己が現れる。

 

ボッッッン!!!!

 

再び放たれたフルクラスター・インパクトをモロに喰らった脳無。爆煙が晴れたとき、そこにいたのは動く気配のない怪人だった。

 

ーーーーー

 

出久と勝己は諦めた。

 

本来ヒーローとは余裕を持って人を救けなければならない。戦闘時などは特にそれが顕著であり、戦闘後がヒーロー本来の出番。戦いが終わり、やっと救けを求める人々のもとにいける。そんな時、戦闘のダメージで救けを求める人の所に行けません、では話にならない。だから出久はイフリートソールを、勝己はフルクラスターを封印したのだ。発動後、自分たちが動けなくなることを知っていたから。

 

「クッソッが。」

 

勝己のフルクラスター・ターボは全身から爆汗を炸裂させ、推進力に変換する移動方法である。フルオーダーのA.Tがあるおかげで移動時の制御はできているが、圧倒的な速度とそれに付随する破壊力の代償として、体全体に内側で爆弾が炸裂したような痛みが走る。その痛みを利用して制御している部分もあるのだが、痛いものは痛いのである。普段爆破を使い慣れている腕でさえ爆破を使いすぎたとき以上の痛みが走り、体の至る所が激痛を通り越し、感覚が鈍り始めていた。

 

「(2年前の俺はマジでどうかしてたわ。これ以上の痛みを、何度も耐えながら戦闘してたんだからよ。)」

 

今、勝己はコスチュームの下に明特製の全身タイツを着用している。外部への爆破衝撃の威力を落とさず、内部のダメージを少しでも外に逃すことができる特殊な性能があり、意識が途切れ途切れになっていないのも、そのタイツの性能のお陰である。

 

「(まだやれる。礼を言うぞ、発目。)」

 

先ほどまで強烈な炎を両足に纏っていた出久は強烈な痛みに歯を食いしばって耐えていた。

 

「グッ。(大丈夫、これくらい、2年前はもっと酷い状態で戦っていたんだ。)」

 

フェニクス・スマッシュ、イフリートソールは、出久最大の火力を両足に留め続けることで、空中走行、クラスター・ターボに匹敵する速度、そして圧倒的な破壊力を発揮する切り札である。その代償として、戦闘中は出久の足は燃え続け、使い続ければ両足に大火傷を負う諸刃の刃である。今は炎を消しているが、一度負った火傷が治るわけではないので、少し動かすだけで痛みが拡がる。それでもなお動けていられるのは明が制作した装備が出久の足を炎から守っているからである。出久の足には2重、3重の防炎対策が施されており、出久の足が最悪の状態になるのを防いだのである。

 

「痛い、けど、まだ動ける。(明さん本当にありがとう。)」

 

出久と勝己は勝利後、クラスメイトたちの救援に行くことを諦めた。自分の意識が吹き飛ぶ前に、自分の足が燃え尽きる前に、目の前の敵を倒し切る。ボロボロの体で死柄木に向き直る。その覚悟を決めた。

 

パチパチパチ

 

「凄いものを見せてもらったよ。スピード、破壊力、どちらもトップヒーローたち、いやオールマイトにすら比肩するレベルだったんじゃないか。脳無はオールマイトの攻撃に耐えられる性能だったはずだ。その攻撃ってのは、パンチ一発の話じゃあない。オールマイトと殴り合いができるって話だ。君たちがこれまで食らわせた攻撃に加え、最後4回の攻撃は、オールマイトの攻撃以上の威力を持っていた可能性があるってことだ。誇って良い。」

 

侮りではなく、本心から、という雰囲気で出久と勝己を褒め称える。

 

「それにイレイザーヘッド。戦いの速度についていけなかったにも関わらず、最後の最後まで、俺や脳無から目を離さず、要所要所で俺たちの個性を抹消することで二人の戦いをサポートし続けていた。カッコよかったよ。」

 

「コイツらに庇われ続けた俺としては、その賞賛を受け取るわけにはいかんがな。」

 

「いや、ぜひ受け取ってくれ。それじゃあ第2ラウンド、といきたい所だが、次は観戦、という形でよろしく頼む。本来のお客さんがようやく到着したようだ。」

 

そう言うと死柄木は、これまで外していた手の形をしたアクセサリーを再度着用しようと取り出したが、何を思ったのか結局ポケットに戻した直後、

 

ドカーン!っと大きな音を立て、先ほど砂藤と障子が二人がかりで飯田一人が通れる隙間を開けていたメインゲートの扉が吹き飛んだ。そして、

 

「すまない、みんな。私が来た!」

 

笑顔を忘れ、怒りを露わにする平和の象徴、オールマイトがUSJに到着した。

 

「同類たちがあんな熱い戦いをしてたんだ。俺も少し、平和の象徴を体験していこう。」

 

ーーーーー

 

時は遡り、黒霧がお茶子に蹴り飛ばされ、飯田を取り逃がし、大量のヴィランをワープゲートから放出した直後。

 

「くそー!なんで救助訓練に来て、救助待つハメになってんだー!あれか?救助の第一歩は、救助される時の心境を知ることから始めろってかー!」

 

峰田が一心不乱に頭のモギモギを投げまくり、襲いくるヴィランを地面に縫い付ける。動けなくなったヴィランたちを常闇のダークシャドウが殴り倒していく。

 

「いいぞ峰田、そのまま投げまくれ!」

 

「イレグイダゼ!」

 

「クソー!必ず生き残ってモテてやるー!」

 

「その意気だ、峰田。」

 

「ヨクボウイズパワー。」

 

ーーーーー

 

「武器が必要な方は言ってください。用意しますわ。」

 

「八百万!こっちに武器、口田と上鳴、二人分追加!」

 

早い段階から八百万に武器を作ってもらい、ヴィランを殴り倒していた耳郎が追加の武器を要求した。

 

「なんで俺らに武器!?」

 

「(コンコクコク。)」

 

「この乱戦じゃ上鳴、あんたの個性、スタンガンくらいにしか使えないじゃん!口田も、動物は今いないし。やれることやっ!?」

 

ヴィランが一人抜け出し、接近してきた。指示役の一人と思われたのか耳郎が狙われた。

 

「(ヤバッ!)」

 

身の危機を感じた耳郎であったが、

 

「フン!」

 

ドガン!っと八百万から受け取った大きめのバットを口田がフルスイング!顔面に直撃したヴィランは声を出す暇もなく空中を一回転し地面に沈んだ。後続のヴィランが続く中、上鳴が前に踊り出て、

 

「くらえや!無差別50万ボルト!」

 

周囲に電気を放出し、一気にヴィランたちにダメージを与えることに成功した。

 

「さっ、サンキュー二人共!」

 

「っっっうん!」

 

「よかったぜェーイ。」

 

口田が牽制しながら、アホ化が少し進んだ上鳴を耳郎が後ろに下がらせる。

 

「あんた、対人訓練で個性使い過ぎると、アホになるって言ってたけど、こんな感じなんだ。」

 

「いや、ホントはもっとウェーイってすんだけどさ、この状況で足引っ張ってもなんにもなんネェーイじゃん。50万ボルトなら倒しきれなくても、ダメージは入るって思ってヨー。」

 

「よし、とりあえずあんたは一度下がれ。」

 

ーーーーー

 

「はっあ!」

 

「そーれ!」

 

「ケロッ!」

 

「よっと!」

 

本来、前衛を担当できる面々のほとんどが、広場で激闘を繰り広げたり、飯田と共にメインゲートに向かったりで、本職としての前衛はもう尾白しか残っていなかった。尾白は、押し込まれたら不味い、と前に出て孤軍奮闘していたが、その状況を見かねた芦戸と蛙吹、瀬呂がフォローに回ったのだ。

 

「3人とも、可能な限りバラけないで!それぞれが仲間の死角をカバーするように動けばやられないから。ッオラ!」

 

自分のフォローに来てくれたクラスメイトたちに指示を出しつつ、迫り来るヴィランを尻尾の一撃ではっ倒していく尾白。

 

「ムズいよ、それ!」

 

「芦戸ちゃん、自由に動いて。あなたのフォローは私がするわ。瀬呂ちゃん、あなたのこともできる限りフォローするから私のフォローをお願い。」

 

「おうよ!俺ら3人の中で一番攻撃力の高い芦戸を自由にさせるためだろ。任せろ!」

 

「ありがとー!フォローされる分、がんばるよ!」

 

尾白を中心に、ぎこちないながらも協力し合うことでなんとか前衛の役割を果たしといく。

 

ーーーーー

 

「クッソ、皆んなの所に戻れねぇ!」

 

メインゲートをこじ開け、飯田を送り出した切島、砂藤、障子らの3人はクラスメイトが防御陣地を敷いている場所に戻ろうにもヴィランが多すぎて進めないでいた。

 

「無理に戻る必要はない!尾白を中心に瀬呂たちがなんとか前衛をこなしているのが見える。俺たちがここで戦うことで、あいつらに向かうヴィランを少しでも減らすんだ!」

 

障子は複製腕から伸ばした目で戦況を見渡し、無理に突っ込み、防御陣地まで行くことよりも、ここで踏ん張り、仲間たちに向かう圧を減らすべきと判断。二人に指示を出していく。

 

「砂藤!切島を中心に立ち回るぞ。切島、すまんが盾としてのお前の力、当てにさせてもらうぞ。」

 

「おう!ヴィラン共を調理してやるぜ!」

 

「任せろ!しっかり防いでみせるぜ!」

 

ーーーーー

 

葉隠は八百万が作るスタングレネードを迫り来るヴィランたちに向かって投げ続けていた。八百万も粗方の武器供給が済んだため、相手を怯ませるのに有効な武器の作成に集中していた。

 

「お願いしますわ、葉隠さん。」

 

「大丈夫かな八百万さん?あの霧のヴィランに返されないかな?」

 

遠距離が危険と言われていたため、及び腰で投げている葉隠だが、

 

「大丈夫、あの霧のヴィランは麗日さんが抑えている。どんどん投げていこう。青山くんも打てるだけ撃って!」

 

「ネビルレーザー!」

 

そう指示する13号は、敵からの遠距離攻撃をブラックホールで防ぎながら、このクラスの異常さにようやく気づいていく。

 

「(このクラス、異常なのはあの3人だけじゃない。普通、これだけのヴィランに襲撃されたら2年生、なんなら3年生でも一部の生徒は恐怖と緊張で力を出せなくなる。それを、教師ではない一生徒でしかない爆豪くんの指示に従い、全員が役割を考えて、できることをやっている。なんて子たちなんだ!)」

 

13号の驚きを他所に、A組生徒たちが思い浮かべるのは先日の屋内対人訓練である。今、目の前にいるヴィランとクラスメイトたちが放つ炎と爆破、どちらも怖いが、どちらが怖いかと言われたら断然後者である。あの二人の戦闘を見た後では、並のヴィランなど恐るるに足りない。

 

「グガーーー!」

 

巨大化か、凶暴化か。5メートルサイズのヴィランが狂ったように、他のヴィランをも吹っ飛ばしながら突っ込んでくる。

 

「あれは!」

 

「並では!」

 

「ないねー!」

 

カッキーン!!っ迫りくる巨大ヴィランは一瞬で氷漬けとなる。

 

「悪りぃ、遅れた。」

 

勝己の指示を聞き、一人で動き回りながら厄介そうなヴィランを優先して戦闘不能にしていた轟が戻る。

 

「いえ、ベストなタイミングです。皆さん後少しです乗り切りま、」

 

ボボボボボッーーン!!!!!

 

ゴウッッッッッ!!!!!

 

ゴウッッッッッ!!!!!

 

ボボボボボッーーン!!!!!

 

「な、なんですか!?」

 

凄まじい轟音が連続し、広場に砂煙りが舞っていたが徐々に晴れると、黒い肌に巨体の怪人が、爆破があったであろう中心部分で、その活動を止めていた。また、その先では主犯らしきヴィランと相澤に加えて、疲労やダメージ(ほぼ自損)はあるも無事な出久と勝己の姿も見えた。

 

「・・・あいつら、あの厄介そうな奴を倒したのか。」

 

移動中、チラチラと広場に視線を送り、戦況を確認していた轟は、あの黒い怪人が尋常ではない強さだったことも把握してしている。おそらく自分では倒すことができなかったであろう怪物を実質二人がかりとはいえ行動不能にした出久と勝己に賞賛以外の感情が湧いてくるのは、自身の左側が原因か、と考えてしまう。

 

メインゲート前の厄介そうなヴィランは倒しきった、自分も広場の援護に、と動こうとした轟の背後で、

 

ドカーン!っと大きな音を立て、メインゲートが吹き飛び、平和の象徴が現れた。

 

「すまない、みんな。私が来た!」

 

「オッー、」

 

っと誰かがオールマイトの名前を呼ぼうとした。

 

しかし、オールマイトは自分の名前が呼ばれきる前に、

 

ガガガガガガッ!オールマイトがメインゲート前に残っていたヴィランたちを一瞬のうちに行動不能にした。

 

「はやっ」

 

「つよっ」

 

生徒たちが、目の前で起きたオールマイトの戦闘とも言えない瞬殺の感想を言い切る前に、オールマイトは見るからに主犯のヴィランに向かって突っ込んでいく。

 

「相澤くん!(どのような個性であってもあの位置取りなら相澤くんの抹消で消せるはず。ならば私は突っ込み、反撃の隙を与えず制圧するのみ!)」

 

一瞬で判断し、高速でヴィラン、死柄木の後ろに回り込み、意識を刈り取る手刀を放つ。

 

「ミズーリー・スマッシッッゴッ!」

 

「初めまして、平和の象徴。同類の活躍を見て昂っててね、悪いがカウンターを取らせてもらったよ。」

 

オールマイトの手刀が直撃するよりも速く、死柄木の回し蹴りカウンターがオールマイトの顎を蹴り抜いていた。

 

戦いはまだ終わらない。

 

ーーーーー





後編も頑張ります。
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