A.T使ってガチバトル   作:ken4005

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第56話 期末試験 ヒーローVSヒーロー超応用③

 

実技試験会場モニタールーム

 

 

『『シャァッッ!!』』

 

 

スピーカーから、出久と勝己の咆哮が響く。

 

エンデヴァーの熱線を防ぎ、オールマイトの一撃を逸らし、平和の象徴を、文字通り地に叩き落とし、ガッツポーズを取る教え子たち。

 

 

「こりゃまた。良いのが入ったねぇ。」

 

 

隣で観戦しているリカバリーガールは感嘆の声を上げるが、相澤からすれば気が気ではない場面の連続で、息を吐く暇もないほどである。

 

 

「さっきの攻撃。エンデヴァーも、オールマイトも、手加減なんてない、相手を一撃で沈める一撃でしたね。」

 

 

学生になんて威力の攻撃を向けてんだ、と内心でナンバーワン&ツーヒーローを罵る。

 

 

「それはあの2人も同じさね。担任という立場では辛いだろうが、私たちは、ただ見守り、結果を見届けることしかできないよ。」

 

 

「・・・はい。」

 

 

ーーーーー

 

実技試験会場

 

たった今、目の前で起きた出来事が、どこか他人事のように感じてしまっているのは、その光景を理解すること自体を、自分が拒んでいるからなのか。

 

自分が学生の頃、彗星のごとく世に現れ、破竹の勢いで活躍し、いつしか平和の象徴と言われるようになった存在。

 

 

 

その存在が今、学生たちによって、物理的に地に叩き落とされていた。

 

 

 

かつて、憧れた時期がなかったかと言われれば嘘になる。いつか彼のように、彼すらも超えるヒーローに、・・・ならねばならないとずっと思っていた。

 

自分がヒーローを志した理由が、そもそも不純なのだ。

 

贖罪ため。人を守ろうとした父のため。その父の犠牲になってしまった被害者のため。

 

燃やすことしかできない個性。ヒーローとなり、悪を、ヴィランを殲滅すること以外、償いをする方法が思いつかなかった。

 

平和の象徴が卒業した高校で学び、実力を付け、卒業後はヒーローとして活動する日々。

 

決して器用ではないが故に、積み上げていくしかなかった。

 

積み上げて、積み上げて、積み上げて、積み上げて。

 

積み上げ続けたその先で、気が付けば平和の象徴の、ナンバーワンヒーローの、一歩後ろにまでたどり着いた。たどり着いてしまった。

 

悪夢の第1章が父の死だとすれば、これがおそらく、自分にとっての悪夢、その第2章だったのだろう。

 

周囲は言う、未来のナンバーワンヒーローだと。人々は言う、これで当分平和は安泰だと。

 

そんな彼らに投げかけたい。

 

 

貴様らはいったい、何をみているんだ、と。

 

 

真後ろに立ってしまったからこそ分かったしまった。ナンバーワンとナンバーツーの差、などではない。

 

 

あと一歩の位置?いったいなんのことを言っている?

 

 

いや、確かにあと一歩なのだろう。ナンバーワンとナンバーツー、数字にすれば一つ違い、何か大きな間違いでもあれば、ヒーローチャートでこの数字がひっくり返ることもあったかもしれない。

 

 

だが違う。違うのだ。この俺と、平和の象徴オールマイトととの間には、どれだけ見上げても、登っても、頂上が見えない壁が立ちはだかっているのだ。

 

 

周囲は、人々は遠くから、オールマイトが立っている場所を見ている。ただただ、高みにいるヒーローを眺めている。

 

 

目の前にして、初めてその高さ、頂点であるその場所に行くことの険しさ、不可能さが分かってしまう。

 

 

幸運なことに、自分はその険しさも、不可能さも、正しく理解する実力を持っていた。

 

 

そして、

 

 

不幸なことに、それを理解しているにも関わらず、その壁をよじ登り始める実力を自分は有してしまっていた。

 

 

さらに、

 

 

一度決めたことを改める器用さを、持ち合わせていなかったことも不運だったと言えるだろう。

 

 

その後、頂点を目指して登り続けた。登り続けていたはずだった。

 

 

気が付けば、自分はひたすら堕ちていた。妻を不幸にし、子供たちを不幸にしていた。

 

 

狂ってしまっていた。その自覚がある。

 

 

償いきれないであろう罪を重ねてしまった。

 

 

ただ最近、狂っている身としてはあり得なかった考え、償いをしたい、と思い始めた。

 

 

そんな思考が生まれたのはいつからだ?

 

 

それこそ雄英体育祭と、例の保須市での戦い以降、狂ってしまっていた何かが正しく回り始めたような気がする。

 

 

いや正しくはもう少し前、USJでのヴィラン連合襲撃時の動画を見てからか?何か、無くしていたものを見つけたような感覚が、あった。

 

 

・・・話が大分逸れた。今は、目の前の光景だ。

 

 

狂いを収め、正しい思考のもと、目の前の光景を受け入れる。受け入れたからこそ、叫ぶ。

 

 

「何をしている、オールマイト!」

 

 

俺からの攻撃が来ると思っていたであろう緑谷と爆豪の二人。予想外の俺の行動に対し、様子見を選んだようで、空中から少し離れた位置にあるビルの屋上に移動して。

 

 

ありがたい、喋る機会をくれるか。いや、時間はあいつ等にとって味方だったな。

 

 

「なんだその体たらくは!教え子の壁として、決して頂が見えぬ憧れの、平和の象徴が、そう容易く地に伏して良いと思っているか!?」

 

 

オールマイトが視線を向けてくる。平和の象徴がこの俺を見上げてくる。

 

 

「さっさと立て!これは貴様が始めた戦いだろう!奴は、オールフォーワンとかいうふざけた男も貴様の宿敵なのだろう!小僧どもの生きる力を見る?ならばこそ、貴様が力を示せ!」

 

 

らしくないことをしている、だが、

 

 

「あいつ等が安心できるよう、安心して日々を送れるよう、平和の象徴が、オールマイトが健在であると、今ここで証明してみせろ!」

 

 

「フンッッッッッ!!!!!」

 

 

オールマイトが勢いよく立ち上がり、全身に力を入れたかと思えば、周囲に衝撃が伝播していく。オールマイトが落下した衝撃で舞っていた砂埃は消し飛び、平和の象徴が再起動する。

 

 

俺自身も地面に降り立ち、再度ナンバーワンと並び立つ。

 

 

「すまない、エンデヴァー。君の激励、芯に響いたよ。」

 

 

「フン!何が激励だ。活を入れただけだ。・・・オールマイト、若い世代には背負わせんぞ。」

 

 

「ああ。私と、君たち、現トップヒーローたちでオールフォーワンを倒す。倒せるのだと、少年たちに証明せねば。」

 

 

「話が終わったのであれば、続きを。まだ残り時間はあります。お二人の言う証明、私もお供させてもらいます。ハァッ!」

 

 

合流したジーニストが個性で操作したワイヤーが小僧たちがいた屋上を薙ぎ払う。

 

 

ほとんどの学生が受ければ、なすすべもなく戦闘不能にされるであろう攻撃。

 

 

そんな攻撃に対し、奴らがとる選択は、

 

 

「躱して、突っ込んでくるか!」

 

 

「さぁ来たまえ、少年たちよ!」

 

 

「ヘルスパイダー!!!」

 

 

ジーニストのワイヤーに続き、俺が放った合計10本の熱線すらも躱しきり、なおも前に出てくる、若き怪物たち。

 

 

彼らも同じだ。圧倒的実力は持っている、伸びしろもある。だが、ナチュラルボーンヒーロー、平和の象徴、オールマイトのような圧倒的な何かを持つのもではない。

 

 

爆豪の方はセンスの塊だが、オールマイトほどの理不尽めいたものではない。

 

 

緑谷に関しては完全に持たざるものだ。

 

 

しかし彼らは、頂を目指し、怯むことなく前に進み、上へと登る。

 

 

「(俺のように、狂って、堕ちてくれるなよ。そのために試練ならば、いくらでもなってやる。)ハァッ!」

 

 

「シッ!」

 

 

炎を滾らせた俺の拳と、緑谷の燃える脚が激突した。

 

 

ーーーーー

 

サポート科発目専用区画

 

バダバタ、とA組の生徒たちが生徒たちが発目専用区画へと足を踏み入れる。

 

「皆さん、お疲れ様です。今ちょっと目が離せないのですが、」

 

「明ちゃん、スクリーンに映して!」

 

「はいはい。」

 

お茶子から何をお願いされるか事前に分かっていたかのように、明がスクリーンを展開し、映像が流れ始める。

 

尾白がスクリーンを指す。

 

「なあ、この映像って。」

 

「ハッキングです。リアルタイムですが諸事情により音声は無しです。」

 

流石にオールフォーワン関係が知れ渡るのはダメかな、と考えた明の最低限の気遣いである。

 

明の反則的技術とそれなりの付き合いになってきたA組の面々。不正に映像を入手し、流していることに注意を入れそうな飯田や八百万、蛙吹も来ているが全員がスクリーンで流れ始めた映像に注目していた。

 

「移動中に麗日から聞いてたけど、マジでトップヒーロー3人を相手にしてんのかよ。」

 

上鳴は先ほど教室で自分が言った冗談が現実になっている事実に、ポカンと大口を開けてしまっている。

 

「明ちゃん、ルールは!?」

 

「重りによるハンデなし。カフスによる確保なし。30分以内に逃げ切る、ではなく30分間逃げ切る。明確に言われていませんが、3人撃破でも良い、と思われます。」

 

「ハンデ無し!?」 

 

「確保もなし、ってどうすんの!?」

 

「実質逃げも無し!?」

 

映像では丁度、出久とエンデヴァーが激突し、周囲に炎を撒きを散らしていた。

 

「親父、」

 

戦闘は続き、出久と勝己は超速移動を維持しながら互いをフォローし合いながら攻撃を続けている。

 

エンデヴァーが放つ炎を避け、今度は勝己が前に出ようとする。

 

連続して高火力を出すと冷却が必要なエンデヴァーを狙った行動だったようだが、

 

凄まじい速度で援護に入ったオールマイトに妨害される。

 

両チームが高レベルの攻防を連続する中、

 

オールマイトが最高のタイミングで衝撃波を撃ち出し、

 

僅かに出久と勝己の連携が崩された。

 

「危ねぇ!」

 

その一瞬の隙を突き、ベストジーニストが全てのワイヤーを使い、勝己を完全に囲い込む。

 

「ヤベェ囲まれた!って緑谷!?」

 

ピンチになった勝己を助けに入ろうとした出久はあろうことか、ワイヤーの囲いの中に自らを滑り込ませようとしていた。

 

「オイッ、中に入ってどうすんだ!?って、」

 

入り込む道中、出久は張り巡らされたワイヤーを使い一瞬だけ、されど、猛烈な勢いでA.Tを疾らせた。

 

A.Tのウィールが高温高熱で輝き、

 

 

 

炎刃二閃

 

 

 

ただの連続蹴りが斬撃へと昇華された。

 

 

これまでA組の生徒たちが見てきた緑谷出久の技の中でも異質、焼き切る技。

 

 

十字の軌跡を描いた斬撃は、特殊強化繊維で作られたワイヤーを、ただの紐同然に焼き切った。

 

 

「なぁ!?」×17

 

 

お茶子と明を除いた、観戦していた生徒たち全員の顔が驚愕に染まる。

 

 

そしてモニターには、

 

 

囲いを脱出すると同時に、超爆速で間合いを詰めた勝己の一撃がベストジーニストに撃ち込まれる瞬間が映し出されていた。

 

 

「神の炎。」

 

 

周囲が驚愕し続ける中、明が覗き込んでいたメインのパソコンに映る映像を隣で見ていたお茶子が、そう呟いた。

 

 

明はというと、映像を見ながら、今得たデータを一切逃さないよう、先ほどの瞬間のありとあらゆる情報を収集するため指を動かすのであった。

 

 

ーーーーー

 

実技試験会場

 

油断などしていない。だが、必殺のタイミングだった。いかに超速を有する爆豪といえど、あの崩れた状態での脱出は難しいと考えていた。

 

それが、緑谷出久の助けが間に合い、あまつさえ、あの特殊強化繊維が焼き切り、文字通り道を切り開くとは。

 

「耐熱加工を施した特別製のワイヤーが、ああも容易く。」

 

そして今、目の前で爆豪勝己、いやキャプテン・ダイナマイトが、凄まじい火花を散らす手の平を、こちらに翳していた。

 

「フッ、容赦なしか。」

 

「ああ。面倒臭さはアンタが間違いなくトップだ。出久に禁じ手の一つを使わせたんだ、復帰されないよう念入りにな。」

 

閃光、後に爆裂音が響き渡るはずだが、

 

「(明日、休暇にしておいて良かった。)」

 

私はその閃光を目にした直後に意識を失った。

 

ーーーーー

 

 

ベストジーニスト、戦闘不能。脱落。

 

 

残り時間、約10分。

 

 

 

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