A.T使ってガチバトル   作:ken4005

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第37話 保須市へ

 

職場体験2日目夜

 

「「保須市?」」

 

「ああ。世間を騒がしているヒーロー殺し、ヴィラン名ステインは保須市でのインゲニウム襲撃以降、姿を見せていない。実際に襲撃にあったインゲニウム本人からの証言では、襲撃時に貴様らも遭遇したヴィラン連合のメンバーであるスピナーと戦闘になり敗北、連れていかれた、とある。」

 

「(スピナー、彼も記憶に強く残っている。なんといっても、あのオールマイトに切り傷を負わせたヴィランだ。ヒーロースーツを着用していなかったとはいえ、鉄板すら割く威力のあるテキサス・スマッシュを押し切って、オールマイトに血を流させたあの真空の斬撃、あれは正直とても参考になった。僕らのエアフォースのような風圧ではなく、制動エネルギーを貯めて真空波を放つあの技術のおかげで体育祭ではカッちゃんに勝てた。ただ、あれはA.Tを本気で走っている人にしかできない技だ。」

 

「おい、緑谷。また悪い癖が出てるぞ。」

 

エンデヴァーの話を遮るように独り言をブツブツ呟いていた出久に焦凍から注意が入る。

 

「え?あ!すみません!!どうぞ続けてください。」

 

考えごとがそのまま口に出てしまう出久の癖にエンデヴァーも何事か、と思わず話を止めてしまっていた。

 

「デク、それがもし癖ならば、プロヒーローになる前に治しておけ。印象は悪い。どこまで話したか。スピナーに連れていかれたステインだが、もし今、自由の身であるのならば、奴が再度活動する場所はおそらく保須市だ。」

 

「その理由は?」

 

エンデヴァーの断言に対して、焦凍が挙手して質問する。

 

「奴はこれまで、一つの都市で必ず複数回、4人以上のヒーローを襲撃している。ヒーロー殺しは生かしたヒーローに、自分の襲撃はヒーローをあるべき姿に戻すため、と発言している。そういった思想犯は自分が決めたルールは徹底して守る傾向が強い。だからこそ、インゲニウム襲撃から約ひと月たった今、再び奴が現れる可能性が高いのだ。」

 

「ひと月たった今だから、とのことですが、ステインの襲撃スパンはこれまでもまばらでした。何か根拠的なものはあるんですが?」

 

今度は出久はエンデヴァーに質問する。

 

「勘だ。」

 

「(勘なんだ。)」

 

「(勘なのかよ。)」

 

「勘は勘でも、この国のナンバーツーヒーロー、事件解決数なら最多のヒーローの勘だからね!結構当たるのよ、これが!」

 

昨日一日オフであった為、元気一杯なバーニン。

 

「ということで、明日から数日、保須市への出張を行う。ショート、デク、貴様ら二人も連れていく。しっかり働いてもらうぞ。」

 

「はい!」

 

「おう。」

 

エンデヴァーと共に、出久と焦凍、保須市へ。

 

ーーーーー

 

職場体験3日目、保須市

 

「なるほど、市内のパトロールでは、路地裏等の確認を必ず行うよう徹底されているんですね。」

 

「そう。パトロールにはヒーローが巡回してるぞ、見ているぞ、ていう犯罪への抑止的効果が一番期待されているわけで、ちゃんと目が届きにくいところも見ている、ってアピールするのが大事なんだ。それこそヴァンガードくんのお兄さん、インゲニウムさんなんかは、ヒーローは自身が担当する地域の土地勘、裏道とかもしっかりと把握すべき、って前に会った時に言ってたよ。」

 

「兄さんがそんなことを。勉強になります!」

 

「なんでも昔、そういった土地勘を持っている地元の市民と協力してヴィランを捕まえた経験があるらしくてね。でも良かったよ。最初、お兄さんの敵討ちの為に職場体験をウチに選んだのかと思ってたんだ。」

 

「・・・そういった思いがまったくないとは言いません。しかし、マニュアルさんの事務所を選んだのは兄から、あなたほど一般的ヒーローの見本となる人はいないと勧められたからです。この職場体験で、ヒーローの模範となる姿を勉強させていただきます!」

 

「インゲニウムさんも大げさだな。」

 

飯田天哉、ヒーローの基本を全力で学習中。

 

ーーーーー

 

「オラ!」

 

ボッン!

 

「おぎゃぁ!」

 

ひったくりで逃亡中だった犯人は勝己によって背中を爆破され、叫び声を上げながら倒れ伏す。

 

「確保って、チッ!」

 

ガン!

 

「ぎゃっ!」

 

「爆速ターボ!」

 

犯人を抑え込んでいた勝己は何かに気が付いたのか、相手の首筋に一撃を入れた後、爆速で近くの横断歩道まで移動する。

 

勝己の犯人確保の瞬間を目撃してしまい、余所見をしてしまっていた車の運転手は前方の横断歩道を歩いている親子に気づいていない。

 

勝己は爆速で歩行者の元へ移動し、小さな女の子とその母親を抱え、

 

「舌噛むなよ。」

 

両手が塞がっているため、A.Tを使い、車が来るよりも早く、親子を歩道まで避難させた。

 

「フゥ。おい、大丈夫か?」

 

「え?あ、はい。ありがとうございます。」

 

「ヒーローのお兄ちゃん、助けてくれてありがとう。」

 

「おう。」

 

「す、すみません!お怪我はありませんか!」

 

勝己が親子の無事を確認していると、運転者が車を停め、こちらに駆けてきた。

 

そのタイミングで他のヒーローたちも追いつき、

 

「ダイナマイト、大丈夫か?」

 

「キャプテン・ダイナマイトだ。ちゃんとキャプテン付けろや、モブ先ども。」

 

「「モブ先!?」」

 

「うるせぇよ。それより、さっきのひったくりは拘束できてんだよな。なら、そこのオッサンが余所見運転で事故りかけとったから注意入れといてくれや。」

 

ボッン!

 

他のヒーローたちに後処理を押し付け、勝己はその場から移動する。

 

「あ、ちょっと。・・・行っちゃったよ。」

 

「あの、私はどうすれば。」

 

「ああ、すみません。少し事情聴取をさせてください。」

 

事件を解決し、事故を未然に防いだ勝己は爆破であるビルの屋上まで移動し、目当ての人物を見つける。

 

「事故、事件を可能な限り未然に防ぎ、発生してしまった場合は、誰より速く現場に赴き、迅速に負傷者を救助。犯人確保も先ほどのもので三件目だ。初日はヒーロー事務所の簡単な講習、昨日と、今日の午前中の活躍だけでも君が超優秀だということが良く分かるよ、ダイナマイト。」

 

ヒーローチャートナンバーフォーであり、職場体験先のヒーローでもあるベストジーニストが勝己に話しかける。

 

「キャプテンをつけろ。キャプテン・ダイナマイトだ。」

 

「失礼、キャプテン・ダイナマイト。君はインターン生も含め、私がこれまで担当してきた学生の中で最も優秀だよ。その口の悪さを改善し、親しみやすさが増せば、なお良いのだがね。」

 

「インターン生も含め、ってことは俺より優秀なサイドキックはいたってことか?」

 

「フッ。ヒーローチャートナンバーファイブ、忍者ヒーロー、エッジショットと比較して、今の自分とどちらが優秀だと思う?」

 

「・・・ッチ、今はまだ俺の方が優秀だ、と断言できる力はねぇ。だが、いずれ認めさせてやるよ。」

 

「楽しみにしているよ。君ならヒーローインターンでも大歓迎だ。仮免を取ったら、またおいで。」

 

「フン!パトロールを再開させてもらうぞ。」

 

「ああ。昨日の午後と同様、好きに動きたまえ。私やサイドキックたちが必要な場面ではフォローする。君は、キャプテン・ダイナマイトとして、全力でヒーロー活動に励みたまえ。」

 

「・・・自由にやらせてもらって、なんだが。良いのか、職場体験として。」

 

「君が望むなら、全力で君の成長の為、敬語で話すための矯正を、」

 

「パトロール行ってくる。」

 

ボッッン!!

 

爆速でビルから移動していく勝己を見送りながら、

 

「ハァ。あの言葉使いさえ正せば、独立後はすぐにでもヒーローチャート上位に名を連ねるだろうに。まあ、まだ3年もある、ゆっくり矯正していこう。」

 

溜息を吐くベストジーニストは改めて思考を重ね、

 

「(そう、まだ彼は1年生なのだ。私の事務所のサイドキックには雄英や士傑の卒業生もいる。彼ら全員、独立したとしても一人前のヒーローとして活躍できるだけの実力を持っている。そんな彼らを歯牙にもかけない実力とは、)本当に恐れ入る。」

 

ビルの上から、改めて将来有望な学生の様子を見ようと眼下を覗けば、

 

「あー、この人知ってる!雄英体育祭で1位取るって言って、取れなかった人だ!」

 

「アァ!?なんか言ったか、クソガキ!」

 

「・・・明日は一日、言葉の矯正だな。」

 

職場体験の予定を改める必要を感じるのであった。

 

ーーーーー

 

「ステイン、考えは変わらないのかい?」

 

「すまんな、死柄木。貴様の思想にも共感は出来るが、やはり俺は、俺の考えのもと動く。」

 

没収されていた装備を確認、身につけながらヒーロー殺し、ステインは死柄木たちに要求を突きつける。

 

「だから俺を、保須市に戻せ。」

 

新しい戦いが近づいている。

 

 

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