I・アイランド編、完結。
第71話 I・アイランド編(その後のお話)
セントラルタワー、保管庫
最上階へとやってきた全員の意識が屋上での戦いの結末に向いているなか、自身の目的を果たすために密かに行動している者がいた。
「保管庫がボロボロになっていた時は本気で焦ったが、操作パネルが生きていて助かった。」
一人、集団から離れていた巻巻は、保管されている“ある物”をすでに探し出していた。
「はい、これでっと。」
巻巻がシステムを操作すると、保管庫からケースが一つ現れる。
巻巻がそれを開けると、中にはコアのような機械が複数収められていた。
「ふっふう!ハッキングして目当ての物があることは知っていたが、大当たりだ。四つもあるとはな。」
ケースから機械のみを取り出した巻巻は、保管庫の監視カメラへと視線を向けた。
「まだダミー映像が流れているはずだが、そろそろ帰るか。もう決着がついている頃かもしれんしな。」
その後、ひとりでに再稼働したエレベーターで巻巻が下層へと降りていったことに気づく者はいなかった。
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「お、やっと降りてきやがったな。」
セントラルタワー内は未だ混乱状態であったが、その混乱に乗じてタワー外へと出てきた巻巻を、志村空が出迎えた。
ゴンッ、と鈍い音が響く。
「何すんだよ。」
「私の護衛を放棄して、随分と張り切っていたようじゃないか。」
小さな瓦礫を投げつけられたことに文句を言う志村空だが、避けないあたり、役割を果たさなかったことを少なからず反省はしているようである。
「悪い。一応向こうが先約だったんだ、サポートしてやるって。」
「ふん。まあ確かに。」
鼻を鳴らしながら不満そうにしつつも、納得した様子の巻巻。
「こちらもトガの代理として頼んだ手前、あまり文句ばかり言う気はない。」
しかし、大きく一歩距離を詰め、
「だが、頼むぞ。私が捕まったりしたら困るのは、お前だけじゃないんだからな。」
志村空は肩をすくめながら、
「安心しろ。その時は、全員で――たとえお前がタルタロスに入れられても助けに行ってやる。」
冗談めいた口調ではあったが、その言葉には確かな重みがあった。
そう二人はそのまま並び、夜の街へと歩き出す。
「そういえばクルル、目当てのモンはあったのか?」
「もちろん。むしろ大当たりだったよ。」
巻巻は懐から小さな機械を取り出す。
「オリジナルレガリアのコアだ。」
「……で、それがあるとどんなメリットがあるんだ?」
「A.Tの出力が上がる。」
「……他は?」
「ぶっちゃけ、昔と比べてA.Tの技術は上がってるしな。それこそ今日、超大型のロボットを撃退していた3人と、お前が使っているA.Tとか、レガリア・オブ・レガリウスと、出力とA.Tネットワークの支配権の関係以外は、ほぼ遜色ない能力を持ってる。」
「……なら、結局それを使うメリットはなんなんだ?」
「技の威力が上がる、とか?」
「なんで疑問形なんだよ。」
「使ってみないと分からん。」
「「……ま、なるようになるか。」」
どこか緩い空気を漂わせながら、二人は宿泊予定のホテルへと戻っていった。
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「さあクルルちゃん!どこから回りましょう!」
「風邪が治ったばかりなんだ、あまり無理をするなよ。」
翌日、風邪が治ったトガと巻巻がⅠ・エキスポをエンジョイする中、
「あなたも社会勉強してきなさい。」
と、某モヤっぽい保護者に帰らせてもらえず、
「帰ってゲームやりたい。」
死んだ顔で二人に付き合わされる志村空がいたらしい。
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「警察には全て話したよ。最後の最後で踏みとどまったとはいえ、このI・アイランドにヴィランを招き入れることを許した最大の要因は、当然僕だ。」
「デイブ……。」
親友と話し合うオールマイトの表情は、悲痛に満ちていた。
「おいおい、トシ。なんて顔をしているんだ。平和の象徴がそれじゃあダメじゃないか。」
「しかし!私がもっと早く、君にワンフォーオールについて話していれば、こんなことには……」
「平和の象徴最大の秘密なんだろう?そう簡単に話せるものじゃないさ。安心してくれ、刑務所に入るわけじゃない。だが、I・アイランドにはいられなくなる。メリッサには悪いことをした。」
デヴィットが真っ直ぐオールマイトを見つめる。
「トシ、断ってくれてもいい。だが、もし許されるのであれば一つ頼みがある。」
「親友の頼みだ。なんだって言ってくれ。」
「メリッサを雄英のサポート科で受け入れてもらうことはできるだろうか?」
「メリッサを?アメリカではなく?」
「私は良くも悪くも有名だ。そんな私の名は今回の件で悪い方に大きく傾く。そしてそれは、研究者となるメリッサの足を大きく引っ張ってしまう。」
「そ、それは間違っていないだろうが、いいのかデイブ?メリッサと離れ離れになるということだぞ。」
「ああ。本人は了承してくれている。まあ、すごく怒られてしまったがな。」
ハハハ、と笑う親友。しかし、そんな彼がどれほどの思いと決意で、何よりも大切な娘を自分に託そうとしているのか、オールマイトは理解していた。
「……任せてくれ、デイブ。校長も理解のある方だ。メリッサの編入も問題ないだろう。」
「ああ。トシ、私の宝をどうかよろしく頼む。」
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「え?それじゃあメリッサさん、雄英に通うんですか?」
出久の声が周囲に響く。
「うん。パパとの話し合いの後、すぐマイトおじ様が雄英に確認してくれて、休暇明けからは私も雄英生よ。」
「メリッサさん。えっと、大丈夫ですか?」
I・アイランドでの生活から急に一人で異国へ渡る。そんな状況を笑顔で話すメリッサの様子を、むしろ心配したお茶子が声をかける。
「ふふ。心配してくれてありがとう、お茶子。正直、不安はあるし、パパと離れるのはすごく寂しい。」
お互いアメリカにいれば会える機会も増えるかもしれない。しかし、デヴィットの予想では彼はアメリカ政府の何らかの研究所へ行く可能性が高い。
どのみち会えないのであれば、父親として娘を可能な限り良い環境へ送り出したい。
だからこそ親友がいて、日本最高峰の学びを受けられる雄英を選んだ。
娘として、その気遣いを無駄にはしたくなかった。
「でも、お茶子や出久、勝己に明、それにマイトおじ様たちもいてくれるなら大丈夫かな、って。」
そう笑顔で語るメリッサに嘘はないと感じたのか、
「うん、分かった。これから改めてよろしく、メリッサさん。」
「はい!私としてはメリッサと一緒に研究できるのは非常に嬉しいです!」
お茶子とメリッサの会話に飛び込んできた明。彼女なりに励ましているのかもしれない。
「ハハハ。賑やかになりそうだね。」
「喧しく、の間違いだろ。そういえば出久。」
「ん?何、カッちゃん?」
「例のスーツ、調整は夏休み中に済ませるぞ。」
「うん、僕も今度新技見せるよ。」
「また新技作ったのか?今度こそ尾白が発狂するぞ。」
「そこまでじゃないでしょ。」
激闘が近づいている予感を抱きつつも、この穏やかな時間を大切にしようと、出久は仲間たちと笑い合うのだった。
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その後、Ⅰ・エキスポを楽しんだり、オールマイト主催でI・アイランドに来ていたA組生徒たちはバーベキューを楽しんだりし、夏休みを満喫することができたのであった。
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とある病院の地下空間
「さて、とりあえずの戦力はこれくらいかな?」
オールフォーワンは周囲を見渡しす。
暗闇の中、モニターの光が周囲を照らす。
「僕の愛しき石ころと、憎きハエ。緑谷出久に爆豪勝己。」
モニターには、出久と勝己。
「長年の宿敵であり、オモチャ。オールマイト。」
オールマイト、そして、
「そして、教え子にして僕の器となるべく育てた弔。」
志村空と名乗っていた死柄木弔が映っていた。
画面を見つめるその視線には、
確かな感情が宿っていた。
「彼らを最高の祭りに招待してあげよう。」
その言葉に空気が騒めく。
「祭りか、いいな!血は見られるのか!?」
「アンタ、本当にそればっかね。でもワタシも新しい力を試したくてうずうずしてるわ。」
「肉、断面、肉面……綺麗な肉面を、早く見たい。」
オールフォーワンの下に集められた逃亡中の極悪ヴィランたち。
悪意と狂気の笑い声が響く。
さらに、その背後に続くは脳無の群れ
決して雑魚ではない灰色の体色をした中位脳無が複数体。その中に混じる、黒。
「せっかくだし、私も参加させてもらうよ?氷叢の穢れも来るのだろう?彼に、魔王殿から頂いた力、氷叢の“極地”を見せてやりたい。」
ニケと名乗った男も参戦を表明する。
オールフォーワンは立ち上がり、静かに告げる。
「さあ。楽しみながら、新たな時代を迎えようではないか。」
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合宿から神野が何話になるか想像できない。
頑張るので応援よろしくお願いします。