A.T使ってガチバトル   作:ken4005

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第44話 職場体験 ヒーローVSヴィラン応用(後編②)

 

保須市路地裏

 

大暴れしている全身から白毛を生やしたレイコムだった大男は、まるで獣のように暴れてはいるが意識は残していた。

 

「グゥガーーー!(頭がいてぇ。どうなっているんだ俺は?)」

 

目を前に向ければ、ヒーローたちとヒーロー殺しが協力して自分を攻め立てている。

 

「シッ!」

 

刀が煌めき、体に打ち込まれる。

 

「ギャァ!?(斬られっ、てない。鉄で叩かれて痛いが、斬られてはない。)」

 

「いっけぇ!」

 

ゴウッ!

 

と今度は若いヒーローが炎を放ってくる。

 

「(げっ、迎撃!)ゴバァッ!!」

 

普段通り、口から氷弾を撃とうとしたら、いつもの数倍のサイズの氷弾が出て、炎を相殺どころかかき消して相手まで飛んでいった。

 

「チッ、」

 

若いヒーローは、今度は氷を展開し、こちらの氷弾を防いだ。

 

ゴッ!!

 

「ガッアア!!(痛い!!)」

 

これまでで一番強い痛み。アーマーを纏った、コチラも若いヒーローが自分を蹴り付けていることに気が付き、怒りが沸いてくる。

 

「(そんなよってたかって俺を責めるなよ!確かにヴィランと通じたさ、名声欲しさに。銀行には悪いと思ってる、客に怪我人も出た。でも、死者は出してないんだ、良いじゃないか!」

 

自分勝手、我儘、そんな説明しか出来ないような言い訳をぶち撒ける。

 

「コイツ、本当にヒーローだったのか?」

 

「何てことを。その事件や怪我が原因で、市民の皆様の生活に何か影響が出てしまわないかとは、考えなかったのか!」

 

「英雄どころか、人として終わっている。粛清ではなく、駆除が必要だ。」

 

「あれ、口に出てたのか?そういえば、身体も自由に動くし、個性も、」

 

手のひらをグー、パーと動かす。

 

そして、ニヤリ、と邪悪な笑みを浮かべた。

 

「グッ、バッーー!!」

 

全身に力を入れ、個性を、口からだけでなく身体全体から繰り出すイメージを行う。

 

ガガガッッキキキーーーンンン!!

 

これまでで最大数の氷柱が地面から生え、ヒーローたちに襲いかかる。

 

「下がれ!」

 

「ハァッ!!」

 

「くぅっ!」

 

自分の個性の威力と、ヒーローたちが狼狽える様を見て、邪悪な笑みをさらに深める。

 

「俺、意識が朦朧としている間に、思ったことがあるんだ。」

 

ドスン、と踏み出す。

 

「この個性、この力を扱えるようになったら、・・・ヴィランとして好きに暴れてやろう、ってな!」

 

「レイコム、お前。」

 

今日共にヒーロー殺しを追っていたネイティブが話しかけてくるが、訂正を入れる。

 

「レイコムじゃぁない!今日から俺は、ヴィランのフリガロだ!!」

 

ーーーーー

 

自らフリガロと名乗ったヴィランが勢いよく突っ込んでくる。

 

「舐めんじゃねぇぞ!」

 

焦凍は右手の勢いよく振り、冷気を解放する。

 

「穿天氷壁!!」

 

カッッキーーン!!

 

道を覆い尽くすほどの氷塊をフリガロに叩き込む。

 

「クッゴォ!?」

 

「アイツに氷結は使うな!」

 

ステインが焦凍の攻撃を否定するが、

 

「俺の右は氷結で凍らせるだけじゃなく、氷塊で押し飛ばすことも出来る!飯田の打撃で良いダメージが入ったんだ。これなら、」

 

「知識のない奴め!良いから炎で自分が出した氷を溶かせ!」

 

「なんでそんな手間を、」

 

「轟くん!君の氷塊が、」

 

「なっ!」

 

焦凍が繰り出した氷塊が形を変え、まるで狼の顔ような造形となって焦凍目掛けて飛んできた。

 

「シッイイ!!」

 

ステインが前へと躍り出て、刀を連続で振るい、氷の狼を切り裂く。

 

「レイコムの個性は氷を撃ち出すだけでなく、周囲の氷を操ることもできる。小規模の氷弾ならまだしも、先ほどのような氷塊は撃つな。」

 

「すまない、助かった。」

 

自分を庇ったステインに礼を言う焦凍だが、攻め手に悩む。

 

「貴様の炎ならばダメージを、もしくはあの鬱陶しい毛を燃やしてくれるのでは、と思ったのだがな。あの毛がなくなり血を流させられれば俺の個性で動きを封じられる。」

 

「重ねてすまん。左はまだ訓練中で、アイツの防御を抜こう無理に使えば、火力を上げすぎて焼き殺しちまうかもしれねぇ。」

 

「ヴィランである俺は気にせんが、雄英の職場体験生である貴様らにそれは酷か。ならば、」

 

「ステインが作る隙に俺が突っ込み、渾身の一撃を叩き込む!」

 

「そうだ。だからこそ、コイツや俺が全力で走れるよう、邪魔な氷を溶かしまくるのが、貴様の仕事だ。」

 

「任せろ。自分で出した氷はなるべく自分で処理してる。氷を溶かすのなら大得意だ。」

 

「よし。ならばヴァンガード、俺が作る隙、見逃すなよ。」

 

「分かった。では、い、」

 

「待て。」

 

「グェッ。な、何をする!」

 

走り出そうとした天哉のアーマーを掴み、足を止めさせるステイン。

 

「貴様が走るのは最後の一撃だけだヴァンガード。確か、瞬間的に加速できる技を持っていただろ。」

 

「いや、あるにはあるが。」

 

「トドメの一撃は、それで突っ込んでこい。それまでは邪魔だ。この路地裏で貴様の速さは活かしきれん。こういった場所で速さを追求するならば、やはりコイツだ。」

 

シャッ、

 

という音と共にステインが加速する。

 

ーーーーー

 

「(なんだ、何が起きている!?)」

 

先ほどまで連携していたのに今はステインだけがフリガロの周囲を駆けている。

 

だが駆けているのは地面だけではなく、両脇の壁や、溶け切っていない氷柱も足場として扱うことで、三次元的な走法でフリガロを撹乱していた。

 

キーの使用者ではないため、A.Tを使って火を出したり、風を操ったり、真空波を撃ち出したりなどの、とんでも攻撃はできないが、機動力は十分である。

 

何せステインは、本気の出久とA.Tありの接近戦でタイマンを張り、戦いを成り立たせていたのである。

 

勝己ですら可能な限り避ける戦いに身を投じていたステインの実力は周囲が思うよりも余程高いものである。

 

スピナーに遅れをとったが、そのスピナーの勝利も、実は紙一重に近いものだった。

 

何が言いたいかというと、

 

「なんだこの速さは!?」

 

焦凍が炎で氷を制限している今、フリガロはステインに攻撃を当てられないのである。

 

「クソがーー!!」

 

ヤケになり、個性を連発するが、

 

「そんな雑な攻撃、当たるわけないだろう。」

 

カスリすらしない。

 

「なぜだ?!なぜこんな路地裏をそんな自由に走ることができる!?」

 

溶け切っていない氷塊が転がり、そもそも路地裏という場所は狭く、暗い。ここは路地裏であっても何故か十分な幅があるが、A.Tのような車輪を使うものに走りやすいはずがない。

 

それが世間の考え方である。

 

「(ふむ。人数がいるが障害物だと考えれば問題ない。むしろ広くて走り易い。)」

 

今では世間からも正しく認知され始めたA.Tだが、ストリートの文化として根付いて長い。今有名なA.Tライダーたちは結構な数がストリート出身だったりする。

 

当然、表の世界で活躍することなど考えていなかったステインもストリートで技を磨いた側である。

 

そして、そういった者たちの多くは、

 

「ハッ、どうした!もっと障害物を増やしたとて問題ないぞ!」

 

難度の高い道に遭遇するとテンションが爆上げしたりするのである。

 

高機動を繰り返し、フリガロを翻弄し続けるステインの様子を見て、

 

「もうアイツだけで足りるんじゃねぇか?」

 

邪魔な氷を溶かすため炎は供給し続けている焦凍が思わず愚痴る。

 

だが、天哉は違う反応をする。

 

「いや、むしろさっきまでの、出久くんと戦っていた時よりも、スピードに乗れていない?」

 

パキンッ、

 

何かが割れる、乾いた音が路地裏に響く。

 

「ふっ、限界か。(スピナーに緑谷出久。二人の本物を相手に、ジャンクショップで手に入れたパーツで組んだ我がA.Tよ、よく保った。)」

 

右のウィールを支えるパーツが折れている。

 

バランスを崩したステインが左足を軸にしてフリガロの目の前に着地する。

 

「運が悪かったなヒーロー殺し!死ねぇ!!」

 

巨体を活かした拳の振り下ろしがステインを襲う。

 

「飯田!」

 

「・・・(まだだ。あの男は隙を作ると言った。)」

 

歯を食いしばり、力を溜め続ける天哉。

 

ドッッ!!

 

強力な一撃が入る。

 

「どうせ散るのだ。派手に逝け!!」

 

ステインが左足を軸に高速回転し、全力の右後ろ蹴りでフリガロの土手っ腹を穿った。

 

「ゴッヒュ!」

 

良い所に入ったのか、派手に悶絶するフリガロ。

 

ステインのA.Tのパーツが派手に飛び散り、

 

「「今だ!!」」

 

チャンスを作ったモノと待っていたモノが同時に叫ぶ。

 

「ハァーー!!レシプロ・エクステンド!!」

 

ドッッ!!

 

「ギッヒャァ!」

 

剛脚一閃、超加速から繰り出された蹴りは、フリガロの顔面を蹴り抜き、その巨体を空中で一回転させるほどの威力を見せつけた。

 

「どうだ!!」

 

「まだゃじゃ!!」

 

鼻がひしゃげ、鼻血を垂らしながらも、立ち上がろうともがくフリガロ。

 

「俺ひゃ、づよぐなったんだ!この力なら、アイツにだって、あ゛のヒ゛ムラの最ごグッ!?」

 

ダメージを無視し、なんとか立ちあがろうとしていたフリガロの動きが止まった、いや止められた。

 

ぺっ、

 

「ふん、鼻血であっても血は血だ。」

 

ステインの個性、凝血によって体の自由を奪われたフリガロはそのまま前のめり倒れ込んだ。

 

「グソ゛が、グソ゛が、グソ゛が、グソ゛が、グソ゛、ガヒン!?」

 

「喧しいぞ。本来ならここで粛清するんだが、今日はこの未来の英雄候補たちに免じて見逃してやる。」

 

ステインが両手で、刀をフリガロの脳天に叩き込み、気絶させた。

 

「ふうっ、流石に俺も、もう動けんな。」

 

疲労が溜まり、地面に座り込む、ステイン。そのステインの前に、天哉が進み出る。後ろでは焦凍がいつでも援護に回れるよう構えている。

 

「ステイン、ヴィランの確保協力、感謝する。しかし、あなたも指名手配中のヴィランだ。すまないが拘束させて、」

 

ゴッッッウ!!!

 

ボッッッン!!!

 

「「なっ!?」」

 

「油断するな、若き英雄候補たちよ。まだ戦いは続いているぞ。」

 

腰を下ろしたステインがビルの屋上に視線を向けるために天を仰ぐ。

 

「この後の展開しだいだが、まだ拘束はするな。場合によっては緑谷出久の援護に入らねばならん。そのために、今は少しでも体力を回復させる。貴様らも、いつでも動ける準備をしておけ。おい!ネイティブとマニュアル、このフリガロを拘束しておけ。あとネイティブは可能であれば屋上の様子を教えろ。」

 

「なんで、俺たちがヴィランの指示を聞いてヴィランを拘束しなきゃならないんだ!」

 

「ネイティブ、もう諦めよう。さっきまでの俺たち、本気で役立たずだった。」

 

「ぐっ。・・・縄でも探すが。あ、あと屋上の様子は分からん。土地精霊たちは皆んな逃げちまった。」

 

「役立たずが。」

 

「こんちくしょー!」

 

ーーーーー

 

保須市路地裏から少し離れたビルの屋上

 

天哉たちが聞いた轟音の発生源であるフェニクス・スマッシュとフルクラスター・インパクトを同時に放った出久と勝己は唖然としていた。

 

「何を驚いているんだい、緑谷出久?君が実践したことじゃないか、爆豪勝己のフルクラスターインパクトは超強力な面の攻撃だが、点の攻撃には弱い。これは君のフェニクス・スマッシュも同様だ。だから、真っ直ぐ貫いたんじゃないか。」

 

「出久!?」

 

「ぐっ、ゴハッ。」

 

勝己の視線の先にはイボのような骨のようなもので腹部を貫かれ、血を流す出久。

 

「緑谷出久はもう僕のオモチャだが、自分のオモチャをどう扱うかは、僕の気分次第だ。傷つけないなんて言っていないよぉ。」

 

傷つき、膝をつく出久。

 

「ああ。君たちの攻撃はなかなかだったよ。まさかエンデヴァーの攻撃を防ぐことを想定していたバリアが砕けるとは思わなかった。君ら二人の攻撃を同時に防ぐのは至難の業のようだ。」

 

刺していたものを出久から引き抜くオールフォーワン。

 

「かつては勢い余って殺してしまったが、今日はしっかりと力加減ができた。あとは爆豪勝己、君を縊り殺してお終い、」

 

ボッッッ!!!

 

超爆速を発動し、一瞬でオールフォーワンの右側、数メートル先に回り込む勝己。

 

「APショット・ブラスター!!」

 

ボッッン!!

 

「君のスピードは確かに速い。驚くべきことに瞬間的な速さなら、オールマイトにすら匹敵する。でも僕はそのオールマイトと戦ってきたんだぜ?」

 

勝己の速さにも反応しきり、バリアが間に合う。

 

「(ん?間に合う、だって?まるでギリギリのタイミングだったみたいじゃないか。)」

 

「オイ、クソマスク。」

 

「なんだい、爆豪勝己?命乞いなら聞かないよ。」

 

「油断すんなよ。」

 

「んん?ッ!ゴッ、」

 

腹部から血を撒き散らしながら、出久が真っ正面から突っ込み、オールフォーワンの防御を打ち抜いた。

 

「ゴッ、ぐっ、」

 

「スーッ、マッッーーーシュ!!!

 

「出久は、血ぃ流してからの方が厄介だぞ。」

 

 

保須市決戦、最終ラウンド突入。

 

 

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