A組教室
「なあ、今ちょっと揺れなかったか?」
「うん、揺れた。でも地震速報出ないね。」
「今って多分爆豪と緑谷の試験が始まったくらいの時間だよね。てなると、やっぱ二人の試験相手ってオールマイトだったんじゃ。」
「いやいや、いくらオールマイトだって地震みたい振動を起こすほどの攻撃を試験で使うわけが、」
「・・・」×17
A組生徒一同がこれまでの出久と勝己の暴れっぷりと、オールマイトの抜けてる感を思い出し。
「(有りえるかもしれない。)」と思ってしまうのであった。
なお一人、風探知を全力で展開し、流石に距離があるためうっすらとだけだが試験場の様子を把握しているお茶子は、
「(二人とも、頑張って!)」
心の中で、二人へとエールを送るのであった。
ーーーーー
実技試験会場モニタールーム
「始まっちまったか。」
相澤が始まってしまった試験を見守る。今回の試験を実施する条件の一つとして、出久と勝己が試験内容に不服を申し出た場合、中止することを条件として出していた。
しかし、二人はあの無茶苦茶な試験内容を了承し、今あの規格外ヒーローを相手に真正面から相手取ろうとしてる。
「始まってしまったからには、もう私らには見守ることしかできないねぇ。」
共にモニタールームで試験の様子を見守り、もしものことがあれば急行できる状態で待機しているリカバリーガール。
「とりあえずできる限りの備えは準備してあるよ。最悪、腕が千切れるぐらいならなんとかしてみせるさね。」
「いや、その前に止めましょうよ。」
ゲンナリした顔のまま、モニターを見続ける相澤。しかし、もはや画面に映るのは残像のようなものだけである。
「止まると思うかい、あんなに元気よく暴れ回っている彼奴らが?」
「止まりませんよねぇ。」
映像を見るに、まだエンデヴァーとベストジーニストは動いていない。
最初はオールマイトが前に出て様子見ということなのだろう。
「・・・相変わらず、速い、ということ以外俺には分かりません。」
ーーーーー
実技試験会場
フィールド全体に大地震のような振動が広がり、中心部は地面がひっくり返っていた。
その中心に佇むのは平和の象徴、オールマイト。
出久と勝己は一度距離を取り、体勢を立て直そうとするも、
「「(不味い。)」」
自分たちの失態に気がつくも遅かった。
「どうした、君ららしくもないね。自分たちのペースを相手に押し付け、相手のリズムを崩す。それが君たちの戦闘パターンの基本だろう?」
「チッ!」
勝己の真横に、まるで瞬間移動したかのような速度で現れたオールマイト。その位置は出久と勝己でオールマイトを挟む立ち位置。攻撃から急遽退避へと切り替えたため、二人の間には数メートルの距離が出来ており、出久が援護しようとするも、
「(絶妙に、)」
「(嫌な位置を、)」
「さあ!自分たちのリズムを取り戻してみせ、ボゥッ!?」
勝己に攻撃しようとしていたオールマイトの背中に強烈な一撃が入る。
「な!?(今、緑谷少年は空中にいるはず!?エアフォースの攻撃速度では援護は間に合わないはず、どうやっ、)」
「俺を目の前にして、考えてごとしてんじゃねぇぞオールマイト!」
「ぐっ!?」
勝己が両腕を砲身としたA.Pショットブラスター、ダブルブラスターを至近距離でオールマイトに撃ち込む。爆音と共にオールマイトは強制的に距離を取らされ、勝己も反動を利用して距離を取る。
オールマイトは両腕を前にクロスすることで勝己の砲撃に耐える。
「(なんで腕だけで、今のに耐えられるんだよ。)」
「ハァッ!」
下がらされたオールマイトに向け、出久が空中から追撃をかける。火の玉を足場、地面の代用とし、空中での牙、いや弾丸を可能にした。
「エアフォース、バレット!!!」
流石に連射は出来ないようで、一発撃ってから別の火の玉に移動する必要があった。しかし、ピンチを乗り切るに十分な対応だった。
「ナイスだ出久!正直助かった!」
「いや、初撃を逸らして満足してた僕に責任がある。ごめん!」
出久が地面に降り立ち、勝己と合流し一瞬だけ一息つく。そして、
「突っ込む!」
ターボソールの加速を活かした飛び蹴りを打ち込みにいく出久。
「流石に迂闊ではないか、緑谷少年!」
出久を待ち構え、カウンターの準備をするオールマイト。しかし、突っ込んできた出久は回転を始め、猛火を纏う。
「これは!?」
「フェニクス・スマッシュ、パイルトルネード!!!」
「フン!!!」
直進する炎の竜巻に向け、拳を叩き込むオールマイト。本物の災害を消し飛ばすパンチによって霧散する竜巻だったが、
「(やはりいない、緑谷少年は、)上か!」
ガシッ、と互いの手を掴む出久と勝己。
「もういっぺん、かっ飛べ出久!」
出久を掴みながら、勝己が回転し、爆破によって加速に加速を重ね、
「エクス・デク・カタパルト!!!」
勝己が自身を発射台とし、凄まじい勢いで出久を射出した。
オールマイトがいる方向とは全く別の方向に。
「な!?」
「あばよ!」
パンッ
出久を打ち出した直後、まさかの行動に驚くオールマイトを尻目に勝己が手の平を叩き、クラスター・ターボによる超爆速でその場を離れる。
「しまっ、」
オールマイトが立つフィールドの中心地が、勝己が事前に設置してあった大量の爆汗によって爆破された。
ーーーーー
「チッ!オールマイトめ、何をやっている!」
初撃を放ってから、ビルの上から状況を見守っていたエンデヴァー。事前の打ち合わせでは、最初の数分から約10分はオールマイトだけで立ち回り、そこからヴィラン側に増援が来る、という作戦を組んでいたはずだった。
しかし、その作戦は出久と勝己の予想外な行動によって見事に崩れさっていた。
エンデヴァーが飛び上がり、出久たちを目指して移動を開始する。
「ジーニスト一人であの二人の相手は相性が悪いぞ!」
ベストジーニストに狙いを定めたであろう出久たちを目指して。
ーーーーー
「ふっ、まさかオールマイトを振り切り、私を狙いにくるとはな。ぐっ、一番容易い相手と思われた、ということかな!」
射出された勢いのまま、ターボソールによる超神速でさらに加速し、ベストジーニストに強襲を仕掛けた出久。
特殊強化繊維を張り巡らせ防御には成功するも、
「(なんという威力!普段使用している特殊繊維では今の一撃で終わっていたやもしれん。)」
今回の試験にそれほど乗り気ではなかったベストジーニストではあるが、オールマイトとエンデヴァーの本気度をみて、準備だけはしておくか、と緊急時にしか使用しない極太の特殊化強化繊維のワイヤーを持ってきていたのが功を奏したのである。
「(高層タワーすら支えるワイヤーをさらに強化したものだぞ。それがただの一撃で悲鳴を上げている。)」
エクス・デク・カタパルト×ターボソールの超神速の加速が乗った飛び蹴りは特殊強化繊維の一部を引きちぎってていた。
「んなわけあるかよ。合流されたら一番厄介だから、最初に潰したいだけだ。」
すぐ追いついた勝己が追撃をかける。
「おっと、むしろ高評価だったわけ、ぐっ!?」
「ハァッ!」
「戦闘不能は無理でも、その厄介な紐は削らせてもらうぜ!」
「(狙いは武器破壊か!)」
熾烈な攻めを続ける出久に続き、勝己も連続して爆破を撃ち込んでいく。
「私の下で職場体験を行なっただけあって、私の個性をよく理解している!(こうも動き回られ、攻め続けられると、全力で拘束するための間が得られんな。だが、)」
「カッちゃん!」
「削るだけ削った!ヤベェ距離も確認した!後はもうガチるだけだ!」
距離を取って戦っていた2人は更に距離を取る。
ベストジーニストの下には、戦闘は遠距離からの炎を一発放ったのみで、移動の疲労以外ないエンデヴァーと、多少コスチュームが砂埃を被った以外にダメージのないオールマイトが合流する。
試験開始から僅か6分の出来事である。
「無事かジーニスト?オールマイト!貴様、自分が言い出した役割ぐらい全うせんか!」
「返す言葉もないよエンデヴァー。まさかあそこまで容易くあしらわれるとは思いもしなかった。(いやほんと。ルール変えてなかったらさっきの接触で終わってたよ。)」
「いえ、私自身彼らをまだみくびっていた。今の襲撃は私に対する情報収集だったようです。申し訳ないが、ここからは事前の作戦通りお二人のサポートに回らせていただく。」
オールマイトとエンデヴァーが並び立ち、その少し後ろに残った無事のワイヤーを構えるベストジーニスト。
「さて。二人とも!ウォーミングアップは十分かな?」
オールマイトは視界の外へと移動した二人の怪物へと大声を投げかけた。
ーーーーー
ベストジーニストの個性を警戒したのか、時間を稼ぐためなのか。大幅に距離を取り岩陰に腰を下ろして息を整える出久と勝己。
「ジーパンがうぜぇ!アイツがいるだけで、オールマイトとエンデヴァーに集中できねぇ!」
「エンデヴァーの判断が早い!さっき合流してきたのが、オールマイトだけだったらジーニストを墜とすところまで行けてた!」
「「オールマイトが固い、速い、強い!!」」
「あれで衰えているとか、マジか!?ブラスターの同時撃ちとか初めてやったわ!」
「さっき本気で撃ったバレット背中に直撃したよね!?なんで無事なの!?」
「ちくしょう!ジーパンのやつ下がるぞ絶対!要所要所でアイツのフォローが入るとか面倒くさ過ぎるだろ!」
「エンデヴァーがまったく消耗してない状況だよ!オールマイトも、そもそも今のままじゃ有効打入んないって!」
いや、息を整えるよりも内心の整理を優先したのか、思ったことを口々に叫んでいく出久と勝己。
「ジーパン対策!動き回る!」
「エンデヴァー対策!大技を出した直後のクールタイムを攻める!」
「オールマイト対策!連携が下手糞だ!むしろ連携させて隙作らせる!」
「オールマイト対策!受け癖があるから、そこが狙い目!」
ゼーハーッ、ゼーハ一ッ、と一通り叫び終わった二人は改めて息を整え、時間を確認する。
「今、開始8分過ぎだ。」
「約2分早いけど、誤差だよ誤差。」
「狙うは完全勝利。全員ぶっ潰す。」
「でも生き残ること最優先。自分自身をしっかり助けよう。」
「勝って、助ける。」
「助けて、勝つ。」
出久と勝己が自分たちの信念を再確認し、ゆっくりと立ち上がる。
「そんなら。」
「第2ラウンド。」
出久がその場で勢いよくA.Tのウィールと地面を擦らせ、熱と風を生み出し混ぜ合い、強烈な炎を纏う。
勝己は自身に意識を集中させ、体全体の汗腺から個性を発動、全身から火花を散らし始める。
「フェニクス・スマッシュ、イフリートソール。」
「フルクラスター。」
全身全霊を解放し、二人がその場から音もなく消え去った直後、遅れて轟音が響き渡る。
「流石!早くて速いな、二人とも!」
空中からの奇襲が失敗に終わったオールマイトは地面に着地だけに止め、上空の二人を見据える。
「(広範囲に広げたレーダーがごとき探知能力で私の行動を把握した早さ。奇襲をかけようとした瞬間、超速で私の攻撃を避けた速さ。)だが、そこはまだまだ危険地帯だぜ!」
「赫灼熱拳!」
空中に飛びあった二人に向け、凝縮され、熱線へと昇華された炎が放たれる。
「ジェットバーン!!!」
「スマッシュ!!!」
日本トップクラスの炎使いの技が激突する。
空中であったため、一瞬押し込まれかけた出久であったが、
「だっ!りゃっ!」
気合一閃。完全な根性勝負で熱線を蹴り飛ばすことに成功する。
「隙、」
「ねぇわ!」
脚を振りぬいた直後の出久を狙ったオールマイトであったが、勝己が待ったをかける。
背中と右腕から強烈な火花を起こしながら勝己が前にでる。
「(少しでも逸らせ。)フルクラスター、」
「(受けてたとう。)デトロイト、」
勝己が放つは、全身全霊の右の大振り。
オールマイトは天候すら変える拳を構える。
「インパクト!!!」
「スマッシュ!!!!!」
圧倒的衝撃波によって、爆破がねじ伏せられる。しかし、
「・・・見事!」
「だっしゃぁ!見たか!」
爆破を貫き、天まで伸びていき、上空の雲すら消し飛ばした衝撃波だったが、その攻撃は勝己も、出久も捉えることはなかった。
手加減抜きの自分の攻撃が、まさか逸らされるとは思っていなかったオールマイトは思わず、自身の攻撃の軌跡を追ってしまう。これこそ、明確な隙。
ドッ、とオールマイトの側頭部に、
「スッ、」
出久たちの逆襲の一撃が入る
「マッーーーシュ!!!」
まるで流星がごとく勢いで地面へと蹴り飛ばされたオールマイト。その光景に、モニターで見ていた相澤やリカバリーガール、共に戦っているエンデヴァーとベストジーニストは、驚愕一色の顔になる。
「「「「なぁ!?」」」」
「「シャァッッ!!」」
試験場に出久と勝己の咆哮が響く。
試験時間、残り時間20分。
激闘は続く。