あれ後編③で終わるつもりだったのに。
「(確かに、与一と同じ目のはずだ。)」
改めて目の前にいる少年の目を確認する。
「(無力でありながら、抵抗し、足掻き、僕に逆らう緑の目。正しく与一そのものだ。)」
意識の一部を出久から勝己に向ける。
「(こちらもそうだ。駆藤と同じく、僕のオモチャにたかるハエ。意志の強さは認めよう。しかし、ただそれだけの存在、それなのに。)」
「出久!まだ動けんだろうな!!」
「大丈夫!ゴフッ。重要な臓器は逸れてる。」
「ならどんどん行くぞ!さっきみたいに、無理に前に出んなよ!!」
「分かってる!!」
二人が並び立ち、同時に両手で円を描くことで風が渦巻きく。
出久が左脚、勝己が右脚で円の中心を蹴り抜く。
「「ダブル・パイルトルネード・オリジン!!」」
ゴッッッッ!!!!
暴風がオールフォーワン目掛けて襲いかかる。
「(何故だ?)」
暴風を防ぐことは成功するが、足を止められたオールフォーワン。
ゴッッッ!!!
ボッッッ!!!
「ハァッーーー!!!」
出久が空中軌道を駆使して動き回り、フェニクス・スマッシュを撃ちまくる。
「オゥッッラー!!!」
勝己はフルクラスターで出久以上に動き、フルクラスター・インパクトやAPショット・ブラスターなどを撃ち込んでいく。
「(今もこうして無駄なことに努力を費やしている。実に与一や駆藤とそっくりだ。なのに何故、)」
『ハーハッハッハッ』
「(何故コイツらから、あの男の影がチラつくのだ。)」
自分にとって、最も弄りがいがあると同時に、最も直接相手にしたくない相手。
「(ワンフォーオールを継承しているわけではない。与一はまだ、奴の中にいる。だが、確かに見え隠れする、オールマイトの影。)」
あの男を思い出すたびに、先ほど得た感覚、感情の感覚が失われていくのを感じたオールフォーワンは内心で苛立ちが止まらなかった。
そして現状、別の問題も浮上しており。
ゴッッッウ!!!
ボッッッン!!!
「ダーーーッ、リャ!!!」
「吹きっっっ、飛べ!!!」
石ころとハエの攻撃。手で払えば解決する筈だった攻撃。それが、
「(まさか、オールマイトとエンデヴァー以外で、僕に危機感を抱かせているというのか、このガキどもが?)」
オールフォーワンの両腕がこれまでで最大級に膨張し、
「フッン!!!!」
最大規模の空圧による範囲攻撃が出久と勝己を襲った。
それが最大の隙、と判断された。
「プロミネンスバーン!!!!」
「なっ、がぁっ!?」
出久と勝己、二人がかりの攻撃の威力に匹敵する業火が魔王と名乗る男を強襲する。
「ああいう奴はそう簡単に倒れねぇ、畳みかけろ!」
「焦凍くん、エンデヴァーの冷却を!」
オールフォーワンの空圧攻撃をビルの合間に降りることで回避していた二人はエンデヴァーの攻撃に合わせて飛び上がった。
勝己がプロミネンスバーンの前に飛び出て、その炎を全力で蹴り付ける。風を操作する要領でエンデヴァーの炎の一部を手懐け、巨大な火球を形成する。
「出久みてぇに、小せぇのを複数、なんて器用なことは無理でも、デケェの一発なら問題ねぇ。」
「グゥッ!!轟炎司!!」
プロミネンスバーンの直撃からどうにか脱出したオールフォーワンは意識をエンデヴァーに向ける。向けてしまい、失態にようやく気がつく。
「(感知個性の構成を早く戻さねば!!)」
何故、出久と勝己の二人相手に手間取ったのか。エンデヴァーの奇襲に気付かなかったのか。答えは簡単、設定を戻し忘れていた。
「(忘れていた、だと?この僕が?あり得ない!!)」
自分の失態を認識すると同時に、そのあり得なさに狼狽する。
「(そんな失態、これまで一度も、一度も、いちど、だけ。)」
壊すつもりのなかったオモチャを(殺すつもりのなかった弟を)、
壊して(殺して)しまった時だけ。
「フェニクス・スマッシュ!!!」
技名を叫ぶ声が聞こえた。
「(バカめ。わざわざ技名を叫んで、位置と威力も教えているだけだ。これだからヒーローは!)」
出久の方を振り向く。ただ無意識に、魔王としてあるまじき失態を繰り返す。感情に振り回されるオールフォーワンは、無意識に出久に対する感知の構成を変更してしまう。
色を感知できる構成に。
故に反応が遅れる。
「プロミネンス!!!!」
「は?」
迫り来る不死鳥の名を冠する炎は、太陽の熱を纏い、より強力な業火となって、魔王に迫った。
「(死っ。)」
エンデヴァーの火力を、勝己が制御し、出久が自身の技に上乗せして放った一撃は、魔王に確かな死を予感させた。
ーーーーー
「入った!」
「タイミングバッチリ!」
エンデヴァーのプロミネンスバーンが直撃した直後に、同威力の炎を叩きつけた。
「今ので無理なら、本格的にオールマイトが到着するまで逃げ回るしかないんだけど。」
「そんときゃテメェが餌な。」
「カッちゃんが似てるって人の方が恨まれてたっぽかったからカッちゃんが餌で。」
「貴様ら、無事か!?」
駆けつけた焦凍によってプロミネンスバーンを放った熱を冷やしているエンデヴァーから声がかかる。
「はい、問題ありませ、」
バシン、
「痛い!」
「腹に穴空いてるバカは無事とは言わねぇ。エンデヴァー、油断すんなよ!あれはオールマイトが取り逃した奴だ!!」
「なに?ということは、奴が例の巨悪、」
ズシャッッ!!
「・・・これすら躱すのか、お前たちは。」
ワープゲートから鋲突を伸ばしたオールフォーワンは、苦々しげに自身の攻撃の結果を呟く。
ーーーーー
出久、勝己、エンデヴァーの連携攻撃は本来決まっていた。今のオールフォーワンに、あの攻撃を防ぐ手段も、回避する手段も無かった。
自前では。
戦闘の映像を見ていた黒霧がギリギリでオールフォーワンをワープゲートで救助。一部とある病院地下にある研究所が燃えたが、仕方がないこと。
ただし、オールフォーワンは黒霧が一息つく間も無くゴリ押しでワープゲートを再度展開させ、戦場に蜻蛉返り、ワープゲートからの奇襲をしかけるも失敗に終わるであった。
「脳無がいるんです。ワープゲートなんていう反則個性、警戒しているに決まっています。」
「ふん、そうかい。」
ワープゲートを開いたままにすることを危険視してか、黒い霧は消え、オールフォーワンがビルの屋上に再度降り立つ。
距離を取り、次の行動を警戒する出久と勝己。自分が出久たちよりも機動力で劣ることを理解し、前に出ようとする息子の肩も掴みながらも、いつでも援護できる構えを取るエンデヴァー。
「じゃあコレはどうだい?」
オールフォーワンが新たな個性を発動しようと手のひらを出久たち向けた。
させまい、とエンデヴァーがジェットバーンを放とうとする。しかし、発動は同時でも撃ったものの性質により着弾に差が出る。
それは出久と勝己にとって、名前しか知らない、体験したことの無い攻撃だった。
そしてオールフォーワン自身もこの個性を使用することには強い抵抗感があった。
「(今後、今の僕がタルタロスに収監された際、脱出の際の切り札とする個性。それをここで切ろうとしている。なるほど、感情というものに縛られた者たちを嘲笑ってきたが、コレはなかなか抗えないものだ。)」
手のひらから撃ち出すものは、電波。超強力な電波を他の個性と掛け合わせることで、ある特殊な攻撃となる。
EMP攻撃、またの名を電磁パルス攻撃。
バリッッッ!!!
強力な電磁波によって周囲の電子機器に影響を与え、使い方によっては都市や国にすら大ダメージを与えられる攻撃である。
A.T、エア・トリックは様々なパーツやモーターを組み合わせ、それらをコンピューター制御することで、超高能率エネルギー回路とロストエネルギー回収を実現した機構である。
そう、内蔵された超小型コンピューターによる制御が必要なのである。
「なんだ!?」
効果不明の攻撃を警戒するエンデヴァーを無視し、出久に襲いかかるオールフォーワン。
「これでそのオモチャはガラクタ同然!緑谷出久、先ずは君からだ!」
再度鋲突を伸ばし、出久を串刺しにしようとするオールフォーワン。
「(爆豪勝己はまだ個性が使えるが、あのオモチャがなければあの超スピードは制御できまい。)」
構成を戦闘時用に戻した感知個性で、庇いに入ってくるかもしれない勝己の様子を確認するオールフォーワン。そこには、
あーあ。という表情をした勝己がいた。
「は?」
グシャッッッ!!!
オールフォーワンの鉄製のマスクがひしゃげる。
「ぐっ、おぁ!?」
蹴られた勢いのまま、屋上を転がっていき、フェンスに直撃して止まった。
「すみません。電磁パルス、対策済みです。」
蹴り飛ばした張本人、緑谷出久がそう告げた。
ーーーーー