A.T使ってガチバトル   作:ken4005

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長くなってしまった。

ヒロアカアニメあと1話

頑張って書き続けます。


第26話 ガチバトルトーナメント決勝

 

ーーーーー

 

試合開始少し前、関係者用通路

 

オールマイト「さっきはありがとう、エンデヴァー。お礼が遅れてしまって申し訳ない。」

 

エンデヴァー「フン。俺は自分の息子を救助しただけだ。貴様に礼を言われる筋合いは無い。それで、何の用だ?わざわざ呼び出して、礼だけのためでは無いのだろうな。」

 

オールマイト「お礼が本題さ。だが、別枠で、君から指導の、後進育成のノウハウを教えてもらいたいと思ったんだ。」

 

エンデヴァー「何?」

 

オールマイト「轟少年は一旦置いておくとして、君の所のサイドキックはみんな優秀だ。私はホラ、色々と極端だから、一般的な育成というのを上手くやれているのかどうかが不安でね。アドバイスをもらえないかと。」

 

頬を掻きながらそんな事を言ってくオールマイトを前にエンデヴァーの胸中は複雑であった。いつか越えると誓い、越えられないと悟り、己の心も、家庭すらも、燃やしてしまった遠因となった男、オールマイト。その男に今、教えを請われている。

 

普段であれば、激昂し、聞く耳すら持たなかったであろう。しかし、今日に限っては息子と、その友人との会話のおかげなのか、穏やかとは言えないまでも、冷静に話を聞くことができていた。

 

エンデヴァー「先に俺の質問に答えろ、オールマイト。貴様、本当に引退するつもりなのか?」

 

オールマイト「・・・今はまだ。詳細は言えないが、まだ私が戦うべき巨悪が暗躍している可能性がある。」

 

エンデヴァー「巨悪だと?」

 

オールマイト「ああ。例のヴィラン連合、その背後に、私が言う巨悪の影を感じた。」

 

エンデヴァー「それが貴様の最後の仕事、というわけか?」

 

オールマイト「そうシンプルなら話は簡単なんだがね。奴はなかなか表舞台に出てこず、隙も見せない。もしかしたら私が現役の間に奴と相対できない可能性すらもある。それほど狡猾で用意周到であるにも関わらず、真正面から戦って勝てる可能性があるのは、私か、私を除いた現トップヒーローたちが最低5人、可能であれば10人以上でチームアップした場合のみだ。」

 

そう断言するオールマイトの目は真剣そのものであり、決してこちらを侮っているわけではない、という事が伝わってくる。

 

エンデヴァー「それほどの巨悪が世に潜んでいるのか。」

 

オールマイト「だからこそ、私は雄英に来た。次世代の、新たな象徴になり得る存在を探しに。当然、その候補に轟少年も入っている。」

 

エンデヴァー「当然だ!っと言いたいが、その筆頭が彼らというわけか。」

 

オールマイト「今の三年生にも優秀な子たちがいる、と言われてはいるんだがね。あの輝きを直に見てしまうと、どうしても贔屓してしまう。」

 

エンデヴァー自身、思うところがないわけでは無い。しかし、

 

エンデヴァー「チームアップの件は、それとなく他のトップヒーローに広めておく。貴様の引退の可能性を示唆すれば、理解は得られるだろう。アドバイスの件は、今度データにして送っておく。」

 

オールマイト「良いのかい!?」

 

エンデヴァー「俺とて、今日の、若者たちの輝きを見せられて、何も思わんわけではない。次世代を育て上げることに協力しない理由などないわ。」

 

オールマイト「ありがとう、エンデヴァー。」

 

エンデヴァー「フン!話が終わりなら俺は先に戻るぞ。息子のライバルになる者たちの品定めをせねばならんからな。」

 

オールマイト「私も行くよ。」

 

エンデヴァー「・・・オールマイトよ。」

 

オールマイト「・・・なんだい?」

 

エンデヴァー「俺も、他のヒーローも、協力する。その巨悪とやら、次の世代に背負わせず、片付けるぞ。」

 

オールマイト「ああ、そうだね。その通りだ。」

 

そこで会話は終わり、二人はそれぞれの観戦場所に戻って行った。

 

ーーーーー

 

応援席

 

瓦斯島「やっぱ爆豪さん、格好良いな。くそー、直接試合したかった!」

 

心操「緑谷と爆豪。この二人のどちらかが、俺たち世代の最初の王者ってわけか。」

 

C組委員長「二人とも、ここまで小細工なし。正面から相手を討ち破って勝ち上がってきた強者だ。その二人が激突するとなれば我々も盛り上がらずにはいられんな。」

 

C組生徒B「心操、瓦斯島。あんたら夏明けからヒーロー科に転科できるかもしれないんでしょ?よく見て勉強しておきなさいよ。」

 

C組生徒A「なんでお前が偉そうにしてんだよ。」

 

普通科はもちろんの事、経営科、サポート科の生徒たちも決勝戦を目前に興奮し、空気が一段と熱を帯びていくようだった。

 

ーーーーー

 

瀬呂「で、正直どうなのよ、麗日?」

 

お茶子「どう、って何が?」

 

上鳴「この中で一番あの二人の実力を把握してんの、麗日じゃん。どっちが勝つと思う?」

 

耳郎「野暮なこと聞くなよ、って普段なら言うんだけどさ、正直私も麗日の意見が気になる。」

 

口田「(コクコク)」

 

芦戸「私も気になるー!」

 

クラスメイトたちの視線を集めてしまい、居心地悪くなったお茶子は、

 

お茶子「うーん。この試合の勝ち負けは正直予想が付かへんのやけど、今のデクくんと爆豪くんの真剣勝負の勝率は1勝1敗。せやから二人ともかなり気合いが入っとるはずなんよ。」

 

飯田「1勝1敗?あの二人は僕らの前でだけでも何度も手加減抜きの模擬戦をしていると思うんだが。」

 

お茶子「デクくんと爆豪くんが正真正銘の本気で、直接戦ったんは、たった一度だけ。そんで、本気で競いあったんは雄英の実技入試が初めてだったって言っとった。」

 

轟「実技入試の一位は爆豪、ってことはその本気の戦い、てので勝ったのは緑谷なのか。」

 

お茶子「うん。ただ、私もその場におったけど、あれは戦いっていうより寧ろ、(殺し合いやった。)」

 

あの恐ろしい戦いを思い出し、お茶子は少し体が震えてしまった。

 

芦戸「麗日、大丈夫?やっぱまだ疲労とかある?リカバリーガールのとこ行く?」

 

お茶子「え?ううん、大丈夫。えっと、せやから、この試合気合の入り方もこれまでとは違うんやないかな。あんなことお願いしてきたわけやし。」

 

八百万「お願い、ですか?」

 

お茶子「あー、いや、こっちの話、こっちの話。」

 

峰田「オイラは緑谷が勝つに賭けるね。アイツは決める時に決める男だとオイラは思う。」

 

尾白「俺も緑谷かな。あの蹴りを喰らった身としてはそう思わざるを得ない。」

 

切島「お!なら俺は爆豪だ!贔屓目抜きに、今のアイツが負けるところを想像できねぇ。」

 

常闇「俺も爆豪だな。アイツは破壊力だけでなくスピードも尋常ではない。」

 

シレっと戻ってきていた常闇も話題に加わる。

 

蛙吹「ケロッ、常闇ちゃん、ダークシャドウちゃん、お疲れ様、惜しかったわね。」

 

常闇「いや、爆豪には終始余裕があった。完敗だ。また一から鍛え直さねばな。」

 

障子「俺もこのままではダメだと思った。もっと強くならねば、あの二人に置いていかれる、と。常闇、体育祭後も継続して合同トレーニング、よろしく頼む。」

 

常闇「ああ、心得た。」

 

砂藤「おい、皆んな!そろそろ始まるみたいだぞ。」

 

葉隠「フィールド注目!なんか凄いよ!」

 

青山「ヤバいね。二人ともキラメキを通り越してギラギラしてるよ!」

 

準決勝でも闘志むき出しで登場した勝己であったが、今回はその比ではなかった。その表情は笑顔ではあるが、まるで最上の獲物を目の前にした肉食動物のような鋭い視線を出久に向けながら、ステージに上がってきた。出久も出久で、不敵な笑みを浮かべ、勝つのは自分だ、と言わんばかりに堂々とした立ち振る舞いでステージに上がる。

 

互いにここまで、決して容易い相手ばかりではなかった。当然疲労もあるはずなのだが、そんなものは一切感じさせず、決勝の舞台に立つ。

 

ーーーーー

 

実況解説

 

「さあ!来たぜ!来たぜ!決勝戦!毎年盛り上がるのは確定だが、今年は一味も二味も違げぇぞ!」

 

「ここまでの第一種目、第二種目、そして最終種目のどの試合も、例年よりレベルの高いものだった。だからこそ、この決勝戦の期待度は高い。そしてアイツらはその期待に応えてくれるだろうよ。」

 

両雄が揃い踏み、実況であるプレゼントマイク、解説の相澤もこれまでより、前のめりになっている。

 

「それじゃあ、決勝のカードを改めて紹介するぜ!あえてBブロックから!」

 

会場全体が勝己に視線を送るが、その姿勢がブレることは無い。

 

「コイツの伝説は3月から始まった!今の雄英高校入試のシステムが出来上がってから約10年。その約10年間の入試記録を大幅に更新し、堂々とヒーロー科実技試験歴代1位の成績を叩き出した!それだけでこの男の進撃は止まるはずもなく、あの選手宣誓から始まり、この体育祭でも第1種目、第2種目を連続で1位で突破!正しく現雄英高校1年生で、最高の評価を得ている男!爆豪勝己!」

 

ワッ!!

 

改めて、勝己の成績を聞き、会場全体がザワめいていく。

 

「そして!この男もまた普通じゃない!実技試験において爆豪との点数差は僅かに3点。実技試験成績2位、そして、ここまでの第1種目、第2種目も2位で突破、結果では惜しくも一歩譲ってしまってはいるが、誰がこの男の実力が爆豪に劣っていると考えるのだろうか!?さあ、1位を取るならここしかねぇぞ、緑谷出久!」

 

ワーーー!!

 

出久も、勝己同様に、会場全体からの視線を向けられるが、一切動揺していない。視線も声援も、全てが蚊帳の外であり、二人の意識は完全に互いにのみ向けられていた。

 

「それじゃあ、これが最後。二人とも準備は良いわね。」

 

「「はい。」」

 

「んんー!二人の闘志が本当に凄まじいわ!プレゼントマイク、いつでも良いわよ!」

 

「もう言葉はいらねぇぜ!ガチバトルトーナメント決勝戦!レディーーー!!スターーート!!」

 

ボボッッーーン!!

 

ゴッッウ!!

 

プレゼントマイクが開始の合図が言い終わると同時に前に出た二人の激突音が会場に響き渡った。

 

ーーーーー

 

勝己はクラスター・ターボを発動し、超爆速でステージを進む。

 

出久もターボソールを足に纏わせ、超神速で突っ込んでいく。

 

「吹き飛べ!!」

 

「スマッシュ!!」

 

爆破の一撃と炎の蹴りが衝突し、轟音が響き渡る。ターボソールを習得した出久は、イフリート・ソールを発動することなく超爆速に肉薄していく。

 

「ハァッアーーー!」

 

出久が吠え、連続して蹴りを繰り出していく。出久の蹴りを迎撃するために爆破を使用しなければいけない勝己は距離を作ることが出来ないでいた。

 

バチッ、と両者の足元で火花が散る。その直後に、勝己の設置爆破、クラスター・エクスプロージョンが両者の足元で炸裂した。

 

勝己の爆汗が地面に散っていたのは出久も気づいていた。そのため、起爆のための拍手ができないよう両手を封じていたが、

 

「(フレイム・ロードのトリックで、火花を!)」

 

『ついでにA.Tにかなりの自信がある俺や麗日の場合、ロウソクぐらいの火が少しつくぐらいだ。』

 

過去に、勝己自身が述べていた通り、戦闘には使えない、小さな炎ではあったが、それを火種に爆破を起こし、距離を取るための隙を作ることに成功、空中に飛び上がる。

 

「クッ!」

 

「確か速ぇな、ターボソール!だが、空中じゃあ、まだ同じ速度は出せねぇみてぇだな!」

 

A.Pショットを空中から乱射する勝己。出久は回避を余儀なくされ、フィールドを駆け回る。

 

ーーーーー

 

上鳴「確か緑谷も、あのターボソールってやつなら空中機動できるんだろ。なんで空中戦で対抗しないんだ?」

 

疑問を口にする上鳴に対し、

 

轟「俺らからすれば充分な速度でも、爆豪を相手するには速さが足りねぇ、ってことだろ。」

 

飯田「先ほど二人が見せた、あの超速とも言える速さ。おそらく緑谷くんはあの速度を空中戦ではまだ出せないんだ。」

 

常闇「だが、爆豪は自由自在に宙を駆け、速度も尋常ではない。今の緑谷は、空に上がっては速度について行けず、地上にいては頭上取られ不利な状態なわけか。」

 

ギリギリ、出久と勝己の速度について行けているメンバーが分析を口にし、

 

お茶子「でもデクくんもそれは承知のはずや。そうやなきゃ、さっきの場面、ダメージ覚悟で前に突っ込んだはずや。」

 

お茶子の発言が正しいことを証明するかのように、回避に専念していた出久の動きに変化が出る。ターボソールを解除した出久がステージの中心で大技を繰り出し、炎の旋風を巻き起こす。

 

当然、そんな見え見えの攻撃が勝己に当たるはずもなく、容易く回避される。しかし、旋風が止んだ後、空中には拳大の火の粉が無数に漂っていた。

 

ーーーーー

 

「フェニクス・スマッシュ、トルネード!!!」

 

 

ゴッッッウ!!!

 

 

フィールドの中心で出久が大技を繰り出す。

 

「(当然躱される。でも、)狙いは別!」

 

「あぁ?」

 

風でコーティングされた、拳サイズの炎が無数に炎の旋風によってまき散らされ、フィールドの中空を舞う。

 

「おーと、緑谷!また新技か!」

 

「火の玉。いや、まさか、足場か?」

 

思わず、といった風に呟いた相澤の声を聞き、勝己が即座に火の玉を撃ち落とそうと構えを取るも、

 

「させない、スマッシュ!」

 

再度ターボソールを発動し、火の玉を足場にすることで、空中での超神速すら可能にした出久が勝己に迫る。更に、出久が一つの火の玉を足場にした瞬間、火の玉が複数に分裂したのである。

 

ーーーーー

 

耳郎「麗日!あれ何!?」

 

お茶子「た、多分、風で炎を囲ったもんやと思う。」

 

葉隠「なんで緑谷くんが踏みつけたら、分裂したの!?」

 

お茶子「多分、踏んだ時に、風と炎を追加で送り込んだんやと思う!」

 

芦戸「麗日!」

 

お茶子「ごめん、皆んな、集中させてぇな!このレベルになると見てるだけでも付いて行くのキツいんよ!」

 

なお上位男性陣は、なんとか試合展開を見逃さないよう、齧り付くように状況を見つめていた。

 

一部観客席が騒がしいが、そんなことは気にせず、試合は進んでいく。

 

ーーーーー

 

空中戦でも、速度で追いついた緑谷であったが、決して余裕があるわけではなかった。

 

「くぅ!(ぶっつけ本番でやる技じゃないぞコレ!体勢を保つのも、方向を変えるのも、攻めに転ずるのも、)クソムズイ!」

 

「ハッ!また口悪くなってんぞ、出久!焦ってんのか!?」

 

先ほど繰り出した奇襲の一撃も躱されたことで出久は苦戦を強いられていた。ただし、それは勝己にも言えたことであり、

 

「(クソが。この火の玉結界がマジでウゼェ!絶対これ、触れた瞬間に炎と風が混ざって爆発かなんかすんだろ!撃ち落とそうにも、)」

 

「ハァッ!」

 

「オラァ!」

 

空中で、もう何度目か分からなくなったてきた、爆破の掌打と、炎の蹴撃の激突が起こる。

 

「(一瞬でも出久から意識を逸らした瞬間、距離を詰めてきやがる。)」

 

互いに、思っていることは一致しており、

 

「(やりづらい!けど、面白い!)」

 

「(面倒くせぇ!けど、面白れぇ!)」

 

向上心の塊である二人は、この状況をどう打破するか、どう目の前のライバルを上回るか、高速で頭を回転させていた。

 

「(姿勢制御は細かい移動補正以外、腕だけでやる。A.Tを使うのは風探知を優先。腕全体の爆破の精度をもっと上げろ。掌は攻撃優先。もっと、正確に、周囲の状況を把握、フルクラスター発動中に、無意識にやっている個性の使い方を、意識して、もっと、自分のものにしろ。攻撃に集中できるように!)」

 

勝己の動きが変わっていく。障害になっている火の玉の位置の把握を、近いものだけに絞り、より詳細に把握していく。そして避ける際の動作もより洗練されていく。掌だけでなく、腕全体を使って姿勢制御や移動を行うことで、空中を縦横無尽に飛び回っていく。超爆速で。

 

そして、出久の動きにも変化が出ていき、

 

「(火の玉をただの足場と考えるな。点と点を繋げろ。空中機動と併用して、この空間に、僕だけの道を作り出していくんだ!もっと速く、もっと自由に!)」

 

火の玉を足場、起点とし、鋭角的な移動を繰り返していた出久の動きが、より滑らかになったいく。空中を漂う無数の火の玉を繋げる道をイメージし、その道を空中機動で移動、火の玉を通過する際に加速を繰り返すことで減速せずに走り続けていく。出久の動きが、まるで見えないA.T専用コースが空中に設置され、その上を走っているかのような自由な動きになっていく。超神速で。

 

ほぼ同時に自身の動きの修正を終えた二人は、より激しい戦闘を継続していく。

 

その動きの変化には、トップヒーローですら驚愕させた。

 

ーーーーー

 

エンデヴァー「まさか、この短時間で自身の個性の使い方や、体の動きを修正したのか?」

 

ナチュラルボーンヒーローのオールマイトとは違い、一つ一つの技術や経験を積み上げていくことで、ナンバーツーヒーローになったエンデヴァーは、それがどれほど難しいことなのか理解していた。

 

エンデヴァー「(ただの才能、だけでは説明ができん。才能だけだというのであれば、おそらく最初の時点から今の動きができていたはずだ。あの短時間で自身の問題点を把握し、正解を導き出し、実践したというのか。)」

 

それは今の自分が、20年以上の歳月、ヒーローとしてキャリアを積み、ナチュラルボーンヒーローに追いつく、追い越すために漸く手に入れた、凡人が超人に抗うための力であった。

 

エンデヴァー「(あの爆豪という少年はある意味、才能の塊だ。しかし、それ以上の努力の積み重ねが彼の動きから見えてくる。そして、あの無個性だという緑谷出久。うちの焦凍がカッティングされていく宝石だとするなら、まるで鍛え上げられていく刀剣のような少年だ。なんども打たれ、熱せられることで、ただの鉄の塊が、宝石以上の価値を帯びていく。)」

 

オールマイトを除き、会場内でただ一人、多少の余裕を残して出久と勝己の動きを追うことができているエンデヴァーは、内心で激闘を繰り広げる少年たちに賞賛の声を送っていた。

 

エンデヴァー「(職場体験。ヒーロー側から指名できるのは2名までだが、雄英に交渉してみるか。)」

 

試合を見つつ、そういった思考をする余裕があるのは、流石ナンバーツーヒーローである。

 

ーーーーー

 

C組生徒B「あっ、あんたら夏明けからヒーロー科に転科できるかもしれないんでしょ?しっ、しっかり見てるんでしょうね?」

 

心操「分かって聞いてんだろ!あっ、くそ、また見失った!どこだ!」

 

瓦斯島「上だ、上!てっ、もういない!」

 

心操「直接ぶつかる瞬間、毎度毎度衝撃破出しやがって!マジで見づらい!」

 

瓦斯島「この二人が別格なのは理解できるけど、ここまでの差があんのかよ!」

 

心操「緑谷と爆豪の全力が、別格、規格外過ぎんだよ!」

 

なんとか試合の展開についていこうと努力はしているが、何度も何度も見失う。自分たちの実力不足を歯噛みしながら、それでもなんとか喰らい付こうと目を皿にし、ステージを見続ける心操と瓦斯島であった。

 

心操「ああ!クソ!まただ!」

 

瓦斯島「速すぎる空中戦とか絶対に見失うわ!地上戦にしてくれ!」

 

ーーーーー

 

物間「(上、左、もう一回上、右、激突、一気に降下、の途中で、左斜め上、激突。」

 

鉄哲「物間!一人で集中して観ていたい気持ちも分かるが、マジで解説頼む!俺らじゃもう付いて行けねぇ!」

 

拳藤「あぁ、だめだ!地上戦の2次元的な動きならまだしも、空中戦の3次元的な動きは絶対にどこかで見失う!」

 

その他のB組生徒たちも、戦闘のあまりの速さに目を回している状態である。しかし物間は、

 

物間「(左、互いに後退、即前進からの激突。)」

 

まさかのガン無視である。

 

B組生徒たち「物間ー!?」

 

物間「・・・。」

 

ガン無視である。

 

ーーーーー

 

熱戦を繰り広げ続ける二人ではあるが、互いの実力を正確に把握してしまっているためか、新技や変則的な動きを繰り出しても、相手が即座に対応してしまい、決め手に欠け、消耗戦になりかけていた。

 

このまま疲労が溜まっていき、隙を突かれた方が敗北、という結末は出久も、勝己も望んではいない。お互いの考えは一致し、戦闘中、同時にチラッと実況解説席に目を向けるのであった。

 

ーーーーー

 

「なあイレイザー。今アイツら一瞬コッチ見なかったか?」

 

同じ部屋にいるためか、出久、爆豪が相澤に視線を向けたことに気がついたのか、プレゼントマイクが話を振る。

 

「・・・ハァー。仕方ないか。」

 

一度大きな溜息を吐き、相澤は何かを諦めた様子を見せる。そして、

 

「麗日、発目。俺は許可を出す。後はお前らが決めろ。」

 

相澤がそう発言した直後、会場内ににあるスクリーンの一つに大きく、『OK』の文字が浮かび上がる。明のハッキングによる合図であった。

 

相澤、明から合図を確認し、最後の合図を待ちつつも、出久と勝己の激闘は続いていた。

 

会場中は二人の戦闘に盛り上がりつつも、相澤の発言やスクリーンの文字などの意図が理解できないでいた。そんな中、観客席でただ一人状況を理解しているお茶子は、相澤と同様に大きなため息を吐き、手を顔に当てていた。

 

「ハァーーー。」

 

「ケロッ、どうしたのお茶子ちゃん?試合見なくて良いの?」

 

「うー、この後の展開を考えると見るのが怖い、というか、見きる自信がないというか。うーん、あーもう知らへん!」

 

そう言ってお茶子は勢いよく席から立ち上がった。お茶子の急な行動に周囲のクラスメイトたちが驚くが、間髪入れずに両手を口に当て、お茶子が叫ぶ。

 

「二人ともー!許可ーーー!!」

 

お茶子の声が聞こえたのか、出久と勝己は急に戦闘を中断し、空中からフィールドに降りて行った。

 

改めて、試合開始時と同じ地点に降り立った二人に、観客たちは疑問しかなかったが、その疑問は相澤の発言によって、より理解できないでモノへと変わるのであった。

 

「許可も出たようだからな。二人とも、ここから先はプルスウルトラの精神の元、限界を超えて、好きにやれ。」

 

何?どうゆうこと?限界を超えて?さっきまでの先?まっさかー。

 

そんな疑問や言葉が観客たちの頭の上をグルグルしていたが、A組生徒たちだけは思い出していた。戦闘があまりにハイレベル過ぎて忘れていたが、あの二人の限界の先が、先程のまでの戦闘ではないことを。

 

ボッッッン!!!

 

ゴッッッウ!!!

 

相澤の発言を受け、実況解説室の方向を見ていた観客たちは再度轟音が鳴り響いたフィールドに視線を戻した。

 

そこには上半身の服を脱ぎ、体の周囲に小さな爆発を複数、繰り返し煌めかせている勝己と、ジャージが膝の部分まで燃え、代わりにこれまで以上に強力な炎を纏った出久が佇んでいた。

 

ーーーーー

 

遠い、アメリカの地にてスターアンドストライプスが呟いた。

 

「さあ、ここからが本番さ。」

 

ーーーーー

 

体育祭数日前、職員室

 

相澤「切り札を出す許可が欲しい、だと?」

 

出久「はい、先生。」

 

職員室の相澤のデスクの近くに、出久、勝己、お茶子、明のいつもの四人が揃っていた。

 

相澤「お前らの切り札、っていうとつまり、」

 

勝己「俺の場合はフルクラスター、出久の場合はイフリートソールっすね。」

 

USJで、それらの技を発動した二人を、間近で見て、雄英にいる誰よりもその威力を肌で感じた相澤は、困った表情を見せ、

 

相澤「あー、どうしたもんか。雄英体育祭に出場する生徒に本気を出すな、というのは有り得んが、だからといってあの力を自由に使って良いとは言えんのもまた事実だからなぁ。それにお前らも、使用後に動けなくなるあの技を使うの控えていたじゃないか。」

 

あんな力を他の生徒に振るった日にはどんな事件が起こるか、予想が付かない。出久たちも同様に感じたため、相談しにきたのではあるが、

 

出久「そこはほら、雄英体育祭ともなれば、最高の医療体制が用意されているじゃないですか。」

 

勝己「実戦じゃ把握し切れない限界ギリギリを確認しておくのも良いことだと思うんすよ。」

 

相澤「まあ確かにな。」

 

明「私としてはお二人が思う存分戦えるようサポートは惜しまないつもりです。ただ、判断は私以外の方にもしていただいた方が良いとも考えています。」

 

相澤「なるほど。ところで、なぜ麗日はずっと膨れっ面なんだ?」

 

私は不満です、という感情が見ただけで伝わってくる表情をしていたお茶子。

 

お茶子「だってですよ、先生。二人とも使ったら絶対に大きな反動、自損ダメージが出るの分かっとる技を体育祭で使おうて、どれくらいまでのダメージなら今後負っても大丈夫なのか確認しようとしとるんですよ?」

 

出久「で、でもお茶子さん。体育祭はリカバリーガールを含めた最高の医療スタッフが控えていてくれて、普段なかなか出せない力を出すことで、いざ実際の現場で本気を出す時の基準を知れるっていう良い機会でもあって、」

 

お茶子「デクくん、ちょっと黙って。」

 

出久「はい、黙ります。」

 

シュンとした出久の頭をヨシヨシしつつ明がフォローに周る。

 

明「お茶子ちゃん、お茶子ちゃん。実際に体育祭は出久さんや勝己さんが本気を出すのに絶好の機会です。今後のことを考えれば、ここで改めて全力を超えたチカラを出してもらっておくのも良い考えだと思いますよ?」

 

お茶子「うー、せやけどなー。」

 

本気で悩んでいるお茶子に対し相澤は、

 

相澤「そんなに悩むなら、許可は当日、俺、発目、そして麗日の3人が全員了承した場合のみ出す、ならどうだ?教師と技術者、そして友人としての目線から、コイツらが本気を超えても良いと感じたら、それぞれが許可を出すんだ。」

 

勝己「流石に面倒すぎじゃないっすか?」

 

相澤「それだけお前ら二人のチカラがヤバいんだ。悪いがこれで納得してくれ。全員、良いか?」

 

出久、勝己、お茶子、明「「「「はい。」」」」

 

ーーーーー

 

峰田「さっけまでの戦闘も凄過ぎて忘れてたけどよ。」

 

轟「アイツらの全力を超えた力は、これだったな。」

 

飯田「僕は最後の一撃しか見てないから分からないんだが、やはり凄いのかい?」

 

常闇「いや。俺たちもヴィランたちの対応をしていたためしっかりと戦闘を見ていたわけではないんだが。」

 

飯田「だが?」

 

常闇「対オールマイト用の怪人を、圧倒していたあの状態のアイツらが凄くないわけがない。」

 

飯田「だね。」

 

A組生徒たちは、これから先の試合展開も可能な限り見逃さないよう、集中力を上げてフィールドを見つめる。

 

ボッッッッッン!!!

 

ゴッッッッッウ!!!

 

フィールドで響く激突音。炎撃と爆撃の衝突から発生した衝撃波。その威力、範囲が跳ね上がった。

 

障子「ぐっ!聞いてはいたが、本当に、更に上がるのか!?」

 

切島「オレ、あれは耐えられそうにねぇわ。」

 

USJではエントランス付近で戦闘していたため、飯田同様に最後の攻撃しか見ていなかった二人も、そのあまりの破壊力に目を剥いていた。

 

そして、決勝戦も佳境へと突入していく。

 

なお、A組と一部USJの戦闘の詳細を知っている教員以外の会場にいる人々は口をあんぐりと開けていた。

 

ーーーーー

 

空気を裂きながら移動する出久は、纏う炎によって輝き、閃光のように軌跡を残して、フィールドを駆け巡っていた。その軌道が歪む瞬間は、決まってフィールドには強大な炸裂音、爆烈音が鳴り響いていた。

 

勝己は、瞬間移動がごとき移動を連続して行っていた。それを可能にしているのは、フルクラスターの恩恵である全身爆破である。上半身、脛から膝までの足から爆破を繰り出す事で、腕のみ爆破では出せなかったスピードが出ていた。またメインウェポンである掌を移動に使用しなくても良くなったため、攻撃もさらに熾烈になっている。

 

しかし、出久の切り札も決して劣っていない。

 

「フェニクス・スマッシュ!」

 

出久の得意技が撃ち出される。

 

ーーーーー

 

切島「オイ、綠谷の奴、撃っちまったぞ!」

 

砂藤「イフリートソールって、フェニクス・スマッシュを纏ってんだろ。それなのに良いのか!?って、」

 

青山「めっちゃ撃ちまくってるね。」

 

ーーーーー

 

イフリートソールを着火するために必要な火力がフェニクス・スマッシュである。そしてイフリートソールが出久の切り札である所以は、イフリートソールは出久が持つ全ての技の原型であるからである。

 

キーを使用した出久が初めて身に付けた技がまだ名前の無かったイフリートソールであり、その技の要素を抜き出し、より安全に使用できるよう、ダウングレードさせていったのが他の技である。

 

そして、イフリートソール発動中、常に制御しきれない強力な炎を脚に纏っている出久は、炎を放ったとしても、即再装填されるのである。そのため、自身最大火力の遠距離攻撃を左右で撃ち分けることで連射すらも可能になる。

 

「フェニクス・スマッシュ!フェニクス・スマッシュ!!フェニクス・スマッシュ!!!」

 

右、左、右、と燃え盛る脚から業炎を連続で繰り出していく出久。勝己は初撃、二撃目を超爆速で躱すが、三撃目は捉えられ、迎撃を選択する。

 

「フルクラスター・インパクトー!!!」

 

これまでの試合で最大の爆炎がフィールドを埋め尽くす。その直後、出久は風を操作し、両手を広げ、爆炎を掻き分けながら突っ切っていく。

 

「(こっ、こっ、だ!!)」

 

出久が勝負に出る。

 

勝己もそれを感じとり、脳裏を過ぎた回避の選択肢を除外する。ダラダラと試合を続けるために切り札を切ったわけではない、と体の前面、背面から大量の火花を散らし始める。

 

「来いや、出久!最大火力でぇ、迎え撃ったらぁ!!」

 

一際大きな火花の発生源である両掌を前に突き出し、勝己が吠える。

 

「フルクラスター・ダブルインパクトーーー!!!」

 

貫けるものなら貫いてみせろ、と勝己の瞬間最大威力の爆破が突っ込んでいく出久に迫る。そして、出久は渾身の右回し蹴りをダブルインパクトの爆壁に叩き込む体勢を取った。

 

「あぁ!?」

 

自身の爆破で直接は見えないが、風探知で出久の動きを読み取った勝己は疑問を覚える。イフリートソールを纏った出久の回し蹴り。強烈であり、あの脳無という怪人の腕をへし折った一撃でもある。しかし、威力は充分でも、それでは勝己の攻撃は防げぎ切れない。

 

超神速の加速と渾身の蹴りを組み合わせた飛び蹴り、脳無の背骨をぶち抜いた貫通力特化の攻撃を使って爆破の壁を超えて来ると考え、負けじと迎撃のために放った攻撃が、そのまま出久を飲み込み、行動不能に追い込むと考えた勝己に爆破の放出を続けた。そして、

 

「エアフォース、バレッッット!!!」

 

「ゴッハァ!?」

 

謎の衝撃が腹部に直撃し、フィールド外の壁に叩き込まれるであった。

 

「い、ま、のは、」

 

技の反動による全身の痛み、攻撃を喰らった腹部の痛みに耐えながら、意地でも膝を付かない勝己は、なんとか視線を上げフィールドを見つめる。そこには爆破を喰らいながらも燃え盛る左後ろ蹴りを振り抜いた体勢のままの出久が立っていた。

 

「(回し蹴り、で迫る爆破の壁の抉り、そこから貫通特化のエアフォース、いや、今のはエアフォースっていうより、・・・ああクソ。痛みで考えが纏まらねぇ。あのスピナーとかいう奴の技に近ぇのか?)」

 

あの一瞬、出久は回し蹴りで空間と間を確保した。超神速の後ろ蹴りを連撃で放つために。連撃の蹴りによって撃ち出されたのは、普段の風撃とは似て非なる真空の弾丸。

 

その弾丸が爆壁を撃ち抜き、勝己をも撃ち抜いたのである。その代償として、出久はモロに爆破の影響を受け、全身がボロボロになっていた。

 

先ほどまで騒然としていた会場に沈黙に包まれていた。延々に続くかと思われた試合の唐突な決着に理解が追いついていない様子であった。

 

試合を正式に終わらせるため、試合開始直後にセメントスの近くに避難していたミッドナイトがフィールド上に戻り、宣言する。

 

「爆豪くん、場外、よって雄英体育祭、一年生の部、優勝は緑谷出久くん!」

 

ワっ!!

 

勝利宣言を受け、右手を掲げた出久はそのままフィールドに倒れ込んだ。

 

体育祭最終種目、ガチバトルトーナメント、優勝、緑谷出久。

 

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