セントラルタワー、レセプションパーティ会場
I・アイランドの重鎮や世界各国のヒーロー、研究者やスポンサー企業の関係者などがパーティを楽しんでいる中、
「やあトシ。楽しんでるかい?」
「デイブ!もちろんだとも。ただ、緑谷少年たちがいなくてね。」
「彼らもかい?こっちもメリッサが見当たらなくて探していたんだが、」
二人して、意気投合していた明とメリッサの様子を思い出し、特にデヴィットは多めの冷や汗をかき始める。
「い、いや、メリッサはもう17歳だ。まさかお客様を連れて研究室に籠り、パーティをすっぽかすなんてそんな、」
「デイブ。君、奥さんとのデート何回も研究ですっぽかしたこと忘れてないかい?いや、まあ奥さんも奥さんで同じことしてたりしたけど、」
「・・・流石、僕らの娘。似てほしくない所もしっかり似てる。」
ガックリと肩を落とすデヴィット。
その直後、会場で銃声が響いた。
「全員動くな!このタワー、いやこの島の警備システムは俺たちがジャックした。特にヒーローども、万が一抵抗すればタルタロスにも匹敵する警備システムが住民や観光客に牙を向くぞ。」
まさかのヴィラン登場に会場はパニックになる。
そんな脅しなんぞに騙されん、とヴィランに攻撃を仕掛けたヒーローはタワーの警備システムによって一瞬で拘束されてしまった。
「さて、これで全員状況をより正しく理解してくれただろうか。オイ!」
ヴィランの呼びかけに応じ、サムがデヴィットの前にやってくる。
「サム、どういうことだ!(計画は中止にすると伝えたはず!)」
「は、博士が悪いんですよ!直前で怖気付いて。装置は私がもらいます。ついて来て下さい。断れば、どうなるか分かりますね?」
「デイブ!」
「おっと。動くなよオールマイト。」
咄嗟に友人を助けようとしたオールマイトであったが、会場にいたヒーローは一斉に警備システムに拘束されてしまう。
「そんな拘束、アンタなら直ぐにでも外せるだろうが、次に抵抗の意思を見せた場合、どうなるか分かっているだろうな?」
その後、倒れているヒーローたちを放置し、ヴィランたちはデヴィットを連れて出ていってしまう。
「(どうする!?ん、あれは、)」
拘束されしばらくしてから、オールマイトは吹き抜けになっているパーティ会場の2階からコチラの様子を伺っている教え子に気がついた。
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「いやー、お似合いですねお二人さん!」
「王子様、お姫様のボディガードは俺たちに任せろ!」
そう言って、着飾った焦凍と八百万を囃し立てるのは切島と上鳴の二人であるが、
「俺は王子様ではないし、八百万もお姫様じゃなくお嬢様だろ。」
「お、おう。」
「すまねぇ。」
焦凍に真顔で返されていた。
「チ゛ッ!はしゃぎやがって。」
一人荒れている峰田も、
「こらこら。君らもパーティに参加できるんだ、荒れるんじゃない。」
天哉に嗜められるのであった。
「そういえば、結局緑谷くんたちには会えていないが、もう会場にいるのかな?」
飯田が周囲に級友たちに尋ねると、芦戸が少し不満そうに答えた。
「それがさ、最初はプレオープンを一緒に回ろって、麗日とは話してあったのに来れなくなっちゃったらしくてさ。」
「何、そうなのか?」
「パーティには顔を出したいけど、どうなるかも分からないって。」
「ふむ、トラブルでもあったのか?その後、連絡を取り合ったりは、」
パンッ、と銃声が聞こえて来た。
「今のは、銃声か?」
「皆んな静かに、今調べる。」
異常事態ではある。
しかし、ここにいるのは異常成長を果たした出久、勝己、お茶子、そして明と共に数ヶ月を過ごしたヒーロー科1年A組の面々である。
今更銃声ごときでは慌てたりしない。
周囲を警戒しつつ、物陰に隠れる一同。
耳郎がイヤホンジャックを地面に指し、音を聞き取る。
ヴィラン襲撃、オールマイトを含めた各国ヒーローは拘束、そして、デヴィット・シールドが連れて行かれた事を把握した面々。
「皆んな、先ず撤退か救出かを尋ね、」
「「「「救出。」」」」
焦凍、切島、芦戸、耳郎はノータイムで救出を選択。
「「だよな!お前らはそうだよな!なら、俺らも救出だチクショー!」」
上鳴と峰田も迷いながらも救出に賛成する。
「八百万くん、俺も救出のために動きたい。良いだろうか?」
A組委員長である天哉が副委員長である八百万に最終確認を行う。
「・・・救出が困難になった場合は撤退する。それを皆さんが約束出来るのであれば、全力で問題解決に動きましょう。」
八百万も覚悟を決めた表情となり、全員が救出を選択、行動を開始しようとしたのだが、
「で、どうすれば助けられんだ?」
上鳴のもっともな疑問に、
「そりゃヴィランをぶっ飛ばして、」
「それで解決するならオールマイトは捕まってねぇだろ。」
「た、確かに。」
全員で作戦を考えるが、妙案は浮かばない。
どうしたものか、と、頭を悩ましていると、
「そんな君らに提案があるのだが、どうだろう?」
横から急に話しかけられる。
「え?音はなかったはずなのに。」
「誰だ?」
警戒を担当していた耳郎は驚き、焦凍が前に出る。
現れたのは男女の二人組。
話しかけて来た方は、女性、というより少女だろうか?
自分たちよりも年下の雰囲気だが、白衣にスーツという格好もあり独特なオーラを発している。
男性の方は気怠そうな雰囲気を醸し出し、黒髪を後ろで結んでスーツを着用し、
足にはA.Tを履いていた。
「無音走法。」
「それって演習で爆豪が使ってた奴で、クッソ難いんじゃなかったか?」
目の前の男性への警戒レベルを上げる一同。
万が一、この男性の実力が出久や勝己レベルであり、
敵であった場合、
全員がかりでも勝てるか厳しい可能性がある。
「ほら警戒されたじゃねぇか。すまねぇな、コイツが協力するなら先ずインパクトを出したい、とか言うからよ。」
笑顔で謝罪してくる男性。
「A.Tを使っている相手にはあれが一番静かで、かつ実力を示せるじゃないか。」
「それで警戒されたら世話ねぇって話だ。」
私は間違ってない、と言いたげな少女と結局警戒されて話が進まない、と注意を入れる男性。
二人を警戒しつつ、どうすべきく天哉が悩んでいると、
「それで提案とは?」
八百万が話題を戻す。
「おお!話が進んだ、ありがとうお姉さん。提案というのは当然、この状況を打破するための提案だよ。」
少女は端末を取り出すとI・アイランドとセントラルタワーのデータを見せる。
「我々のいるセントラルタワー、その最上階、そこにあるコントロールルームに私を連れていってくれさえすれば、システムを取り返せるよ。」
「先ず、なぜ君はこのタワーの見取り図を持っている?」
まだ警戒を解けない少女に質問する天哉だが、
「そんなものハッキングに決まっているだろう。」
友人繋がりで交流がある同級生とそっくりな返しをされ、力が抜けてしまう。
「ハッキングは犯罪だぞ。」
焦凍は焦凍で天然発言をしている。
「私はね、怒っているのだ。今日I・アイランドにいるために一生懸命仕事をして、やっと獲得した連休で、やりたい事をやろうとしたんだ。それなのにこのヴィラン騒ぎだ。何度人質を無視して、この護衛くんにヴィランの殲滅を依頼しようとしたことか。」
なんか物騒な事を言い始めた少女であるが、
「だから、さっさと事件を解決しちまいたいんだ。コイツの機嫌が悪いと苦労すんの俺だからな。」
護衛だという男性がグリグリと撫でる事で少女を宥める。
「お前ら雄英高校のヒーロー科1年生だろ。体育祭、テレビで見たぜ。一応言っておくと、俺はA.Tの実力ならお前らの学友と良い勝負できるぜ?」
自信あり気に語る男性とシステムを奪還できるという少女。
どちらも怪しいが、
「分かった、協力しよう。」
「良いのか、飯田。」
協力する事を了承する天哉。
「僕らこの状況を改善できる案がない以上、可能性があるならば協力する。万が一怪しい行動を見せた時は、」
「ああ。その時は思う存分にボコりたまえ、ウチの護衛を。」
「オイ。」
護衛の男性のツッコミを無視して握手を交わす少女と天哉。
その後、八百万がパネルを創造してオールマイトにも作戦を伝え、
I・アイランド警備システム奪還作戦開始。
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「そういえばお二人とも、名前は?」
「おお!名乗ってなかったか、巻巻枢だ。」
「・・・志村空だ。」
謎の勢力、まさかの味方として合流!
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