セントラルタワー屋上。
『そんな!』
『ことも!!』
『『あろうかと!』』
タワーに設置された放送設備から聞こえてきた声は、どちらもオールマイトにとって聞き覚えのあるものだった。
「メリッサに発目少女か!?」
ーーーーー
メリッサの研究室がある施設の屋上。
「イェス!私、発目明と!」
「メリッサ・シールドです、マイトおじ様!」
妙にテンションの高い二人は、ハッキングを通じてセントラルタワーの現状を把握していた。
二人とも笑顔ではあるが、額には青筋が浮かんでいる。
凄まじい勢いでパソコンを操作しながら、二人は愚痴をこぼす。
「本当に信じられないわ。明とのあの至福の時間を、ヴィラン襲撃なんかに邪魔されるなんて!」
「まったくです!あれほどまでに作業が効率よく進み、新しいアイディアが湯水のように湧き出る体験を、ヴィランごときに妨害されるなど言語道断です!」
会話の最中も手の動きが止まることはなく、むしろラストスパートとばかりに加速していく。
屋上には明たち以外にも、出久たちがヒーローコスチューム姿で佇んでいた。
外見は変わっていないが、内部は完全に別物となっており、各自、身体を動かして使用感を確かめている。
「二人が発明とバージョンアップを繰り返してたからパーティーは諦めてたけど……なんだか、とんでもないことになったね。」
「まあ、もともと俺はパーティーにあんま興味なかったがよ。これなら楽しめそうだ。」
「ウチ、響香ちゃんたちとの約束、破ってもうたよ。」
三人ともリラックスした様子で、I・アイランド各地で暴れ始めているロボットの位置や規模を、風探知で把握していく。
「ここはタワーから少し北東の位置です。スピード自慢の勝己さんが西を、北はお茶子ちゃん、出久さんは東を、」
「いや、僕は南に行くよ。」
セントラルタワーを見据えながら、出久は担当方面を変更する。
「そうですか?この中で最速の勝己さんに二方面を担当してもらうつもりで、この配置にしたのですが。」
「東は別の人に任せるよ。」
「いいんか、出久?」
出久の視線を追い、同じくセントラルタワー、正確にはその内部にいる人物の気配を読み取った勝己が、念のため確認する。
「うん、大丈夫。それじゃあ……そろそろ危ない位置まで来てるみたいだし、行こうか。」
そして、明とメリッサの最終調整が完了する。
「お三方!あの腐れヴィランのせいで作業は中断、完成度は60%前後です!かくなる上は、その試作品をぶっ壊す勢いで使用してもらい、新たなデータ収集を行う所存です!」
「モニタリングは私に任せて、明!出久、勝己、お茶子、三人とも、全力で個性を、A.Tをぶん回して!もう本当に信じられない!私史上最高の発明になるはずだったスーツを、こんな中途半端な状態でお披露目しなきゃならないなんて!」
「メリッサ、気持ちを切り替えましょう!60%の完成度とはいえ、私たちのベイビーです!」
「ええ!そうね、その通りだわ、明。それじゃあ、」
「ええ!」
調整のために接続されていたコードが、
「「ポチっと!!」」
外れる。
ーーーーー
『『ポチっと!!』』
放送設備から聞こえる明とメリッサの声が、同時に何かを押すような擬音を発した瞬間、
火炎が南へと駆け抜け、
暴風がうねりながら北へと侵攻し、
轟音とともに閃光が西へと伸び、
そして、
旋風が東へと突き進んだ。
「いや、最後の誰!?」
状況についていけていないオールマイトが狼狽える。
「今のは……志村さんか?」
「ん?志村?」
「あ、はい。事件解決に協力してくれている、非常に優秀なA.Tライダーの方です。」
「そ、そうか。(お師匠と同じ苗字というだけで反応してしまった。)」
「ハッ!何か挽回の策でもあるのかと思えば、今さら数人戦力が増えたところで、」
まだ余裕を見せるウォルフラム。
「シャア、到着!援護させてもらうぜ、みんな!」
「耳郎から状況は聞いてるよ!硬い鉄塊が相手なら、溶かせる私の出番!」
「私も、鉄塊が相手なら全力の爆音を叩き込めます!」
「お、俺たちも微力だけど……!」
「や、やって、やるぜぇ!」
激闘を制した鋭児郎と三奈が合流し、
制圧力に優れる耳郎、そしてガクブル震えながらも耳郎を守るために上鳴と峰田も屋上へと駆けつけた。
さらに、
『トシ!奴らが個性で操っているのは数体の超大型機だけだ!市民の避難は小型・中型ロボを使ってこちらで進めている!』
『こちらのモニターでも確認しました!超大型は緑谷さんたちが対応してくださいます。皆さんでそのヴィランを撃退してください!それでロボットの暴走も止まりますわ!』
「デイブ!それに八百万少女も!」
メインコントロールルームで、ヴィランに奪われていないロボットに指示を出し、市民の避難を進めているデヴィットと、そのサポートに回る八百万。
集結してきたヒーロー側の戦力に、ウォルフラムの頬が引きつり始める。
「オイ!こっちのロボットで逃げ遅れた人間を優先的に狙え!一人でも多く、」
「あ、あのボス。」
「なんだ!?」
「全機、破壊されました。」
「関係ねぇ!さっさと、や、れ……なに?」
「超大型機械兵器群が……ぜ、全機、破壊されました。」
ーーーーー
I・アイランド西ブロック。
閃光を煌めかせながら、超高速で移動する勝己は、新たに纏ったヒーローコスチューム、そのインナーの性能に感動していた。
「(痛みはあるが、身体に残るようなダメージは一切感じねぇ。良い仕事しやがる……。)」
全身の至る箇所で爆破を起こし推進力を得る勝己にとって、爆破直前の痛みはデメリットであると同時に、本来手のひら由来の個性を全身で発動するための制御基準でもあった。
だからこそ、痛みは感じさせつつ衝撃を逃がし、身体へのダメージを限りなくゼロに近づける新インナーの性能は、勝己を新たな領域へと導いていた。
「ハッ。」
思わず笑ってしまう勝己。
正面には、I・アイランド西側を守護する超大型ロボット。
まるでトラやライオンのような姿のロボットが四足歩行で移動し、足止めのためにデヴィットや八百万が送り込んだ小型・中型ロボットを薙ぎ払っていた。
『ガァッ!!』
相手も勝己に気づいたのか、電磁シールドのようなものを展開し、ミサイルを乱射してくる。
まずは防御を固め、遠距離で牽制しつつ相手の出方を探る戦法。
だがその足先、動物でいう爪にあたる部分には、強烈な電撃がまとわりつき始める。
ミサイルを生き延びたなら、一気に間合いを詰め、爪で仕留める。
ロボットのAIはそう判断し、獲物を見据える。
そして、
気づけば、その獲物は目の前で背を向けていた。
『ガッ?』
AIはセンサー異常の有無を確認しつつ、同時に目の前の獲物へと爪を振り下ろそうと動き、
その巨体は地面へと崩れ落ちた。
『ガッ!?』
そこでようやく理解する。
自身の四肢がすべて砕かれ、ダルマにされていることに。
「自慢そうだったシールドや、その爪を粉砕してもよかったんだがよぉ……今日の課題は“速さ”だったんでな」
勝己は背を向けたまま、理解できているかも分からないロボットに語りかける。
勝己の行動は単純明快。
ミサイルを振り切り、正面のシールドを無視し、側面から逆側へと往復。
その後、正面に降り立った。
往復の際、通り道にあった無駄に頑丈そうで邪魔な柱をブチ抜くおまけ付きである。
「感謝しかねぇな。発目にも、メリッサ・シールドにも。」
言い終えた瞬間、
ロボットが口を開き、内部のレールガンを発射しようとした、その刹那。
モニターにエラーが走る。
閃光。
勝己の姿が視界から消える。
だがセンサーは捉えていた。
頭上にいると。
そして、
圧縮された爆破が撃ち出され、脳天を貫く。
ロボットは完全停止した。
撃破したロボットの頭上で、自身の成果に満足したのか、勝己は苛烈な笑みを浮かべる。
「コイツを使いこなして、超えてみせるぞ、オールマイト」
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