中編②って、なんやねん。
「おぉぉぉぉ!」
レイコム改め、フリガロが叫べば周囲に氷柱が立ち並び、腕を振るえば当たった壁が氷漬けになる。そして、
「がぁぁぁぁ!」
ひときわ大きな叫びを上げたかと思えば、人一人分以上の直径をした氷弾が、ヒーロー(1名指名手配中のヴィラン、2名職場体験中の学生)たちを襲う。
ザンッ!!
とステインが氷弾を切り裂く。
「改めて思うけど、なにこのメンツ!?」
「今そこに突っ込まないでくださいネイティブ、俺だって混乱してるんですから!」
「オイ、ヒーロー殺し!どう対処する!?」
「ショートくん、撤退、明らかに撤退する状況だから。約束したよね、危ない場合は俺の指示に従うって!」
「貴様、この状況で逃げ腰とはヒーローあるまじきだと思わんのか?」
「うるさいよヒーロー殺し!今の俺の役割は、彼ら学生を無事に学校、そして家に帰すことなんだよ!」
「・・・さっき一人吹き飛ばされたが。」
「・・・・・・あぁぁぁ!デクくーん、無事かーーー!?」
「彼があの程度の攻撃でやられることなどありません。むしろ、このヴィランが大通りの脳無たちと合流した方が危ない。マニュアルさん、俺とショートのことは気にせず、先ずは目の前の脅威の対処を!」
「ああもう!ヴァンガードくんもショートくんも、この場を乗り切れたらデクくんも含めた3人、お説教だからね!」
「「はい!」」
「返事だけはしっかりしてるんだから、ほんとにもー!」
全員がギャーギャー騒ぎながらも迫りくる氷弾を回避、または迎撃していく。
ーーーーー
「ふむ。この状況、なかなかにカオスになってきたね。だが、轟焦凍、彼の個性は奪っておいて損はない、か。」
ビルの屋上で、そう呟いたオールフォーワンは、その手を焦凍に向ける。先ほど、オールフォーワンが現れた瞬間は意識を向けていた焦凍たちも、今は目の前のヴィランに集中してしまっている。
「荼毘くんには悪いが、炎と氷を完全両立させる個性、コレクター心をくすぐ、」
「フェニクス・スマッシュ!!!」
ゴッッッウ!!!
両足に業火を纏った、イフリートソールを発動した出久がオールフォーワンに向けて強烈な炎の津波を撃ち放った。
「緑谷出久、悪いが君にはこれっぽっちも興味が無いんだ。すまないが大人しく沈んで、」
出久が放った炎を気にする様子もなく、バリアのようなものを展開する個性で防ぎきったオールフォーワンは、鬱陶しそうに出久を排除しようとする。
しかし、オールフォーワンが反撃するよりも早く、ビルの屋上に着地した出久の追撃が繰り出された、いや、蹴り出された。
「エアフォース、バレット!」
雄英体育祭で勝己から勝利を掴み取った技を繰り出す。
地面の上で、制動エネルギーを利用するこの技は、速度と貫通力に秀でている。
出久は、神速の蹴りを連続して放つことで、真空の弾丸をオールフォーワンの顔面、もとい鉄のマスクを狙って撃ち出していく。
「バレット、バレット、バレット、バレッット、バレッット。スゥゥゥ、バレッッット!!!」
真空弾の連射は、全弾が正確に顔面狙いである。オールフォーワンの攻撃よりも、よっぽど殺意が込められた攻撃が撃ち出され、
「(最初の、威力の弱い数発はフェイク、後半の本命の為のカモフラージュ!)舐めないでもらいたいね!!」
腕から硬質化した何かを伸ばし、角のような骨のようなもので出久の真空弾をすべて薙ぎ払った。
防御に成功したオールフォーワンだったが、その内心は自身の行動への疑念に満ちていた。
「(・・・なぜ、今僕はこの個性を、母から最初に奪ったであろう、この個性を使った?他にもいくらでもあったはずだ、より効率的に、この石ころの攻撃を防ぐ個性が。)」
オールフォーワンが思考している隙をつき、出久は攻撃の手を緩めず攻め立てる。
「渾身のぉ!エアフォース!!」
真空弾から風弾に切り替え、オールフォーワンを後ろに下がらせる。
「(焦ったとでもいうのか、この僕が。)ふっ、君のような無個性の攻撃では僕には傷一つ、」
「下がりましたよね。」
「ん?」
「無個性の、石ころの、A.Tなんていうオモチャを使っている僕程度の攻撃を、焦って迎撃して、あまつさえ下がりましたよね。」
「・・・それが?」
ハァッ、とわざとらしくため息を吐いて見せる出久。
そんな出久の様子に、マスクの下に青筋を作るオールフォーワン。
「オールマイトの宿敵がこんな小物とは、がっかりです。」
ブチッ、
「・・・死にたまえよ、石ころ。」
攻守が入れ替わり、今度はオールフォーワンが出久を責め立てていく。
ーーーーー
「(釣れた、作戦通り!なんとかコイツを皆から離さないと。)」
出久がらしくない挑発を行ったのには理由がある。
「(おそらくコイツがグラントリノとオールマイトとの話に出てきた、オールマイトの宿敵。さっき、個性を奪う、とかいっていた。風探知で感知した感じ、レイコムが変容したのもコイツのせいっぽい。個性を奪い、与える個性。)」
正しく使われれば、これほど頼りになる個性は存在しないだろう。悪用されれば、これほど混乱を起こすであろう個性は存在しないだろ。
「(コイツの足止めは僕がやらなきゃいけない。無個性である僕が!)」
先ほど吹き飛ばされ、戦線に復帰するまでの間で、一番早く確実に送れる相手である、勝己とお茶子宛にメッセージと位置情報を送った。内容は、
『オールマイトの敵と戦闘中』
オールマイトの連絡先が分からない以上、二人を頼るしかない、と判断した出久は救援を求めた。
「(・・・今思えば相澤先生に直接電話で、いや、さっきアイツは下にいる誰かを狙ってた。そんな余裕はない。)」
オールマイトが倒しきれなかった相手に自分が勝てるなどとは出久自身、微塵も思っていない。
「(皆から距離を取りつつ、街に被害が出ないよう立ち回り、オールマイトが来るまで持ちこたえる。そのために、足を止めるな、ウィールを止めるな、思考を止めるな。)」
出久はその集中力を限界まで引き上げる。
「(全力で攻めろ、全力で逃げろ、緑谷出久。あの夏の戦い以来になる、最大の挑戦を始めるんだ!)」
ーーーーー
保須市大通り
「蒼い炎だと?」
戦っていた脳無と距離を取り、蒼い炎、蒼炎が放たれた方向に視線を向ける。エンデヴァーの前には、雄英から送られてきたデータにいた、ヴィラン連合の一味が悠然と立っていた。
「ヴィラン連合とかいう雄英襲撃犯のメンバーで、確か荼毘と言ったか?」
「おっ、嬉しいねぇ。同じ炎の個性を持つ身として、アンタのことは心から尊敬してるんだよ。」
そう返事をした後、大袈裟な身振りで、まるで貴族か紳士が挨拶する様な姿勢を取り、
「改めまして。俺の名前は荼毘。ヴィラン連合の蒼炎使いだ。よろしく、ナンバーツー、エンデヴァー。」
堂々と名乗りをあげた。
「そのヴィラン連合が何故ウチのバーニンを助ける?」
「・・・。」
「おい。」
後頭部をポリポリと掻きながら、悩むような表情を見せなかなか答えない荼毘にエンデヴァーが痺れを切らすが、
「あー、・・・気まぐれ?」
「オイ!?」
そんな言い合いをしていた二人であったが、急に手をお互い別方向に向けたかと思えば、
ゴウッッ!!
ゴウッッ!!
急接近してきた脳無に炎を放った。
「この脳無どもは貴様らヴィラン連合の改造怪人という話だったが、仲間割れか?」
「こいつ等は俺らとは別枠だよ。雄英襲撃時にやった脳無のテストも、俺らが、というかリーダーが下請けで請け負っただけの仕事さ。」
距離は開いているが、互いに背を預け合うような立ち位置を取るエンデヴァーと荼毘。
「今はどちらかといえば、同僚、になりかけた奴のサポートという名の邪魔をしているこいつ等が鬱陶しくてな。燃やしている最中だ。」
「・・・では、こいつ等の始末が終わるまでは貴様の確保には動かん。」
「ちょっ。いいのんですか、エンデヴァー!?」
「さっき貴様を助けられたのもある。共闘ではなく、あくまで同じ戦場にいるが、撃退の優先順位で脳無を上にするだけだ。脳無どもが終わったら次は荼毘、貴様を確保させてもらうぞ。」
「「・・・職場体験生の援護は良いのかよ?」」
部下とヴィランの両方からツッコミが入る?
「奴らなら自力でなんとかする!」
なお、その職場体験生の内二人は、元ヒーローが突貫改造された複数個性持ちヴィランと交戦中であり、もう一人はラスボス、推定で平和の象徴かトップヒーロー数人が必要なスーパーヴィラン、と交戦中である。
ーーーーー
東京都某所
ブブブ、
「む、電話かねキャプテン・ダイナマイト。」
「いや、メールだ。悪りぃ、パトロール中に。」
「いや、構わない。そういったプライベートな連絡も、時に重要な内容だったり、」
「ジーパン!!オールマイトへのホットライン持ってっか!?」
鬼気迫る表情で勝己がジーニストの話を遮る。
「いや、持っていない。何があった。」
普段であれば、職場体験中の学生としてあるまじき態度に注意を入れる所であるが、相手はこの数日で、その優秀さを見せつけ続けている。
むしろ、その相手がこれほどまでに切羽詰まっている様子に只事ではない、感じていた。
「出久が、ダチがピンチかもしんねぇ。それもかなりヤベェ奴が相手だ。」
ジーニストに返答しつつ、勝己はスマホを操作し、目的の人物の連絡先を見つけ出し、電話をかける。
目的の相手が直ぐに電話に出る。
「どうした爆豪、何かあった、」
「先生、出久がヤベェ!オールマイトは今、雄英にいるのか!?」
「どういうことだ?いや、話は後だな。(あの爆豪がこれほど慌てている。かなりヤバい状況なんだろう。)こっちでオールマイトに連絡を入れる。あの人ことだ、大概の場所であっても数分で駆けつけてくれるさ。山田、緊急事態だ!すぐオールマイトに連絡を!」
無駄を省き、オールマイトへの連絡の段取りをつけ始める相澤。
「爆豪、お前がそれだけ焦っている、ってことは、それほどの事態、と認識して良いんだな。今、緑谷はエンデヴァーと一緒にいるはずだが、それでも、オールマイトが必要な状況なんだな?」
「確証はねぇがな。」
相澤は勝己の声のトーンが変わったことに気づく。
「おい、爆豪!今、緑谷は保須市にいるんだぞ、何キロあると思って、」
「直線距離で約45キロ、本気出さなくても20分もかかんねぇ距離だ。」
「いや、お前まじか、じゃなくて。おい、爆ご、」
ピッ、
両手を開けるために通話を切った勝己は、移動のための構えを取り、相澤とのやり取りを見守っていたジーニストに声をかける。
「つーわけだ、ジーパン。悪りぃが勝手に動くぞ。」
「ひとつ聞かせてくれ、キャプテン・ダイナマイト。」
「・・・なんだ?」
「君のその行動は、君の中で、ヒーローとして正しい行動かね?」
真剣に、偽るのであれば本気で拘束する、という眼差しを勝己に向けるジーニスト。
「どうかな。ヒーローとしては、もしかしたら正しくねぇかもしれねぇ。」
「なに?」
「ただよぉ。ダチのピンチに駆けつけられねぇんなら、俺は、ヒーローじゃなくて良い。」
ボボボッッッン!!!
フルクラスターの爆発力を全て移動するための力に回し、先ずは一気に上空へと飛び上がる勝己。
「(保須市は、アッチか。)」
ボボボッッッン!!!
到着してからが本番であるため、余力は残しての移動だが、それでも、今出せる全力の速度で、爆豪勝己が友のもとに飛ぶ。
ーーーーー
「あの野郎、切りやがった!」
「相澤、ヤベェ!オールマイト出ねぇ!」
「かけ続けろ!あの脳無と正面切って戦っていた時ですら余裕があった緑谷と爆豪が焦って連絡してきたんだ。事態は一刻を争うかもしれん。」
ピピッ、
バッ、
「おい、爆豪!お前、なんで電話を切って、」
「先生!デクくんがピンチかもしれへん!」
「だよな!お前からも連絡くるよな!」
ーーーーー
「シッ!」
ガキンッ!
「クッ、こいつの全身から生えた白毛、刃が通らん!」
「ショートくん、周囲の氷を溶かして!多少の水があれば、俺でも牽制ぐらいならできるよ。」
「すまん、みんな。俺の個性、戦闘向きじゃないんだ!」
ヒーロー名、ネイティブ。個性は土地精霊。その土地に根差したスピリチュアル的な何かとコンタクトを取ることで、建物や動物から情報を得ることができるぞ!
「役に立たんな!」
「立つわ!言っとくけどな、お前が俺たちを見つけたんじゃなく、先に俺がお前を見つけたんだからな!索敵なんかは超得意だからな!」
「・・・今は?」
「役立たずだよ、コンチキショー!」
「ハァッ!!」
ゴウッッ!!
炎を繰り出し、フリガロが展開し続ける氷柱を押し留める焦凍。火力を上げ、押し返そうとするも、
ガガキキーーン!!
足元から氷柱が襲ってくる。
「危ない、轟くん!」
ギュンッ、と天哉が轟を抱え、後退する。
「すまん、飯田。普段自分がやっていることだが、足元からの攻撃ってのは避けづれぇな。」
「俺たちの苦労を分かってくれたようで何よりだ。しかしこの相手、出久くんがいないことが悔やまれる。」
「・・・緑谷の奴、無事だろうな。さっきの奴、俺らでも分かるレベルでヤバい奴だった。」
「今は出久くんを信じるしかない。そして、コイツを俺たちでなんとかしてみせよう!」
「ああ!」
学生二人がヴィランの前に並び立つ。
ーーーーー
「役に立つかどうかは置いておいて、学生の方が頼り甲斐があるこの状況は、プロヒーローとしてどうなんだ?」
「返す言葉もない!」
「なんでヒーロー殺しにそんなこと言われなきゃならん!でも、二人とも!前線を任せて、本当にすまん!」
ーーーーー
荼毘とエンデヴァー、ついでにバーニンが共闘
天哉、焦凍、ステイン+αが共闘
出久とAFOがタイマン
・・・なんぞこれ?
ネイティブさんの個性はオリジナルです。