A.T使ってガチバトル   作:ken4005

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第79話 洸汰くんライジング & 

 

駆けろ、駆けろ、駆けろ――!

 

肺が焼ける。

 

心臓が破裂しそうなほど脈打っている。

 

それでも、

 

止まるな。

 

「ハッ、ハァッ!!ちゃんと10秒待ってやったぞ!テメェのルール通りだ、ガキ!そら逃げろ!逃げ切ったならお前の勝ち!捕まったらお前の負けだぁ!」

 

背後から迫るのは、血狂いマスキュラー。

 

凶悪なヴィランで、僕のパパとママを殺した仇。

 

僕は、出泉洸汰は、そんな化け物に勝負を挑んだんだ。

 

なぜその選択をしたのかは分からない。

 

緑谷兄ちゃんからのアドバイス。

 

冷静な部分が、あのまま泣き叫んでも殺されるだけだ、ということを察したのかもしれない。

 

「さぁ逃げろ逃げろ!まだ1分も経ってねぇぞ、大丈夫か、そんなんで!」

 

後ろを向くな、前を見ろ。

 

大丈夫、風を切って走っている時は、なんとなく周囲の流れが分かる。

 

アイツは、マスキュラーは後ろにいるけど、まだ追いつかれない。

 

後ろを向く時は、本当のピンチの時だけ。

 

それまでは、

 

全力で走れ、ライダーだろ、出泉洸汰!

 

「良い逃げっぷりだな、小僧!そういや一昨日、二人組のライダーをぶっ殺したんだがな、アイツらも逃げっぷりだけは立派だったぜ!」

 

――二人組のライダー?

 

頭が、揺れる。

 

「なんだ、知り合いだったか?悪いな、殺しちまった!」

 

思考が一瞬、止まる。

 

その一瞬で、

 

距離が――縮まる。

 

「無様だったぜ?最後まで勝とうとしてやがった。無駄な努力だったのによぉ!」

 

耳障りな笑い声。

 

軽い。

 

あまりにも軽い。

 

――命が。

 

……だから、なんだよ、

 

歯を食いしばる。

 

だからどうした!

 

今は――僕とコイツの勝負だ!

 

逃げ切れば、

 

それでいい!

 

「お前も、アイツら同様、肉片にしてやるかよ。俺に、血を見せろやぁ!!」

 

ドンッ――!

 

空気が爆ぜる。

 

――来る!

 

流れが変わる。

 

背後の気配が、

 

消えた。

 

「上!」

 

反射で軌道をずらす。

 

直後、

 

轟音とともに地面が砕けた。

 

「いいねぇ、よく避けた!」

 

――上から、落ちてきやがった。

 

「狩りは獲物の活きが良いほど面白ぇってのは本当なんだな!」

 

楽しんでいる。

 

完全に、遊ばれている。

 

(それでも――)

 

まだ、いける。

 

涙は流すな。視界が濁る。

 

声を出すな。酸素が減る。

 

怒りは吐くな。溜めろ。

 

燃やせ。

 

エネルギーに変えろ。

 

駆けろ――!

 

頑張れ、僕。

 

頑張れ、出泉洸汰!

 

――――ッ!

 

「!」

 

あと30秒。

 

あと30秒、逃げ切れば――勝ちだ!

 

「2分も逃げてるぜ、ガキ!だがそろそろ、」

 

ゾワリ、と背筋が凍る。

 

――ヤバい。

 

何かが来る。

 

避けられない。

 

逃げられない。

 

「血ィ――」

 

なら。

 

ここで勇気を絞りきれ!

 

「おい、血狂いマスキュラー!」

 

足を止める。

 

振り返る。

 

ほんの一瞬の“間”。

 

「見せって、ああ?……諦めたのか?」

 

その隙に、

 

叩きつける。

 

「お前のそのヴィラン名、ダサくない?パパとママのウォーターホースの方が格好良いよ!」

 

空気が、止まる。

 

「ああそうか……そんなに、死にてぇか!」

 

――よし、乗った!

 

これで……あ、僕が足を止めたから、ちょっとズレた。

 

わぁぁぁぁぁあああああ!

 

まずい、マズイ、不味い!

 

もう後は、最後の切り札しかない!

 

急いで手に水球を作る。

 

今の僕じゃ、水を噴射してもアイツを止められない。

 

だから、A.Tで生み出した風で、

 

水球を蹴り飛ばす!

 

「ウォーター・スマッシュ!」

 

風で加速した水球が、

 

一直線に、顔面へ。

 

「ワップッ!なんだ、水?個性か?」

 

直撃。

 

足が、止まる。

 

「これが、最後の悪あがきかぁ!?」

 

拳を振り上げ、突っ込んでくる。

 

圧倒的な暴力な。

 

それでも、怖くない。

 

「大丈夫!」

 

来てくれるって信じてる。

 

「僕のヒーローが来た!」

 

「イフリート・スマッッッッシュ!!!!」

 

ゴッッッッウ!!!!

 

炎が閃く。

 

炎を纏った脚と、ヴィランの巨大な拳が激突し、衝撃が弾ける。

 

世界が塗り替わる。

 

そして、

 

「ゴッッッッ!」

 

まるで激突なんてなかったように、血狂いマスキュラーの巨体がを吹き飛んだ。

 

…………あれ?アイツ、死んでないよね?

 

ーーーーー

 

「洸汰くん!大丈夫?」

 

マスキュラーを蹴り飛ばした出久が洸汰に駆け寄る。

 

「緑谷兄ちゃん、僕勝ったよ!」

 

「勝った?」

 

「うん!アイツとバトルしたんだ。逃げ切れば僕の勝ちって。」

 

その言葉を聞いた瞬間。

 

出久の胸の奥で、

 

張り詰めていた何かが、

 

――切れた。

 

「(……間に合った。)」

 

本当に、ギリギリであった。

 

あと一歩遅れていたら。

 

あと一瞬遅れていたら。

 

――届いていなかった。

 

出久の中で怒りが燃え上がっていた。

 

猛烈な怒りは脳無を瞬殺した所から始まっている。

 

洸汰とヴィランの位置、自分と洸汰との位置、そして距離。

 

もし、ヴィランがすぐに洸汰を殺そうとしていた場合、完全に間に合わない致命的な距離だった。

 

だからこそ、一縷の望みに賭けて、全身全霊で駆けた。

 

間に合え、間に合え、間に合え!と何度心で唱えたか分からないほどに駆けた。

 

しかし、状況は予想外な方向に傾き、洸汰はA.Tを駆使し、自力で生き残る術を見出した。

 

「す、凄いよ洸汰くん!」

 

出久の声は、震えていた。

 

「本当に凄い……!」

 

心の底からの言葉と涙が溢れる。

 

「へへっ、緑谷兄ちゃんとマンダレイのお陰だよ。緑谷兄ちゃんが向かってくれてるって教えてくれたら、勇気が出たんだ。」

 

「(そんなことはない。この子は、自分の力だけで――生き延びたんだ。)」

 

「ガァァァァァァ!!」

 

「え!?」

 

「………。」

 

出久に蹴り飛ばされたはずのマスキュラーが、

 

再度、動き始めた。

 

焼けただれたはずの腹部。

 

それが、

 

――再生していく。

 

「ふぅ、危ねぇ危ねぇ。危うく一発で終わっちまうところだったぜ。」

 

笑う。

 

平然と。

 

立ち上がった頃にはマスキュラーの体から火傷の跡は消えていた。

 

「な、なんで!?」

 

「強ぇな、お前が緑谷だろ。」

 

「回復の個性、ですか?」

 

「そうだ!」

 

笑いしながら近づいてくるマスキュラー。

 

「オールフォーワンの奴がくれてよぉ。回復よりも強化の個性を寄越せって言ったんだが、役に立つっていうから受け取ったんだ。そしたら本当に役に立ったよ!」

 

出久は洸汰に一声かけ、前に出る。

 

「そうだ緑谷!そんなお荷物は放っておけ!俺は映像を見せられてから、お前と殺し合うのを楽しみにしてたんだ、ハァッ!」

 

マスキュラーが吠えると同時に、体から蒸気が上がり始める。

 

「俺の個性は筋肉増強!さらに筋力増強も与えられたことで、増やした筋肉をさらに強化!今の俺を止められる奴なんざ、」

 

「時間が勿体ない。」

 

「ああ?なにッ――、」

 

次の瞬間、

 

膝が砕けた。

 

「ガァァッ!?」

 

無言。

 

躊躇なし。

 

ただ、叩き潰す。

 

隙だらけで間合いに入ったマスキュラーの膝にイフリート・スマッシュを放った出久。

 

マスキュラーの左膝が粉砕される。

 

「ガッ、ギッ、そ、そうだ、やろうぜ緑谷、い、今回復さ、せ、え?」

 

マスキュラーの目の前に立つ出久は、

 

脚を振り上げていた。

 

「全力で防御しろ。」

 

「ちょ、待ッ、」

 

咄嗟に両腕に全力の筋肉増強、筋力増強、さらに回復まで発動して防御したマスキュラーだったが、

 

「ハァッ!!!!」

 

ゴッッッッウ!!!!

 

そんな防御などものともせず、踵落とし×イフリート・スマッシュを、マスキュラーの脳天に叩きつけた。

 

「―――――ッ!」

 

声なき叫びを上げ、叩きつけられたマスキュラーの頭蓋が地面にめり込む。

 

沈黙。

 

完全に沈黙。

 

それっきり動かなくなった。

 

「………え、死んでないよね?」

 

まさかの展開に唖然とする洸汰。

 

先ほど一声かけられた際、

 

『すぐ戻らなきゃいけないんだ、ごめんね。』

 

と言われていた洸汰。

 

ピクリとも動かないマスキュラーに、ヤバいのでは?と思ってしまうが、

 

「大丈夫。」

 

出久は淡々と言う。

 

「防御の上からだったから死んではいないよ。回復持ちは厄介だから、当分動かないように本気で叩きつけたけどね。」

 

「へ、へーー。」

 

洸汰は思う。

 

「(緑谷兄ちゃんの本気とか絶対に喰らいたくない。)」

 

「さぁ乗って、戻るよ。」

 

「う、うん!」

 

戦いは、まだ終わっていない。

 

次は――、

 

第79話 洸汰くんライジング & 怒り100パーセント





やっぱこの展開はダメだったのでしょうか?

洸汰くんが活躍する場面を書きたかった。

A.Tがあれば逃亡戦ぐらい行けると思いました。

頑張って書くので、感想、評価お待ちしています。

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