A.T使ってガチバトル   作:ken4005

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短いですが、楽しく書けました。

感想、評価をお待ちしています。




第83話 鋭牙と炎牙

 

そこそこ前のとある病院地下

 

「んで、先生。俺たちにそいつの手伝いをしろと?」

 

「ああ。お願いできるかな、弔?」

 

薄暗い病院の地下。

 

その奥深くで、オールフォーワンは穏やかな声で告げた。

 

それは依頼というより、すでに決定事項を伝える響きに近い。

 

彼が声を向けたのは、自らの後継とされる青年――死柄木弔。

 

雄英生襲撃の際、この私――ニケの手助けをしろ、と?

 

「この顔色の悪い青年が貴方の後継?」

 

私は死柄木を値踏みするように眺めた。

 

猫背。覇気のない姿勢。乾いた空気。

どう見ても、王の器には程遠い。

 

「後進育成は苦手ですかな?」

 

嘲るように言ってやる。

 

だが、

 

「先生。弱くはないが、同類たちの相手はキツイだろ。」

 

死柄木弔は、こちらを見ようともしなかった。

 

挑発に乗るでもない。怒るでもない。

ただ、興味がない。

 

それが何よりも癪に障った。

 

死柄木はオールフォーワンへと向き直り、

 

「失敗する前提の作戦の尻拭いは御免だぜ?」

 

「貴様!」

 

あまりにも無礼な態度に、私は反射的に殺意を滲ませた。

 

身の程を教えてやろうと、技を発動しようとした――その瞬間。

 

「止めておきたまえ。」

 

「な!?」

 

オールフォーワンが制止の言葉を発した。

 

だが、それはどちらに向けた言葉だったのか。

 

気が付けば、

 

死柄木弔の手が、私の目の前に翳されていた。

 

あと数センチ。

 

その腕が伸びるだけで、

 

死の五指が、私の顔に触れる距離。

 

「………」

 

背筋を、冷たいものが這い上がる。

 

「僕の後進育成能力に問題はない、と理解してもらえたところで、」

 

オールフォーワンは何事もなかったかのように、作戦の説明へ移ろうとする。

 

しかし、

 

「良いよ、先生。他ならないアンタの頼みだ。」

 

死柄木は踵を返した。

 

「そいつがピンチになれば、俺とスピナーが助けに入る。」

 

「………ああ。それで十分だよ。」

 

「………」

 

オールフォーワンの言葉に、返事すら返さない。

 

それは忠誠ではない。

服従でもない。

 

不遜。

 

師へ向けるには、あまりに尖った沈黙だった。

 

脳無の調整に没頭していたドクターの額に、青筋が浮かび上がっているのが見えた。

 

しばし、地下に沈黙が落ちる。

 

やがて黒霧の下へと移動した死柄木が、ふと振り返った。

 

「俺とスピナー以外の奴らは、好きにやるぞ?」

 

その目は、異論を認めないと語っていた。

 

「俺たちはそういう集まりだ。」

 

「………良いだろう。」

 

話すことはもう無い。

 

そう言わんばかりに、

 

オールフォーワンも、

 

死柄木も、

 

互いに背を向けた。

 

「(コイツら本当に師弟か?)」

 

両者が互いに向け合う感情。

 

そこにあったのは、敬愛でも信頼でもない。

 

疑心。

 

そして、敵意。

 

私のことなど相手にしていないその態度は気に食わなかったが、

 

「最後に笑うのはこのニケだ。」

 

その時の私は、確かにそう信じていた。

 

ーーーーー

 

「とか偉そうにしてたくせに、この体たらくかよ。」

 

爆炎が弾ける。

 

ニケを爆破しようと振り抜かれた勝己の右腕と、弔の蹴りが鍔迫り合うように激突していた。

 

空気が軋み、火花のように衝撃が散る。

 

ニケを背後に庇う弔を、

 

「ハッ、大変だな!そんな奴のお守りか?」

 

勝己が背部から爆炎を吹かし、強引に押し込んでいく。

 

不愉快そうに眉を寄せた弔は、

 

「面倒だよ。本当に、」

 

脚に纏った暴風で、爆破の圧を受け止めた。

 

だが、

 

「パワー勝負は向いてねぇんだよな!」

 

押し合いを嫌うように、弔が身を引く。

 

勝己はさらに踏み込み、逃がさまいと爆炎を噴かせた。

 

その瞬間。

 

パンッ、

 

乾いた音が鳴る。

 

「チッ!?」

 

勝己の本能が、危機を先に捉えた。

 

手を叩いた音と同時に、空間が炸裂する。

 

空気が球状に弾け、見えない衝撃が周囲を削った。

 

「個性抜きでもクソ危ねぇ技使うじゃねぇか!」

 

「初見で躱しておいてよく言う!」

 

「悪りぃな、初見じゃねぇ!」

 

「経験豊富なことで!」

 

爆破を防ぎ、受け流す弔。

 

不可視の攻撃を嗅ぎ分け、躱し続ける勝己。

 

特A級ライダー同士の戦闘は、速度も、判断も、殺意の濃度も、常人のそれではない。

 

見るだけで学ぶことだらけの戦い。

 

だが、

 

「みんな下がって!」

 

物間の叫びが飛ぶ。

 

「動ける人は動けない人のサポート!」

 

八百万と協力して焦凍を運びながらも、その顔には焦りが滲んでいた。

 

「遠慮も加減もマジでない!」

 

爆破と炸裂がひしめき合う戦場。

 

さらに、そのすぐ傍では、

 

業炎と斬撃が互いを喰い合っていた。

 

「ハーーーァァァ!!!」

 

「熱いわ!加減しろ!この野郎!」

 

「退けぇぇぇぇ!!」

 

「聞いてねぇ。」

 

スピナーは短く息を吐く。

 

そして、

 

「都合があんだよ、こっちにも!」

 

再び、出久とスピナーが激突した。

 

出久がフェニクス・スマッシュを連射する。

 

炎の津波が、森を焼き払う勢いで襲いかかった。

 

「セイッ!」

 

対するスピナーが放ったのは、牙が幾重にも重なり合った斬撃の壁。

 

炎の津波が、真正面から切り裂かれる。

 

しかし、

 

「ジィッッッダッ!!!」

 

直後に叩き込まれたスマッシュの連打。

 

炎と衝撃が連鎖し、牙の壁が崩壊する。

 

道が開いた。

 

出久が一気に距離を詰める。

 

だが、スピナーとて、特A級のライダー。

 

ただやられるだけの男ではない。

 

スピナー自身も前へ出る。

 

そして制止。

 

その一瞬で、制動エネルギーを限界まで溜めきった。

 

「ゼェッッッイ!!!」

 

最大規模の斬撃が、牙を剥く。

 

鋭牙一閃!!!

 

「(って、ヤベッ、本気出し過ぎたか!?)」

 

相手を殺しかねない技を放った。

 

その自覚が、スピナーの脳裏を過る。

 

しかし、

 

今の出久に、

 

「セントエルモス」

 

回り道など、

 

脳の片隅にすら無かった。

 

回避などせず、

 

繰り出されるは、

 

「クロスファイア!!!!」

 

十字炎牙!!!!

 

炎牙が、鋭牙に喰らい付く。

 

威力では、炎牙が優っていた。

 

しかし、

 

ザッッッン!!!

 

切り裂くことにおいては、鋭牙が勝った。

 

牙と牙の激突によって生まれた衝撃波が、両者を後退させる。

 

ビッッ、

 

血飛沫が宙を舞った。

 

競り勝った鋭牙は、薄くではあるが、確かに出久の身体を切り裂いていた。

 

「………スゥッ!………ハァァァ。」

 

あろうことか、出久は戦闘中に目を瞑った。

 

そして大きく深呼吸する。

 

荒れ狂いかけた感情を、呼吸ひとつで押し込めるように。

 

そんな出久の隣に、勝己が着地した。

 

「血抜きして、ちったぁ落ち着いたかよ。」

 

「………うん、大丈夫。」

 

遅れて、スピナーの隣には弔が着地する。

 

「おぉ、やるじゃねぇかスピナー。善良な高校生ぶった斬った気分はどうよ?」

 

「良くはねぇな。」

 

再び向き合う、四人の規格外。

 

出久と勝己は、ほぼ同時に思考を走らせる。

 

「(さて、この中で最速の俺が逃げた野郎を追うのがベスト。)」

 

「(暴走して迷惑かけたけど、僕は足止めが最善手。)」

 

「「(なら!)」」

 

二人が動き出そうとした、その刹那。

 

「さて、十分だな。」

 

出鼻を挫かれた。

 

「あ゛あ゛!?」

 

勝己が怒気を剥き出しにする。

 

だが、既に黒霧のワープゲートが展開されていた。

 

弔たちは背を向ける。

 

「悪かったな、緑谷。」

 

「じゃあな同類。………忘れるなよ。」

 

それ以上語ることすらなく、二人の姿は闇の中へ消えていった。

 

次の瞬間、

 

「え?あれ?」

 

出久と勝己の姿も、物間たちの前からかき消えた。

 

ーーーーー

 

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