A.T使ってガチバトル   作:ken4005

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第67話 I・アイランド編⑤

 

I・アイランド、セントラルタワー

 

「チッ!流石にバレたっぽいな。」

 

階段を登りながら志村空が舌打ちをする。

 

ここまで風を操作し、監視カメラがあるたびに風のレンズのようなものを展開、自分たちが映らないよう誤魔化してきた。

 

また、音なども可能な限り遮断していた。

 

どこかで誰かが映ったか、音が漏れてしまったのか。

 

現状、志村空が巻巻を背負い、八百万を芦戸と耳郎が交代で、峰田を切島が、焦凍を天哉が背負ってる状態である。

 

いつ、何が理由でバレてもおかしくはない。

 

「え?でも特に反応は、」

 

「切島って言ったか?A.T使うなら、目に見えるものだけで満足するな。どんな方法でも良い。風でも音でも匂いでも振動でも、視覚情報も大事だが、それ以外の感覚も鍛えろ。」

 

志村空はまるで指導するように切島にアドバイスを伝える。

 

「あ、それちょっと分かる。私も肌感覚で周囲の様子分かるし。」

 

「マジか、芦戸。」

 

「私もイヤホンジャック指してなくても、なんか広い範囲の音を拾えたり、反響音で周りに何があるか分かったりする時あるな。」

 

「耳郎もかよ。」

 

「俺は電波とか電磁波とかかな。個性と併用すると便利なん、」

 

「上鳴に負けてんのはスゲェ腹立つ!」

 

「俺だけ反応違いすぎじゃね!?」

 

「で、何か変化があったのか?」

 

A.T組のコントを無視し、焦凍が志村空に確認を取る。

 

「警備ロボが集結してるな。二つ上の階で一気に来るぞ。」

 

風が伝えてくる気配から、大量の機械が移動している事を感じ取った志村空は全員に警戒を促す。

 

「悪いがコッチの切り札を背負ってるもんでな。よっぽどの強敵が出てこない限りは戦闘を任せても良いか?」

 

「ああ。それに関しては事前の打ち合わせ通りで構わない。」

 

ーーーーー

 

作戦開始前

 

「先ず、可能な限り戦闘は無しで上まで登る。監視カメラは俺が誤魔化すがバレる時はバレる。そうなったら警備ロボの相手は任せて良いか?」

 

「巻巻さんの護衛が最優先。彼女に万が一の事があれば、それだけで作戦が崩壊するからですね。」

 

志村空の言葉に真剣な表情で返す天哉。

 

「おう、よろしく頼む。まあ、あれだ。・・・俺の方が年上だからな、サポートが必要な時はしてやるよ。」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

ーーーーー

 

「とは言ったが、必要ねぇなこりゃ。」

 

「普通に強いな、流石は雄英生。」

 

「というより、コイツらが異常だな。」

 

志村空と巻巻の前には虐殺ならぬ虐破壊が繰り広げられていた。

 

「レッドガントレット!」

 

鋼鉄に殴り勝てる硬度にスピードが加えられ、体育祭とは比べ物にならない攻撃力を獲得した切島が警備ロボットを殴り飛ばし、道を切り開く。

 

そのサポート役として、芦戸が動き回る。側面から切島を狙う敵を時には蹴り飛ばし、時には、

 

「アシッドベール!」

 

酸を薄く、されど鋭く撒き散らし、警備ロボットを溶かし裂いていく。

 

攻め方が変わり、警備ロボットが津波のように一斉に襲いかかってきても、

 

「「スイッチ!」」

 

慌てることなど一切なく、切島と芦戸が後ろに下がり、代わりに耳郎が、前に出る。

 

「ハートビート・インパクト!」

 

耳郎は腕に装着したA.Tとラムジェット機構の技術で作られたサポートアイテムにより超増幅した心音を、襲いかかってきた警備ロボットに撃ち放った。

 

ドガシャッ!

 

「へ?」

 

たった一撃で襲いかかってきた警備ロボットだけでなく、後続の第二陣、第三陣と控えていた集団ごと、一気に吹き飛ばした。

 

道は開けたが、

 

「(加減してもこの威力なの!?)」

 

プレゼントマイクと個性の撃ち合いが出来るにまで強化された心音攻撃だが、力加減が難しく、まだコントロールしきれていない。

 

「(これ、例の追加サポートアイテムも使ったら本気でヤバい威力になるんじゃ、)気をつけなきゃ。」

 

自身の技の威力に慄いている耳郎だが、側面から警備ロボットに襲われる。

 

「しまっ、」

 

「油断!」

 

「すんなよ!」

 

そんな耳郎のピンチに、今度は上鳴、峰田がカバーに入る。

 

上鳴は腕から電気を纏わせたワイヤーを伸ばし、それを振るって飛び上がって襲ってきた警備ロボットを弾き返す。

 

峰田はミネタビーズなるアイテムなのか技なのかよく分からないものを使い、最前列のロボットを動けなくし、

 

「スイッチオン!」

 

峰田がミネタビーズの持ち手についたスイッチを入れた瞬間、

 

ヴヴヴー!ッとモギモギが振動を始めた。

 

「「「「ブッフ!」」」」

 

ビーズ×振動のコンボを正しく理解してしまった面々は吹き出し、

 

「「「「「??」」」」」

 

よく分かってない面々は、なんで振動?、と純粋に疑問を感じていた。

 

「そら!」

 

最後に峰田が振動するミネタビーズの紐?の部分を引き抜いた瞬間、モギモギと接触していた警備ロボットに衝撃が走ったようなダメージが入る。

 

「「「「「「「「なんで!?」」」」」」」」

 

よく分からない光景に、今度は巻巻以外の全員がツッコミを入れる。

 

「な、なるぼど。振動波伝播装置の応用。振動で相手の動きを封じ、紐を引き抜いた瞬間に振動数を高めることで物理ダメージを与えているか。」

 

巻巻の解説が入ると、

 

「へへ!もう拘束だけのオイラじゃないぜ!」

 

攻撃力を手に入れた峰田がドヤ顔で勝ち誇る。

 

「A.T組の奴ら、成長がスゲェな。」

 

「ああ。俺たちも負けてられないな。」

 

「ですわね。」

 

ーーーーー

 

警備ロボットを差し向けられても順調にタワーを登っていると、

 

志村空が再度切島に声をかける。

 

「切島、お前ジャンプする時に変な癖があるだろ。」

 

「あ、分かっちまいますか?なかなか直せなく、」

 

「直すな。むしろ活かせ。」

 

「活かす?」

 

「最初は悪い癖だったんだろう。移動からジャンプや攻撃に移行する瞬間、止まっちまって勢いが逃げてると思うだろうが、A.Tは超効率でエネルギーを運用する機構だ。そのエネルギーは確かにA.Tの中に残されている。」

 

切島のA.Tを指差しながら志村空はアドバイスを続ける。

 

「普通の奴なら身体に負担がかかり過ぎるが、お前頑丈そうだし耐えられるだろ。攻撃の瞬間、ジャンプの瞬間、一瞬だけ我慢しろ。」

 

「我慢。」

 

「その一瞬の我慢から生まれる間、その間が溜めになってお前に力をくれる。さっきまでとは比較にならない威力のな。」

 

「え、えっと、志村さん!それ、成功させるコツとかありますか!?」

 

「んなもん決まってんだろ。テメェがやろうとしてんのは実質敵の目の前隙を晒す行為だ。我慢が出来たなら、次に必要なのは、」

 

「必要なのは?」

 

「ーーーだよ。空に飛び出すつもりでぶん殴れ。丁度良い試し相手も来たことだしな。」

 

「え?どういう、」

 

「切島、集中!ドアの向こう、警備ロボットじゃない、ヴィランだ!」

 

扉が勝手に開き、庭園のように植物が植えられた広い空間に出る。そこには二人のヴィランが待ち構えていた。

 

ーーーーー

 

「2人か、なら俺が一気に、」

 

焦凍が大技で一気に方を付けようと前に出るが、志村空が制止した。

 

そして志村空は、なんと背負っていた巻巻を天哉に投げ飛ばした。

 

「へ?」

 

「なんとー!?」

 

咄嗟の行動であっても無事に巻巻をキャッチすることに成功した天哉。

 

そんな天哉に向かい、志村空は指示を飛ばす。

 

「飯田、巻巻は託した、しっかり守れ。切島、芦戸は残れ。残りの面子だけでも最上階まで行けるな、ヒーローの卵ども?」

 

「良いのですか?ここは全員で、」

 

天哉が全員でヴィランを対処することを提案しようとするが、

 

「行け、飯田。こんな時に悪いが、俺にこの状況を乗り越えるチャンスをくれ。」

 

切島は先に行くよう促す。

 

「皆んな先に行って。時間は今、私たちにとって敵だよ。切島の面倒はいつも通り、私に任せて。」

 

芦戸も前に出て、切島と並び立ち、ヴィランと向き合う。その後ろで志村空は腕を組みながら2人を見守る姿勢になっていた。

 

「いや、なんでお前も残る流れになっているんだ志村!お前の役目は私の護衛だろう!?」

 

天哉の腕の中で暴れる巻巻を無視し、志村空は天哉に檄を飛ばす。

 

「ヒーローなんだろ?そこで足を止めちまったら助けられるもんも助けられなくなるぞ。行け!」

 

志村空の言葉に促され、今度は焦凍が先陣を切って進んでいく。

 

「任せた!」

 

「直ぐ追いつくからよ!」

 

「皆んなも気をつけて!」

 

ーーーーー

 

雄英生+αが悠長に相談できていたのには理由があり、

 

「進めねぇ!?」

 

「なんだこれ!?見えねぇ壁みてぇのがあるぞ!?」

 

水掻きが付いた手と爬虫類に近い外見を持つ細身のヴィランと、最初は地味なオッサンだったが上半身が巨大化し肌色も紫になったヴィランは侵入者に襲い掛かろうとした所、見えない壁に阻まれていた。

 

シレッと展開されていた志村空による風壁である。

 

「さて、俺が残ったのには別の理由があってな。悪いが撃破はお前らでやりな。」

 

風壁が解除すると同時に志村空が下がり、切島と芦戸が前に出る。

 

「「はい!」」

 

「厄介な壁が無くなりゃこっちのもんだ!シャー!」

 

細身のヴィランは水掻きの付いた手を巨大化させ、離れた位置で腕を振るった。

 

「(何か来る、)散開!」

 

「おう!」

 

芦戸は何か攻撃が来ることを感じ、切島に指示を出す。

 

切島も芦戸の言葉に疑いを持たず、迷わず横に飛んだ。

 

そして、突風が2人の間を通り抜け、何かがくり抜かれた。

 

「切島!あの水掻き持ちの攻撃、当たったらアンタでも耐えれないタイプかもしれない。回避で!」

 

「ガァッ!(指示役を先ず潰す!)」

 

紫肌のヴィランが拳を振りかぶり芦戸に襲いかかる。

 

「俺を見ろ、サツマイモ饅頭!レッドガントレット!」

 

芦戸とヴィランの間に割り込んだ切島は、相手の拳に自身の拳を叩き込む。

 

A.Tで踏ん張ることで吹き飛ばされなかった切島は、むしろ相手を弾き返してみせた。

 

「コイツ!?」

 

「ガキ相手に何やってる!シャシャシャァッ!」

 

パワー自慢であった紫肌のヴィランは自身の攻撃が真正面から押し負けたことに驚愕する。

 

相方を押し退け、細身のヴィランが連続して腕を振るう。地面や植木、ベンチなどがくり抜かれるが、

 

「あ、当たらねぇ。」

 

切島は大きな動きで射程範囲から出ることで回避するが芦戸は、

 

「(さっき志村さんが言ってた視覚以外の感覚。緑谷たちみたいに広い範囲は無理でも、)」

 

自分に当たる風や他者からの視線を肌で、触覚で把握していく芦戸。最小限の動きで見えない攻撃を躱し、細身のヴィランの前に躍り出る。

 

「チャンス!」

 

「ヤベ!?」

 

「させ、」

 

紫肌のヴィランが芦戸に襲いかかろうとするが、

 

「テメェの相手は俺だろうが!」

 

再度、切島が立ち塞がり、

 

「(一瞬の我慢、一瞬の間。それから、目の前の相手に向かって全力の一歩を踏みだ、)」

 

目の前の紫肌の巨大ヴィランに拳を叩き込もうとする。

 

「・・・巨大?」

 

紫肌のヴィランは姿を変えた際に上半身が二回りほど巨大化していたが、今回はその比では無かった。

 

「デカ!?」

 

5メートルは余裕で越えるサイズへと急に巨大化した紫肌のヴィランは、更に巨大となった拳を切島に向けて振り下ろした。

 

「ゴォッ、ぉ、おおおぉ!?」

 

全身を全力で硬化させることで、直撃のダメージには耐え切った切島だが、真上から押し潰しにかかる圧力によって身体が軋んでいく。

 

「切島!?」

 

まさかの状況に今度は芦戸が切島の援護に向かおうする。しかし、

 

「シャハッ!」

 

細身のヴィランが再度腕を振るう。

 

その数は三倍に増えていた。

 

「キャァッ!?」

 

ギリギリで回避に成功するも、芦戸はヴィランの変化に唖然とする。

 

水掻きの付いた腕は4本追加され、ヴィランは合計6本の腕を構えていた。

 

「ゴァ!」

 

「ガッ!」

 

巨大化した紫肌のヴィランの追撃により殴り飛ばされ、壁に激突した切島。

 

6本腕の猛攻をなんとか躱し切った芦戸が駆け寄る。

 

「切島!大丈夫?」

 

「あ、ああ。だが、急にパワーアップしやがった。」

 

紫肌のヴィランの個性は凶暴化だと思っていたが、巨大化した。

 

細身のヴィランは水掻きで起こした突風で物体をくり抜く個性だと思っていたが、腕が生えた。

 

「アイツら、個性の複数持ちなんじゃ。」

 

「例の脳無とかと同じってことかよ。イ゛ッ!」

 

切島の痛みに耐えるような声。芦戸が切島の腕を見ると硬質化したはずの腕の表面が砕けていた。

 

「クッ、クソ。」

 

更によく見れば、切島の身体はまるで恐怖に耐えるように震えていた。

 

そこで気がつく。巨大化した紫肌のヴィランのサイズが、かつて自分が遭遇し、切島にトラウマに近い記憶を植え付けた巨体の持ち主に近いことに。

 

「ち、ちくしょう。守れるヒーローになるって誓ったのに、なんで今震えてんだ俺は!?」

 

恐怖に打ち勝てず、一歩を踏み出すことができなかった弱い自分のまま成長していないのか!?と自問自答する切島。

 

そんな切島の手に、芦戸の手が添えられる。

 

「切島は成長してるよ。」

 

とても優しい声で、そう告げた芦戸は切島を背にするように前に出る。

 

「大丈夫。アンタが一歩を踏み出すまでの『間』ぐらい、私が稼いであげる。」

 

ーーーーー

 

「(チッ。先生め、このヴィラン共を支援してんのか。)」

 

下がった位置で戦場を見渡していた志村空こと死柄木は切島たちが戦っているヴィランの様子を伺う。

 

「(脳無ほどの強化はできねぇ代わりに、相性の良い個性なら複数持たせた上で、意識を持ったまま戦える兵士を作れるようになった、とは聞いていたが、俺の予定にぶつけるとか嫌がらせにも程があんだろ。)」

 

視線の先では、芦戸が1人でヴィランたちを相手にしている。

 

相手にしているというより、機動力と感覚を活かしてヴィランたちの攻撃を躱し続けている。

 

「(悪くねぇ。)」

 

その動きを見て、死柄木は芦戸の評価を一段上げる。

 

「(視界以外からしっかりと情報を拾えてんな。だが、あれじゃ有効打は出せねぇ。)」

 

チラッ、と死柄木は未だ震え、動くことが出来ていない切島に視線を向けた。

 

「(必要なことは伝えた。後は自分たちでなんとかしろ。)」

 

ーーーーー

 

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