感想、評価お待ちしております。
「ぜひ仲間に入れてくれたまえ。」
ブチッ、
その瞬間。
俺の中で、普段から必死に抑え込んでいた何かが、完全に千切れ飛んだ。
唐突に現れ、
勝手に喋り、
人の戦場に当然みてぇな顔して割り込んできやがった鉄仮面。
あまりにも癪に障る。
フルクラスター。
全身から爆炎を噴き上げる。
「寝言は、」
爆圧で身体を押し出す!
「寝て死ねぇ!!」
ダブルインパクト!!!!
最大火力砲。
渾身の爆炎を、オールフォーワンに向けて放つ。
「ハッハァッ!!」
だが、
野郎は迎撃を選んだ。
「なんじゃあ!?」
例の鋲突とかいう黒い爪。
さらに、角みてぇな個性。
その合わせ技か?
異形の武器が瞬時に生成される。
だが、
規模が違う。
以前見た時とは、明らかに。
「デケェ!?」
俺のダブルインパクトが、
「そぉらぁ!」
真正面から薙ぎ払われた!?
爆炎が割れ、
衝撃波が大地を抉る。
「ラァッ!!」
ダブルブラスター!!!!
間髪入れずに撃ち込む。
貫通特化の爆砲。
一点に収束した爆圧が、薙ぎ払いを強引に弾き返した。
危ねぇッ。
ほんの一瞬でも遅れてたら、押し負けてた。
「イイねぇ、爆豪勝己。良ぉく、防いだぁ!」
耳障りな声。
舐め腐った口調。
こっちは無駄撃ちさせられたってのに。
「シッ!」
だが、
その距離まで迫った出久を、どう捌く?
「ハハッ。ゼェイッ!」
「くっ!?」
ガッッッン!!
金属同士が激突したみてぇな衝撃音。
ふざけんな!
あの野郎、
角の個性で作った棒――いや、棍か。
それで、
出久の蹴りを弾きやがった!
「今度はコッチの番かなぁ?」
棍の形状が変わる。
骨が軋むような音を立てながら伸び、
鋭く収束していく。
「デザインセンスは無くてねぇ。」
突撃槍がオールフォーワンの手の中で完成した。
「無骨で魔王らしくないんだよ!」
槍が振るわれる。
出久も即座に応戦。
火花。
衝撃。
暴威と暴威がぶつかり合う。
つか、
あの野郎なんで、
「でぇぇぇりゃぁぁぁ!!」
「フハハハハハハッ!」
接近戦で出久とやり合える!?
イフリートソールでの超連打だぞ!?
蹴撃の嵐。
本来なら、まともに付き合える奴なんざいねぇ。
「それ突撃槍ですよ!振り回したりして、使い方間違ってませんか!?」
「突撃以外にも、相手を叩き潰す殴打武器でもあるんだぜ!」
会話しながら、
唐突に奴が退がる。
無駄な動きじゃねぇ。
俺から見ても、
完璧なタイミングでの間合い作り。
「こういうのは、どうかな!?」
突撃槍が、
まるで生物みてぇに脈動した。
うねり、
伸び、
そして、
巨大化。
「それはさっき見ました。」
薙ぎ払いが来る!
空気が裂け、
大地を吹き飛ばす暴圧。
「イフリート・スマッシュ!!!!」
出久の蹴りがその暴圧を真っ向から粉砕、
奴の武器がひしゃげた。
ザマァみ――、
………あ?
視線が落ちる。
足元。
そこに浮かんでいた。
………光輪?
ゾッッッ、
本能が絶叫した。
フルクラスター・ターボ!!!
超爆速。
全力回避。
爆炎で空間を蹴り飛ばし、無理矢理軌道を変える。
そして、
今の今まで立っていた空間に、
風穴が開いた。
「本当に、君たちは良く避ける!!」
っぶねぇ!!
背筋が冷える。
一瞬でも反応が遅れてたら終わってた。
「正しく使うじゃねぇか、その槍!」
「突撃槍だからね。」
クソが!
出久の一撃で粉砕された武器が、
一瞬で元通りになってやがる。
「………テメェ、どういう心境の変化だ。」
時間稼ぎ。
なんでも良い。
少しで良いから間が欲しい。
俺も出久も、
黒脳無との連戦後なんだよ!
「戦い方が随分と違ぇじゃねぇか。」
乗ってこい!
「………そんなに警戒しないでくれたまえ。」
良し、反応した。
オールフォーワンがこちらに向き直る。
「すまないね。年甲斐もなく、はしゃいでしまっていた。」
武器の調子を確かめるように、
突撃槍を一回、二回と振るう。
「この個性は異角と呼んでいてね。」
まるで、
友人に語りかけるような声音だった。
戦闘中だってのに、
コイツは本気で会話を楽しんでやがる。
「おそらく。僕が一番最初に奪った個性だ。」
「へぇ、そりゃ長い付き合いなこって。」
会話の途中で、
出久が俺の隣に並ぶ。
呼吸は荒い。
だが、まだやれる、
と目が語っている。
良し。
少なくとも仕切り直しはできた。
「先日君たちと出会い、僕の中で、何かが大きく変わった。」
保須市の件。
………だよな。
「自分から出ていって、オールマイト以外に遅れを取ったのはアレが初めてだったんだ。」
突撃槍を、
一回、
二回。
ゆっくりと素振りする。
その度に、
空気が重くなる。
「だからね。鍛え直したんだ。」
ズンッッッ、
圧が増す。
「緑谷出久と打ち合えたのは、感覚強化と身体強化、そして身体操作、それらを最適化したんだ。」
突撃槍が消える。
「光輪は良い個性だろう?コイツは扱いを極めれば爆豪勝己、君やオールマイトにだって追いつける。」
手が翳される。
「そして、鋲突。」
伸びる、黒い爪。
予想はしてた。
だが、
前よりも速ぇ!
さっきの拘束具野郎の刃の群れ。
あれが子供遊びに感じるレベルの速度と鋭さ。
「コイツもお気に入りさ。」
だがなぁ、
「「舐めるな!!」」
左右へ分かれる。
同時攻撃。
「エアフォース・バレット!!!」
「A.Pショット・ブラスター!!!」
真空の弾丸。
爆裂の砲撃。
十字砲火が、オールフォーワンへ襲いかかる。
「なんだ、つれないじゃないか。」
撤退は出来ねぇ。
この野郎を下手に自由にしたら、
誰かの個性が奪われる。
2年前、知った。
理不尽は常に、
日常の影に身を潜めている。
どれだけ強くても、
オールマイトですら、
全ては守れない。
だが、
「目の前に現れた理不尽だけは、」
「ん?」
「見過ごせねぇ。」
だから、
「俺は、キャプテン・ダイナマイト。」
全身全霊で、
「手の届く範囲の理不尽は確実に、」
殺す。
ーーーーー
ゾッッッ、
オールフォーワンは確かに感じた。
緑谷出久の狂気に並ぶ、
もう一つの異常。
爆豪勝己の、
殺意。
ボッッッッン!!!!
「クタバッ、」
「(なんと、)」
危機的状況。
目の前には火花を散らす手。
オールフォーワンの思考速度が極限まで加速する。
世界がスローになる。
「(最適化した感覚強化でも、)」
それでも、
「ッレ!!」
「(反応しきれない!)」
爆光が煌めく。
次の瞬間、
オールフォーワンの身体が、
爆炎の中から弾丸のように撃ち出された。
「ゴッ、(スピードはオールマイト級だが、威力は物足りな、)」
「オラ、行ったぞ。」
「しまっ、」
勝己の超爆速を超えた速度。
その速度に対応しようと、意識を向け過ぎた。
その結果、
オールフォーワンは、
致命的なミスをした。
緑谷出久を、
見失った。
そして、背後。
「イフリート・スマッシュ!!!!」
「衝撃反転!!!」
燃え盛る蹴りに対し、
ギリギリで振り返ったオールフォーワンは、
反射的に手を翳した。
「あまり、みくびっ、ッッッ!?」
火花。
――どころではない。
灼炎が、
爆ぜた。
言葉も出ない。
オールマイトに殴られたような衝撃が、
後頭部へと突き刺さった。
「(衝撃反転に一切逆らわず、二撃目だと!?)」
出久は、
攻撃が反転された直後、
全力の脱力を敢行。
弾かれた右脚を軸に、
左の回し蹴りを放ったのである。
「(これ、は、不味、い、か?)」
最適化された個性。
鍛え直した個性。
使い慣れた個性。
それらでも、
仕留められない。
その事実が、
オールフォーワンに確信を抱かせる。
「(これから先の戦いに、)」
鉄仮面の下で、
怪しく笑う。
「(今の身体はもう付いていけない。)」
ーーーーー
広場
「これで全員か?」
広場へと戻ってきた生徒たちを見渡しながら、ブラドが問う。
泥だらけ。
傷だらけ。
肩を貸し合い、息を切らしながらも、
B組の生徒たちは、誰一人欠けることなくそこに立っていた。
つい先ほどまで、ヴィラン蔓延る森に散らばっていたことを考えれば、それは奇跡に近い。
「はい。B組全員揃いました。」
拳藤が即座に答える。
疲弊はしていているが、
安堵が宿る声だった。
怪我人は多い。
満身創痍の者も少なくない。
それでも、
全員が無事に広場へ帰還を果たしていた。
「だけど、A組の方が、」
言いかけたその時。
「先生!」
縋るような怒号が広場に響いた。
鋭児郎だった。
「さっき感じたあの気配、ぜってぇヤバい! 爆豪たちの援護に行かしてください!」
恐怖。
そして、友人たちを放っておけない焦燥。
鋭児郎は未だ視力の回復しない相澤へ向け、頭を下げて願い出る。
しかし、
「駄目だ。」
返ってきたのは、一切の迷いもない即答だった。
「~~~なんで!?」
鋭児郎が叫ぶ。
だが、
「分かるだろう? 今のお前なら。」
相澤は静かに言った。
見えていない。
それでも、意識を森の奥へ向けている。
「この圧。そして今なお続く、緑谷と爆豪の戦闘音。」
遠方から響く轟音。
爆音。
大地を揺らす衝撃。
時折混じる、耳障りな破砕音。
それら一つ一つが、
今、繰り広げられている戦闘の異常性を物語っていた。
「ぐっ。」
鋭児郎が悔しそうに俯く。
強くなった。
以前の自分なら理解すらできなかっただろう。
だが今なら分かる。
あの戦場は、自分たちが踏み込んで良い領域ではない。
そんな鋭児郎の隣へ、三奈がそっと寄り添った。
同じ不安を抱え、彼女もまた何も言えない。
相澤は周囲全体へ聞こえるよう、はっきりと宣言する。
「プロ含め、この場にいる誰も、あの戦場に踏み入ることは許可しない。」
その言葉に、場がざわついた。
「良いのかイレイザー? 生徒たちが戦っているのだぞ?」
虎が確認するように問いかける。
当然の疑問だった。
教師として。
ヒーローとして。
子供を戦場へ置き去りにするなど、本来ならあり得ない。
だが、
「我々が行っても、かえって邪魔になるだけです。」
相澤は冷静に返した。
感情を押し殺した声。
「でも、援護くらいなら、」
「ピクシーボブ。」
なおも食い下がろうとするピクシーボブを、マンダレイが止めた。
そして気づく。
相澤の手が、血が滴るほどに握り締められていることに。
「(あの二人は、発目がI・アイランドで発明したっていう新素材で出来たインナーを着ているはず。その二人が……。)」
爆音が轟く。
炎風の熱が、ここまで届く。
そして、
それらを迎撃したかのような衝撃音が、森全体へ響き渡った。
空気が震える。
地面が揺れる。
誰もが理解してしまう。
あの戦いは、
自分たちの力の範疇ではない。
「救助に来るヒーローが、オールマイト、エンデヴァー、もしくはベストジーニストでもない限り、今の指示は撤回しない。」
「~~~じゃぁせめて、はぐれちまったらしい青山と、麗日たちの捜索に、」
鋭児郎が叫ぶ。
友のために何かしたい。
その一心だった。
だが、
その言葉を塗り潰すように、
死の圧が森を埋め尽くした。
ーーーーー
「(撤退だな。)」
内心でそう結論を出したオールフォーワン。
鉄仮面の背部は砕け、
形勢は明らかに押されている。
「(もともと招待状準備のためのイベントだったんだ。)」
本来の目的は、あくまで招待状。
彼らを、次の舞台へ招くための前座。
「(それが、あまりに楽しそうだったから、つい参加してしまった。)」
それでも、
鉄仮面の下で、
オールフォーワンは笑っていた。
「(これは、僕主催のパーティーが更に面白くなりそうだ。)」
満面の笑み。
追い込まれているにも拘わらず、
心底楽しそうに。
「(ニケくんの回収と、………)」
「させると?」
「思ってんのか!?」
オールフォーワンの意識が、お茶子と明へ向いたことを、
出久と勝己は察知した。
途端に、
攻撃の熾烈さが跳ね上がる。
爆炎。
一切の隙を与えない猛攻。
「まぁバレるよね、君たちには。」
オールフォーワンは防御へ専念しながら思考する。
「(あの二人の少女の誘拐。最悪、どちらかの個性だけでも奪えば、彼らはそれを取り返しに、僕の招待を受けるしかなくなる。)」
この戦闘音でも目が覚めない。
ニケあたりが何かをした可能性が高い。
ならば今のうちに、
誘拐。
あるいは個性の強奪。
しかし、
「ハッァァァ!」
「死ねぇぇぇ!」
この二人は、
その隙を一切見せない。
「(目の光はあの二人と同じものだ。にも拘わらず強さは天と地ほどの差がある。)」
短距離ならば、オールマイトに匹敵する速度。
個人へ向けるならば、オールマイトに匹敵する威力。
オールマイト以上の探知能力。
オールマイト以上の戦闘技能。
「(まったく、この二人は、)」
鋲突で薙ぎ払う。
異角を叩きつける。
並のプロなら瞬殺できる攻撃。
それを、
躱され、
迎撃される。
「僕のオモチャに相応しい!!!!」
「「うるせぇぇぇぇ!!!!」」
あまりにも気色の悪い言葉。
鳥肌を立たせながら、
出久と勝己が渾身の怒声を叩きつける。
「(だが、このまま何も工夫をしなければ、千日手だな。………仕方がない。)」
手札を切ろう
オールフォーワンの背後。
黒霧のゲートとは異なる、
別種の闇が蠢いた。
霞。
あるいは、
液状化した闇。
そこから、
何かが這い出てくる。
「調整中の所申し訳ないが、足止めを頼むよ、フードちゃん。」
闇の中から現れたのは、
フードを被った脳無。
通常の脳無とは違う。
その存在感だけで、分かる。
格が違う。
「………ツヨッ、…ツヨイ、ア、アイテッ、カ?」
「「(喋る脳無!?)」」
「ああ、強いよ。遊んできたまえ。」
「ガァァァァ!!!!」
咆哮。
空気が震えた。
ーーーーー
出た。
黒い脳無の、更に上!
全身の警鐘が鳴り響く。
カッちゃんも同じ結論に辿り着いたのだろう。
「カっちゃん!」
「オウ!」
言葉は短い。
だが、それだけで十分だった。
役割分担。
この脳無は僕が抑える。
スピードで勝るカッちゃんが、オールフォーワンを追う。
最初、ニケを相手にする前に考えていたフォーメーション。
それを実行しようとした瞬間。
ギュッッッン!!!
「伸びッ!?」
「速いッ!?」
凄まじい勢いで伸びた腕が、
僕ら二人を同時に捕らえた。
速い。
そして強い。
「ダッッッ!!!」
「ラァッッッ!!!」
捕まれた状態から、
僕はイフリートソールで腕を蹴り上げ、
カッちゃんは全身爆破で強引に手を吹き飛ばす。
可能な限り、
最速の対応。
それでも、
「残念、僕の手札の方が優れていた、……よう……だ?」
勝ち誇るように、
お茶子さんを持ち上げるオールフォーワン。
だが、
その声が途中で止まる。
「………やって、くれたね。」
震える声。
怒り。
困惑。
信じられないものを見たような声音。
次の瞬間。
お茶子さん、
そして明さんの身体が、
泥のように崩れ落ちた。
「(これは、先日ヴィラン連合に参入した分倍河原の個性、二倍。)
常人なら、
触れただけで心臓が止まりそうになる、
怒りが、
森全体へ解き放たれた。
「弔ァァァァァアアア!!!!!」