短いです。
保須市にて、
「きゃー!」
空気を切り裂くような悲鳴が響いた。
全身黒ずくめの集団が街を駆け、人々を恐怖に陥れていて。
かなりの速度で移動し、人々に襲いかかろうとする影。
「フハハハハ!鳴羽田から出張登場!我ら、疾風怒濤三兄弟!!!」
「見るが良い!数年の研鑽の果て、更なる進化を遂げた我らの技を!」
「いく、ブギャアッ!!」
ゴウッッ!!
「「お、弟よ!」」
ゴウッッ!!
「「ギャァッ!!」」
丸焦げになる黒ずくめの集団。
「・・・えっと。ただの引ったくり、になるんですかね、この人たちの場合。それに対して、今のはチョット過剰火力過ぎませんか、エンデヴァー。」
「・・・親父、流石にこれはやり過ぎだと思うぞ。」
「・・・すまん、鳴羽田という地名に良い思い出がなくてな。つい力が入ってしまった。」
「いや、下着泥集団とか焼却してなんの問題もないでしょ。」
出久、焦凍、エンデヴァー、そしてバーニンの前には、こんがり焼かれた疾風怒濤三兄弟が転がっていた。
バーニンは、まるで汚物を見るような目で三兄弟をみているが、見られている側は新しい扉を開きそうな顔で悶えている。
「良い思い出がない、って厄介なヴィランでも出たのか?」
「厄介な相手であったのは認めるが、ヴィランよりも、」
ドーーーン!!
「キャー!」
「な、なんだコイツら!」
再度、悲鳴が上がる。
4人も悲鳴に反応し、移動を開始する。
「今度のは只事じゃなさそうだな!」
「デクくん!アナタの探知に引っ掛からなかったの!?」
「急に現れました!しかも、この嫌な気配、例の雄英襲撃時に現れた脳無とそっくりです!」
「なんだと!?」
ーーーーー
時は少し遡り、
「さて、午前中に引き続き午後もパトロールなわけだけど、流石に飽きてきたかい?」
ノーマルヒーロー、マニュアルが飯田に話を振ると、
「とんでもない!市民の方々との触れ合いに意義を感じないのであれば、ヒーローになる資格はない、と自分は考えます!」
「ハハハ、カタいよ飯田くん。ただ、そう言ってもらえるのは助かるよ。たまにいるんだよね、もっと活躍させろ、って要求してくる学生。」
「・・・意識が高いことは良いことかと思いますが、その要求はヒーローとしてあるまじきではありませんか?それでは事件を求めているようにも聞こえます。」
「実際、そういった側面はあるよ。ヒーロー飽和社会なんて言葉が出てくるような世の中だ。手柄の取り合いぐらいならまだ可愛いもので、裏じゃ事件を捏造したり、冤罪で一般人をヴィラン扱いするヒーローなんかもいるなんて話も出てるよ。」
「そっ、それはもはやヒーローがヴィランに成り下がっているのと同義じゃないですか!」
「ああ。だからこそ、俺はトップヒーローは無理でも、一般的なヒーローの模範的活動を示すことで、これからヒーローを目指す人たちの手本になりたいんだ。俺なんかがおこがましいかな?」
「そんなことは決してありません。むしろ、素晴らしい考えだと思います!」
両名とも会話はしているが、視線はしっかりと街、そして行き交う人々に向いており、模範的なパトロールを実践している。
そして飯田の視界に、不審な人物が映る。その人物の姿が、兄であるインゲニウムから聞いていたある男、ヒーロー殺しステインの服装と一致した。
原作(メタ)ではここで先走り、一人でステインと対峙することになっていたが、
「マニュアルさん!今、路地裏に人影が見えたんですが、兄から伝え聞いたヒーロー殺しの様相とそっくりでした!」
「本当かい!?分かった、俺が先行するからヴァンガードくんは、」
ドーーーン!!
「「な、なんだ!?」」
急な轟音が街中に轟いたかと思えば、人々と悲鳴が上がり始める。
「キャー!」
「な、なんだコイツら!」
飯田が急ぎ視線を音がした方に向ける。そこにはUSJでヴィランに襲撃された際に暴威を振るったという怪人、脳無の特徴と酷似したヴィランが複数暴れ回っていた。
「ヴァンガードくん、避難誘導を最優先!今は市民を守ることを第一に考えよう!」
「(それではヒーロー殺しを逃してしまうかもしれない。)」
飯田の中で、かつて兄を傷つけられた時に芽生えかけたドス黒い感情、復讐心が再度芽生えかけるが、
『救けるための行動を!』
USJでの襲撃時、13号に言われた言葉を思い出し、
『飯田、テメェはモブじゃねぇ、それは認めてやる。だがな、そんな思考じゃ俺たちには追いつけやしねーぞ。』
爆豪勝己を筆頭に、自分の先を行く友人たち、緑谷出久、麗日お茶子たちの顔を思い出す。
ギリッ、とマスクの内側で唇を噛み締めた後、
「はい!!」
見習いではあるが、ヒーローとしての責務を果たすため、人命救助のために行動しようと踏み出す。その直後に、
カッッキン!!
ゴッッッウ!!!
ゴウッッッ!!!
ゴウッッ!!
逃げ遅れた市民に襲い掛かろうとしていた脳無たちを遮るように氷壁が展開され、足を止めた脳無たちに向けて強力な炎が連続で叩き込まれた。
「「なっ、なんだー!?」」
ーーーーー
脳無たちが暴れ回っていた場所にエンデヴァー、出久、そして焦凍が到着する。地元ヒーローたちはナンバーツーヒーローであるエンデヴァーがいることに驚愕する。
「な、なんでアナタが!?」
「フッ、ヒーローだからさ。」
「格好つけてないで、さっさと片付けますよオッサン。」
バーニンが先陣を切って、脳無に自身の個性、炎髪で生み出した炎を叩き込んでいく。
「デク!ショート!お前らはペアを組んで脳無が市民の方にいかないよう、」
「エンデヴァー!」
「なんだ!?」
指示を出そうとしていたエンデヴァーにマニュアルが慌てて声をかける。
「先ほどヴァンガードが、うちの職場体験生がヒーロー殺しらしき人影をあっちの路地裏で見かけたらしいんです。ただ、追いかけようとしたのと同時にこの騒ぎで。」
「・・・つまりこの騒ぎそのものがヒーロー殺しのためのヴィラン連合による陽動、の可能性があるというわけか。」
一瞬の思考の後、
「デク!ショート!そこのマニュアルとともにヒーロー殺しを追え!ここは俺とバーニン、そして他の地元ヒーローたちに任せろ!マニュアル、その二人は戦闘能力だけなら十分な実力を持っている、上手く使え!」
「ちょ!?何言ってるんですかエンデヴァー!彼らは職場体験中の学生、ですよ!?」
「特級の職場体験生だ!良いから早く行け!デク、路地裏の先だ、追えるか?」
エンデヴァーからの無茶苦茶な指示に反論するマニュアルを他所に、出久は目を瞑り、風による探知に集中していた。
「(・・・路地の先、移動している気配、・・・これだ、)捉えました、追えます!」
「マジか。」
驚きっぱなしのマニュアル、
「よし、では時間が惜しい。ヴァンガードといったか、体育祭でも見たがインゲニウムの身内だな。デクの速さについて行けるか?」
「はい!」
「デク、ヴァンガードと共に先行しろ。任務はヒーロー殺しの足止めだ。マニュアルが追いつき次第、可能ならば確保に動け!」
「はい!」
「ショートはマニュアルと共に行け。合流後、四人がかりでの確保が無理なら全力で足止めに集中しろ。俺が合流するまでは持たせろ。」
「分かった。」
「あー、もうメチャクチャだ!みんな、絶対俺の指示を聞くこと。エンデヴァーはああ言うけど、俺が退くベキと判断したら全員で退く、良いね!?」
「「「はい!」」」
ーーーーー
先行する出久と飯田だが、
「飯田くん。これからヒーロー殺しと接触するわけだけど、えっと、大丈夫?」
出久が少し不安そうな表情をしながら飯田に話を振る。
「心遣いありがとう!だが、大丈夫だとも!復讐心が一切ない、とは言えないが、兄の無念を晴らすことよりも、これ以上被害者を出さないため、僕は、いや、俺はヒーロー殺しを確保する!」
飯田が決意を新たにし、
「よし!急ごう、天哉くん!」
「ああ!」
二人のヒーロー見習いが走る。
ーーーーー
「ガッ!」
「ネ、ネイティブ!ぎゃあ!」
斬撃をくらい、血を流すヒーローたち。
切りつけた張本人であるヒーロー殺しステインが刃から流れる血を舐めとると、
「なっ、なんだ。」
「か、体が動かない。」
背中を向け、這ってでも逃げようとしていたヒーローと、ステインを睨みながらなんとか立ち上がろう藻掻いていたヒーローは身動きすらできなくなってしまった。
「ハーッ、ネイティブ。貴様は粛清対象ではなかったが、ここで俺に出会ってしまったことが運の尽きだ。実力が足らないモノに英雄たる資格はない。」
倒れているヒーローの内、ネイティブアメリカン風の衣装を着たヒーロー、ネイティブはステインを睨みつけていたが、相手にされず素通りされてしまう。
「クソッ、動けない。あっ、オイ、待てテメェ。」
ネイティブを無視したステインはその奥でもう一人倒れているヒーローにステインが近づいていく。
「貴様だ、レイコム。貴様のようなレスキューヒーローとは名ばかりの虚偽の塊がヒーローを名乗るなどあってはならん。」
「ヒッ、ヒーー!!」
ーーーーー
レイコムさんですが、作品としてはモブキャラです。