I・アイランドのとある研究室
メリッサの案内に連れられてやって来た研究室で、オールマイトとデヴィット・シールドは再会を果たし、互いに喜び合う。
喜び合っているはずである。
しかし、出久と勝己、戦闘で視線などから相手の思考すら読み取る二人は鋭い視線をデヴィット・シールド、そしてその助手だというサムへと向けていた。
他の面々に聞こえないよう小声で、
「オイ、出久。」
「博士からは罪悪感、それと、焦りかな?」
「あの助手も似たような感じだが、向けてる対象が違げぇな。」
「うん。博士はオールマイトとメリッサさんに対してだけど、サムさんは博士に向いている。でも、」
「若干の敵意と、悪意が混じってんな、ありゃ。」
「事件、までいくと思う?」
「知らん。だが警戒はしておくべきだな。」
嫌な予感はする。
それでも友との再会を喜ぶオールマイトの邪魔をしたくはないし、する気もない二人はただ成り行きを見守るのであった。
ーーーーー
しばらくして、オールマイトからのアイコンタクトを受け、二人になれるよう取り計らったデヴィット。
そのままの流れで、オールマイトの肉体、そして個性の状態を確認するための検査が行われた。
「うん、一通りスキャンはすんだよ。大丈夫かいトシ?」
「ああ。最近は行進育成のために現場に出る回数も減らしているからね、以前ほど体にガタは来ていないさ。」
「ッ!そ、そうか。」
オールマイトの言葉に表情を暗くするデヴィット。
「(やはりオールマイトという光を失わないためにはあの装置をトシに渡すべきなんだ。)」
内心で暗い決意を固めているデビットであるが、検査は真剣に進めていく。
「データだけを見るに個性数値に問題は、ん?」
「どうかしたかいデイブ?」
「いや、徐々に下がっていたはずのトシの個性数値が、ここ数ヶ月はむしろ活性化しているんだ。」
「なんだって?」
「何か心当たりはあったりするかい?」
デビットの言葉を聞き、オールマイトは胸に手を当てる。
「・・・いや、ないな。」
今、オールマイトは友に対して、嘘をついた。
ワンフォーオールの秘密に関わることだったからだ。
「(実はここ数ヶ月、いや、一年以上前からか。ワンフォーオールから騒めきのようなモノを感じていた。)」
実はオールマイトには心当たりがあった。
あの日、あのヘドロヴィランを追って少年たちと出会った日。USJでのヴィラン襲撃の日。保須市での戦いについて聞いた日。そして、期末の実技試験の日。
「(緑谷少年と爆豪少年と関わり、彼らの実力を知れば知るほど、私の中のワンフォーオールが騒めいていく。まるで新たな継承者を見つけたかように。)」
オールマイトも理解している、引き継ぐべき時期が来たのだと。
しかし、
「デイブ、何か問題があるわけではないんだね?」
「ん?ああ。むしろ良いぐらいさ。トシの年齢で個性因子が再活性化するなんて例は滅多にないからね。流石は平和の象徴だな。」
先ほどの暗い表情を隠し、デヴィットは事実だけを伝える。
デビットの返答にオールマイトは安堵の表情を浮かべる。
「問題がないのであれば安心だな!(まだ。もう暫く私と共にいてくれワンフォーオール。オールフォーワンを打ち倒すために、我々の重荷を若い力に背負わせぬために。)」
トゥルーフォームのまま、ニッ、と笑顔を作り、ワンフォーオールのことは隠しつつ、オールマイトは本心を語る。
「だが、ここ数ヶ月のことというならば、もしかしたら、平和の象徴を委ねられる新たな光たちに出会えたからこそ、負けてられない、と気合いが入ったのかも知れないな!」
「・・・新たな、平和の象徴、かい?」
「ああ。私もいい加減良い歳だというのもあるが、私に匹敵、いや、私なんぞかるく超えていく、可能性に満ち溢れた少年少女たちに出会ったんだ。」
ーーーーー
今夜行われるパーティーでまた合流する約束をしたオールマイトとデヴィットは一度解散していた。
そしてデヴィット・シールドは1人研究室にて悩んでいた。
「(世界のためを思えば、オールマイトを失うわけにはいかない。だが、トシが、あの平和の象徴はあの装置を受け入れてくれるのだろうか?)」
オールマイトの予想外の登場に計画に狂いが出てしまっている。
「(あの時、トシは本心を語っていた。それくらい僕にも分かる。しかし、それでも僕はオールマイトという光を失うことがなによりも恐ろしい。)」
悩み苦しむデヴィットであったが、娘の、メリッサが写った写真が目に入る。
『私なんぞかるく超えていく、可能性に満ち溢れた少年少女たちに出会ったんだ。』
そう語ったオールマイトの言葉を思い出し、デヴィットは娘の写真を手に取った。
そして、思い出す。日々成長を続ける娘の姿を、努力を。先ほど、同じ科学者であろう少女と、凄まじい勢いで意見を交換し、目を輝かせていた娘を、デヴィットは思い浮かべた。
「・・・委ねられる新たな光、か。」
そんな言葉を口から漏らし、デヴィットは助手のサムへと電話をかける。
「ああ、サム、すまないね急に。例の計画なんだが、申し訳ない、・・・。」
友との再会、娘の成長、新たな光。それらが、デヴィット・シールドに最後の一歩を踏み込ませなかった。
ーーーーー
メリッサの研究室
デビットからはⅠ・エキスポを案内するよう言われたメリッサであったが、明の勢いに負けてしまい、そのまま自分の研究室へと、出久、勝己、お茶子、そして明を招待した。
研究室に到着して早々、明は自身の端末の画面をメリッサに見せる。
「メリッサさん!これがアナタに見てもらいたいデータです!」
「見せて見せて!どんなデータなのかずっと気になって、・・・いたのだけれど、」
画面を見たメリッサは、表情を笑顔から一転、真剣なものへと変える。
「・・・。」
無言でデータを見ていくメリッサ。
そんなメリッサの様子を、明も真剣な様子で伺う。
今メリッサが見ているのは出久たちの戦闘データ、戦闘中のA.Tの可動データ、そしてヒーローコスチューム並びに出久たちの肉体へのダメージや影響に関するデータをまとめたものである。
暫く無言で画面を注視していたメリッサは端末から視線を外し、一度明へと向き直る。そのまま、出久たちへと視線を移し、そして最後にまた明へと視線を戻す。
「・・・正直、今見せられたデータの内容が凄まじ過ぎて言葉も出ないわ。これだけの数値がすべて正確なものなのだとしたら、一体どれだけ凄いサポートアイテムを使っているのかしら。」
「出久さん、A.Tをお借りしても良いですか?」
「うん、いいよ。」
出久が履いていたA.Tを脱ぎ、そのままメリッサに見せる。
メリッサはA.Tの機構を確認していく。
「凄いわ。私も科学者の端くれだからA.Tを触れたことは当然あるし、パパが作ったサポートアイテムにはA.Tの技術が使われているものもいくつかあるわ。でも、」
すかさず明は端末の画面に映るデータをA.Tのものへと切り替える。
「これは完全に別物。出久くんたちのA.Tは言葉通り、桁違いの性能だわ。そして、その性能を十全以上に発揮しているからこそ、今の状態なのね。」
「はい。出久さんも勝己さんも、必要とあらば、己の体を顧みず力を行使されます。だから、私の役割は彼らが全力以上の力を振えるようにすることです。」
「そうね。そして、そのために、私の知識が必要ということなのね。」
「ご協力していただけますか?」
「・・・こんな挑戦、これまで無かったわ。もちろん!こちらからお願いしたいくらいだわ!善は急げ、今から始めたしょう!」
「流石です、メリッサさん!はい、始めましょう!」
「メリッサ、で良いわ。よろしくメイ!」
「はい、メリッサ!」
2人の科学者、発明家、マッドサイエンティストは完全に意気投合し、新たな発明に向けた作業を開始した。
「「「・・・今から?」」」
出久、勝己、お茶子、I・エキスポは御預けなり。
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本来であれば、出久たちはメリッサに連れられ、Ⅰ・エキスポを観光する予定であった。しかし明とメリッサがそのまま開発作業を始めてしまったため、本来あるはずだった遭遇は、
「お。」
「あら?」
「おお!」
「あ。」
別の流れに変わるのであった。
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I・アイランドのとある場所
「クソ!」
デヴィット・シールドの助手であるサムは荒れていた。
「博士め!この土壇場で心変わりするなんて!」
元々今回の研究成果を取り返す計画をデヴィットに提案したのはこのサムであった。
「どうする、私だけで計画を実行するか?だが博士には計画が知られているわけだし、」
「問題ないだろ。」
「なに?」
サムと共にいた男性。その男性の言葉を聞き、サムは怪訝な顔をする。
「問題ない、とはどういうことだ。」
「計画通りにやれば良い。違う点は、博士に協力してもらうために本気で脅しをかける必要があることぐらいか?」
「だ、だが、この島には今、あのオールマイトが来ているんだ?大丈夫なのか、上手くいくのか?」
「心配するな。オールマイトがいたとしても、今夜が終われば俺らはデヴィット・シールドの発明した装置を手に入れる。アンタは金を得る。」
男の怪しい笑い声が小さく響くのであった。