僕、出水洸汰はヒーローが嫌いである。
昔は好きだった。
大好きだった。
大好きな両親の仕事であり、周囲の人々が両親を褒めているのを見ると、まるで自分が褒めてもらっているかのように喜んでいた。
でも、
大好きだった両親がヴィランに殺害されてしまったあの日、
すべてが変わってしまった。
個性をひけらかすヒーローたちが気持ち悪い。
そのヒーローたちをはやし立てる人々が気持ち悪い。
自分もいつかヒーローになるんだ、と語り合う子供たちの輪が気持ち悪い。
つい最近まで………………その輪の中にいた自分が、
……………キモチワルカッタ。
自分を引き取ってくれたマンダレイには感謝している。
でも、マンダレイはヒーローだから、
関わる人は自然とヒーロー関係者だ。
みんな良い人だ。
僕のことを気にかけてくれる。
でもダメだ。
どうしても、
ヒーローという個性/両親を殺した力が、
ヒーローという立場/両親が僕を一人にした原因が、
キモチワルい。
…………………はずだった。
今僕の目の前にいるのは、どうしようもないほどにヒーローなのに、
カケラも気持ち悪いなんて、
思えなかった。
ーーーーー
合宿所までの道のり
「洸汰くん!ちょっとスピード出し過ぎだよ!」
「うるせぇ!なんだよ?あんだけ偉そうに付いてくるとか言ってたくせに、この程度のスピードにビビってんのかよ?」
車通りが少ない道路(この先にはプッシーキャッツの私有地ぐらいしかないため)を共に走っている出久と洸汰。
「そうじゃなくて、前、前。」
「ハッ!この道路は車なんか滅多に通らな、ぃぃぃいい゛!」
ギリギリ、という程ではなかったが危なかったため、出久が神速で洸汰に接近、小脇に抱えて急いで飛び上がる。
その後、明らかに逆走の車線を、
「ヒャッハーッ!」
「俺が先頭だぁ!」
「馬鹿野郎!先頭は俺ダァァァ!」
世紀末か貴様ら、と言いたくなるような集団が通り過ぎた。
「こういった車通りの少ない道路だと、あんな感じのマナーの悪いライダーが出没しやすいんだ。気をつけてね。」
「う、うん。………って、高っ!?」
落ち着いた洸汰はようやく自分の状況を把握する。
出久に抱えられていることを気にするよりも、地上から数メートルの高さにいることにビビり、大声を上げてしまう。
「おっと、いつもの勢いで飛び上がっちゃった。」
洸汰を抱えた出久が地上に降りていくが、
ーーーーーッ、
「はぇ?」
まるで、そこに本物の坂があるかのように、何もない宙空を滑り、道路へと着地、そのまま走り出した出久の技に洸汰は間の抜けた声を出してしまう。
「ごめんね洸汰くん、急に抱えたりして。ビックリしたでしょ。……洸汰くん?」
反応がないため呼びかける出久だが、洸汰はそれどころではなかった。
たった一度のジャンプ、
たった一度の技。
しかし、ライダーならば見ただけで、その技術の異常さを理解してしまう。
今の洸汰は出久に対して、本気でA.Tをやっていないだろ!なんて口が裂けても言えなくなってしまった。
「(どうしよう。謝った方が良いかな。)」
洸汰が悩んでいると、
「………危ないな。」
出久の呟きが聞こえ、前から騒音が聞こえ始めた。
洸汰が道の先を確認すると、一台のトラックが道路を走っているが、その周囲をガラの悪いライダーたちがちょっかいをかけながら並走していた。
「オイオイ、トラック!俺たちの至高の暴走を邪魔してんじゃねぇよ。」
「罰として荷物を路上にぶち撒けさせろよ。」
「勘弁してください!今日の昼までに届けなきゃいけない荷物なんです!」
……いや、ほんとどこの世紀末よ。
「洸汰くん、ごめん。もう少し我慢できる?」
「へ?我慢って何を、ってワッ!?」
一声かけてから、出久は小脇に抱えていた洸汰を背中に背負い直し、
「フッ、」
「わぁっ!」
瞬きの間に加速した出久は、一瞬でトラックやライダーたちに追いつく。
「シッ!」
さらに、脚の一振りで熱風を生み出しライダーたちをトラックから引き離した。
「なんだ!?」
「熱ぃ!?」
急な熱風に戸惑うライダーたちをよそに、出久はトラックと並走し、
「運転手さん、この人たちは僕が足止めしておくので行ってください。」
トラック運転手も急な展開に戸惑いつつも、出久の制服に気付く。
「すまない、助かった!合宿所に運ぶ食材やお弁当なんだ。」
「そうなんですね。ならなおさら先に行ってください。」
「ありがとう!」
そのままスピードを上げて走り去っていくトラックを見送り、出久はA.Tを止め、後ろを振り返る。
出久に妨害されたライダーたちは、顔を引きつらせ、全身で怒りを表していた。
「オイオイ、兄ちゃん。何、俺たちの至高のランの邪魔してくれてんの?」
「罰として、そのA.Tを含めた身包み全部寄越せや。」
完全にチンピラか野盗の類であるが、
「(走るトラックと並走して、嫌がらせまでこなす実力はあるんだよね。)」
もったいないな〜、と内心で呟く出久だが、背中に抱えられている洸汰はそれどころではなく、
「おい、なんで止まってんだよ!相手二人だし強そうだぞ、さっさと逃げよう。」
「オイオイ、ガキンチョ。まさか俺たちの至高の走行から逃げられるとでも思ってんのか?」
「罰として、そのイカす帽子をもらうぜ。」
「ヒィッ。」
背中から出久に声をかけるも、出久の返答よりも早くライダーたちが威嚇してきたため、洸汰はさらに怖がってしまう。
「大丈夫。」
たった一言、
背中にいる洸汰にはただただ頼もしい声が聞こえ、恐怖が和らいだ。
「僕がいるよ。」
ーーーーー
たった一言、
「大丈夫。」
ゾッッッ!!!
どこかの制服を着た兄ちゃんが、背中にいるガキンチョに声をかけた。その瞬間、ガキンチョの顔が和らいだ。
声に込められた力強さを感じたのだろう。
そして俺たちも感じた。声に込められた威圧を。
まるで巨大な猛禽類に、獲物として見下ろされているような感覚を味わわされる。
「オイオイ、兄弟。訓練のためにこんな田舎まで走ってきたら、まさかまさかの至高の大当たりか?」
「馬鹿が。まあだが、テンションが上がって罰を受けるような行動をしてしまったのは俺も同じか。」
まだシャドウすら見えない。
それだけの実力差があるのか、まだ相手がカケラも本気を出していないのか。
………おそらく両方だろう。
これは、ヤらずにはいられねぇ。
「オイオイ、兄ちゃん。確かにアホなことをしてたのは俺らだが、割って入ったからには覚悟できてんだろうな!?」
「ここで正式なパーツウォウは無理だが、敗北には罰を、勝利には栄光を、それが掟だ。負けた方はA.Tを置いていく、だ。」
「A.Tライダーとして、至高のプライドをもっているなら、この勝負を受けてくれるな?」
先ほどまでのふざけた雰囲気を引っ込め、本気の気配を出す。
チビでもライダーの端くれなのか、俺たちの本気を感じ取ったガキンチョが騒ぎ始めた。
「受けなくて良いだろ!お前さっき凄く速かったじゃん、あの速さなら捕まらないって!」
「うん、そうだね。でも、そうすると次は別の誰かが襲われちゃうかもしれない。それなら今ここで彼らに勝っておいた方が良いと思うんだ。」
ハッ!
「至高の俺たちを相手に、勝つ前提で話を進めんのは流石に舐めすぎじゃねぇか!?」
「やはり罰が必要か?」
「勝負を挑んできたのはあなたたちです。なら、バトルの内容はこちらが選んでも?」
俺たちの言葉もガキンチョの警告も無視して、兄ちゃんが話を進めてくる。
上等すぎるぜ兄ちゃん!
「ああ。それが至高に妥当だ。」
「では、タグでいきましょう。」
「タグ?……値段つけるやつ?」
兄ちゃんが出した競技名に覚えがなかったガキンチョが、頭にハテナを浮かべてやがる。
「ま、簡単に言えば鬼ごっこだな。英語だとtag(タグ)なんだよ。」
「へー。」
「では競技方法は2対2だ。」
すると、相棒がルールを追加した。
「へ?」
「彼も負けた際の罰の該当者だ。試合に参加するのは道理だろう?」
道理ではあるが、
「おい。別にガキンチョは巻き込まなくても、」
「いや、アイツは格上どころの実力者ではない。二人がかりだけでは勝負にすらならないだろう。」
改めて兄ちゃんを見て思う。
レベルが違う。
だが、だからといって挑まないのは別だよな。
「だったらルール追加。僕らが逃げる側で、時間は5分でお願いします。これは洸汰くん分のルール追加です。」
すかさず兄ちゃんがルールを追加してくる。
「んじゃ最後は俺か。通常のタッチの基準と同じで、鬼側の手のひらがそっちの体に当たったら俺たちの勝ち。他の部位はノーカン。その代わり、個性を含めた互いへの攻撃は可とする。」
「はぁ!?攻撃も個性もあり、とか。そんなの無茶苦茶じゃんかよ!?」
ガキンチョは慌てるが、兄ちゃんは動じることなどなく、
「………意外ですね。逃げる側の攻撃を封じたり、どの部位で触ってもタッチにしたりしても良かったんですよ?」
「せっかく至高のバトルができんだぜ?んな冷めるようなルール入れっかよ。」
「罰を受けるのは俺たちか、貴様らか。さあ、やろうか。」
おっと、いけねぇ。
「俺らの自己紹介がまだだったな。」
テンションフルマックスでやり合うんだ。名乗らずなんつーのは無作法だよな。
「大上大和、いずれ轢藍の道を極める男だ。」
「大河剣、牙の道を進む者だ。」
「緑谷出久、炎の道。」
「「「!?」」」
マジで至高レベルじゃねぇか!?
「それじゃあ、始めましょう。」
オッシャ!突っ込むぜ!
ーーーーー
バトル開始から数分。
出久の背中で洸汰は震えていた。
気がついたら巻き込まれていたバトルが怖くて、ではない。
いや、迫り来る攻撃が怖くないか?と問われれば、凄く怖い、が正しい答えである。
大上と大河と名乗った二人は決して弱くはなく、洸汰がネットで見かけるライダーと比較しても上級の実力者だということは、その走りを見れば分かる。
しかし、
「(背負われてると、よく分かる。コイツらの攻撃はこの兄ちゃんに絶対当たらない。)」
「ヌッン!」
大上が張り手を繰り出す。
厳つい体格をしている大上は相撲スタイルの戦い方が得意であり、連続で繰り出された張り手は、まるで壁が迫ってきているように感じられるが、
「(あ、当たらん!)」
「壁のように見えても、実際は手のひら二つ分の面でしかありません。」
洸汰を背負っているため普段よりは余裕を持って避けているが、それでも出久は直径2メートルほどの範囲から出ることなく攻撃を躱し、必要に応じて迎撃し続けている。
「シッィィィ!」
大河も連続して蹴りを放っていく。
空気を切り裂くキレのある蹴りではあるが、
「まだまだ未熟です。」
出久はそれらを片手でいなす。
圧倒的安心感を醸し出す出久の背にいる洸汰が震える理由。
それは、
「(わ、わー。僕、もしかして、本物の炎の少年に背負われてる?)」
洸汰がA.Tを始めたきっかけは例の動画である。
風の少女と炎の少年のA.Tダンスの動画は、両親が亡くなり冷え切っていた洸汰の心を確かに揺さぶったのである。
何度見たか分からないほど動画を見返したからこそ分かる。
ほぼ確実に、出久は炎の少年である。
だがそうなると、洸汰の心情は複雑である。
今の憧れであるA.Tライダーが、かつての憧れであるヒーローを目指している。また、自分を置いてどこかに行ってしまうかもしれない。
そう考えると、自分の感情が整理できず、涙がこらえきれなくなってきていた。
そんな洸汰の様子を背中で感じつつも、最後の最後まで集中を切らすことも隙を見せることもなかった出久は、5分間を完璧に逃げ切ってみせるのであった。
ーーーーー
「結局、個性は使われませんでしたね。」
「ん?ああ。俺の個性はさっきのバトルじゃ使い道がなかったからな。だが、個性もA.Tも変わんねぇだろ?だからこのルールで良いんだよ。」
「ライダーとしてA.Tだけで戦うも良し。個性と併用するも良し、だ。ついでに、俺は身体強化の個性を使っていたぞ。」
「途中で牙が生えて、スピードが上がりましたもんね。」
「掠りもしなかったがな。………それよりも、大丈夫か、あの子供は?」
バトル後、A.Tを渡してこようとする二人であったが、出久はそれを固辞。代わりに、自分たちがここを通ったことを他言無用とし、すぐにここを立ち去ること、そして今後他者を襲わないことを約束させた。
「この後、少し話してみます。」
「そうか。それじゃあ俺たちはそろそろ行くよ。お前のような至高のA.Tライダーとバトルできて良かったよ。」
「貴様との約束、俺たち自身への罰として必ず守ると誓おう。」
「はい、さようなら。トラック襲撃とか普通にヴィラン行為なんで二度としないでくださいね。」
「「反省します。」」
大上、大河と別れた出久は、洸汰に近寄っていく。
洸汰も一人で泣いて、少しは落ち着いたようである。
「大丈夫?洸汰くん。」
「う゛ん。大丈夫。」
ライダーたちと遭遇する前と今では、洸汰の反応はだいぶ改善されているが、今度は泣いてしまった原因が分からない。
出久は洸汰に目線を合わせ、
「洸汰くん。なんでヒーローが嫌いなのか、なんでA.Tを始めたのか、教えてもらっても良いかな?」
洸汰はポツリ、ポツリと自身の身の上、周囲に抱いてしまっている印象や感情、A.Tのことや、動画のことを話してくれた。
「………うん。ありがとう洸汰くん。ごめんね、辛いことを話させてしまって。」
また涙を流し始めた洸汰は、自分で拭いながら話を続ける。
「炎の少年に憧れてたから、緑谷兄ちゃんに会えて嬉しい。でも、やっぱりまだ、ヒーローは好きじゃない。」
「いいんじゃないかな、ヒーローが嫌いだって。」
「へ?」
雄英高校ヒーロー科の生徒に、ヒーローを嫌いで良いと言われ、混乱する洸汰。
「人それぞれだよ、好きも嫌いも。もちろん僕はヒーローを目指している身だから、好きになってくれたら嬉しいけど、みんながみんな同じなんていうのは無理な話だからね。」
「いいの?ヒーロー嫌いなままでも?」
「うん。あ、でも、できればこの合宿中、ヒーローを目指している僕らじゃなく、僕ら一人一人を見てほしいな。」
「一人一人を?」
「そう。さっきも言ったけど、好き嫌いは人それぞれ。ヒーローを目指してても、気が合うこともある。」
出久自身、嫌い、とまでは言わないが、タイミングや共通の話題がなかったため、ほぼ話したことのないクラスメイトだっている。
「だから、初めからヒーローを目指しているから、で嫌うんじゃなくて、まずはゆっくり様子見から、とかどうかな?」
「………それなら、少し、できそう。」
ポツリポツリだが、前向きな答えを返した洸汰。
「良かった!それじゃあ、まずは僕から。A.Tについて一緒に走りながら雑談するのはどうかな?」
「………ゆっくりで良い、って言ったわりにグイグイくるじゃん。」
洸汰のツッコミに、ハッ、とした表情になった出久。
「僕の悪い癖かな。ごめ、」
「でも!」
「ん?」
俯きながら、洸汰が出久の言葉を遮る。
「A.Tに関して雑談ならしてあげても良いよ、緑谷兄ちゃんなら。」
出久は満面の笑みを浮かべる。
その後、合宿所までの道のりを、A.T談義に花を咲かせながら走った結果、
「緑谷兄ちゃん!次!次の技教えて!」
「凄いね洸汰くん。もうさっき教えた技ができるようになったの?」
「うん!」
「なら次はこの技にしようかな。」
「オイ、出久!その技教えんなら的はテメェがやれよ!」
「え?でも爆豪兄ちゃんも凄いライダーだから大丈夫じゃない?」
「………いつでも撃ってこいや、ガキ!」
「はい!」
「洸汰くん、がんばりやー!」
「さっき調整しましたが、ぐんぐんレベルが上がってますね。」
「よし!訓練頑張ろうね、洸汰くん。」
「うん!」
こうなった。
ーーーーー
山道
「いやー、兄弟よ。今日はなかなかに至高な一日だったな。」
「そうだな。あと、テンションの上げすぎには注意だ。今度こそ本当に罰を受けてしまう。」
「荷物ぶち撒けるぞ、とか言ってたもんな。」
夜道ではあるが、一応上級の実力を持った大上、大河の二人は、悠々と山道をA.Tで走り、帰路についていた。
「街に戻ったら、また鍛え直しだな。」
「ああ。だが、あの人たち以外であのレベルがいるとはな。世の中はやはり広い。」
「いや、あの建設会社と雄英高校が魔窟なだけじゃ、」
「オイ。」
ゾッッッ!!!
圧が降りそそぐ。
先ほど出久から発せられたものが闘志だとすれば、今自分たちを襲っているのは、
殺意。
勢いよく上を向くと、上から巨体が降ってきた。
「危ねぇ!」
「!?」
咄嗟に左右に分かれて避ける二人だが、巨体の着地と同時に、
ゴッッッ、と地面が揺れ、道路に大量のひび割れが発生する。
巨体が立ち上がる。
「お前ら、この道の先から来たよな?何があるか教えてくれよ。」
左目に大きな傷を持った大男が質問してくるが、
「何にもなかったぜ。ひたすら森しか見えなかったから、至高の引き返しをしてきたんだ。(なんだコイツ、絶対ヤベェ奴だ。)」
「事前調べをしなかった俺たちへの罰だな。(ストリートにもいないぞ、こんな殺気の塊のような男は。)」
「あん?そうなのか?オイ!道の先にはなんもねぇらしいぞ!?」
大男が後ろに声を飛ばす。すると、
「馬鹿ねぇ。明らかに私たちを警戒して、本当のことを言ってないだけじゃない。」
夜にも関わらずサングラスをかけた、男、いや女? 性別不詳の人物が現れた。
「何、そうなのか?ならコイツらは嘘つきだ。だったら罰として、」
ゴッ、と大男が一歩踏み締めただけで、道路のコンクリートが砕けた。
「遊んでもらおう!!」
巨体から筋肉が溢れ出し、大男が大上に殴りかかった。
「いきなりだな!」
ドンッ!
大男の拳と大上の掌底が激突する。
「あ゛あ゛?」
一発で吹き飛ばせると思っていた大男は、怪訝そうにする。
「やけに重ぇな、そういう個性か?」
「はっ!さあな!(俺の個性は自重増量。自身の重量を増やす個性で、インパクトの瞬間だけ発動することで打撃の威力を上げる。)ダァッ!」
ドッ!
A.Tによる加速と、個性による威力強化を受けた大上の一撃が、大男を弾き飛ばす。
「おお!期待してなかったが、思いのほか悪くねぇじゃねぇか!」
「では追撃だ。」
一撃を入れられたにも関わらず、嬉々としている大男の目の前に、次は大河が現れ、
「ジャァッ!」
個性、半獣化による身体強化で威力と速度を上げた蹴りを顔面に叩き込み、
「ぎゃっ。」
大男をさらに数歩後退させた。
「ハッ、どうだ不審者ども!至高の俺たちを舐めんじゃねぇぞ!」
「俺たちを見くびったことに対する罰、受けるが良い。」
大上、大河が並び立つ。
そんな二人を、
悪意は嘲笑う。
「ハッ、………ハッハーーーッ!良いじゃねぇかテメェら!遊び相手としては十分。本気を出しても良いが、」
ニィィ、と笑った大男の体から蒸気が噴き始め、
「せっかくだ。この新しい力の試運転相手をしてもらおうか。」
すると、後ろにいた人物も、
「あら。それなら一人は私にちょうだい。私もこの身体での個性の使い心地、試してみたかったのよ〜。」
布を被った武器のようなものを抱えて前に出てくる。
「………兄弟、どうやらちょっと至高レベルでヤバそうだ。」
「今日の行い。いや、これまでの行いへの罰、か。」
相手が自分たちよりも格上であり、殺意を持って近づいてきていることも理解している二人は、
「上等だ!A.Tライダーの底力、見せてやるよ!」
「ジャァッッ!!」
ライダーとしての意地を持って、立ち向かっていった。
ーーーーー
数十分後
「ま、楽しめたんじゃねぇか?」
「そうね。ターゲットの大半はA.T使いでしょ?良い練習になったんじゃないかしら。」
「確かにな。だか、戦いながらそこそこ移動させられちまったのは面倒だったな。」
「良い運動になったけど、もう疲れちゃったわ。移動は明日にして、今晩はもう休みましょう。」
森の中に去っていく謎の人物たち。
残されたのは、A.Tの残骸。大量の血痕、撒き散らされた人だったナニか。
殺意が、悪意が、迫っている。
大上大和→狼、大和→狼、日本→日本狼→絶滅→死
大河剣→タイガー、サーベル、→サーベルタイガー→絶滅→死
死亡フラグを抱えていた二人です。