「……ということがあって、I・アイランド旅行はなかなかにハードだったよ。」
アハハ、と夕食中に笑いながら旅行の話をする出久に、
「あら、大変だったのね。ちゃんとお茶子ちゃんや明ちゃんのこと守れた?」
息子と同じようにアハハ、と笑い返す母親。
巨大ロボと戦闘したことを、「大変」の一言で済ませるあたり、今の引子の肝っ玉は凄まじく据わっている。
「うん、大きな問題はなかったよ。母さんの方は特に何もなかった?」
「ええ。最近はお買い物なんかもQちゃんが手伝ってくれるから助かってるわ。」
「ピピ!任せろ。合体変形ロボたるこのコーラルQが引子を必ずお守りする。」
ソファで自身を充電しながらテレビを観ていたコーラルQが元気よく返事をする。
「うん。合宿もあるし、今度もよろしく、コーラルQ。」
「よろしくね、Qちゃん。」
「ピピ。」
緑谷家、団欒のひと時である。
ーーーーー
「へー、ニュースでI・アイランドで事故があったって言ってたけど、テロだったのね。で、アンタはあまり活躍しなかった、と。」
「ビビ。光己、それは違う。テロが起きた場所、その時勝己たちいた位置、それら以外の様々な情報を考慮するに、勝己たちの活躍は最善に近いものだった。」
「あら、そうなの?訂正するわ、勝己、良くやったじゃない。」
「オウ。だが今回は俺らじゃなく、タワーにいた切島たち。……あー、クラスメイトたちが根性を見せた感じだな。」
「お、勝己が他者を褒めるのは珍しいな。それだけその子たちが凄かったのかな?」
「ああ。頑張ってるよアイツら。」
二年前から息子の性格がだんだんと柔らかくなっていることに喜びを感じていた勝は、その息子が素直に同級生を褒めたことに驚くと同時に感動を覚えた。
「ビビ。過去の勝己と現在の勝己のデータを比較するに、今の勝己は所謂デレ期というやつか?」
「「ブフッ!?」」
父母が同時に吹き出し、
「誰がデレ期だぁ!?このポンコツロボ!?」
「勝己は頭が悪かったのか?今の会話の流れでデレ期なのは勝己しかないだろう。それに私がポンコツなら世界のほとんどの機械はポンコツだ。」
「ーーーーー!?」
勝己は声にならない叫びを上げ、我慢出来なくなった勝と光己は大笑いを始めてしまう。
爆豪家、夕食後のひと時である。
ーーーーー
「いらっしゃい、メリッサさん。ようこそ麗日家へ。」
メリッサを茶葉(さよう・麗日母)が出迎え、
「それに、お茶子に明ちゃん、お帰りなさい。」
「ただいま〜。」
「ただいまです、ママさん!」
同様に娘たちも迎える。
「メリッサさん、大したおもてなしは出来へんけど、自分の家だと思って寛いでな。」
「いえ、そんな!?」
「ほんまに遠慮なんかせんでええよ、メリッサさん。私たちが無理矢理引っ張ってきたんやもん。」
「ですです。ママさんたち麗日家の懐の広さは凄まじいです。」
「あら?明ちゃんも私たちの家族でしょ?」
「……です!」
茶葉の言葉に少し顔を赤くした明が明るく返事をした。
I・アイランドから必要最低限の荷物だけを持って日本にやって来たメリッサ。他の荷物は今しばらくI・アイランドに残るデヴィットが、新しい住居が決まり次第送ってくれることになっている。
来日後はオールマイトと一緒に行動しようと考えていたメリッサであったが、
男一人暮らしの環境に何の準備もなく17歳の女性が突入するのは問題が多いだろうと、お茶子がストップをかけた。
色々と確認した結果、メリッサがすぐに住み始めるのは無理と判断。
女性が住める準備が整うまで、メリッサは麗日家に滞在することとなった。
「今日明日、お父ちゃん出張で帰ってきいへんから今晩は早めに寝て、明日皆んなで女子会しよか。」
翌日、麗日建設社員兼護衛の一人、A.Tが使える社員Bさんも合流してメリッサのためのショッピング、お茶会などが行われた。
初めは硬さがあったメリッサも少しずつ慣れてきたようで、夕食あたりには自然な笑顔を見せられていた。
ーーーーー
夜、まるで軍隊の特殊部隊のような装備を纏った者たちが、お茶子たちの地元の路地裏に多数展開し、
その全てが今、地面に転がされていた。
「終わりましたけど、オールフォーワンの手下じゃないですよね、コイツらは。」
「ああ。アメリカの企業とか、裏の組織とかの兵隊やら傭兵だな。見覚えのある顔もチラホラいる。」
「デヴィット・シールドがI・アイランドから出たは良いけど直ぐ政府の保護下に入っちゃったから娘の方を狙ったんだろうね。」
兵隊たちは、麗日建設が誇るA.Tが使える社員、Aさん、Cさん、Dさんによって戦闘不能にされていた。
「今アメリカにいる元同僚たちから返信が来ました。政府側も、裏社会側も圧力をかけてくれるそうです。」
連絡をとっていたAさんが、その結果を報告し、
「じゃあ僕から情報送っておきます。コイツらの顔、個性因子は分析済みなんで、A.Tネットワークにインターネット、ついでにアメリカ中の監視カメラから情報引っ張ってコイツらに指示を出した黒幕引っ張り出しときますね。」
端末を操作し、情報を精査していたCさんが答える。
そんな中、Dさんは二人に背を向け歩き出した。
「圧力をかけても、本物のバカは気にしないもんだ。ちょっと出張してくる。」
「あまり無茶はしないでくださいよ。」
「あいよー。」
緩い雰囲気で手を振りながら離れていくDさんを、AさんもCさんも、相変わらずだな、と苦笑いで見送った。
「な、なんでアンタたちが、日本にいる。しかもデヴィット・シールドの娘の護衛として。」
まだ意識があった兵隊の一人がAさんたちを見上げる。
兵隊の疑問に答えることはせず、Aさんは躊躇いなくその兵隊の意識を刈り取った。
「まあ、そりゃ驚くよね。かつてアメリカの裏社会に君臨していた組織の幹部たちが急に出てきたら。でも僕らがここにいる理由、彼らに説明したところで1ミリも伝わらないよね。」
あっけらんに語るCさんの言葉に、Aさんは真剣な表情で反応する。
「だが事実として、出久と勝己はオールフォーワンに遭遇した。あまつさえ、戦闘し、撃退すらしてみせた。やはり、あの方の判断は間違っていなかった。」
かつて、オールフォーワン打倒のために集められた裏組織に所属し、少年少女たちによって敗北した過去を持つAさん、そしてCさんは天を見上げる。
「ならば。敗者たる私たちの役目は、彼らが憂いなく戦いに集中できるよう、支えることだ。」
「相変わらず真面目だね。とりあえずコイツら片付けておくよ。」
「ああ、よろしく頼む。」
その後、麗日建設A.Tが使える社員たち傘下のA.Tチームが兵隊たちを貨物船まで運び、裏ルートでアメリカへと送り返した。
ーーーーー
アメリカ某所
「今回の件から手を引くとはどういうことだ!」
とある軍事企業の幹部が凄腕とされていた傭兵に怒鳴り散らしていた。
「そのままの意味だ。俺は今回の件から手を引き、アンタらとも縁を切る。」
「何をそんなにビビっている!?たった一回襲撃が失敗しただけだろう!?」
「……今裏社会の話題は、そのたった一回の襲撃失敗で持ちきりだ。奴らがまだ生きていて、今回の件に関わっている。手を引くのに十分な理由だ。」
「奴ら?どこの誰がは知らんが、」
「知らんのなら黙っていろ。アメリカ最強と戦って生きて帰ってくる化け物を筆頭に、異常者揃いなんだよ。」
そう言って傭兵は企業を去っていった。
こういったことが複数の組織で起き、実力者ほど今回の件から手を引くのが早かった。
そして、警告を無視し、再度日本に兵を派遣しようとした組織や、その組織と裏で繋がっていた政府関係者たちは、
「さて、労働者は労働しに会社に帰りますか。」
結果、社会的にも物理的にも潰されたらしい。
⸻
雄英バス乗り場
「全員揃っているな。」
「ハイ!雄英高校ヒーロー科1年A組、20名全員バスに乗車済みです!」
相澤の確認に対し、事前に点呼を済ませていた天哉が勢いよく答えた。
「よし。では今回一緒にバスに乗る他の面々を先に紹介しておく。」
「他、ですか?」
天哉の疑問に答えるように3人の生徒がバスに乗り込んでくる。
「はい!A.TやA.Tの技術が使われる方が増えている、という喜ばしい状況に私、発目明も整備担当として今回の合宿に同行します!」
「知ってた。」
「ケッ、嫌な予感しかしねぇ。」
「明ちゃん、こっちおいでやー。」
明の後に続くのは――
「よろしくお願いします!あ、爆豪さん。お疲れ様です!」
「よろしく、お願いします。」
普通科C組から、
瓦斯島、心操、合宿参戦!