短いです。
本編だと体育祭から一気に職場体験に行きますが、その間を書いていきます。
A組にて、出久は相澤からある相談を受けていた。
「え、模擬戦ですか?」
「ああ、B組担任のブラドキング、というよりB組生徒たちからか。接近戦の経験を積みたいから、是非お前と模擬戦をやりたいそうなんだが、どうする?」
「僕なんかでよければ、喜んで。色んな人との戦闘経験は僕にとっても貴重ですんで。」
「お前ならそういうわな。」
「カっちゃんは誘われなかったんですか?」
「あいつの場合、中距離戦闘が目立っていたからな。近距離も十分に強いが、やはり接近戦の経験を積ませる相手としてはお前に目が行ったんだろ。」
体育祭で猛威を振るった出久の高機動戦闘と接近戦。直接出久と戦闘をした塩崎や、騎馬戦で対決した物間や鉄哲以外の生徒たちも実際に体験したい、という要望が多かった。
そのため、
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「それでは、A組、緑谷くんが来てくれた。体育祭で見たあの実力は本物だ。実際に手合わせする者、見学だけの者もいるが、各自しっかりと学ぶように。」
個性使用可能施設にて、B組生徒たちが集まり、ゲストとして出久はブラドキングの隣に立っていた。だが、B組生徒たちは若干怪訝そうな顔をしていた。
「先生、質問良いっすか!?」
クラスを代表して、鉄哲が挙手する。
「なんだ鉄哲?」
質問の内容は予想できているが、あえて聞き返す。
「なんで緑谷はA.Tを履いてないんですか?」
そう、出久はA.Tを履いておらず、普通の靴である。
「ふむ。緑谷くん、なぜA.Tを履いていないか、聞いても良いかね?」
事前に緑谷と相談をしているブラドキングであるが、B組に発破をかけるため、あえてクラスの前で理由を尋ねる。
「B組の皆さんの近接戦闘の経験を積むための授業と聞いたので、この状態でも問題ないと思いました。もし、僕が負けた場合、すぐに履き替えます。」
ブチ、と何人かのB組生徒たちの何かが切れる音がした。
「(つまり現状、)」
「(無個性の緑谷は、)」
「(私たち相手なら、)」
「(A.Tなしで問題なく勝てると、)」
「(そう思ってるってことか!?)」
B組生徒たちの中でも近接戦闘に自信がある生徒たちは、舐められているのか、と出久の発言に苛立ちを覚え始める。
「なら、最初はB組の突撃隊長、この鉄哲が行かせてもらうぜ!」
先ほど発言した鉄哲がそのまま一番手に名乗り出る。良い具合にクラスが殺気立っているのを見て満足気に頷いたブラドキングは、
「うむ、では鉄哲からだな。では緑谷くん、よろしく頼む。」
「はい。」
他のクラスメイトたちと離れ、体育館内に設置された、体育祭のフィールドより小さい、正方形のフィールドで向かい合う二人。
「緑谷、テメェの試合、ありゃ確かに凄かった。だがよ、あの速さも炎も、A.T込みの力だろ。」
「うん、そうだね。」
「だったら、それなしで、戦うってのは、俺たち相手に本気を出すまでも無いってことか?」
「・・・うん、そうだよ。」
ブチ、
「そうか、分かった。なら全力で、ぶっ潰させてもらうぜ!」
そして、そのまま鉄哲は出久に向かって突撃を慣行するのであった。
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「挑発、ですか?」
「うむ。君のA.Tなしでの実力の高さはイレイザーヘッドから聞いている。だが、うちのクラスはそれを知らない。A.Tを履かないのは、B組クラスの実力が足らないからだと、挑発のようなものを行ってほしい。挑発に乗らずに冷静に攻められるのであれば、それで良し。挑発のって突っ込んでいくなら、それを指導する。」
「分かりました。そういうことなら、指示通りにやろうと思います。」
「よろしく頼む。」
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「オオラァ!」
なんの工夫もない、ただの右の大振り。ただし、全身を個性スティールで金属にした状態である。個性もA.Tも無しで反撃しようものなら、攻撃した側がダメージを受けるであろう突撃に対し出久は、
「フッ!」
ドゴン!
一本背負いで鉄哲を地面に叩きつけるのであった。
「ぐっ、だが今の俺は鉄、受け身を取らなくてもダメージは入らな、」
「シッ!」
ドゴン!!
「ゴッ。」
立ち上がった直後の鉄哲の鳩尾目掛けて、出久の強烈な蹴りが突き刺さる。
人間一人分の鉄の塊を蹴り飛ばす脚力程度、出久は十分に持っており、鉄哲の両足が宙に浮く。
「くそ、この!」
苦し紛れに左手でパンチを繰り出す鉄哲であったが、
ゴキュ、
「ガァッ!?」
出久は無言で鉄哲の左腕が伸びった瞬間を狙って関節技を極める。全身を鉄にしているにしても、動いている限り、関節部分は他の部分と比べて強度は弱い。そして、
「シッ。」
出久の左拳が鉄化は緩んだ鉄哲の顎を掠め、鉄哲の意識は闇に沈んでいくのであった。
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「・・・ん?」
数分後、鉄哲はベンチに寝かされた状態から目を覚ました、鉄哲は朦朧とするなか周囲を見回す。そして、鎌切とA組生徒であるはずの出久が戦闘をしていた。
「あん?なんでA組の緑谷がB組に交じってんだ?」
「何寝ぼけてんの鉄哲。あんたさっき、緑谷と模擬戦して、気絶させれらたんだよ。」
声が聞こえた方を見ると、
「おお、拳藤!って模擬戦、模擬戦・・・あ、俺は負けたのか。」
「思い出した?もう気持ち良いくらいの瞬殺だったよ。まあ、そういう私も、その後やって、一発も当てられず、蹴り2発で気絶だけどね。」
巨大化させた拳を、無個性の蹴りでいなされ、その直後に出久が左前蹴りの態勢をとった所までは覚えている。その後の記憶はなく、気が付いたのが先ほどである。
「ついでに、拳藤の後に宍戸がやられて、ブラド先生の指示で今は数人がかりで緑谷と戦闘する訓練やってる。」
「取蔭。数人がかりって、鎌切しかいないじゃん。」
会話に加わった取蔭から補足が入る。
「回原と泡瀬はもうやられてるのよ。」
「「あぁー。」」
そんな会話をしていると、
「くそ、なぜ当たらん!?切られろ!」
「攻め方が単調すぎる、もっと工夫しないと、大振りだけじゃどれだけ振っても当たらないよ。」
A.Tが無く、自ら風を生み出すことが出来なくとも、周囲の風を探知することはできる。出久はA.Tが無くとも、目の前にいるのであれば、目を瞑っていても相手の動きを把握することができる。だからこそ、
「隙あ、ゲフッ。」
「喰ら、ギャッ!」
一度やられた後、なんとか戦線に復帰し、奇襲をかけた回原と泡瀬は出久の蹴り二閃によって再度沈み、
「シッ!」
出久の拳が鎌切の顎を捉え、その意識を刈り取るのであった。
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「っという訳で、緑谷くんにはワザと皆んなを煽ってもらったわけなんだが。」
「ワザと煽った、と言われても。」
「宣言通り、A.T無しでボコされたであります。」
「正直何にも出来なかったぜ!」
タイマン張って瞬殺された3人と、
「俺らに至っては、」
「3人がかりで、」
「一撃入れることすら出来なかった。」
3人がかりでも手も足も出なかった3人は、盛大に凹んでいた。
「だが近接戦闘の経験は詰めた!今日の敗北から何を学べるかは君ら次第だ!それでは、緑谷くんにお礼を言ってから教室に、」
「先生。まだ少し時間ありますよね?」
授業を終わらせようとするブラドキングに出久がストップをかける。
「どうした緑谷くん。」
「最後にもう一戦、彼とやらせてもらえませんか?」
そう言う視線の先には、
「物間くん。最後に模擬戦、僕とやらない?」
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次回!「A.Tライダー対決、緑谷出久VS物間寧人」