A.T使ってガチバトル   作:ken4005

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第49話 魔王

 

「緑谷出久と爆豪勝己の家族?そんなもの、今は捨て置きたまえ。」

 

そう言ったオールフォーワンは治療台で腹部に受けたダメージと火傷の回復に専念していた。

 

「良いのか?かつてのお主なら、少なくとも監視、必要なら誘拐も殺しもしておったであろうに。」

 

「僕が今求めているのは、魔王である僕に無駄な抵抗を続ける緑の瞳、そして蛮勇を抱くもあえなく散るであろう赤き瞳だ。」

 

語る魔王は脳裏に残る二人の少年、その目、その瞳を思い出す。

 

もっとも身近に置いていたオモチャを失った時、それが自分にとって重要なものであったことを思い知らされた。

 

そのオモチャを壊してしまうキッカケを作ったハエ。

 

かつてそのハエを叩き潰した時は何も感じるものが無かった。取り戻そうとしたオモチャ、弟の残滓が別のハエに移った後だったこともあるが、感情が芽生えていなかったことが最大の要因。だが、

 

『無事か出久!?』

 

『カッちゃん!?』

 

あの光景を脳裏に残す。いや刻み込む。

 

魔王にとっての最大の後悔。それをフラッシュバックさせる、あの光景を思い出すたびに、沸々と、自分の内側で何かが湧き出てくるのを感じる。

 

無くしたオモチャとそっくりなオモチャを見つけた喜び。

 

そのオモチャに、これまたそっくりハエがたかる怒り。

 

それらは、あくまでそっくりなだけだと理解してしまう哀しみ。

 

そして、そのそっくりなオモチャとハエをどうするか考える楽しみ。

 

「感情を得たからこそ分かる。復讐心というものは人を容易く濁らせてしまうものだ。僕はねドクター、あの緑を手に入れ、あの赤を今度こそ、しっかりと潰してやりたいんだ。」

 

怪しく笑うオールフォーワンだが、その脳の大部分はフル回転しており、今日この日まで立てていた計画を大幅に変更しようとしていた。

 

「ドクター、君が常々僕に提案していた件、あれを進めていこう思うのだが、どうだろうか。」

 

「なんと?あれほど頑なに断っておったのに。それほどまでに今回の件がお主に与えた影響は大きいということか。」

 

「無論メインプランは継続していく。弔の中で育てていた怒り、あの強烈な感情をこの段階で手放すのは流石に惜しい。だが、」

 

改めて当初の計画について考える。

 

「ワンフォーオールを手に入れるために、僕が弔となる計画。あれは、僕そのものと弔を混ぜ合わせることから、僕という個人を完全に復活させるのは困難な計画だった。だが、ここに来て僕自身が、『僕』を失うことを、惜しい、と感じるようになってしまった。」

 

オールフォーワンは自分の手を自身の胸まで持っていく。

 

「『オールフォーワン』、全ては僕一人ために。そう名乗っているのに、僕が『僕』を諦める。改めると可笑しな話だ。」

 

「ワシはお主にそれを提案し続けた側じゃから当然反対はせんよ。」

 

「フフフフフッ、彼らの家族?友人?どうでも良い。今彼らが宿しているもの!あれこそ、僕が最も踏みじりたいものだ。彼らに対して、搦手を使うなどもっての外だ!そのために、」

 

まだ治療が途中の体を起こすオールフォーワン。

 

「ドクター、すまないがこの身体と個性の調整、そして例のもの準備、急いでもらっても良いかい?」

 

「先ほどの戦闘を見るに、いかにお主自身の個性因子から培養したコピーであっても、完全再現は無理じゃったな。十分な完成度だと思ったんじゃが。」

 

「使える個性も展開速度も、まだまだ課題ありだ。オールマイトにやられた時と比べて、せいぜい7割程度の力しか発揮できていなかったよ。」

 

オールフォーワン、それは魔王個人を指す言葉であると同時に、個性を指す言葉。その個性はいずれ弔に渡す予定であったため、ドクターによって管理されている。

 

今日オールフォーワンが使っていたのは、培養された個性因子を使用したコピーでしかない個性。

 

「だが、それを言い訳にはしないさ。僕自身、あの完成度でなんら問題ない、そう思っていたんだからね。」

 

その結果、腹部に強烈な蹴りが突き刺さり、背中を焼かれ、直撃すれば最悪死んでいたで可能性すらある攻撃をもらいかけた。長らく裏社会を牛耳ってきたが、戦闘など滅多にしない。あったとしてもそれは戦闘とは言えない一方的な蹂躙だった。

 

「ああ認めよう。弔、君は正しかった。僕はみくびっていた。A.Tなんぞただのガラクタだ、所詮は機械、所詮は道具、決して限界を超えるものでは無いと。しかし、彼らはあの時、確かにこの僕を追い詰めかけた。」

 

恐ろしいことに、どちらもまだまだ成長途中。

 

「エアトレック、あれはガラクタでもオモチャでもない。僕の命に届き得る武器だ。」

 

だが、だからこそ壊しがいがある。

 

「ああ!再会が待ち遠しい!また相みえるその日が楽しみだ。せっかくだ、最高の舞台を準備しよう!役者も揃えよう!その舞台で、」

 

ある病院の地下で魔王の笑い声が響き渡る。

 

「意思も、覚悟も、信念も!真正面から砕いてみせよう!!」

 

ーーーーー

 

ヴィラン連合アジト

 

「それで?何か言い訳はあるのか?」

 

腕を組み、仁王立ちするステインの前には、

 

「は?特にないが?」

 

ソファーで姿勢を崩す荼毘がいた。

 

「有れよ!あと無いなら無いなりにせめて反省しろよ!お前も死柄木も好き勝手に動きやがって!」

 

「あ゛ぁ?俺らは各々がやりたい事を好き勝手にやる方針だろうがよ。それにテメェだって勝手にステインと戦ってアジトまで連れてきたじゃねぇか。」

 

「俺は遭遇戦だったし、連れて行くときにちゃんと確認の連絡入れたわ!」

 

「スピナー落ち着けって。悪いな荼毘、こいつが言いたいのは、『ちゃんと相談してくれよ。必要なら手助けしたのによ。』だ。心配してただけだよ。」

 

「な゛!?」

 

荼毘が改めてソファーに座り直し、

 

「おっと。そうだったのか。すまねぇなスピナー心配かけたみたいでよ。」

 

素直に謝罪するのであった。

 

「・・・はぁ。まぁな、そりゃステインの様子を見てくると言って出て行ったかと思いきや、あのエンデヴァーと共闘して戦ってんだからよ。心配もするさ。」

 

「なんなら良かったんだぜ。そのまま戻ってこなくたってよ。」

 

「おい、死柄木。」

 

「本来、それが健全だろ。元の立ち位置に戻れんならそれに越したことはねぇわけだしな。まぁ、その先は俺らと敵対コースになっちまうがな。」

 

「・・・そうしたい気持ちが無かった、って言ったら嘘になるな。だが、まだだ。まだ俺の中にアイツ、エンデヴァーを殺してやりたい、どん底に落としてやりたい、そう言った気持ちは確かにまだあるんだ。だから、俺はまだヴィラン連合の荼毘だよ。」

 

「そうか。ならこれからも宜しく頼む、荼毘。」

 

「ああ。改めてよろしく、リーダー。あとスピナーもよ。」

 

「ふん、よろしくな。」

 

ーーーーー

 

「そういえばリーダー、あんたの先生、大丈夫か?エンデヴァーとあの炎の小僧、緑谷出久と、雄英体育祭の決勝の相手だった爆豪勝己か。その3人と戦って痛み分け、何方かと言えば、撤退って感じだったが。生きてるか?」

 

「ダメージは負われてますがご無事ですよ。今は治療に専念されています。」

 

席を外していた黒霧が戻ってくる。

 

「先生とやり合って生き残るどころか、撤退させたのかよ。やべぇな同類、それにエンデヴァー。」

 

「エンデヴァーは最後に奇襲をかけただけっぽかったけどな。」

 

「加えて、あの方の心を乱す何かがあったようで、本調子ではなかったようです。」

 

黒霧が死柄木に近づき、

 

「隠し立てしてもあまり意味がないと思うので伝えておきます。死柄木弔、あの方は立てておられた計画を大幅に変更する、とおっしゃっていました。」

 

「・・・へぇ。そいつは意外だ。そうなると俺たちは急ぐ必要が無くなって、・・・いや逆に早まる可能性があるのか。」

 

「おい、なんの話だ?」

 

荼毘が話に割って入る。

 

「ん?ああ、先生は俺の体、どっちかって言うと感情か、が欲しかったみたいでな。乗っ取りを計画していたみたいなんだ。」

 

「あぁ?おい、スピナー、テメェは知ってたのか?」

 

「一応な。死柄木にはここを離れた方が良いんじゃないか、と何度か提案はしたんだが、」

 

「離れて、動きが見えないより、懐にいた方が対応し易い。良いんだよ、もしもの時は逃げるか戦えば良いんだからよ。先生も俺が反抗するのは承知の上だ。承知の上で懐に置いているんだ。こっちが圧倒的に不利だからよ、どうこうする必要がないんだ。」

 

死柄木は座っていた椅子から立ち上がり、アジトの出口まで移動する。

 

「そんなわけだからよ、とりあえず俺たちはこれまで通り、各々の目的のために好き勝手やる。それだけだ。」

 

振り返りながら、口元を歪め笑う死柄木。

 

「ハッ、確かにな。好き勝手やってこそのお前であり、俺ら、か。」

 

「そういうこった。それじゃ俺はひとっ走りでもしてくるわ。」

 

A.Tを履き、アジトを出て行った死柄木がA.Tを走らせ、暗闇の中に消えていった。

 

「俺も疲れたから、今日はもう寝るわ。じゃあなスピナー、黒霧。」

 

「おう。」

 

「おやすみなさい、荼毘。」

 

荼毘も部屋からいなくなり、残ったのスピナーと黒霧のみ。

 

「なぁ黒霧、聞いても良いか?」

 

「私が答えられる範囲でなら。」

 

「この前、荼毘とも話したが、俺は死柄木に付いていくと決めている。荼毘は目的を果たす過程として俺たちいるが、仲間だといった。お前はどうなんだ?先生ってやつと死柄木、どっちに付くんだ?」

 

「分かりません。私があの方に死柄木弔を守るものとして作られましたが、命令の権限が一番上なのはあの方です。」

 

「つまり?」

 

「その場面になってみなければ分からない、ということです。」

 

「「・・・。」」

 

互いに無言続き、しばらくして、

 

「お互い、苦労するな。」

 

「まったくです。」

 

ハァッ、と両者ため息をつくのであった。

 

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