セントラルタワー上層階
「さっき、凄い音したけど、切島たち大丈夫かな?」
上鳴が仲間の安否を心配するが、
「大丈夫、勝ったみたいだよ。」
耳郎が戦闘の結果を伝えた。
「この距離で分かるのですか?」
八百万が耳郎の知覚範囲に驚くが、
「うん。さっき志村さんのアドバイス聞いてから、欠けてたピースがハマったっていうかさ。凄い調子が良いんだよね。」
「耳郎もかよ!俺も俺も。なんつうか、出来るのにやってなかったことに気がついた、って言えばいいんかな?電波とか電磁波感じる力はあったけどよ、改めて自分の力として認識して使うと精度が全然ちげぇの。」
「うむ!二人のおかげで戦闘を減らしたり、奇襲されずにここまで来れている。」
「二人とも良い能力だ。機会があれば私作のA.Tも使ってもらいたいものだ。」
天哉と巻巻も耳郎と上鳴を褒め称える。
「へー、巻巻もA.T作ってるんだ。私のA.Tもオーダーメイド、とはちょっと違うけど、雄英のサポート科の発目って奴が作ったヤツでさ。」
「なに!その話、もっと詳しく、」
「てかさー、」
そんな会話に峰田が割って入り、
「この状況で会話雑談とか、オメェら余裕あるなチキショー!」
泣きながら絶叫する。
現在、大量に投入された警備ロボットを相手にし、足止めを食らっている状態であった。
巻巻は直接の戦闘力が低い八百万がガードを担当し、残り全員で警備ロボットの波状攻撃を迎撃している最中である。
まあ、その問題も、
「氷華遍在。」
焦凍が新技を炸裂させることで一気に解決する。
広範囲冷気が広がり、行く手を遮っていた警備ロボットの軍団は、一体の漏れもなく凍結された。
「おお、スゲェ、新技かよ。」
「ああ。いつまでも負けてらんねぇからな。本気で緑谷や爆豪に追いつくためには止まってなんかいられねぇ。」
保須市での戦い。
あの時、自分にもっと力があれば、足手纏いになっていなければ、あの凶悪ヴィランを捕らえられていたかもしれない。
そう考えていた焦凍は、これまで以上に訓練に力を入れていた。
しかし、父親の切り札である赫灼熱拳習得の修行を行うためには、まず炎の熟練度を上げる必要があった。
並行して氷の修行も継続はしていたが、伸び悩んでいた焦凍に、意外な所からアドバイスが届いた。
ーーーーー
期末試験から数日後、
「はい、焦凍。母さんから。」
「お母さんからの?しかも冬姉が直接預かって?」
冬美が手渡してきたのは、母親からだというノートであった。
最近になって直接会いに行ったり、手紙のやり取りをしたりと、入院中の母と交流が増えてきたが、
「なんでノート?」
渡されたものの意図が読めない焦凍。
「……もっと勉強しろ、ってことか?」
「ちがうよ!」
相変わらずの天然を発揮する末っ子に長女がツッコミを入れる。
「焦凍が修行に行き詰まってるみたい、って伝えたら、母さんが用意してくれたみたいでね。母さんの実家は氷関係の個性ばかりだから、秘伝?的なコツとかがあるんだって。」
「へー。」
とりあえず、という感じでノートを開く焦凍。
書いてある内容を読み始め、
「焦凍?」
冬美が焦凍に声をかけるが、
「……。」
焦凍は、聞こえていないのか、そのままページを捲り、夢中になって読み進めていく。
「焦凍!」
「わっ。……あ、ごめん冬姉、集中しちまってた。」
「大丈夫?疲れてるのかしら?」
「いや、お母さんがくれたこのノート凄ぇよ。ちょっと試してくる。」
言うや否や、駆け出していく焦凍。
「夕食までには戻ってね!」
ーーーーー
「あれからノートに書いてあった訓練方法やコツを実践したら、氷の細かいコントロールが格段に上がった。あと、氷の扱いが上手くなって、炎で無茶が効くようになって修行が進んだのは嬉しい誤算だった。」
これまで、出力に任せて広範囲を凍結させるか、氷塊を叩き込む、が戦法だった焦凍に、コントロールと炎という選択肢が増えたことで戦術の幅が広がっている。
「追いついてみせるさ。」
差はまだまだある。しかし、諦めるつもりなど微塵もない焦凍は、出久と勝己がいる高みに向かって駆け上がり続けるのであった。
ーーーーー
セントラルタワー、メインコントロールルーム
「チッ、なんなんだコイツらは。おい、放送入れろ。これ以上好き勝手するなら銃口が民間人に向くってな。」
ヴィランのボスであるウォルフラムからの指示に、部下の一人がパネルを操作し始める。
「……オイ、どうした。早く放送を、」
「そ、それが、システムの一部が奪取されたようで。」
「何?」
ウォルフラムは最初、保管庫で作業しているデヴィットを疑うが、
「いや、違うな。保管庫側からじゃこのメインコントロールルームを飛び越えて操作は出来ない。外部からのハッキングだ、調べろ。」
「外部って、ここはタルタロス並みの施設なんですよ。そう簡単にハッキングなんて、」
「だが、事実として一部システムを奪取されているんだ。早くしろ。」
「は、はい、ってなんだ!?今度は凄い勢いでハッキングされてます!」
「クソが!バレたと分かって隠すことを止めたな。オイ!このセントラルタワー自体の警備システム、それだけはなんとしても死守しろ。」
そう指示を出し、メインコントロールから出ていくウォルフラム。
「どこに!?」
「博士たちを急かしてくる。ソキル!お前はガキどもの足止めに行け。」
ソキルと呼ばれた男は怪しい笑みを浮かべ、
「殺してしまっても問題ないんですよね?」
「当たり前だ。むしろ一人残らず殺せ。」
「へッ、了解。」
両腕を刃へと変化させ、両足には特殊な刃機構が付いたA.Tを履いたソキルが雄英生に襲いかかる。
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「レシプロ・エクステンド!」
「ブベッ!」
「ハートビート・インパクト!」
「ゴベッ!」
「トリモチ弾!」
「アンド、電撃!」
「アンド、振動ショック!」
「ギョギョギョバッ!」
「極点凍華!!」
「ギャッ!」
哀れ、劇場版第一作で唯一劇中に名前を呼ばれたヴィラン、ソキルは強化された雄英生6人に瞬殺された。
「鋭い剣筋ではあったが、ステインと比較すると止まって見えてしまったな。」
「A.Tも速かったけど、爆豪の速さとじゃ比較にもならなかったしね。」
「普段から緑谷さんや麗日さんの走りを見てますから、」
「こう言っちゃあれかもしんねぇが、練習不足だよなぁ。」
「つーか、先ず巻巻を狙ったのが許せねぇ。」
「だが、弱くはなかった。こっちの運が良かっただけだ。」
シレッと二つ目の新技で止めの一撃を決めた焦凍は、階段の先を見上げる。
「さあ。そろそろ最上階だ。」
セントラルタワー決戦の決着が近づいている。