まったり回。
飯田天哉くん、お兄さんが再起不能ではないのでヒーロー名がインゲニウムではありません。
体育祭から2日経ち、登校中。
「ふんふんふふーん。」
「明ちゃん、ご機嫌やね。」
鼻歌を歌いながら登校する、親友兼家族にお茶子が声をかける。
「はい、先日の出久さんの祝勝会の日、大好きな人たちと沢山一緒に過ごせました!お茶子ちゃんと一緒作った料理や、体育祭で頑張ったことを、出久さんや勝己さんにいっぱい褒めてもらいました!夜はママさん、お茶子ちゃんと一緒に色んなことおしゃべりできて嬉しかったです!良いこと尽くしでした!」
「ふふ、せやね。」
確かに、あの日は一日楽しかった。その前日に体育祭で激闘を繰り広げたのが嘘のように穏やかな日だった。
「あと昨日、皆さんのA.Tや、戦闘データを纏めてたら色んなアイディアが出てきたので、今日からまたガンガン作っていきます!」
「あはは、ほどほどにね。」
「いえ!プルスウルトラの精神の元、ガンガン作ります!!」
「ほんと、ほんまに、お願いやから。ほどほどにして。」
既に何度も先生方に謝罪周りを敢行しているお茶子、ついでに出久、たまに勝己であった。
「あ、でも最初はこの子の整備と改良からですかね。」
そう言って、背中に背負うA.T用ケースに目を向け、
「勝己さんに以前お試しで作ったこの子を、えっと、鼻郎(びろう)さん?用に、」
「耳郎ちゃんやな。(え、その場合、鼻なんかな、耳郎ちゃんの鼻が伸びるんかな。)」
「失礼しました。その耳郎さん用にカスタムするとこからいきます。ということで、授業中でも良いので耳郎さんをサポート科ラボに連れてきてください。私は基本そこにいるの、ヒハイヒハイナンレ!?」
「明ちゃん、授業中は教室にいてな。」
ほっぺをツネられる明。お茶子、叱る時は叱る子である。
ーーーーー
教室にて、
「これが俺のA.Tだ!」
「これが私のA.Tだ!」
デデン!と先日購入したA.Tを公開する切島と芦戸。
「おー。」
クラスメイトたちが物珍しそうに集まり、A.Tを見ていく。
「なんか、緑谷たちのと違うな。切島のはタイヤゴツいし、四輪だし。」
瀬呂が切島のA.Tを眺めながら、自身がよく知るA.Tとは仕様が違うことに気付く。
「それ言うなら、三奈ちゃんのなんて車輪すらないよ!」
「なんだケチったのか。」
「んな訳あるか。」
葉隠がより違和感が強い芦戸のA.Tを抱えながら眺めていると、上鳴のアホ発言に耳郎がツッコミを入れる。
「爆豪にオススメを選んでもらったんだけどよ。この四駆タイプは悪路とかも走行し易いし、踏ん張りもしっかり効くんだと。」
「私のボールウィールは変則的な動きがし易いんだ!少し試したけど、個性を移動に使う必要無くなったから攻撃に回せる分を増やせそう!」
「機動力が上がって、攻撃力まで上がんのかよ。羨ましいな、俺も始めようかな。」
砂藤や、他のクラスメイトたちもマイA.T導入を本気で考え始める。
「そういえば、耳郎ちゃんもA.Tショップに行ったのよね。今回は買わなかったの?」
蛙吹から耳郎に話が振られると、
「あー、なんでも発目さんが以前作ったA.Tに私の個性と合わせると良さそうなのがあるだって。」
「あ、それでね耳郎ちゃん、明ちゃんが今日、サポート科のラボに来れないか、って。」
「あ、行く行く。」
クラス内の雑談が盛り上がって行く傍ら、
「飯田くん、ニュース見たよ。お兄さん大丈夫だった?」
「ああ、ヴィランにやられて入院、と聞いた時は焦りに焦ったが、当の本人は至って元気そうだったよ。」
「そっか、良かった。」
「うん、緑谷くんも気遣ってくれてありがとう。だが、実は兄を助けたのが、例のヴィラン連合のスピナーだったらしくてね。」
「え!?」
出久と飯田の会話に他の生徒たちも加わろうとした時、
『キーンコーンカーンコーン』
チャイムと同時に相澤が入室し、全員が着席して出迎える。
ーーーーー
その後、原作通り(メタ)、体育祭明けのヒーロー情報学の授業にて、ヒーロー名を考えるのだが、原作通りにならない部分がいくつか。
「ターボヒーロー、ヴァンガード、と名乗ろうと思います。」
飯田は兄である天晴が再起不能になっているわけではないため、インゲニウムの名を引き継がず、代わりに先導するもの、道に迷ってるものを導くものとしてのヒーロー名、ヴァンガード、を考え出すのであった。
更に出久も、
「マイティヒーロー、デク、です。」
「緑谷くんは麗日さんが読んでるあだ名を採用するのね。それにマイティ、オールマイトリスペクトかしら?」
「そ、それもありますが、僕は2年前、ただの悪口だったあだ名に、別の、大事な意味をもらいました。」
チラッと勝己、そしてお茶子に目を向ける出久。
「そして、僕が更に成長していくために、『凄くて、頼りになる、頑張ってる感じのデク』を目指すために、僕はこれからマイティヒーロー、デクを名乗ります!!」
ヒーロー情報学を臨時(相澤自身が向いてないから、と頼んだ)で担当するミッドナイトからの質問に、出久は己のヒーロー名に決意を込めて答える。
パチパチパチパチ、とクラスメイトたちからも拍手が飛んでくる。そして、
「バーストヒーロー、キャプテン・ダイナマイトだ。」
「あら、キャプテンを付けるのね。リーダーシップを張らないといけないし、名前負けしがちだから、割とみんな付けたがらないのだけれど。」
「体育祭じゃあ譲っちまったが、俺ぁこの世代のトップを諦めるつもりはねぇ。」
出久の方を見ながら、勝己もまたヒーロー名に決意を込める。
「キャプテンっての自分の手が届く範囲を、船なら乗組員や乗客なんかを、確実に救うのが仕事だってな。全てを救うことが難しいことは俺ぁ、俺たちはよく分かってる。だから、俺以外のやつを俺が守って、その守られた奴らが他を守る、それ繰り返せば、いつか全てが救えんだろ。だから俺はキャプテンを名乗る。」
勝己の言葉に皆が震える。同世代にコイツがいる。その頼もしさを感じつつ、自分も置いていかれないようにしなければ、と己を奮い立たせるのであった。
「ミッドナイト、助かりました。どうもこういったセンス的なものが必要なものは昔から苦手で。」
「いいえ〜、それじゃあA組の皆んな、また授業でね。」
相澤が礼を伝えると、ミッドナイトは教室から出ていき、
「それでは諸君、次は職場体験についての話だ。」
次の行事に関しての説明が始まるのであった。
ーーーーー
A組に、一通り職場体験についての説明を終えた相澤は、次に指名数が載ったスライドを見せる。結果として、指名数が多かった、またはあったメンバーとして、
出久、勝己はダントツの数千(出久が若干上)。轟、常闇、お茶子が多め(轟は千ちょい、常闇とお茶子は数百後半)。その他ガチバトルトーナメントに進出メンバーにもそこそこの数の指名が入る形になっていた。
「今年は例年よりも指名数が多い。まあ、その殆どが緑谷、爆豪に偏ってはいるんだが、指名があったものは原則その中から選ぶように。」
チャイムが鳴り、相澤が教室から出て行った後は当然、
「ねぇ、職場体験どこのヒーロー事務所選ぶ?」
「指名が来てない者は事前に雄英に職場体験受け入れ可能を打診していた事務所から選ぶのだな。」
「(うんうんうん)」
耳郎が前に座る障子、その障子と相談に来ていた口田に話を振ると、
「耳郎や障子、あと口田もだがよ、テメェらに指名がないってのは最近のヒーロー、見る目がなさすぎるんじゃねぇか?」
「うん。正直、僕がヒーローで、サイドキックとして受け入れる候補に、君ら3人は絶対に入るよ。」
耳郎の隣に座る勝己の発言に、その後ろの席である出久も同意する。
「ふむ。緑谷、その心は?」
近寄ってきた常闇が他にも指名がない生徒たちがいる中で、その3人に注目する理由を尋ねると、
「3人とも索敵が超優秀だからね。」
「事件現場にいち早く駆けつけるために、優秀な索敵班候補を積極的に受け入れようとするもんだと思うんだがな。」
「あれやない。職場体験やから、こう、ヒーローの仕事のお手本を見せようとする時、索敵で優秀な生徒たちに上手く教えられるか不安、なんなら手柄を取られてまうー、とか?」
お茶子も会話に参加し、
「昨今のヒーロー事情を考えると、ありえそうで嫌だな。」
「あはは、評価してもらえるのは嬉しいけど、体育祭であんまし活躍できなかったからさ、しょうがないよ。こっからこっから!」
「うむ、耳郎の言う通りだな。」
「(コクコクコクコク!)」
耳郎の気合いを入れる言葉に障子、口田も同調するのであった。
「そういう爆豪はどうすんのさ?指名が数千だと選ぶのも一苦労じゃない、緑谷もだけど。」
「あぁ。有象無象のモブヒーローには興味は無ぇ。指名の中じゃ、ベストジーニストの事務所がやっぱ第一候補だな。」
「え!カッちゃんベストジーニストから指名来てるの!?凄い!」
「嫌味か!?テメェはエンデヴァーから指名が来てんだろうが!」
「普通にヒーローチャートナンバーツーとナンバーフォーの名前が出てくる辺り凄まじいね、あんたら。」
耳郎が呆れていると、
「そのことなんだが、緑谷。親父から職場体験、二人まで指名できる枠を俺とお前にしたって昨日言われた。よっぽど他を選ぶ理由がなければ是非ウチの事務所に、ってやたら丁寧で少し気持ち悪かったんだが、親父となんかあったか?」
「何かあった、ってことはないかな。準決勝前に少し話はしたぐらいだけど。」
「そうか。父親としては最悪だが、ヒーローとしてのエンデヴァーは凄いやつだと思う。だから俺は職場体験をエンデヴァー事務所にしようと考えてるが、緑谷はどうする?」
「うん、色々考えたけど事務所の総合力的にエンデヴァー事務所を選ばせてもらおう思ってた。轟くん、一緒によろしく。」
「私も真剣に選ばな。」
友人たちが職場体験先を決めていくのを見て、フンス!とお茶子も耳郎同様に気合いを入れ直すのであった。
ーーーーー
放課後、
お茶子、勝己に加え、耳郎の3人はサポート科のラボへと足を運んでいた。
※出久は切島、芦戸にA.Tの基本講習を実施中。
扉を通り、中の様子を伺い、見かけたサポート科生徒に声をかけたお茶子(連日の明の爆発関連の謝罪で、もはや顔パス状態)、
「あ、すみません。明ちゃんどこで作業してます?」
「どうも麗日さん。発目さんなら、」
チュドーン!
「あそこだね。」
「ありがとうございます。それじゃ耳郎ちゃん、行こっか。」
「ねぇ待って。なんで誰もあの爆発音に対して何にも驚きも疑問も持たないの?普通なの?日常の茶飯事のことなの?」
爆発音が鳴り響いても、反応が無く、むしろ位置が特定できて良かった、とでもいうのか、そのまま進もうとするお茶子に待ったをかける耳郎だが、
「オイ、耳郎。テメェがこれからA.Tを使っていくんなら、発目との関わりは必須だ。」
「つまり?」
「慣れろ。あと爆発時のビックリマークは一つだった。今回のは大した爆発じゃねぇよ。」
「地の文にすら慣れなきゃいけないの!?」
耳郎が喚いているうちに発目の作業スペースに近づき、
「明ちゃんお待たせ。ちゃんと授業出た?」
「パワーローダー先生に、今日の授業でやるであろう内容をレポートにして事前提出して免除してもらいました!」
「・・・まあ、先生の許可取っとるなら、えぇか。」
諦めも時には必要である。
「それで、それで。この方が目郎さんですか?」
「耳郎ちゃんやね。その場合、伸びるんは目なん?それ原作(メタ)で私がやっとるよ。」
「どうも、よろしくお願いします。」
「はい、どうも。では早速。」
明が耳郎に近づき、耳のイヤホンジャックを触っていく。
「ヒャ!急に触んないでもらって良い?ビックリするじゃん。」
「失礼しました。なるほど、なるほど。イヤホンジャックの先端は通常のイヤホンジャックと大差ない訳ですね。それでここから、あなたの心音を刺した対象に叩き込めると。加えて刺した対象から振動を通じて、音を感知、周囲の状況を読み取ることができる、と。確かに、上手く調整すれば、あの子たちを活かすことができそうですね。」
「あぁ?あの子たちって俺が試した奴以外にコイツ、」
「耳郎。」
「・・・耳郎に合いそうなヤツあんのか?」
「そうですね。出久さんみたいに複合型、という訳ではないと思うので、あくまで機能としてA.Tにつける形ではあるのですが、ラムジェット理論機構と振動波伝播装置を組み込んでみようと思っています。」
「なんか凄く複雑そうな名前が出てきたんだけど。」
「ラムジェット理論ってのは、簡単に言えば、前に進む時に受ける風を圧縮して、更なる推進力のエネルギーに利用するシステムなんだが、受ける風を音波で代用できねぇか、って聞いてみたんだ。」
「はい、理論上できそうです!音波を圧縮し、さらに強力な音波として放出し、攻撃手段、移動手段として利用する。面白いアイディアです、勝己さん!」
「だそうだ。」
「と、とりあえず、そのラ、ラムジェット機構?がついたA.Tを使えば、私の音波攻撃が強化される、ってことで良い?」
「ざっくり言えばそうです。」
「爆豪はなんで、その機構を使わなかったの?」
スピードを出すことで、更なるスピードを得られる、という夢の機構をなぜ使わないのか、と尋ねると、
「俺の場合、そもそも自分の加速をA.T使ってやっと制御してんだ。ついで、俺は縦横無尽に飛び回るのが戦法なんだが、ラムジェット機構は基本一方向だ。自分の長所を潰すほどの魅力を感じなかったってだけだ。」
「私の場合、もともと無い攻撃力と機動力を追加する訳だから、利点ばっかってことね。」
「その分、扱いがムズイだろうがな。精々A.Tに振り回されないように頑張れ。」
「慣れるまでは練習付き合ってくれるんでしょ?」
耳郎がニヤリと笑いながら勝己に声をかけ、勝己も、
「オウ、とびっきり厳しい練習を用意しといたら。」
「ははは、お手柔らかに。」
「お二人とも、次の説明始めても大丈夫ですか?」
「「どうぞ。」」
空気を読めるようになった本作発目が、キリの良いタイミングで声をかける。
「では、続いて振動波伝播装置ですね。これはA.Tを通じて振動を地面などに伝播させる機能を持った装置です。」
「へー、振動を伝播させると、どんなことができるん?」
お茶子が、発目が操作しているモニターを覗き見て振動を伝播させることで出来ることを聞くと、
「一定の振動波を伝播させることで相手の動きを封じたり、空気を固めて空を歩いたり、なんなら人間を氷か石みたいに固めることもできますね。」
「明ちゃんそれ、固めた相手が衝撃を受けたらどうなるんか聞いてもえぇ?」
「当然砕けまヒハイヒハイナンレマタ!?」
「A.Tは大概危険やけど、これは素人の耳郎ちゃんに渡したらあかんよ~。」
額に青筋を浮かべたお茶子が笑顔で明の頬っぺを引っ張っていく。
「おい耳郎、いるか振動波伝播装置?」
「あはは、とりあえず今は無しにしておいてくれるとありがたいかな。」
去らばガイア・ロード。君の登場は当分ありません。もしくは一切ありません。
ーーーーー
雄英室内運動場
「はい、芦戸さん、ルートズレてる。正しいルート取りができなければA.Tで実際に街中を走るのは、夢のまた夢だよ。」
「え、ズレてた?ちゃんとライン上走ってるよ。」
「うん、さっき声かけたとき2cmズレてた。」
「ニセンチ!?」
「切島くん、休まない、気を緩めない。シャトルラン300本追加。」
「いや、緑谷!これ、A.T履いて、ただ走るだけなのに、クッソキツくねぇか!?」
「時速数十キロで走ってるんだよ?全身の筋肉、体幹を使わないとバランス取れないし、正しい体の使い方をしないと、むしろ走った方が良いくらいだね。でも使い熟せば、得難い機動力になるよ。」
「おお!やったるダボア!?」
「キャア!何突っ込んで来てんの切島!?」
A.Tを履いた切島、ラッキースケベ属性を獲得。
「はい。二人とも、シャトルラン追加ね。」
出久先生によるA.Tトレーニング。まず走る。正しいルートをまず走る。白線の上を真っ直ぐ、ライン上をただ何度も、何度も、走り続ける。
「A.Tで走る際の絶対ルール、それは周囲に迷惑をかけない事。自由に走るために、まず不自由に慣れていこう。」
切島と芦戸は放課後になってからすでに1時間以上同じことを行なっている。
「大事な事なのは分かるぜ。でもよ、」
「うん、基本を疎かにしちゃいけないのはダンスとかでも同じ、でも、」
「「(つ、つまんねーー。)」」
せっかくA.Tを履いているのに、やる事は、ただ真っ直ぐ走るだけなのは非常にツマラナイ。
「み、緑谷。私は切島と違ってそこそこ走れるから、じ、自主トレにしようかな、なんて。」
「ラインシャトルラン、ノーミス500できたら良いよ。芦戸さんは体力が足らないから、今やっても350回超えた辺りでミスが出ると思うけど。」
「はい、基礎トレを続けます。」
「うん。二人とも、まだ初日だし、基礎を大事にしていこう。」
切島、芦戸がA.Tで街を駆ける日はまだまだ、遠い。
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