I・アイランド東ブロック
「おー。ヤベェな、ありゃ。」
志村空は目の前の光景に感嘆する。
「ドラゴンだドラゴン、カッコ良いな。」
蛇のような体躯に、鋭い爪を備えた四肢。
西洋のドラゴンというより、日本や中国の龍の外見をした超大型ロボット。その超大型ロボットが、宙に浮いている。
「なるほど、A.Tの技術がふんだんに使われてるわけね。」
北の亀型ロボットが出力任せに海水と竜巻のコンボを放ってきたが、
「あの機械龍、生意気にも風を捉えてやがる。」
東の龍型ロボットはA.Tの技術を使い、風をより正確に操ることで複数の竜巻を従え、鎌鼬を飛ばしていた。
「(さてどうするか、個性使うと正体がバレるし。いや同類たちにはもう気づかれてるっぽいけどよ。)」
んー、と悩みながらも戦場に居続ける志村空を邪魔と判断したのか、龍型ロボットは攻撃を開始する。
『ガァッ!』
竜巻と鎌鼬が同時に志村空を襲いかかるが、
志村空はオールマイトといえど直撃すれば危険な攻撃を前に、全く焦る様子を見せなかった。
「オイオイ、ボスキャラだろ?そんなに焦んなよ。」
そう言うや否や、一度手を叩く。
パンッ、と乾いた音が響き、
志村空を襲っていた風が消え去る。
『ガァッ!?』
自身の攻撃が消えた謎を追求するよりも、より多くの攻撃を繰り出すことを優先した龍型ロボットは、竜巻も鎌鼬も志村空に届くことはなかった。
「ペラッペラなんだよ、テメェの風は。」
志村空の目の前には、高密度に圧縮された風が乱回転しており、それが龍型ロボットが繰り出す攻撃を消し飛ばしていた。
なんとか志村空の防御を破ろうと攻撃を続ける龍型ロボットだったが、
「……面倒だな。」
何の工夫もない攻撃を続けるその姿勢が鬱陶しく感じたのか、志村空はさっさと終わらせることにした。
もう一度手を叩くことで圧縮された風をさらに圧縮する。
その超圧縮された風の塊を龍型ロボットに向けて蹴り放つ。
蹴り放たれた風の塊は、進行上にあったすべてのものを塵とし、消し去った。
『ガッ?』
「おっと、外したか。悪いな、中途半端に削っちまった。」
たった一撃で、龍型ロボットは左半身の大部分を塵とされた。
ロボットは自身の状態を把握しようとするもエラーばかりが表示され、浮かぶこともできず、ただ落下することしかできなかった。
「このまま落として終わりでも良いんだが、無駄な被害を出すと同類たちがうるさそうなんでな。」
志村空は両腕で風を捉え、自身を押し出すことで加速。さらに出久たち同様に空中走行でロボットの目の前まで移動し、
「じゃあな。」
強力な風を脚に纏わせた右後ろ蹴りを龍の鼻先に打ち込んだ。
『……』
その瞬間、A.Tに溜められ超圧縮されていた風が解放され、
龍型ロボットは自身に何が起きたのか理解できないまま、その機体のすべてを塵とされたのであった。
「……自分で言うのもなんだが、個性いるか、俺?」
自身が生み出した惨状に頭を掻きながらぼやく志村空だが、
「さて、本来の仕事に戻りますか。巻巻の方も目当てのもの手に入れたのかね。」
素早く気持ちを切り替え、セントラルタワーへ戻るため移動を開始した。
ーーーーー
セントラルタワー屋上
「オイ!こっちのロボットで逃げ遅れた人間を優先的に狙え!一人でも多く、」
「あ、あのボス。」
「なんだ!?」
「全機、破壊されました。」
「関係ねぇ!さっさと、や、れ……なに?」
「超大型機械兵器群が……ぜ、全機、破壊されました。」
東西南北に配置され、I・アイランドの守護の要となるはずだった4体の超大型ロボットが、わずか10分もしないうちに破壊された。
その事実に、ウォルフラムは開いた口が塞がらなかった。
ーーーーー
メインコントロールルーム
もう一人、同じく開いた口が塞がらない人物がいた。デヴィットである。
八百万たちが出久たちの実力について尋ねられた際に口にした言葉は、謙遜などではなく、本当に桁違いだったのだ。
メインコントロールルームでそれぞれの戦いを見たデヴィットは、なぜオールマイトがあれほどまでに、引退が近いにもかかわらず明るく振る舞えたの
か、ようやく合点がいった。
「トシが、自分すら超えていく可能性に満ち溢れているなどと言った時は、思わず無理だと言いたくなったんだが、」
モニターに映る若きヒーローたちの勇姿は、説得力の塊だった。
「誇張では無かったんだな。」
ーーーーー
「がぁーーー!」
完全に追い詰められたウォルフラムが吠える。
「ボ、ボス!お、落ち着いて!」
「喧しいわ!だが、ああ、落ち着かせてもらうよ。あの方からの情報じゃぁ、今のオールマイトには活動限界があるらしいなぁ!」
オールマイトを指差しながら落ち着くと言っておきながら、喚き散らすウォルフラム。
「さっきもそうだ!俺の鉄を砕けていなかった!何を焦る必要がある、俺がこの力でオールマイトを倒せば良いだけのこと!」
大量の鉄塊が浮かび上がり、オールマイトに殺到する。
「(くぅ!確かに疲労は否めない。だがここで踏ん張らねば、)」
口の端から血を滲ませながら、回避が遅れたオールマイトは迎撃の体勢を取るが、
オールマイトを守るために動く者たちがいた。
「氷嶽連峰!!!」
連なる氷の峰が自身の視界を潰すことなく、正確に飛来する鉄塊を弾き返していく。
「鬱陶しいんだよ、ガキどもが!」
数でダメなら強力な一撃を、と判断したのか再度巨大な鉄塊を作ろうとするが、
鋭児郎がA.T内のエネルギーを解放することで大きく飛び上がり、
「レッド・ハンマー!!!」
その剛拳をもって、まだ構成途中の巨大鉄塊を粉砕する。
「なぁ!?」
「芦戸!」
「はいよ!」
細かく散った鉄屑に対し、三奈が追撃を仕掛ける。
「酸性マックス、」
巨大な鉄塊を一気に溶かすのは無理だと判断し、相棒が塊を砕いたことで生じた屑を溶かすため、アシッドベールによる広範囲展開技を繰り出す。
「アシッドベール・ラトゥス!!」
鋭児郎から三奈への連携で大技は防がれ、操作する鉄も大量に失うウォルフラム。
「次よろしく、耳郎!」
「任せて!」
雄英生の攻勢は続き、飛び上がった耳郎は自身の個性、イヤホンジャックを手の装備ではなく、一つはA.Tと連動した足の装備へと繋げる。
「さぁ、この距離で、オールマイトすら手こずる相手なら加減はいらないでしょ。」
腰のホルスターからアイテムを取り出す。それは、
「マイクだぁ?」
ウォルフラムは耳郎が取り出したアイテムに怪訝そうな表情をする。
加えて、ヒーロー側が勝手にピンチになっており、相手の行動を嘲笑った。
「オイオイ、ヒーロー!周りが見えてねぇのか!?味方が出した酸に溶かされそうだぞ?」
そこまで言って、自分と耳郎、そして酸の位置と角度がまずいことになっていることに気付く。
「まさかそのマイク!?」
「今さら気づいても遅いよ!新技、ハートヴォイス・インパクト、行くよ!」
耳郎はもう片方のイヤホンジャックをマイクに繋げる。
スゥゥッ!!と大きく息を吸った耳郎は、勢いよく絶唱のごとき叫びをマイクに叩き込んだ。
「ーーーーー!!」
歌手を目指していた耳郎の声量は並ではなく、それがイヤホンジャックを通じてマイクからA.Tへと届けられ、増幅される。
「ーーーーーーーーーー!!!」
明特製の装備によって指向性が与えられ、A.Tによって増幅された爆音が轟き、衝撃波を生み出す。
爆音の衝撃波は落下していた酸を一気に吹き飛ばした――
ウォルフラムに向かって。
「やばっ!」
大急ぎで周囲の鉄を操り、目の前に防壁を築くが、爆音と酸の合わせ技により、みるみる壁は削られていった。
「オイ!何してる!?テメェの仕事は、って、」
焦ったウォルフラムは近くにいるはずの手下に怒鳴り散らすが、振り返った先には誰もいなかった。
「いつのまに!?」
「タワー内の仲間はあっさり見捨てたにも関わらず、彼だけは守っていたな。先ほど操っていた大型ロボットがすべて倒されたにも関わらず、だ。俺の予想通り、まだ彼には役割があったようだな。」
「テメェ!?」
鋭児郎、三奈、耳郎からの絶え間ない攻撃に意識を向けさせられていたウォルフラムは、天哉の接近に気付かず、脱出手段を用意させていた部下を確保されてしまった。
「この、クソガァァァ!!」
怒り狂ったウォルフラムは無茶苦茶に鉄をばら撒き、周囲にいる雄英生全員を狙う。
しかし、三奈を硬化を発動させた鋭児郎が前に出ることで庇い、
耳郎を上鳴と峰田がサポートアイテムを使った迎撃で守り、
天哉はヴィラン一人を背負いつつも自力で躱しきり、
焦凍も氷壁で攻撃を防ぎ切る。
「な、な、な……」
最後の足掻きすら完全に防がれたウォルフラムには、もはや言葉すらなかった。
そして、最後の一撃のため、力を溜めに溜めたこの男が前に出る。
「すまないなヴィランよ。教え子たちの勇敢な姿を見せられて昂ってしまっていてね。」
たった一歩、オールマイトが踏み出しただけで戦場の空気が変わる。
「く、くるな。」
「すまないが、」
「くるなーーー!!」
「私が、行く!」
オールマイト目掛け、がむしゃらに個性を操り鉄屑を飛ばすウォルフラムであったが、
通じるわけもない。
「スゥゥゥッマァァァッシュ!!!!」
「ゴぺェェェェッ!」
哀れ、I・アイランドをあと一歩で陥落させかけたヴィラン、ウォルフラムの最後は――
オールマイト渾身の腹パンであった。
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