保須市路地裏
「ふむ、あの凄まじい圧が消えた。出番は無かったようだな。」
「そのようだ。」
ビルの上で繰り広げられていたであろう激闘が終わったことをステインが感じ取り、天哉が相槌をうつ。
「では、俺もそろそろ行かせてもらうとしよう。」
「な!?さっき、まだ拘束するな、と言ったろ!あれは後で拘束されるから、今は待て、という意味ではないのか!?」
「なんだ、その都合の良い解釈は。俺は正しき社会のため、偽物どもを粛清していくことを止めるつもりはないぞ。」
「くっ、(俺一人で止められるか?せめて轟くんがいてくれれば。)」
ステインを止めようと構えをとる天哉だが、ステインと自分の実力差は理解している。しかし、
「ここでステイン、貴方を止めなければ、また新たな犠牲者が生まれる。なら俺は死力を尽くして貴方を止め、」
ゴッ、
「ガッ!」
鋭い踏み込みからの一撃を入れられ、悶絶する天哉。
「峰打ちだ。・・・気休めにしかならんだろうが、貴様らに免じて殺人は当分控えてやる。時と場合よるがな。」
刀を鞘にしまい歩き出すステイン。
「もし、新たな犠牲者が出ることを恐れるのであれば強くなれ、若き英雄候補ヴァンガードよ。」
「まっ、待て。」
「そしていずれ、真の英雄となり、この俺、ヒーロー殺しステインを捕らえてみせろ。上にいる緑谷出久にもそう伝えろ。ふっ、オールマイト以外で捕らえられても良いと思えるヒーローに出会う日が来ようとはな。」
その言葉を最後に、ステインは保須市から姿を消した。
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「俺ら本気で空気だったな。」
「いや、アホなこと言ってる場合か!天哉くん、大丈夫か!?」
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保須市大通り
「アンタとオッサン、エンデヴァーってどんな関係?」
バーニンの言葉を聞き、勢いよく振り返った荼毘。
一瞬驚いた表情を見せるも直ぐに、
「はっ、なんの話だ?」
「いやいや。あんな反応しておいて、その言い訳は無理があるって。」
「グッ!・・・チッ、知らん、帰る、じゃあな!」
強引に話題を切り、まさかのダッシュによる逃亡を選択した荼毘。
「あっ、おい!」
キャラ崩壊一歩手前の走り方をして去っていく荼毘を見送ったバーニンは、
「行っちまったよ。オッサンの親戚・・・、なら流石に気づくか。」
バーニン、核心を突くも、それならエンデヴァー気がつくだろ、という考えが強く、答えには至れない。
「オッサンが知らない不倫相手との子供とかだったりしてな。」
惜しい。
「バーニンさーん!大丈夫ですかー?」
市民の誘導を終わらせ、戦闘音も止んだこともあり、地元ヒーローたちが戻ってきた。
「あっちも終わったみたいだし、後処理後処理。」
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「あっぶねぇ、バレるとこだった。・・・バレてねぇよな?」
少し息を切らせながら自問する荼毘。
「ハアッ、ほんと今日の俺は何やってんだかな。疲れたから帰ろ。」
端末を取り出し、黒霧に回収を依頼する荼毘だが、
「あ?ダメ?なんで?勝手に脳無と戦ったから?今更そんなこと気にする組織じゃねーだろ!は?歩いて帰れってか?あぁっ!?良いのか本当に歩いて帰るぞ?アジトの場所ヒーローにバレても知らねぇぞ!」
そんな会話を繰り広げた数分後、無事に黒霧のワープゲートで帰れた荼毘であった。
なお、黒霧は荼毘とドクターの板挟みになって一番困っていた。
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保須市にある病院
「それで緑谷の容体は?」
「命に別状はない。臓器は逸れていたようだ。リカバリーガールを呼ぶ選択肢もあったが、体力を大幅に消耗していたため、病院での治療とさせてもらった。」
夜、既に関係者以外いない病院のロビーにて相澤、エンデヴァー、そしてベストジーニストが情報の共有を行なっていた。
「先ほどキャプテン・ダイナマイト、ああ。爆豪勝己の容態も確認した。念のため検査もしたが、個性の反動からくるダメージと疲労以外は問題ない・・・という結果が出たからなのか私の事務所に一人で戻ろうとしたのを先ほどそこで確保した。」
「離せやジーパン!」
「そうですか。飯田も打撲を負っていたので、一時自宅への帰宅を進めたのですが、職場体験を続ける、と言って聞きませんでした。」
「ウチの焦凍もだ。イレイザー、なんなのだ貴様のクラスは?」
「俺が聞きたいくらいですよ。」
ゲンナリした表情になる相澤だが。
「無視すんなや!って、あ。」
スルーされ更に喧しくしていた勝己が急に静かになる。
そこに爆豪夫妻と緑谷引子が予想外の人物と共に病院にやってきた。
「勝己、あんた大じょう、ぶそうね、そんな状態で放置されてるってことは。」
「心配したぞ、勝己。職場体験中に凶悪ヴィランと遭遇したって。怪我はない?」
「・・・ああ、大丈夫だ。それより、いいんか?その姿で来てよ。」
勝己は両親の心配に軽く返事した後、両親と共にやって来た人物、痩せ細ったトゥルーフォームの姿のオールマイトに声をかける。
「爆豪、知ってたのか?」
「見ない顔だな、雄英の職員か?」
「私だよ、エンデヴァー。」
ボンッ、とマッスルフォームへと姿を変え、
ボスンッ、とまた直ぐトゥルーフォームに戻る。
「なっ!?」
「今日君らがやり合った男、オールフォーワンとの戦いで負った傷が元でね。本来の私は今、こんな感じなのさ。」
エンデヴァーやベストジーニストはもちろん、爆豪夫妻と引子も驚愕している。
そして、オールマイトが改めて保護者たちに向き直る。
「車では正体を明かせず申し訳ありません。この度は、私の過去の不始末が原因で、息子さんたちの命を危険に晒してしまった。本当に申し訳ない。」
「な!?おい、何してやがる!?俺も出久も、自分の意思で戦場に立ったんだ、謝罪する必要なんてねぇぞ!」
頭を下げ、謝罪をするオールマイトを見て勝己が声を荒げるが、
続けざまにエンデヴァー、そしてベストジーニストも頭を下げる。
「貴方が緑谷出久くんの保護者か。この度は私の監督下でありながら息子さんに重症を負わせてしまった。いや、監督下ですら無かった。息子さんの実力の高さに目が眩み、彼を危険な戦場に送り出してしまった。本当に申し訳ない。」
「私も、爆豪勝己くんが危険な戦場に向かうと知りながら、送り出してしまった。改めて考えれば、彼の監督者としてあるまじき行動だった。その結果、彼の命を危険に晒してしまい、申し訳ありません。」
ヒーローチャートナンバーワン、ツー、フォーに同時に頭を下げられ萎縮してしまう勝己の父だったが、自分がしっかりせねば、前に出ようとし、
「頭を上げてください。」
緑谷引子がより先に前に出る。
「先ず、勝己くんを一旦離してあげてもらっても大丈夫ですか?」
「は、はい。」
威圧とはまた別の迫力を感じたベストジーニストは言われるがまま勝己の拘束を解く。
「色々、事情が有るんだとは思いますが、先ず私たち親に、息子たちの無事を確認させてもらっても大丈夫ですか?」
「あ、はい。もちろんです。出久くんの病室はこちらに。」
「はい。それじゃあ勝己くん。」
「ウス。」
「あんな返事だけじゃなくて、ご両親とちゃんとお話してらっしゃい。」
「・・・はい。」
「(あの爆豪があんな神妙な態度になるとは。)」
教え子の珍しい姿に驚きつつ、引子を案内する相澤。爆豪夫妻も息子に近づき、その無事に改めて確認し喜ぶのであった。
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病室で穏やかに眠る出久の様子を確認した引子は、シレっと病院をハッキング、出久の病室を特定、相澤たちも知らない間に引子よりも早く、病院に来て出久の世話をしていた明に軽くお説教をした後、出久のことを任せて病室出る。
「すみません。お話が途中でしたね。」
「あ、いえ。それより、発目はそのままで大丈夫なんですか?」
「まあ、明ちゃんの暴走はよくあることなんで。」
「・・・よくあるんですか。」
「はい、よくあります。」
「緑谷婦人。」
相澤と引子の会話にエンデヴァーが割り込み、引子の前に立つ。
「改めてになるが、今日あった事を、私の口から説明させてほしい。」
「はい、お聞きします。」
ナンバーツーヒーローを目の前にしても揺るぎもしない、自称ただの主婦、実際だたの主婦のなのだが。
「知っての通り、出久くんは今日、私の息子である焦凍と共に、私の元で職場体験中でした。私は実際の現場を体験させるため、彼らを凶悪ヴィランが出没する可能性がある現場に連れていきました。」
一旦間を作るエンデヴァー。
「今思えば、学生に対して、あるまじき対応です。あまつさえ、その凶悪ヴィランへの対応を彼らと、別のヒーローに任せ、私は発生した別の事件の対応に動く始末。その結果、出久くんに大怪我を負わせしまった。許されることではないが、改めて謝罪させてほしい、本当に申し訳なかった。」
そのメディアから受ける印象とは大きく異なる、真摯な謝罪を聞き、引子は、
「その謝罪を受け入れます。」
と返した。
「もう2年前になるんですね。雄英の皆さんはご存知だとは思いますが、あの子たち、出久に勝己くん、お茶子ちゃんに明ちゃんの4人、あっ、明ちゃんのお爺さまも入れて5人ですね。あの子たちは2年前に、大きな事件に巻き込まれたんです。」
「(アメリカの件か。)」
「その事件で、沢山の人と出会って、別れて、大変なこと、辛いことも沢山あったはずなんです。それなのに、」
息子が行方不明になった時、心臓が止まりそうになった。無事だという連絡を受けた時は泣いて喜んでしまい、脱水症状で倒れかけた。久しぶりに会えた息子がとても可愛らしい女の子二人に好意を寄せられてアタフタしている姿に、目が飛び出そうになった。疎遠になっていた幼馴染と、ぎこちないながらも、また仲良さそう会話する姿に、涙で前が見えなくなった。
「それなのにあの子、事件から帰って来て、『ただいま』の後、なんて言ったと思います?」
「なんと、言ったのですか?」
「『僕は絶対、最高のヒーローになる!』って、そう言ったんです。無個性と診断されて、A.Tを練習するようになってからも内心で思いつつも、言葉にすることは無くって。そんなあの子が、体は傷だらけで、ボロボロになって大変な目にあって帰ってきたあの子が、断言したんです。なる、って。」
嬉しそうな、寂しそうな、そんな表情をする引子に何も言えなくなるヒーローたち。
「ですから、先ほど勝己くんが言っていたように、出久も自分の判断で戦場に、ヒーローとして活動する場に飛び込んだんだと思います。だから、目を離してしまったことに対する謝罪は受け取ります。それと私から、無事に出久を勝己くんを私たちのもとに帰してくれて、ありがとうございます。」
そう言って、頭を下げる引子に慌てるエンデヴァー。
「あ、頭を上げてくれ。そんな、礼を言われる資格など俺には、」
「・・・。」
「いや、分かった。礼を受け入れる。」
「はい、ありがとうございます。」
「・・・お強いのですな、あなたは。」
「ふふふ、母親というのは、子供のためならいくらでも強くなれるものなんですよ。」
ガンっ、と頭を殴られたような衝撃が走ったきがした。
「(俺は、冷から、母親から焦凍を遠ざけ、燈矢を。)」
己の行いが呪いとなっている男にある意味ダイレクトアタックを叩きつけた引子であった。
「あの、大丈夫ですか?」
「あ、ああ。自己嫌悪で死にたくなっただけだ。」
「本当に大丈夫ですか!?」
ーーーーー
「んん。ジーニスト、爆豪夫妻との話は済んだかい?」
「ああ。謝罪を受け入れていただいた。」
「なんども言うが、あれは俺が勝手にやっただけだ。ジーパンが謝る理由はっ、」
「勝己。」「勝己くん。」
「黙ってる、ます。」
「(おお、あの爆豪少年が手綱を握られてる。)」
場所を病院の会議室に移し、話題をこれからのことに変える。
「先ほど、勢いで話してしまいましたが、今回、緑谷少年と爆豪少年、そしてエンデヴァーが接敵したヴィラン。あれは私がかつて取り逃がしてしまった私の怨敵です。」
平和の象徴の怨敵、そんな相手と息子たちが戦っていたことに息をのむ爆豪勝(爆豪父)。母親二人は姿勢を崩さず話を聞いている。
「詳細はお伝えできせんが、奴は長年に渡り裏社会を支配し続けたヴィランです。それが活動を再開し、爆豪少年と緑谷少年が標的になってしまった。」
「その、なぜ二人は標的に?」
爆豪勝が恐る恐る手を挙げ質問した。
「誰かと勘違いしてるみたいだったな。」
「その、誰か、はまだ分かっていません。それは後日調査するとして、問題は奴が標的にした二人の周囲、ご家族に危険が及ぶ可能性がある、ということです。そのため護衛を付けたり、最悪の場合、雄英に避難していただく可能性もあります。」
「それこそ、この場に麗日や発目の保護者も呼んで話せればと思ったんですが。」
相会話を引き継いだ相澤が勝己を見る。
「ああ。もう伝えてあるけどよ。それに関しては多分心配しなくても大丈夫だぜ先生。」
「理由を聞いても?」
「発目博士に関して置いておいて、麗日とこはかなり強力な護衛が常についとるからよ。」
「強力な護衛?」
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「今日の飲み会、いつもの店で良いか?」
A.Tが使える社員Aさん。元戦闘用A.T使用者でタイマンかつ、イフリートソールとフルクラスター無しなら出久・爆豪に勝てる人。麗日建設若手現場監督で風の道使い。
「えー、たまには別の店を、開拓しましょうよ。」
A.Tが使える社員Bさん。元戦闘用A.T使用者でクイーンお茶子と遠距離戦を繰り広げ生き残った人。経理事務総務広報となんでも出来るの泡の道使い。(エアギアでは泡翠の道でしたが今作ではシンプルに泡の道です。メタァ!)
「てか明日も早いんで食事だけなら飲み屋以外でも良くないですか?」
A.Tが使える社員Cさん。元戦闘用A.TメカニックでA.T兵器を操縦して街を襲い、スカイクロウラーに瞬殺された人。トラックから重機まで、機械操作担当の契の道使い。
「・・・俺は今日当番だから帰るぞ。」
A.Tが使える社員Dさん。元戦闘用A.T使用者で麗日建設現場監督その2。彼とAさんと麗日父の3人がいるお陰で、麗日建設の現場は非常に信頼されている。アメリカ最終決戦でスターアンドストライプを足止めし、生き残り、逃げ切った大地の道使い。
「「「お疲れ様でーす。」」」
*なお設定だけの皆さんなので、当分、それこそ最終決戦ぐらいまでは出番がない可能性が高いです。
「「「オイ!!」」」
「そんなもんだろ。」
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「それじゃ何か。一建設会社に、お前や緑谷に近い戦力を持った奴らが普通の従業員として働いている、と。」
「おう。」
「「「(どんな魔窟だ、その会社!?)」」」
出久、勝己の実力を正しく把握できているからこその反応である。